2022/06/24
アスベスト法改正について
2022年4月1日から、石綿の有無の「事前調査結果の報告」の義務化が施行されます。全ての建築物、特定の工作物の一定規模以上の解体や改修工事は、2022年4月1日着工の工事から原則全数が報告対象となります。アスベスト関連の法規性は、諸外国からの情報や実際に日本で受けた被害から取締を強化してきました。年々法改正による取り締まりが強化されているので随時情報のチェックが重要です。
アスベストが全面禁止になるまでの歴史
①1975年「石綿吹き付け作業を原則禁止」
「特定化学物質等障害予防規則」の改正によるもので、同年10月1日から施行されました。石綿をその重量の5%を超えて含有するものが規制の対象となります。
②1987年「石綿対策全国連絡会議が設立」
段階的全面禁止をめざす「石綿製品の規制等に関する法律案」が1992年に国会に提出されましたが、廃案となりました。
③1995年「労働安全衛生法第55条の「製造等禁止」規定による禁止」
「製造等禁止」物質を列挙した労働安全衛生法施行令第16条に、クロシドライト及びアモサイトを追加する改正が、同年4月1日から施行されました。同時に、規制対象が、石綿をその重量の1%を超えて含有するものに拡大されました。
④2002年
2002年12月12日の「石綿及び同含有製品の代替化等の調査結果の概要」公表に続いて、「石綿の代替化等検討委員会」が設置されました。市場に存在していることがわかった石綿含有製品のうち、3種類(耐熱・電気絶縁板、ジョイントシート・シール材、石綿布・石綿糸等)を除いて禁止するという趣旨のものです。石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、クラッチフェーシング、クラッチライニング、ブレーキパッド、ブレーキライニング、接着剤を禁止する労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成15年政令第457号)が2003年10月16日に公布され、2004年10月1日から施行されました。
⑤2005年
クボタショックの影響があり、「2008年までにアスベスト全面禁止」の方針が表明されました。経済産業省とともに関係業界を集めた「石綿の代替化に関する緊急会議」を招集するとともに、「石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討会」を設置しました。
⑥2006年
2006年1月18日に公表された労働安全衛生法施行令の一部改正(平成18年政令第257号、同年8月2日公布)が同年9月1日から施行されました。禁止措置の適用が除外されるものが列挙されており、規制対象が、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するものに拡大されました。列挙されたもの以外はすべて禁止されるという意味で「原則禁止」ではありましたが、厚生労働省はこれを「全面禁止」と称しました。(2006年9・10月号等)
2005年のクボタショックの、従業員が肺がんや中皮腫で死亡していたこと、工場の近隣の住民や従業員の家族が中皮腫を発症・死亡していたことを公表したことが発端となり、アスベストによる健康問題が、それを取り扱う労働者だけでなく多くの国民の問題であることが広く知られ、社会的な問題となりました。アスベストは、細かい繊維状でできた天然の鉱物繊維で、不燃性、耐熱性及び耐腐食性に優れていることから、生活を取り巻く様々な場面において使用されてきました。特に高度経済成長期においては、アスベストが大量に輸入され、アスベスト含有製品が大量に製造されましたが、現在このような時期から中皮腫の平均的な潜伏期間と言われる35年前後が経過しています。このため、アスベストによる健康被害は今後、更に増加すると懸念されており、環境省の推計によると、アスベストが原因とみられる中皮腫及び肺がんを今後発症する人は約8万5千人とされています。
これらの危険性を考慮して2020年6月5日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)」が定められました。この法律は、2021年4月から順次施行されています。
⑦2021年「アスベスト規制対象の拡大」
アスベストの規制対象が、レベル1(吹付け石綿)、レベル2(石綿含有保温材、石綿含有断熱材、石綿含有耐火被覆材)だけではなく、レベル3(石綿含有成形板等、石綿含有仕上塗材)にまで拡大され、全ての石綿含有建材が対象となりました。また、レベルごとの作業基準も更新、新設されました。
⑧2021年「不適切な作業防止」
