解体工事におけるアスベスト事前調査について

建築物等の解体・改修工事を行う場合には、石綿障害予防規則等の法令に基づき、アスベスト含有の有無の事前調査、労働者に対するアスベストばく露防止措置、作業の記録・保存などを行う必要があります。

事前調査とは、書面調査と目視調査の2つがあり、工事前に建築物等に使用されている建材の石綿含有の有無を調査することをいいます。調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。建築基準法など各種法律に基づき施工された石綿含有建材以外にも、改修・改造・補修などにより、想定できないような場所に石綿が使用されている場合があります。建材等の使用箇所、種類等を網羅的に把握し的確な判断を行うためには、見落とさないよう注意する必要があります。

また、労働者に対するばく露防止措置として、「石綿(アスベスト)等を切断等する際の湿潤化」「呼吸用保護具・保護衣等の使用」「レベル12建材の除去等を行う際の負圧隔離」「労働者への特別教育」などの措置が必要となります。

作業の記録・保存については、事前調査結果の掲示や石綿除去作業中の状況などを写真や動画により記録し、3年間保存しなければなりません。また、労働者ごとに、石綿の取扱い作業に従事した期間、従事した作業の内容、保護具の使用状況などを記録し、40年間保存する必要があります。

上記以外にも、法令に基づき措置を行う必要があります。

書面調査

書面調査とは、事前調査の第1段階は書面による調査のことをいいます。書面調査では、設計図面などの書面や発注者や施設管理者、工事業者の関係者等の聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、石綿の使用の有無に関係する情報を読み取ります。それにより、現地での目視による調査を効率的かつ効果的に実施できるように準備を行い、得られた情報を参照しやすいよう整理します。書面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質を高める重要な工程となります。これらの質と効率を高めるには、建築や建材などの知識がとても重要となります。

入手できた書面に応じた現地での目視調査の準備(計画)

どこまで図面が残っているかによって目視調査の準備が異なってきます。図面に動線計画を記入しておくことにより目視調査の時に調査漏れの防止につながります。また、調査結果の記録として図面を用いることにより、石綿含有建材の使用箇所が分かりやすく作業者に伝わるため、図面があることが望ましいです。具体的には、入手できた図面によって下記の対応が考えられます。

①図面が全くない場合
目視調査までに、フロアマップなどから略図を作成しておき、ヒアリング時に現地の概略を確認する。目視調査で階ごとの部屋数を確認するとともに、変更されていた場合はメモ書きで残す。

②図面が一部のみの場合
不足分は目視調査で略図を作成し補足する。

③図面がほぼ揃っている場合
図面と建築物の構造や間取り、使用している建材の整合性を確認する。

現地での目視調査に準備すべき資料

設計図書のコピーなどを現地に持ち込むことは再確認のため、重要なことと考えられます。しかし、特に原図のサイズはA1またはA2の場合がほとんどであり、現地では大きすぎて使いづらいです。また、解体時の事前調査は電気が不通であることが多く、原図の縮小コピーでは文字が読みにくくなり、判読を誤りかねません。そのため、以下のように目視調査が適切かつスムーズに実施できるようにすることが必要です。

・設計図書のコピーの建材名等の表記について、見える大きさに手書きで記載しておく
・書面調査情報を目視調査用の資料に整理しておく
・原図の写真や整理票をタブレットなどに保存しておく

目視調査

目視調査とは、書面調査に基づき実際に現地でアスベスト含有を目視で調査することです。設計図書や竣工図等の書面は石綿含有建材の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、また、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、書面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿の使用状況を網羅的に把握するため、原則として現地で目視調査を行うことが必要となります。例えば、仕様を満たすため現場判断で設計図書と異なる施工をした場合や、設計図書には残っていない改修が行われている場合があり、書面調査はあくまで下調べに過ぎず、相違があれば、現地での目視調査の結果が優先となります。

書面と現地で相違がある例

・RC造の最上階スラブ下に結露防止等の断熱のため発泡系断熱材のコンクリート打ち込みを行うことがあるが、これが石綿含有吹付けロックウールなどに変更されていないか等を確認する。

・増築、改修、改造などによる間取りの変更、ボードの貼り替え等がないか確認する。

調査対象の留意点

・耐震補強工事において、梁、柱を利用して耐震補強を行う場合は、梁や柱の周辺の吹付け材や耐火被覆板等の石綿について部分除去が必要となる可能性があるため、当該施工箇所周辺について調査を行う。

