解体工事業の許可要件について

解体業を始めるには、「建設業許可」または「解体事業者の登録」が必要です。また、工事内容によって必要な許可申請が異なるため、注意が必要です。

建設業許可の対象となる建設業の種類

建設業許可を必要とする業種は以下29種類の業種があります。

・土木工事業:総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事
・建築工事業:総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
・大工工事業:大工工事、仮枠工事、造作工事
・左官工事業:左官工事、とぎ出し工事、吹付け工事、モルタル左官工事
・とび、土工工事業:とび工事、機器・重量物の運搬配置工事、鉄骨組立て工事、掘削工事、くい打ち工事、コンクリート打設工事
・石工事業:石積み石張り工事、石材加工工事、コンクリートブロック積み張り工事
・屋根工事業:瓦屋根ふき工事、スレート屋根ふき工事、金属薄板屋根ふき工事
・電気工事業:発電設備工事、送配電線工事、変電設備工事、構内電気設備工事
・管工事業:ガス管配管工事、給排水工事、冷暖房設備工事、空気調和設備工事
・タイル・れんが・ブロック工事業:コンクリートブロック積み張り工事、レンガ積み張り工事、タイル張り工事
・鋼構造物工事業:鉄骨組立て工事、橋梁上部工事、鉄塔工事
・鉄筋工事業:鉄筋加工組立て工事、ガス圧接工事
・舗装工事業:アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事
・しゅんせつ工事業:河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事
・板金工事業:板金加工取付け工事、屋根かざり工事
・ガラス工事業:ガラス加工取付け工事
・塗装工事業:塗装工事、溶射工事、布はり仕上工事
・防水工事業:アスファルト防水工事、モルタル防水工事
・内装仕上工事業:天井仕上工事、壁はり工事、床仕上工事 たたみ工事
・機械器具設置工事業:昇降機設置工事、プラント設備工事
・熱絶縁工事業:冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事
・電気通信工事業:電気通信線路設備工事、電気通信機械設置工事、放送機械設置工事、データ通信設備工事
・造園工事業:植栽工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事
・さく井工事業:さく井工事、温泉堀さく工事、さく孔工事、揚水設備工事
・建具工事業:サッシ取付け工事、金属製建具取付け工事、木製建具取付け工事
・水道施設工事業:取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事
・消防施設工事業:屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事
・清掃施設工事業:ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事
・解体工事業:工作物解体工事、家屋解体工事

建設業許可が必要なとき

500万円以上の工事をする場合には、建設業許可が必要となりますので、500万円未満の工事であれば建設業許可は不要です。

ただし、建築一式工事(家を丸ごと一軒、ビルを一棟建てる工事や大規模な増改築工事をする業種)については建設業許可が必要な基準が500万円ではなくなります。

この500万円がどこまで含まれるかということですが、塗料や木材、エアコン、太陽光パネルなども工事金額に含まれ、かつ消費税込みとなります。また、施主や元請から材料を支給されたという場合であっても、その材料費も含め500万円となります。

建設業許可基準が例外である建築一式工事の場合は、税込1,500万円未満の請負金額になるか、または、金額に関係なく木造住宅建築で延床面積が150平米未満になるかのいずれかに該当した場合に建設業許可が不要となります。

建設業許可の種類について

建設業許可には以下の種類があります。

①国土交通大臣許可

建設業を営業する事務所が複数あって、なおかつ2以上の都道府県にまたがっている場合は、国土交通大臣許可が必要となります。しかし、営業所が複数あったとしても建設業については本店でしか営業しない、ということであれば知事許可でも問題ありません。商談や見積、契約にあたる行為が営業にあたり、それを行う場合は許可を取った営業所でしか行えませんが、建設現場に関しては日本国内のどこで行っても良いとされています。大臣許可に関しては申請受理後120日というのが処理期間として定められており、実際にはそれほどかかることは少ないですが、早くても2ヶ月~3ヶ月程見といたほうがいいです。

②知事許可

営業所が一つの都道府県内にのみある場合は知事許可となります。営業所が複数あったとしても、すべて同じ都道府県内にある場合は知事許可となります。許可取得に関しては、県によって異なりますが、申請受理後3045日程度で許可がおります。