元請業者は、石綿含有建材が使用されている建築物等の除去等が完了したことの確認を適切に行うために、必要な知識を有する者による目視での確認が義務付けられました。さらに作業の結果を、遅滞なく発注者に書面で報告、工事現場に掲示する義務が課され、その際に作成した書類や解体工事に関する書類は、作業完了日から3年間保管することも義務化されました。
⑨2021年「事前調査」の義務化
「図面又は目視」から「図面及び目視」に変更となり義務化されました。目視調査でアスベスト含有が判明しない場合、サンプリングと成分分析が必要となります。しかし、2006年9月以降に着工された住宅などに関しては、アスベストが使用禁止になった後のため、当該着工日や製造日等の確認を行うことで事前調査を完了とすることができます。また、解体工事の元請業者は解体工事の前に行った事前調査に関する記録を作成し、解体工事完了から3年間は保存しなければならなくなりました。
⑩2022年「事前調査結果の報告」
一定規模以上の解体等工事の元請業者又は自主施工者は、調査結果を事前に報告することが義務付けられました。報告方法は原則、「石綿事前調査結果報告システム」からの電子報告です。
・床面積合計80平米以上の解体工事
・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の建築物の改造・補修作業
・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の環境大臣が定める工作物の解体、改造等工事
⑪2023年10月以降「建築物の事前調査を行う者の資格要件の新設」
アスベストの事前調査を行うための資格が創設され、事前調査を行うには一定の知見を有する者(建築物石綿含有建材調査者等)にしか行わせることができなくなりました。建築物石綿含有建材調査者とは、解体や改修する建物や構造物におけるアスベストの有無を、中立かつ公正に調査する有資格者のことです。厚生労働省、国土交通省、環境省告示第1号に基づく講習を受講し、さらに修了考査に合格する必要があります。
アスベストに関するその他の法規定
①建築基準法
2006年に建築基準法が改正され、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール(含有率が0.1%を超えるもの)が規制対象となり、新たに建築する建築物への使用が禁止になりました。また、2006年以前に建築された建築物においても、増改築等を行う場合は除去等(一定規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)が必要となります。
②廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、廃棄物の排出抑制と処理の適正化により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律です。廃棄物処理法、廃掃法と略されます。
③建設リサイクル法
建設リサイクル法とは、建設工事で発生する廃材(建築廃棄物)を正しく処理し、リサイクルを促すために作られた法律です。正式名称は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といい、2000年に制定、2002年5月30日に施行されました。
④労働安全衛生法
「労働安全衛生法」に基づく「石綿障害予防規則」第10条第1項や第2項では、すべての事業者に労働者の石綿ばく露防止対策を義務づけています。例えば、事業者は、自らの雇用する労働者が通常働く場所で吹付け石綿などが劣化し、労働者が石綿にばく露するおそれがあるときは、その場所で労働者を働かせてはなりません。
2022/06/21
解体工事の補助金について
主に以下のような理由で解体工事における補助金や助成金が支給されることがあります。特に空き家や長期間人が住んでいないような家に関しては、特定空き家と認定されて補助金や助成金の支給対象となります。
・街の景観を保つため
・放火や犯罪を防ぐため
・不法投棄や害虫の発生などを防ぐため
・違法薬物の取引場所となる可能性を防ぐため
・倒壊などによる近隣への危険性を排除するため
・周辺住民の生活に悪影響を及ぼすことを防ぐため
特定空き家とは、国土交通省が示している基本指針である「倒壊などの著しく保安上危険となる恐れがある状態」「著しく衛生上有害となる恐れがある状態」「著しく景観を損なっている状態」「放置することが不適切である状態」の4項目のいずれかに該当する空き家のことを指します。
解体工事における主な補助金
老朽危険空き家解体補助金