・天井裏の吹付け材を除去せず、天井板等の取替えのみの場合であっても、吹付け材が劣化、脱落して天井板等に堆積している場合においては、堆積している吹付け材の石綿含有の有無について確認する必要がある。

・改修工事では、改修の対象となっていなくても、工事に伴い石綿が飛散するおそれのある建材を適切に調査の対象にする。例えば、建築用仕上塗材を改修する際に、劣化した仕上塗材層だけでなく、下地調整塗材層までも削り取ることによって粉じんが飛散するおそれがある場合には、下地調整塗材層についても別途調査を行う。

応急措置

現地での目視調査において確認された吹付け石綿等で、露出している部分が劣化しており、かつ、人の出入りがある場所の場合は、使用者・利用者がばく露する危険性があるため、速やかに発注者等に劣化状況を連絡して立入禁止措置を含め対策措置の検討を速やかに講じてもらうようにする必要があります。目視により劣化状況の確認として、毛羽立ち、繊維の崩れ、垂れ下がり、浮きはがれ、局部的損傷、欠損、層の損傷、欠損等を確認します。

石綿含有の有無の判断

調査対象の建築物のアスベスト含有の判断については、現地での目視調査を踏まえて判断します。判断は、読み取った建材情報と各種情報との照合による判断、分析による判定、石綿含有みなしと取り扱うことにより行います。石綿含有とみなす場合は、吹付け材や保温材等を作業基準のことなる成形板等や仕上塗材と扱わないように注意が必要です。石綿含有とみなした場合は、当該解体等工事は石綿含有建材の除去等に該当することはもちろん、当該建材が廃棄物となった際に廃石綿等又は石綿含有産業(一般)廃棄物として扱うことになります。

建築物解体時におけるアスベストの事前調査において、これまでは資格は必須ではありませんでしたが、大気汚染防止法の一部を改正する法律(令和265日公布)により令和5101日以降に解体等作業を行う際は、資格者による事前調査が義務化されます。

事前調査を行うにあたって必要な資格

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)
④令和5930日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者

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アスベストが使用されている建築物の見分け方について

アスベストについては、労働安全衛生法施行令が改正され、2006年9月1日にアスベストが全面禁止とされました。石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。アスベストは天然に産出する繊維状鉱物で、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類に分けられます。アスベストはとても細かい繊維状でできているため、空気中に飛散し、人類の体内に入り込みやすい性質をもっています。それによって、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。これによる健康被害はアスベストを吸ってから長い年月を経て症状に出てきます。このような健康被害が多く発生していることによりアスベストは全面使用禁止となりました。しかし、全面禁止になったとは言え、禁止以前に建てられた建築物にはアスベストが使用されており、その建物の解体やリフォーム等を行う際はアスベストの飛散の可能性が大きくあります。

アスベスト含有建築物の見分け方

①建築物の建築時期で見分ける

2006年にアスベスト全面使用禁止となっていることにより、2006年以前に建てられたものについては、アスベストが使用されている可能性があります。1975年の労働安全衛生法施行令で含有率5%以上の吹き付けアスベストの使用禁止を皮切りに、アスベストへの規制が数回に渡って行われ、2006年の法改正では、一般的な戸建住宅でアスベストを含む建材を使用できなくなりました。

アスベストに関する労働安全衛生法改正・特定化学物質等障害予防規則の変遷は以下のとおりとなります。

1975年 含有率5%以上の吹き付けアスベスト使用禁止(労働安全衛生法施行令)
1995年 有害性の高いアモサイト・クロシドライトの製造禁止(労働安全衛生法施行令)、含有率1%以上の吹き付けアスベスト使用禁止(特定化学物質等障害予防規則)
2004年 石綿を含有する建材・摩擦材・接着剤など10品目の製造禁止(労働安全衛生法施行令)
2006年 代替えが難しい適用除外製品等を除いた、石綿及び石綿をその重量の0.1%を超える含有量の物の製造等を全面禁止(労働安全衛生法施行令)
2012年 石綿及び石綿をその重量の0.1%を超える含有量の物の製造を全面禁止(労働安全衛生法施行令)

②使用している外壁材で見分ける

一般的な住宅で使用されている建材の中で、アスベスト含有の可能性があるものは主に以下となります。

以下の使用については仕様書や設計図等を確認することで分かることもあります。また、建材名、商品名、製造時メーカー名、現在メーカー名、型番・品番が分かれば、国土交通省ホームページ「石綿(アスベスト)含有建材データベース」でも調べることが可能です。