③特定建設業許可

元請として工事を受注し、その工事のうち4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)を下請けに発注する場合に必要となります。また、特定建設業許可を得るためには、資産要件をクリアする必要があります。まず、資本金が2,000万円以上で自己資本が4,000万円以上なければなりません。会社を設立してすぐに特定建設業許可が欲しい場合は、4,000万円以上の資本金で設立しなければなりません。その他、流動比率75%以上、欠損額が資本金の20%以下という基準があります。これらの資産に関しての要件は一度クリアしたらOKというわけではなく、5年経過ごとの許可更新の際にも必ずこの条件を満たしておかなければなりません。

④一般建設業

特定建設業許可以外の場合は一般建設業となります。特定建設業許可については、元請の場合に判断されるだけなので、下請工事であればどんな工事であっても、どんな受注金額になっても、一般の建設業許可で事足りるということになります。

解体工事事業登録について

以下の建設業許可を受けている場合、登録は不要となります。

・土木工事業  ・建築工事業  ・解体工事業

上記の許可を受けていない場合は、解体工事業登録が必要となります。

解体工事業を営む方は、元請・下請の別にかかわらず登録が必要であり、解体工事を行う現場ごとの都道府県知事の登録が必要です。解体工事業の登録で請け負うことができるのは、軽微な工事(請負代金の額が500万円未満(税込み)の工事、ただし、建築一式工事にあっては、請負代金の額が1,500万円未満(税込み)の工事又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事)に該当する解体工事のみです。軽微な工事に該当しない解体工事を請け負うためには、建設業の許可が必要です。

解体工事業登録を受けるための要件

以下のいずれかに該当する技術管理者を選任していることとされています。

1.以下のいずれかの資格を有する方

①建設業法による技術検定

1級建設機械施工技士

2級建設機械施工技士(「第1種」又は「第2種」に限る)

1級土木施工管理技士

2級土木施工管理技士(「土木」に限る)

1級建築施工管理技士

2級建築施工管理技士(「建築」又は「躯体」に限る)

②建築士法による建築士

1級建築士

2級建築士

③技術士法による第二次試験

・技術士(「建設部門」)

④職業能力開発促進法による技能検定

1級とび・とび工

2級とび+解体工事実務経験1

2級とび工+解体工事実務経験1

⑤国土交通大臣の登録を受けた試験

・国土交通大臣の登録を受けた試験に合格した者

 

2.以下のいずれかの解体工事に関する実務経験を有する方

①大学、高等専門学校において土木工学等に関する学科を修了した方

実務経験2年以上、国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受講した場合の実務経験年数1年以上

②高等学校、中等教育学校において土木工学等に関する学科を修了した方

実務経験4年以上、国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受講した場合の実務経験年数3年以上

③上記以外の方

実務経験8年以上、国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受講した場合の実務経験年数7年以上

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土壌調査会社の選び方について

土壌調査とは、対象となる土地の、「土壌」「土壌ガス」「地下水」を採取・分析して、その土地に土壌汚染物質が無いか、基準値を超えていないかを調べる調査のことを言います。

『土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護する(土壌汚染対策法第1条)』として、平成15年に土壌汚染対策法は施行されました。

土壌汚染調査会社選定のポイント

①指定調査機関から選定する

環境省は土壌調査を行うにあたって調査機関を指定しています。

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染状況調査は、土地の所有者等が調査の義務を負いますが、その調査は指定調査機関に実施させなければならないこととなっています。また、土壌汚染対策法第16条第1項の調査(認定調査)も、指定調査機関が実施しなければならないこととなっています。

指定調査機関は法定調査を実施することのできる唯一の機関です。その一方で、法第36条第1項により、指定調査機関には、法定調査を求められたときに正当な理由がある場合を除き、遅滞なく法定調査を行う義務が課されています。 しかし、法定調査以外の土壌の調査を行う場合は、必ずしも指定調査機関の指定を受けている必要はありませんが、法に基づき行う詳細調査等については、指定調査機関が行うことが望ましいです。