老朽危険空き家解体補助金とは、老朽化により危険な状態にある空き家の自主的な解体を促進するための補助金制度です。安全で安心な住環境の向上を図るため、その解体費用の一部を補助する制度となります。なお、補助金の申請前に、あらかじめ老朽危険空き家に該当するかどうかについて、各自治体の事前調査を受ける必要があります。補助金支給額は、解体費用の2割~5割程度が一般的です。
木造住宅解体工事補助金
木造住宅解体工事費補助事業とは、実際に耐震診断を行った上で倒壊の危険性が高いと判断された家屋に対して解体費用の一部負担をしてくれる制度です。木造住宅の耐震補強工事や解体工事の費用も一部負担してもらうことができます。補助金支給にあたっては、木造住宅の耐震診断を受け、耐震性が低いと判断される必要があります。自治体によっては解体する前年度までに耐震診断を受ける必要がある場合もあるので、補助金を受けることを検討している場合は早めの診断が良いです。
ブロック塀等撤去費補助金
大規模地震が発生した場合にブロック塀等の転倒による被害を防ぐため、転倒のおそれがあるブロック塀等の撤去を行う場合に工事費の一部を補助する補助金制度です。一般的には高さが1メートル以上であることが条件となります。構造については、ブロック塀のほか、コンクリート造や石造り、レンガ造なども対象です。補助金支給額は、解体費用の2割から5割程度が支給されることが多いです。
建て替え費補助金
耐震基準を満たしていない戸建てを解体して、新しく一定の基準を満たす住宅を建築する場合に解体費用や建築費用の一部が支給されます。自治体によって細かい条件が異なるため、補助金を利用したい場合は事前に要綱をよく確認したうえで申請、工事まで進める必要があります。
危険廃屋解体撤去補助金
危険廃屋解体撤去補助金とは、危険があると判断された家屋を対象に補助金が支給される制度です。周辺住民の安全や安心を考慮して、住みやすい環境を整える目的で解体工事を促進するために、補助金や助成金を支給しています。
アスベスト除去に関する補助金
アスベスト除去に関する補助金については、建築物に吹付けアスベスト等が使用されているかどうかを調査したい場合に一定の割合で補助金を支給してもらうことができるものです。実際に建築物に吹付けアスベスト等が使用されており、その除去工事を行う場合にも一定の費用を負担してもらうことができます。
解体工事の際に補助金を受けられる主な条件
空き家であること
補助金を受けられる主な条件として、空き家であることがあります。長年居住されたり利用されたりしていない空き家は補助金支給の対象となる可能性があります。空き家を放置することで、倒壊したり害虫や害獣が棲みついてしまい、周辺環境に悪影響を及ぼすことがあります。また、放火などの犯罪が行われたり、不法投棄を行う場所として利用されるリスクもあります。特に、特定空き家として認定されて周囲に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断された空き家に関しては、補助金を受けられる可能性が高くなります。
倒壊の可能性がある
空き家であることで補助金を受けられる可能性がありますが、その可能性を高める条件として、基準を超える破損レベルが挙げられます。破損度合の測り方については各自治体によって異なりますが、耐震診断を用いるケースもあれば、担当者の目視や調査によってレベルを図ることもあります。主に以下の4段階で表されます。
- 5位以上:倒壊しない
- 0位以上1.5未満:一応倒壊しない
- 7以上1.0未満:倒壊する可能性がある
- 7未満:倒壊する可能性が高い
築年数
各自治体によって異なりますが、昭和50年代後半に設定しているところが多いです。こちらに関しては、昭和56年(1981年)に耐震基準の法改正があったことが影響しています。昭和56年以前に建てられた建物に関しては、現在の基準で当てはめると耐震基準を満たさないことが多く、その分倒壊リスクが高まります。
税金を滞納していないこと
各種税金を滞納している場合は、助成金や補助金を受け取れない可能性が高いです。解体工事の助成金等はほとんど税金から支払われているため、滞納している人に支払われないのは自然ということになります。
所得条件に合致すること
解体工事助成金や補助金は、経済的に苦しい人のための制度です。そのため、所得が高い場合は自己資金で工事可能と判断され、助成金等は受け取れない可能性が高くなります。基本的に前年度の所得が1000万円以上である場合は支給対象外となることが多いようです。中には課税所得金額を明確に定めているところもあります。
解体工事の補助金における注意点
- 申請から承認までに時間がかかる