  • ≪外壁材≫
  • ・建築用仕上げ塗装材(使用時期1970~1999年)
  • ・建築用下地調整塗材(フィラー)(使用時期19702005年)
  • ・石綿含有金属系サイディング(使用時期19602004年)
  • ・繊維強化セメント板(使用時期19602004年)
  • ≪屋根材≫
  • ・スレート
  • ・セメント瓦

③専門業者に依頼する

アスベスト調査にあたっても飛沫を吸い込む可能性があるため、アスベストの取り扱いの専門業者に依頼をすることをおすすめします。また、建物にアスベストが含まれているかか否かは、建物を一目見ただけでは判断できないことが多いです。建物の設計図から判断したり、アスベストの調査業者に依頼したりすることでアスベストの使用状況を確認することが安全かつ正確です。
調査方法は主に定性分析、定量分析、濃度分析の3つがあります。

定性分析

アスベストの有無を調査する分析で、分析方法としては偏光顕微鏡法や位相差・分散顕微鏡法などがあります。

定量分析

アスベストの含有率を調査する分析で、分析方法としてはX線回折法があります。基本的に定性分析でアスベストの有無を分析した後に、定量分析で含有率を分析する流れです。

濃度分析

空気中のアスベスト濃度を測定し調査する分析です。調査をするにあたり、サンプリングを採取する必要があり、部外壁材などを剥がして検査場に持ち帰ります。

アスベストが使用されている箇所

①吹き付けアスベスト

アスベストとセメントとを一定割合で水を加えて混合し、吹き付け施工したものです。使用期間は、昭和38年頃から50年初頭までであり、耐火被覆用としては、鉄骨造建築物のはり、柱等への吹き付けとなります。吸音・断熱用は、ビルの機械室、ボイラー室、地下駐車場等の他、学校、体育館、工場等の天井、壁などに使用されています。使用期間は、昭和31年頃から50年初頭までです。

②吹き付けロックウール

昭和50年に吹付けアスベストが原則禁止となりました。それ以降は吹付けロックウールに使用が切り替わっていましたが、しばらくの間は、アスベストを混ぜて使用していました。用途としては、吹付けアスベストと同様に、耐火被覆用と吸音・断熱用であり、使用場所などもほぼ同じです。アスベストを混ぜて使用された期間は、昭和43年頃から55年頃までですが、一部の工法については、63年頃まで使用されていました。

③アスベスト保温材等

アスベスト保温材等には、保温材、耐火被覆板及び断熱材があります。板状保温材及び筒状保温材は、各種プラントの塔などの外壁や配管の定形部にボルトや針金等によって固定され使われています。ひも状保温材は、各種プラントの曲管部や施工しにくい部分に巻き付けて使われています。布団状保温材は、各種プラントのポンプ、バルブ、フランジ等の保守点検を必要とする部分等に被せ、その上から針金等を巻きつけて使われています。耐火被覆板は、吹き付けアスベストと同様に鉄骨材等の耐火性能を確保するために用いられています。

④アスベスト成形板(石綿スレート、パルプセメント板、石綿セメントサイディング等)

アスベスト成形板には、平板又は波板状のものがあり、最も代表的なものが石綿スレートです。防火性、耐水性等に優れた性能を持つことから、建物の外壁、屋根をはじめとして広い範囲で使用されています。さらに、化粧を施したものや軽量化したものなど、多くの石綿スレート関連製品があります。

店舗併用住宅等、鉄骨や鉄筋住宅では、昭和30年頃から50年頃までに建設された建物を主に、H鋼やコンクリートスラブの表面に吹付けアスベストが使われている場合があります。昭和50年に吹付けアスベストが原則禁止となってからは、アスベスト含有吹付けロックウールがおおむね昭和63年まで使用されていました。また、その他の住宅においても、住宅屋根用化粧スレートなどのほか、建築物の外装であるサイディング、外壁や間仕切壁等の押出成型セメント板が最近まで使われたりしています(平成1610月製造等禁止)。これらスレート等の建材はアスベスト成形板と呼ばれています。都内にあるビルにおいては、吹付けアスベストに限っても、昭和40年ごろから昭和50年の吹付けアスベストの使用が原則禁止になるまでの間に、多くのビルで使用されています。しかし、使用禁止になったその後も、しばらくの間はロックウールに5%以下のアスベストを混ぜて使用していたものがあること(大気汚染防止法では、01%を超えて含むものを届出対象としています。)や、設計書と異なった施工も多いことなどから、結局は分析しないと判定できず、使用実態の正確な把握は困難となっています。