【環境省が定める土壌汚染対策法に基づく指定調査機関】

https://www.env.go.jp/water/dojo/kikan/

②各指定機関の法律や条例対応実績の確認

土壌の汚染状況に関する調査は、試料の採取地点の選定、試料の採取方法などにより結果が大きく左右されるため、調査結果の信頼性を確保するためには、調査を行う者に一定の技術的能力等が求められます。

また、法第38条及び指定省令第20条により、指定調査機関は、技術管理者が業務規程に従って監督を行ったこと等を含む土壌汚染状況調査等の業務に関する事項を帳簿に記載し、結果を都道府県知事又は市長に報告した日から5年間保存しなければなりません。

調査機関の対応実績について確認されることをおすすめします。

③数社から調査費用の見積もりや必要な情報をもらう

土壌汚染調査は、対象地の条件や調査項目で費用が変わってきます。

初期の現地調査の場合、土壌汚染のおそれがある調査地は100㎡あたり20万円~30万円、土壌汚染のおそれが少ない調査地は900㎡あたり20万円~30万円というところが一般的です。

状況によって見積りは変わってきますので、何社か見積りと調査の内容を確認し比較検討することが望ましいです。

土壌調査が義務付けられているケース

①土壌汚染対策法第31項「有害物質使用の特定施設を廃止する時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場の中には、土壌汚染対策法で定められている特定有害物質を使用している工場もあり、特定施設の使用を廃止する際には必ず調査が必要になります。

②土壌汚染対策法第37項「調査の猶予を受けている土地の形質変更時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場で、廃止届を出して調査の猶予を受けている土地について、900m2以上土地の形質変更時、軽易な変更を除き、届出を行い調査を実施する必要があります。

③土壌汚染対策法第4条「3000㎡以上の土地の形質変更の時」

3000㎡以上の土地の形質変更で、掘削する面積+盛り土する面積≧3000㎡の場合、都道府県知事への届出が必要になります。

④土壌汚染対策法第4条3項「有害物質使用工場(稼働中)900㎡以上の土地の形質変更の時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場の中には、土壌汚染対策法で定められている特定有害物質を使用している工場については、稼働中に900㎡以上の土地の改変を行う際に、必ず調査が必要になります。

⑤土壌汚染対策法第5条「土壌汚染により健康被害が生じるおそれがある時」

都道府県から土壌汚染調査の命令がでた場合には、必ず調査が必要になります。

 

上記以外にも、都道府県によっては各条令で土壌汚染調査の範囲を広げている場合もあります。

土壌汚染による影響

①環境への影響

土壌汚染は、農作物や植物に有害物質が広まって生育を阻害したり、飲用の地下水が油膜したり、生態系への悪影響が出るといったことが考えられます。

②人体への影響

汚染された土壌の土が直接皮膚に触れたり、大気汚染された有害物質を吸い込むといったことで汚染物質を体内へ取り込んでしまう危険性があります。また、①の環境汚染にて汚染された有害物質を取り込んだ魚介類を食べたり、汚染された土壌で育てられた農作物を食べたことによる間接的な影響も大いにあります。

土壌汚染による健康被害例

①足尾鉱毒事件

足尾鉱毒事件(足尾銅山鉱毒事件)は、19世紀後半の明治時代初期から栃木県と群馬県の渡良瀬川周辺で起きた、日本で初めてとなる公害事件です。足尾銅山の開発により排煙、鉱毒ガス、鉱毒水などの有害物質が周辺環境に著しい影響をもたらし、1890年代より栃木の政治家であった田中正造が中心となり、国に問題提起するものの、加害者決定はされませんでした。

②イタイイタイ病

全国的に有名となった4大公害病として知られる「イタイイタイ病」は、富山県神通川流域で第二次世界大戦の頃から発生した公害病です。 子供を出産した女性に多く発症し、手足の骨がもろくなり、激しい痛みが伴うので、イタイイタイ病と名が付けられました。 最終的に認定された患者数は、190人となり、鉱山廃液にふくまれるカドミウムが原因であることがわかりました。 裁判結果は、会社に賠償命令及び毎年、排水と川の水質検査を義務づけられました。