通常は審査の結果が判明するまで数週間といわれていますが、状況によっては1ヶ月以上かかることもあります。解体工事助成金等は審査がある場合が多く、申請してから承認されるまで時間がかかる場合もあります。また、審査の結果受け取れない可能性もあります。
- 助成金・補助金は工事後に支払われる
解体工事助成金や補助金は、工事終了後に領収書などを提出してから金額が決まります。そのため、実際に助成金等を受け取れるのは解体工事が終わってからとなります。工事にかかる費用については、一旦は全額自己負担となることに注意が必要です。
- 助成金・補助金は自治体によって制度が異なる
解体の補助金は自治体によって異なります。助成や補助を行っていない自治体もありますので、解体予定の自治体の情報は事前に確認する必要があります。
空き家の解体にかかる費用について
費用は家の構造と広さによって決まります。一般的に目安とされている解体費は以下となります。取り壊す家の個別の条件等によって価格に幅がでてきます。
・木造:20坪(70~120万円)、30坪(105万円~180万円)、40坪(140万円~240万円)
・軽量鉄骨造:20坪(80~140万円)、30坪(120万円~210万円)、40坪(160万円~280万円)
・RC造:20坪(110~160万円)、30坪(165万円~240万円)、40坪(220万円~320万円)
また、古い建物でアスベスト対策が必要な場合は、上記目安額とは別に費用が発生します。塀や門、駐車場などの外構物なども別に費用がかかるものと考えた方が良いです。アスベスト対策坪単価で数万円程度、外構は坪単価が計算できるものは坪単価で計算しますが、樹木などは本単位で計算することもあります。
このように解体工事には様々な費用がかかってきます。そのため、申請ができる補助金を事前に知っておくことが大切です。
2022/06/15
汚染土壌の搬出等に関する規制および指定調査機関、指定支援法人について
土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及び、その汚染による人の健康にかかわる被害の防止に関する措置を定めること等によって、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することを目的として、平成14年5月に成立し、平成15年2月に施行された法律です。
土壌汚染対策法の内容には、土壌汚染調査について(同法第三条から第五条)や、汚染の除去等の措置が必要な区域(要措置区域)の指定等の区域の指定等についての規定(同法第六条から第十五条)、汚染土壌の搬出や処理についての規定(第十六条から第二十八条)、指定調査機関についての規定(第二十九条から第四十三条)、指定支援法人についての規定(第四十四条から第五十三条)等が含まれています。
前回の記事では、土壌汚染対策法の成り立ちや、調査、区域の指定についての部分について解説いたしましたが、今回の記事では、土壌汚染の除去等の措置の考え方を確認したうえで、前回に引き続き、土壌汚染対策法の内容のうち、汚染土壌の搬出等に関する規制について、指定調査機関、指定支援法人、その他について説明いたします。
汚染の除去等の措置の考え方
http://www.env.go.jp/water/dojo/gl-man/dojogl2020_1-rrr.pdfより
まず前提として、汚染の除去等の措置に関する基本的な考え方を確認します。平成15年の土壌汚染対策法の施行後、汚染の除去等の措置について、誤った施工方法による汚染の拡散や、措置完了時の書類上の不備により要措置区域の指定を解除できない等の問題が持ち上がりました。そこで、都道府県知事による措置内容の確認を確実に行うため、要措置区域の指定をする際に、その土地の所有者等に対し、講ずべき汚染の除去等の措置及びその理由、措置を講ずるべき期限を明示し、汚染の除去等の措置方法を記載した汚染除去等計画を作成し、それを都道府県知事に提出することにしました。都道府県知事から汚染除去等計画の提出の支持を受けた者は、都道府県知事によって指示された当該土壌汚染または地下水汚染の状況等に応じて技術的に適用でき汚染の除去等の措置のうちから、その指示措置またはそれと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置を選択することができます(土壌汚染対策法第7条、土壌汚染対策法施行規則36条等)。
汚染土壌の搬出等に関する規制について(第十六条から第二十八条)