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土壌汚染の調査方法(フェーズ1)について

前回の記事では、土壌汚染調査から対策工事に至るまでの流れを概観しました。土壌調査から対策工事までの工程は、土壌汚染対策法施行規則によって具体的に定められています。その手順をわかりやすくするため、一般的に土壌調査・対策工事を実施する過程は3つのフェーズに分けて説明されます。その3つのフェーズとは、①地歴調査 ②状況調査・詳細調査(表層土壌調査・ボーリング調査)③土壌汚染対策工事です。今回の記事では、フェーズ1の地歴調査の内容や方法、調査にかかる費用について解説いたします。

地歴調査とは

 フェーズ1の地歴調査は、資料等調査や土地利用履歴調査とも言われます。地歴調査では、対象となる土地がこれまでどのように使われてきたのかを資料等を用いて把握し、土壌汚染リスクがあるかどうかを調べます。地歴調査の目的は、様々な資料から土地の利用履歴や有害物質の使用履歴を確認し、対象となる土地の土壌汚染が存在する可能性を評価することです。地歴調査は書類上での調査であり、現地の土壌採取や土壌試料の分析等は行われませんが、フェーズ2以降の調査の要否や、全体的な調査・施工計画を立てる上で目安となる重要な調査です。

 前回の記事で述べたように、土壌調査には法的に義務付けられている調査と、自主調査があります。有害物質使用特定施設を廃止する場合や、一定以上の規模の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがある場合は、土壌汚染調査を実施し、調査結果を都道府県知事に報告することが法律で定められています。自主調査は、不動産売買や不動産評価、不動産の証券化(信託設定)のための事前調査として、土地の正確な価値の把握、ならびに契約成立後のトラブル回避を目的に依頼される場合が多くなっています。地歴調査の結果は、土壌汚染対策法施行規則(第三条の二)の規定に従って、①土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地、②土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地、③土壌汚染が存在するおそれがあると認められる土地に分類されます。土壌汚染のリスクがないと判断された場合には、調査はそこで終了しますが、汚染の可能性があると判断された場合には、汚染の程度や範囲、深さ等をより詳しく調べる必要があり、フェーズ2の状況調査・詳細調査に続いていきます。

地歴調査の方法

 地歴調査では、対象となる土地の利用履歴を把握するために、一般公表資料、公的届出資料、私的資料等を調べます。具体的には、地形図、住宅地図、行政調査、空中写真に加えて、公図、登記謄本、既往調査結果(土壌関連、地下水関連、ダイオキシン類等)等を資料として用いて、その土地の利用履歴や地質・地下水の特質等を調査します。また、必要に応じて、特定施設の届出状況確認等の役所調査やヒアリング調査、現地踏査が行われることもあります。これらの書類もしくは実地の調査を通じて、対象の土地や周辺地域に特定施設が建てられていた形跡の有無や、有害物質の使用履歴をチェックします。

 地歴調査の具体的な方法について、住宅地図を例として説明します。資料調査では、まず対象の土地の住宅地図を集め、年代ごとに記された情報を判読し、土地利用の変遷を調べ、その土地及び周辺地域での特定有害物質を取り扱う恐れのある施設の有無を調査します。住宅地図とは、1棟、1戸ごとの戸別情報(居住者名・建物名・建物の平面形など)を記載している地図帳の総称です。「明細地図」「航空地図」とも呼ばれ、いくつかの地図情報会社によって出版されており、数年ごとに改定されています。なお、住宅地図は出版物であるため、国立国会図書館に所蔵されており、申し込みが必要な場合もありますが、誰でも閲覧や複写をすることができます(1)。また、調べたい地域の最新の住宅地図を、全国のコンビニエンスストアで印刷することができる住宅地図プリントサービスもあります(2)

 ちなみに、住宅地図は昭和30年代以降に作成されたものであり、それよりも過去に遡って地歴を調べたい場合には、公図や地籍図、火災保険特殊地図等を利用します。公図・地籍図とは、市役所、町村役場、登記所が管理する土地登記簿(土地台帳)に付属し、各施設に備え付けられている地図を指します。公図は、明治時代に租税徴収の目的のために作成された図面で、地籍図は国土調査法によって作成された地図のことを言います。これらの地図には一筆(土地取引の基礎単位)ごとの区画形状と地番が記入されており、地図に対応した土地台帳には地目、土地所有者等が記載されています(3)(4)。火災保険特殊地図は、火災保険の保険料率の算定のため、昭和のはじめ頃から30年頃まで都市製図会社よって作成されていた地図です。地番だけが記された簡略なものもありますが、建築物の構造、業種、居住者名まで詳細に記入されたものもあります(5)。これらの資料を活用することで、戦前にまで遡って、その土地の用途の変遷を調べることができます。