土壌は、水や空気と同じように、人間を含んだ生き物が生きていく上でなくてはならないものです。地中にいる生き物が生活する場であり、土壌に含まれる水分や養分が、私たちの口にする農作物を育てています。土壌汚染とは、こういった働きを持つ土壌が人間にとって有害な物質によって汚染された状態をいいます。原因としては、工場の操業に伴い、原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまったり、有害な物質を含む液体を地下に浸み込ませてしまったりすることなどが考えられます。また、土壌汚染の中には、人間の活動に伴って生じた汚染だけでなく、自然由来で汚染されているものも含まれます。

まとめ

土壌汚染調査が必ず必要となる、法律で義務付けられているケースは、上記で述べたような「土壌調査が義務付けられているケース」で、2017年はこの法律に義務で実施されたものは全体の17%でした。

残りの84%は自主的に実施されており、大部分が自主的な調査であるということになります。自主的に調査が行われるきっかけは、土地売買が大半になります。義務調査には該当しなくとも、土壌汚染が確認されて土地価格が下がることや、風評被害を避けるために、買主もしくは借主から調査を依頼されるケースも多くなっています。特に、工場であった土地、ガソリンスタンドやクリーニング店舗など、特定有害物質を使用する可能性のある業種が営業されていた土地などで実施されることが多いです。

このように土壌調査が必要となる土地を扱う場合は、指定調査機関に相談の上で、何社か事例と見積りを取った上での調査実施をおすすめします。

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アスベスト法改正に則った事前調査

アスベスト関連の法改正により年々規制が厳しくなっています。アスベストが見落とされそのまま工事が行われるとアスベストが飛散するおそれがあり、工事関係者や周辺住民への健康被害が懸念されます。それをより一層阻止すべく直近では202141日に大気汚染防止法が改正され特定建設材料に該当する建築材料の項目に含まれる対象物が増えアスベストに関しての規制がより厳しくなり、202241日以降の工事よりアスベスト「事前調査結果の報告」が義務化されました。事前調査とは、建築物・工作物・船舶の解体・改修工事を行う際に石綿含有建材の有無について調査することを示します。書面調査、現地での目視調査、両調査においてアスベストが含有されているか明らかにならなかった場合は分析調査を行います。202310月からは「事前調査結果の報告」を行うものは資格が必要となり更に規制が増えることが分かっています。

特定建設材料に該当する建築材料

大気汚染防止法により、解体等工事の元請負業者又は自主施工者は、建築物又は工作物の解体等を行うときはあらかじめ特定建設材料の使用の有無を調査することなどが義務づけられています。特定建設材料とは、吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材、石綿含有成型板等、石綿含有仕上塗材のことを示します。

改正前は、石綿含有仕上塗材は規制対象ではありませんでしたが、改正後に追加されすべての石綿含有建材が対象になりました。(1

特定建築材料の区分

建築材料の具体例

吹付け石綿

①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、③石綿含有ひる石吹付け材、④石綿含有パーライト吹付け材

石綿を含有する断熱材

①  屋根用折板裏断熱材、②煙突用断熱材

石綿を含有する保温材

①  石綿保温材、②石綿含有けいそう土保温材、③石綿含有パーライト保温材、④石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑤石綿含有水練り保温材

石綿を含有する耐火被覆材

①  石綿含有耐火被覆板、②石綿含有けい酸カルシウム板第2

石綿を含有する仕上塗材

①  石綿含有建築用仕上塗材

石綿含有成形板等

①  石綿含有成形板、②石綿含有セメント管、③押出成形品

特定建設材料に該当する建築材料の例

www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/)より

「事前調査結果の報告」が必要な工事・事前調査の流れ

アスベスト「事前調査結果の報告」が義務化されましたが、建物等を解体し、改造し、または補修する作業を伴う建設工事の元請負業者は石綿の使用の有無を調査した結果を都道府県又は大防法政令市に報告する必要があります。

事前調査結果の報告が必要な工事は、

①建築物を解体する作業を伴う建設工事であって、当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上であるもの