要措置区域内の汚染土壌を掘削し、区域外の処理施設へと搬出し移動させることは、汚染の拡散をもたらす可能性があります。汚染土壌の適正な運搬及び処理を確保するため、土壌汚染対策法の第十六条から第二十一条では、事前届出義務や、汚染土壌の運搬基準の遵守、処理の委託義務、管理表の交付・保存義務等が定められています。また第二十二条から第二十八条では、汚染土壌処理施設についての規定等が定められています。
要措置区域等内から汚染土壌を搬出する場合には、事前の届出義務があります。搬出に着手する14日前までに、搬出の計画について都道府県知事に届け出なければなりません。汚染土壌の届出事項には、汚染土壌の特定有害物質による汚染状態、汚染土壌の体積、運搬の方法、運搬する者の氏名、処理をする者の氏名、施設の所在地、着手予定日等が含まれます(第十六条)。
汚染土壌の運搬は、運搬に伴う汚染の拡散とともに、汚染土壌の所在を不明にするおそれがあることから、環境リスクの管理のための運搬基準を環境省令によって定め、運搬者にその遵守を義務付けることにより、汚染土壌の適正な運搬の確保が図られています(第十七条)。ここでいう土壌汚染の運搬に関する具体的な基準には、自動車等及び運搬容器を選択する際の留意事項や、自動車等への表示、積替え場所についての規定等が含まれており、「汚染土壌の運搬に関する基準等について」(平成31年3月1日付け環水大土発第1903017号)によって通知されています(1)。
また、汚染土壌を要措置区域等の外へ搬出する者は、原則的にその汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなければならないと定められています(第十八条)。
汚染土壌処理業者は、営業に当たって、汚染土壌処理施設の所在地を管轄する都道府県知事等の許可が必要で、五年ごとに許可の更新を受けなければいけません(第二十二条)。汚染土壌処理施設の種類には、①浄化等処理施設、②セメント製造施設、③埋立処理施設、④分別等処理施設があり、汚染土壌処理業者許可の基準や、汚染土壌の処理に関する基準等とともに、「汚染土壌処理業に関する省令」(平成二十一年環境省令第十号)によって定められています(2)。
また、汚染土壌の運搬・処理の詳細については、環境省によって発行されている「汚染土壌の運搬に関するガイドライン」、「汚染土壌の処理業に関するガイドライン」で、それぞれ確認することができます(3)。
指定調査機関について(第二十九条から第四十三条)
土壌汚染状況調査は、その後の土壌汚染対策の方針を決定する重要なものであるため、調査結果の信頼性を確保するため、技術的能力等を有し環境大臣によって指定された指定調査機関が行うこととされています(第三条、第二十九条)。指定調査機関は、五年ごとに指定の更新を受けなければならないことや、技術管理者を選任しなければならないことが定められています(第三十二条、第三十三条)。指定調査機関は、土壌汚染状況調査等を行うことを求められた時には、正当な理由がある場合を除いて、遅滞なく調査を行う義務があるとされています(第三十六条)。また、指定調査機関は業務規程を定め、環境大臣に届け出る必要があります。業務規程で定めるべき事項は、「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関及び指定支援法人に関する省令」の第十九条によって定められています(4)。
指定支援法人について(第四十四条から第五十三条)
第四十四条から第五十三条では、土壌汚染状況調査や汚染の除去等の措置を円滑にするため、汚染の除去等の措置を講ずる者に対する助成や、調査についての助言、普及啓発等の事務を行う指定支援法人に関して、指定方法や業務、基金の設置等の必要な事項が定められています。2022年6月1日現在は、公益財団法人日本環境協会が土壌汚染対策法に基づく指定支援法人に指定されており、助成金交付や照会・相談、普及・啓発などの支援業務を行っています(5)。
その他(雑則、罰則)について(第五十四条から第六十九条)
第五十四条から第六十四条では、国の援助や研究の推進、資料の提出の要求や権限の委任等に関する雑則が定められ、第六十五条から第六十九条では、同法に基づく命令や規定に違反した者に対する罰則が定められています。違反者に対する罰則の一例をあげると、第六十五条に該当する場合は一年以下の懲役または百万円以下の罰金が科せられます。
株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- (1) http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009/no_1903017.pdf
- (2) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421M60001000010