 専門的な地歴調査の場合、住宅地図や公図、登記簿謄本等の、誰でも簡単に入手ができる一般公表資料に加えて、水質汚濁防止法や下水道法に基づく特定施設設置等の届出資料、危険物貯蔵所等の届出資料、行政への環境関連の提出資料等の届出資料や、過去の土壌調査報告書、MSDS(化学物質安全性データシート:Material Safety Data Sheet)、建物・施設配置図、排水経路図・配管図、ボーリング(地質)柱状図、使用薬品リスト等の私的資料を活用することもあります。資料調査ではわからない点や不審な点があった際には、対象地と周辺地域の現地確認をする現地踏査や、設備や環境担当者へのヒアリング調査が実施されます。地歴調査で活用する資料の種類や数によって、調査に必要な費用は変わってきます。以下では、地歴調査にかかる費用の相場について述べていきます。

地歴調査にかかる費用

 前述の通り、地歴調査は、様々な資料から土地の利用履歴や有害物質の使用履歴を確認し、対象となる土地の土壌汚染が存在する可能性を評価することを目的とした書類上での調査です。地歴調査にかかる費用の相場は、一般に10万円~30万円ほどになります。費用は収集する資料や調査項目の数、行政交渉や現地調査の有無によって値段は大きく変動します。地形図や住宅地図など、入手しやすい資料のみを用いた簡易スクリーニングの場合が最も安く、登記簿謄本や空中写真等、用いる資料の数が多くなる場合や、特定施設の届出状況を確認するための役所調査、現地踏査やヒアリング調査等の専門的な調査が必要である場合には費用が上がります。

土壌汚染調査は、土地売買前の自主調査のケースや、工場・施設廃止に伴う汚染調査など、目的によって個々のケースごとに最適な調査計画が異なります。株式会社エコ・テックでは、事前に調査目的やコスト面についてお客様のご要望をお聞きしながら、最適な調査方法をプランニングいたします。はじめのご相談や打ち合わせから、万が一汚染が発見された場合の土壌汚染対策工事の実施まで、当社がトータルに承ります。工事に伴う行政対応や、周辺住民とのトラブル防止対策もサポートいたします。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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土壌汚染調査に必要な費用について

2種類の土壌調査

土壌調査には、法的な義務による調査と、自主調査の2種類があります。法的に土壌汚染の調査義務が生じるのは、平成14年5月に成立・公布された土壌汚染対策法によって定められている以下のいずれかの条件に該当する場合です。

①特定有害物質を製造、使用又は処理する施設の使用が廃止された場合
②一定規模以上の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認める場合
③土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合

 これらの場合には、原則的に土地の所有者が、必要な届出を提出し、土壌汚染の調査を依頼し、その調査結果を都道府県知事に報告する義務を負います。水質汚濁防止法第二条第二項で定義されている有害物質使用特定施設(以下、特定施設と表記)を廃止する際には、土壌調査が必要になります。特定施設とは、「特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理するもの(土壌汚染対策法第三条第一項)」を指します。特定有害物質は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号で「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質」とされており、土壌汚染対策法施行令によって鉛、砒素、トリクロロエチレン等、26種類の物質が特定有害物質として指定されています(土壌汚染対策法施行令第1条)。特定有害物質は、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質、重金属等の第二種特定有害物質、農薬・PCB等の第三種特定有害物質の3種類に分類されています(1)

 以上が、法的な義務による土壌調査の概要ですが、法的な義務がなくても、いくつかの理由から自主調査を行う場合があります。法的な義務に因らない自主調査の主な目的には、土地を担保に金融機関から融資を受けるための正確な担保価格の把握、土地売買の取引成立後のトラブル防止、土地の買い手への安全性のアピール等が挙げられます。特定有害物質を取り扱わない工場や、特定施設には含まれないガソリンスタンド等の跡地を売却する際など、取引成立後に訴訟トラブルになるリスクを無くすため、自主調査を行うケースがあります。一般社団法人 土壌環境センターが会員企業100社を対象に行った『土壌汚染状況調査・対策』に関する実態調査結果(令和2年度)」によれば、対象企業が受注した土壌調査5,629件のうち、自主調査は4,673件にも上り、自主調査が土壌調査全体に占める割合は8割以上となっています(2)