②建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事であって、当該作業の請負代金の合計額が100万円以上であるもの

③工作物を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事であって、当該作業の請負代金の合計金が100万円以上であるもの

とされています。

事前調査の流れは、

  • ①書面調査→②現地での目視調査→③分析調査により行います。
①書面調査では、図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手しアスベストの有無に関する情報を読み取ります。調査対象建築物に係わる情報を理解・把握することにより調査の質を高める重要な工程です。
②現地での目視調査では、現地で内装のほか各部屋・各部位等外観からでは直接確認できない部分を含め書面調査との相違を確認します。もし書面調査との相違があった場合は、現地での目視調査の結果が優先されます。
③分析調査は、書面調査及び現地での目視調査でアスベストが使用されているか明らかにならなかった場合、同一材料ごとに代表試材を採取、分析しアスベストが使用されているか判断します。(2)ただし、アスベストが含有されているものとみなして、法令に基づく石綿飛散防止措置等を講ずる場合は、分析による調査を実施しなくても良いとされています。(3)

「事前調査結果の報告」を行うタイミング・報告義務者について

「事前調査結果の報告」は、対象となる工事の開始前にあらかじめ報告を行う必要があります。遅くとも工事に着手する前に報告する必要があります。

「事前調査結果の報告」を行う報告者は、解体・改修工事を請け負った元請事業者が行わなければなりません。

また、事前調査を行うものは元請事業者から業務を請け負った事業者が実施しても問題ありませんが、事前調査結果の報告、保存等は元請負業者が実施する必要があります。複数の事業者が工事に関わる場合も元請負業者が関係請負人の分もまとめて報告する義務があります。(3)

202310月から資格者による事前調査の義務付け

2022年現在、「事前調査結果の報告」は元請負業者等が行えますが、202310月から「事前調査結果の報告」は建物物石綿含有建材調査者などの一定要件を満たす資格者が行うことが義務付けられます。

事前調査を行うことができる者は、

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)

④令和5930日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者。

とされています。事業者が計画的に資格者の育成を行うことが出来るよう「事前調査結果の報告」義務化以降1年ほど期間があいているため、事業者はこの間に資格者を育成するのが好ましいと言えます。(4)

「事前調査結果の報告」方法・報告事項

「事前調査結果の報告」は、原則として石綿事前調査結果報告システム(www.ishiwata-houkoku.mhlw.go.jp/shinsei/)よりオンライン申請で行います。

オンライン申請でのメリットは、行政機関の開庁日や開庁時間にかかわらずいつでも報告を行えること、1回の操作で大気汚染防止法に基づく都道府県等への報告と労働基準監督署への報告を同時に行えるといった点があり、更に複数の現場の報告もまとめて行うことが出来るので活用しない手はありません。

オンライン申請を行った「事前調査結果の報告」内容は、

・事前調査結果報告(労働安全衛生法(石綿障害予防規則))

・事前調査結果報告(大気汚染防止法)

2点をExcelまたはCSV形式でダウンロードすることが出来ます。

なお、オンライン申請が使用できない等やむを得ない場合は書面での報告も可能ですが、その場合は都道府県等及び労働基準監督署にそれぞれ提出する必要があります。

その他の石綿含有建材の除去等の工事における計画届等については従来どおり、労働基準監督署及び自治体窓口にて所定の書類を提出しなければなりません。(3)

「事前調査結果の報告」事項は下記のとおりです。

・解体等工事の発注者及び元請負業者又は自主施工者の氏名又は名称及び住所、並びに法人にあってはその代表者の氏名

・解体等工事の場所

・解体等工事の名称及び概要

・解体等工事に係わる建築物等の設置の工事に着手した年月日

・解体等工事に係わる建築物等の概要

・解体工事の期間

・事前調査を終了した年月日

・解体等工事に係わる建築物等の部分における建築材料の種類

・建築物を解体する作業を伴う建設工事の場合は、当該作業の対象となる床面積の合計

・建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の場合は、当該作業の請負代金の合計

・工作物を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の場合は、当該作業の請負代金の合計

大気汚染防止法の一部改正について(アスベスト)令和341日~

www.city.funabashi.lg.jp/jigyou/haikibutsu/006/04/p089760.html)より

「事前調査結果の報告」説明書面の保管義務

石綿障害予防規則及び大気汚染防止法に基づき、事前調査の結果の記録を3年間保管する義務があります。「事前調査結果の報告」を石綿事前調査結果報告システムより申請し保存されている内容は、簡易的な情報しか保存されないため報告資料の保存義務を果たしていることには言い切れないため別途記録を保存する必要があります。(3)