- (3) 汚染土壌の運搬に関するガイドライン
http://www.env.go.jp/water/dojo/dojogl2021_2.pdf
- 汚染土壌の処理業に関するガイドライン
2022/06/09
土壌汚染対策法の成立の背景と経緯について
土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及び、その汚染による人の健康にかかわる被害の防止に関する措置を定めること等によって、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することを目的として、平成14年5月に成立し、平成15年2月に施行された法律です。
今回の記事では、土壌汚染対策法の成立の背景・経緯や、その内容について解説いたします。
土壌汚染対策法成立の背景・経緯
土壌汚染とは、土壌が有害物質によって汚染された状態をいいます。土壌汚染には、特定有害物質を取り扱う工場の操業に伴う土壌の汚染や、地下水汚染等の人為的な原因による汚染のほか、自然由来で汚染されているものも含まれます。
土壌が有害物質により汚染されると、その汚染土壌を口や肌から直接摂取したり、有害物質を含んだ地下水を口にすること等による健康被害が生じるおそれがあります。
近年の企業の工場跡地の再開発等に伴って、特定有害物質に指定されている重金属、揮発性有機化合物等による土壌汚染の問題が顕在化し、土壌汚染による人の健康への影響の懸念や対策措置を求める社会的要請が強まったことを受けて、平成12年12月に「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」が設立され、土壌環境保全対策のために必要な制度の在り方について調査・検討が進められ、それを取りまとめ、諮問や審議、答申を経たものをもとに法案が作成され、平成14年に2月に国会へ提出され、同年5月22日に成立、5月29日に公布されました(1)。
土壌汚染対策法が施行され、実際に運用されていくうち、①法律に基づかない土壌汚染の発見の増加、②汚染土壌を掘り出す掘削除去への偏重、③汚染土壌の不適正処理等の問題が明らかとなり、それらの課題を解決するために、土壌調査のきっかけを増やし、健康リスクの考え方をきちんと理解したうえで、汚染土壌の適正処理が行われるようにすることを目的として、平成21年4月に土壌汚染対策法の改正法が成立し、平成22年4月から施行されました。
その後、同法の施行状況の見直しや検討が行われ、土壌汚染に関する適切なリスク管理を推進するため、平成29年5月19日に土壌汚染対策法の一部を改正する法律が公布され、平成30年4月、平成31年4月の二段階に分けて施行されました(2)。
土壌汚染対策法の内容
土壌汚染対策法は、土壌汚染による人々への健康被害を防止するために、土地の土壌汚染を見つけるための調査や、土壌汚染がある土地への措置や適切な管理方法について定めた法律です。
土壌汚染対策法の内容には、土壌汚染の状況を把握するための調査の対象となる土地についての規定(同法第三条から第五条)や、汚染の除去等の措置が必要な区域(要措置区域)の指定等の区域の指定等についての規定(同法第六条から第十五条)、汚染土壌の搬出や処理についての規定(第十六条から第二十八条)、指定調査機関についての規定(第二十九条から第四十三条)、指定支援法人についての規定(第四十四条から第五十三条)等が含まれています。
調査について(第三条から第五条)
土壌汚染対策法によって調査義務が生じる条件には、以下の三つがあります。法的に義務付けられているこれらの調査は、対応する土壌汚染対策法の条文によって、それぞれ①3条調査、②4条調査、③5条調査とも呼ばれます。これらの場合には、原則的に土地の所有者が、必要な届出を提出し、土壌汚染の調査を依頼し、その調査結果を都道府県知事に報告する義務を負います。
① 特定有害物質を製造、使用又は処理する施設の使用が廃止された場合(3条)
② 一定規模以上の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認める場合(4条)
③ 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合(5条)(1)