土壌調査の3つのフェーズ

 土壌調査の手順は、土壌汚染対策法施行規則(平成14年)によって定められており、自主調査の場合でもそれらに準拠した方法で進められることが一般的です(3)。土壌調査から土壌汚染対策工事の施工までの流れは、しばしば以下の3つのフェーズに分けて説明されます。

①フェーズ1:地歴調査
②フェーズ2:状況調査・詳細調査
③フェーズ3:土壌汚染対策

 フェーズ1の地歴調査は、住宅地図や航空写真、古地図、登記簿謄本、関連法令の届出、地質・地下水の特質等から対象地の利用履歴を調べ、現地踏査やヒアリング調査と合わせて土壌汚染のリスクを判定する調査となります。土壌汚染対策法施行規則(第三条の二)では、この地歴調査により以下の3分類を行うものとしています。その3分類とは、[1] 土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地、[2] 土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地、[3] 土壌汚染が存在するおそれがあると認められる土地になります。

 次に、上記の資料等による調査を基にして、土壌汚染が存在するおそれのある分布範囲を把握し、土壌汚染対策法施行規則第四条によって規定された方法で調査対象区画を選定します。フェーズ2では、設定した調査区画の表層部の土壌を採取して調査し、実際の汚染の範囲を判定します。表層土壌調査の結果、基準値を超える特定有害物質が検出された場合には、汚染の深度を測定するため、該当する区画でボーリング調査を実施します。ボーリングの深度は原則10mまでとされており、ボーリングの方法にはロータリー式ボーリング、機械式簡易ボーリング等、さまざまな種類があり、目的に応じて選定されます(4)

 土壌汚染の範囲と深度を詳細に調査した後、フェーズ3に当たる土壌汚染対策工事に入ります。原位置浄化や掘削除去など、さまざまな手法があり、予算や作業環境、特定有害物質の種類によって最適な手法は異なります。重金属等の第二種特定有害物質による汚染に対しては汚染土の堀削除去が一般的ですが、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質による汚染は原位置浄化による対処が可能で、コストダウンが期待できます。

土壌調査・土壌汚染対策工事にかかる費用の相場

 土壌調査から土壌汚染対策工事に至るまでの一連の流れは以上の通りですが、それぞれの調査や対策工事にかかる費用はどれくらいでしょうか。対象となる土地の広さや形状、利用状況その他によって見積金額は変動しますが、おおよその相場の目安を以下に述べていきます。

①フェーズ1:地歴調査の費用

 地形図や住宅地図等の各種資料やヒアリング調査によって土地の利用履歴を調べる地歴調査にかかる費用の相場は、10万円~30万円ほどになります。収集する資料や調査項目の数、行政交渉の有無によって値段は大きく変動します。地形図や住宅地図など、入手しやすい資料のみを用いた簡易スクリーニングの場合が最も安く、登記簿謄本や空中写真等、用いる資料の数が多くなる場合や、特定施設の届出状況を確認するための役所調査、現地踏査やヒアリング調査等の専門的な調査が必要な場合には費用が上がります。

②フェーズ2:状況調査・詳細調査の費用

 土壌ガスや表層土壌を採取・分析する状況調査と、ボーリング調査を実施する詳細調査とで費用は変わってきます。表層土壌を調査する状況調査は、900㎡あたり20万円~60万円が相場となります。調査費用は特定有害物質の使用履歴の有無や、土地の形状や場所、土間コンクリートの厚さや調査項目の数によって大きく増減します。ボーリング調査にかかる費用は、1地点(100㎡)あたり20万円~80万円ほどで、汚染の状況や特定有害物質の種類によって費用が変動します。

③フェーズ3:土壌汚染対策工事の費用

 土壌汚染対策工事の費用は、汚染物質の種類と濃度、汚染の範囲と深さに加えて、敷地の広さや周辺道路等の作業環境、埋め戻し作業や行政対応の有無によって算出されます。また、土壌を入れ替える掘削除去、薬剤を用いて特定有害物質の濃度を健康被害が出ない程度までに下げる原位置浄化や不溶化処理など、採用する手法によっても費用は大きく変わります。

 上記のように、対策工事には多数の変動要素が関係しており、個々のケースにより費用は大きく異なるため、具体的な見積もりをしなければ正確な費用を算定することはできません。目安としては、1㎥あたり3万円~10万円程度が相場であるとされています。

【株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事の流れ】株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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