「事前調査結果の報告」を行わなかった場合

「事前調査結果の報告」は法令に基づき事業者に課せられた義務となります。報告を行わず工事を行った場合、関係行政機関から法令違反の指摘・指導又は労働安全衛生法及び大気汚染防止法に基づく罰則(大気汚染防止法354項により30万円以下の罰金)が科せられる場合があります。(3)

(1)大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について | 環境省

(env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/)

(2)(石綿)事前調査結果の報告について| 環境省

(www.env.go.jp/air/asbestos/post_87.html

(3)石綿事前調査結果報告システムFAQ| 環境省

(www.ishiwata-houkoku.mhlw.go.jp/shinsei/faq)

(4)建築物等の解体等業者、事前調査を行う事業者の皆様へ(PDF) | 環境省

(env.go.jp/air/air/asbestos/index6/%E2%97%8B20210802jigyousya-chousa-kekka.pdf)

 

参考URL

石綿総合情報ポータルサイト | 厚生労働省

(ishiwata.mhlw.go.jp/)

付録Ⅰ事前調査の方法 | 環境省(PDF

(www.env.go.jp/air/asbestos/appenndix13_3-1.pdf)

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アスベスト法改正に関連する資格

2023年(令和5年)10月以降は、建築物(建築設備を含む)の解体・改修工事を行う際は、資格者等による事前調査の実施が義務付けられます。

解体工事のほか、建築物の模様替・修繕等の改修工事、建築設備の取付・取外し・修理等の工事も含まれます。

事前調査を適切に実施するため、義務づけ適用以前においても、資格者等が事前調査を行うことが望ましいですが、解体等工事を行う建築物が平成18年9月1日以後に設置の工事に着手したことが書面により明らかである場合は、資格者等による調査を行う必要はありません。

また、自主施工者である個人が、建築物の改造又は補修の作業であって、排出され、又は飛散する粉じんの量が著しく少ないもののみを伴う軽微な建設工事を施工する場合には、資格の有無に係らず自ら事前調査を行うことができます。

事前調査を行うことができる者

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)
※一戸建て等調査者は一戸建て住宅や共同住宅の住戸の内部のみ事前調査を行うことができます。

④令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者。

建築物石綿含有建材調査者は、「特定」と「一般」「戸建て」の3つの種類があります。建物の解体や改修の際に、石綿を含む建材等の有無を調査します。令和27月に石綿障害予防規則等が改正され、建築物石綿含有建材調査者が調査にあたることが義務付けられました。令和5101日より義務化が始まるため、それまでに建築物石綿含有建材調査者の資格を取得する必要があります。建築物石綿含有建材調査者になるには、講習登録規定に基づく登録講習機関で講習を受講し、かつ修了考査に合格しなければなりません。

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)とは

特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)は、一戸建ても含めた、全ての建築物、構造物を調査できます。令和27月時点では、一般と特定の業務内容に相違点はありません。ただし、法改正があった場合は、両者が明確に区分される可能性があります。なお、建築物石綿含有建材調査者講習において、平成30年に新たな規定が施行されました。旧制度の講習を受講していた場合、「特定建築物石綿含有建材調査者」とみなされます。「建築物石綿含有建材調査者コース」は講義と修了試験を含めて3日間にわたって実施されますが、「特定建築物石綿含有建材調査者コース」は講義、実地、修了試験を含めて5日間にわたって実施されます。