3条調査は、水質汚濁防止法第二条第二項で定義されている有害物質使用特定施設(以下、特定施設と表記)を廃止する際に、行う必要がある調査です。特定施設とは、「特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理するもの(土壌汚染対策法第三条第一項)」を指します。特定有害物質は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号で「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質」とされており、土壌汚染対策法施行令によって鉛、砒素、トリクロロエチレン等、26種類の物質が特定有害物質として指定されています(土壌汚染対策法施行令第1条)。特定有害物質は、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質、重金属等の第二種特定有害物質、農薬・PCB等の第三種特定有害物質の3種類に分類されています(4)。
3000㎡以上の土地の形質の変更をする際には、各都道府県知事への届出が必要になりますが、その際に土壌汚染のおそれがあると認められた場合には、4条調査が義務付けられます。ここでの「土地の形質の変更」とは、アスファルトの敷設・引きはがし、道路工事、抜根、土壌の仮置き、建物解体に伴う基礎土壌の掘削、整地、埋蔵文化財調査、くい打ち等を指します(5)。
5条調査は、土壌汚染対策法3条および4条の規定にはあてはまらないが、「土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合」に行われます。対象となる土地の監督行政庁が発する調査命令によって、調査の範囲、特定有害物質の種類、報告の期限が定められ、人の健康被害が生ずるのを防ぐために調査および除去等の措置がとられます。
汚染の除去等の具体的な方法については、土壌汚染対策法施行規則の別表第六および別表第七に詳しく規定されています(6)。
区域の指定等について(第六条から第十五条)
土壌汚染対策法は、国民の健康を保護するために作られた法律ですが、土壌汚染があっても、それがただちに人々の健康に影響を及ぼすわけではありません。このような観点から、土壌汚染が存在することそれ自体ではなく、汚染土壌に含まれる有害物質を人々が摂取してしまう経路(摂取経路)が存在することが問題となります。土壌汚染対策法では、土壌汚染による健康リスクは、①口や肌からの直接摂取と、②地下水等経由の摂取リスクの二つに分けて考えられており、これらの健康リスクをしっかりと管理するため、直接摂取の防止の観点から9種類の特定有害物質についての土壌含有量基準が、地下水等経由の摂取防止の観点からすべての特定有害物質についての土壌溶出量基準が設定されています(7)。
以上の健康リスクの考え方を踏まえて、土壌調査の結果、基準量を超える汚染が見つかった場合、都道府県知事等は健康被害のおそれの有無に応じて、その土地を要措置区域または形質変更時要届出区域に指定します。土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生じるおそれがあると認められる場合、その土地は要措置区域に指定されます(土壌汚染対策法第六条)。要措置区域に指定された場合、土地の所有者等は、汚染除去等計画を作成し、都道府県知事等の確認を受けたのちにその計画に従った措置を実施し、報告を行う義務が生じ(同法第七条)、また原則として土地の形質の変更は禁止されます(第九条)。
土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域であると都道府県知事等によって認められた場合には、その土地は形質変更時届出区域に指定(第十一条)され、土地の形質の変更をしようとする際に、都道府県知事等に届出を行う義務を負います(第十二条)。
なお、汚染の除去が行われた場合には、要措置区域または形質変更時要届出区域の指定は解除されます。
株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- (1) https://www.env.go.jp/water/dojo/law.html
- (2) https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/00_full.pdf
- (3) pdf (env.go.jp)
- (4) pdf (pref.kyoto.jp)
- (5) pdf (jeas.or.jp)
- (6) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414M60001000029_20210401_503M60001000003
- (7) https://www.jeas.or.jp/dojo/law/outline.html