・講習内容:講義(11時間)、実地研修、筆記試験、口述試験

 第1講座 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識

 第2講座 石綿含有建材の建築図面調査

 第3講座 現場調査の実際と留意点

 第4講座 建築物石綿含有建材調査報告書の作成

 第5講座 成形板等の調査

・受講資格:一般調査者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)とは

一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)は、令和27月時点では、特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)と業務内容に相違点はありません。一戸建ても含めた、全ての建築物、構造物を調査できます。ただし、法改正があった場合は、両者が明確に区分される可能性があります。

・講習内容:講義(11時間)、筆記試験

 第1講座 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識

 第2講座 石綿含有建材の建築図面調査

 第3講座 現場調査の実際と留意点

 第4講座 建築物石綿含有建材調査報告書の作成

 第5講座 成形板等の調査

・石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)とは

一戸建ては文字通り、戸建て住宅の調査を専門とする資格です。また、共同住宅の住居箇所における、全ての材料の事前調査が可能です。一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)では住居箇所の調査のみにとどまり、廊下などの共用部分は対象外となります。

・講習内容:講義(7時間)、筆記試験

・受講資格:石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

登録講習機関例

◆(一社)日本環境衛生センター

◆(一社)環境科学対策センター

◆建設業労働災害防止協会

◆(一社)日本石綿講習センター

◆中央労働災害防止協会 東京安全衛生教育センター

◆中央労働災害防止協会 大阪安全衛生教育センター

◆(一社)茨城労働基準協会連合会

◆(一社)三重労働基準協会連合会

◆(公社)石川県労働基準協会連合会

◆(公社)東京労働基準協会連合会

◆(一社)企業環境リスク解決機構

◆建設業労働災害防止協会 神奈川支部

◆(株)安全教育センター

◆建設業労働災害防止協会 宮城県支部

◆建設業労働災害防止協会 新潟県支部

◆建設業労働災害防止協会 長野県支部

◆建設業労働災害防止協会 愛知県支部

◆建設業労働災害防止協会 千葉県支部

◆(公社)岩手労働基準協会

※講習の詳細や最新の登録講習機関情報は、厚生労働省のウェブサイトからご確認ください。

【登録教習機関一覧(都道府県別)】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei05.html

アスベスト事前調査の必要性について

アスベストは、天然に存在する繊維状の鉱物です。石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれます。熱や摩擦等に強く、安価であることから、建設資材の他にも、私たちの身近なさまざまな工業製品に使われてきました。特に断熱目的やむき出しの鉄骨に直接吹き付けられたものは、非常に危険性が高くなっています。発じんの危険があるため、速やかに除去などの対策を講じなければいけません。昔はアスベストは断熱用として使われていたことが多く、天井に直接吹き付けられたりしました。そのため、古い建物ほど危険性が高く、作業の際には防護服や手袋などの装備も必須になっています。これらは飛散する可能性も残されているため、呼吸器系へ障害を起こす危険も高くなっています。空気中に浮遊するアスベスト繊維を吸入すると、肺がんや中皮腫などの重篤な疾患が発症するおそれがあるため、現在では製造や使用等が禁止されています。

しかし、アスベスト禁止以前に建築物に使用されている吹付けアスベスト等は、経年劣化や損傷などにより飛散し、建物の利用者の健康障害につながるおそれがあります。早めに飛散防止対策をしないと、建物の利用者が飛散したアスベストにばく露する可能性があります。また、アスベストを使用した建築物を解体したり、リフォームする際にも、そのアスベストが飛散するリスクが高くあります。そのため、アスベストを使用した建築物を取り扱う際は、事前にアスベスト使用箇所を書面や関係者から聞き取り、実際に書面等では確認できない箇所を目視で確認する必要があるのです。

事前調査は、解体等工事や石綿除去工事などの一連の工程における石綿の飛散及びばく露を最小化することを目的に行うものであり、事前調査中に石綿が大気中に飛散することや労働者が石綿にばく露することがあれば本末転倒です。そのため、事前調査では、石綿を含有する可能性がある粉じんを飛散させないこと、調査者等の粉じん吸入を防ぐことが必要となります。私たちの健康被害を最小限に抑えるためにも、事前確認及び、それに関わる調査者に資格保有を義務付ける必要があると言えます。

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