土壌調査分析方法について

環境問題への意識の高まり

土壌汚染対策法が2003年(平成15)に施行されてから、土壌汚染に対する意識は年々高まってきました。昨今のSDG’s(持続可能な17の目標)のように社会が環境問題に配慮するのが一般的になりつつあります。土壌汚染が見つかった、というだけで個人や企業は神経を尖らせるものです。イメージの悪化を恐れているのでしょうか。

ここでは土壌調査が必要になった時にどのような土壌分析法があるのかに触れていきます。

調査が必要になる時

では、それはいつ、いかなる時なのでしょうか。

① 土壌汚染対策法・自治体の条例等に基づく場合

同法第3条(有害物質使用特定施設の使用が廃止されたとき)、同第4条(一定規模の土地の形質の変更時の届出の際に土壌汚染のおそれがあると都道県知事が認めるとき)、同第5条(土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めるとき)

② 不動産の取引や資産価値の評価に伴う調査

不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)において、土地の売買や不動産取引を行う際に資産価値の評価に影響を及ぼすために行う

③ 自治体の条例等に伴う調査

全国の自治体がそれぞれ条例等によって独自に規制を設けていることから、調査を求められるケースがある

④ サイトアセスメント(ISO14015)に従って行う自主調査

工場跡地を買収したい、売却したい、あるいは工場の建替えをしたいといった場合に、土地の環境的な問題を確認するために行います。 ※ISO14015は土壌汚染に関する国際規格のこと

一般の個人の方は②が重要でしょうか。不動産取引は動くお金が大きい割には、一個人が常時取引に携わっているわけではないでしょう。環境省の指定調査機関に委任するのが適切と言えます。

土壌分析とは

土壌の分析はまずサンプリング(採取)することから始まります。既存の試料、有害物質の使用状況から汚染の可能性を探り、調査の必要性を検討します。ちなみに汚染のおそれがなければ試料の採取は行いません。

・汚染の恐れがある土地

① 10メートルメッシュ毎(100㎡)につき1箇所採取
② 第一種特定有害物質 土壌ガスは1メートルの穴を空けて採取します
③ 第二種特定有害物質 土壌の表層から50センチ掘ります。 表層から5センチまでの土壌と5センチから50センチまでの土壌を採取して、同じ量に分けます。

・汚染の恐れが少ない土地

① 30メートルメッシュ毎(900㎡)に採取します

サンプリングで汚染の疑いがあれば調査の段階へ進みます。

土壌分析の流れ

【風乾】

サンプリングの結果、汚染の疑いがある場合、指定調査機関に検体が届くと、大きな土塊は必要に応じて細かく砕き、均一に広げて常温の環境下で自然乾燥させます。水分が少なくなるほど正確な値に近づきます。揮発性有機塩素化合物(大気中で気体状となるもの、トルエン、キシレンなど)の検体は風乾せずに検液を作成します。

【ふるい分け】

石などを砕かないように、木片が混入しないように丁寧に取り扱います。 2㎜以下の試料のみを分析対象とします。

【抽出】

試料に対して溶媒(pHを調整した純水)を10の割合で混合して約6時間震盪(しんとう)します。

【ろ過】

前処理最後の工程。遠心分離機で懸濁液や沈殿物と上澄み液とに分けます。さらに上澄み液をろ過して分析検液とします。

以上が前処理工程です。

ここからは、本題の土壌調査分析方法について。分析方法は多岐にわたります。

土壌汚染対策法に基づく分析

① 土壌含有量調査に係る場合(平成十五年環境省告示十九号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第四項第二号の規定に基づく

A. 各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物など)について作成した検液ごとに、環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。

B. 次に同HPに定めている方法(土壌採取→試料の作成→検液の作成)で作成した試料の重量とこれを摂氏105度で約4時間乾燥して得たものの重量とを比べて当該試料に含まれる水分量を測定する。

C. Aにより測定された調査対象物質の量を当該乾燥して得たもの○キログラムに含まれる量に換算します。

② 土壌溶出量調査に係る場合(平成15年環境省告示18号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第三項第四号の規定に基づく

A.各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シマジンなど)について、平成三年八月か環境庁告示第四十六号(土壌の汚染に係る環境基準について)付表に掲げる方法で作成した検液ごとに環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。

③ 土壌ガス調査に係る場合(平成15年環境省告示16号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第二項第一号及び第二号の規定に基づく

土壌中の気体または地下水の採取の方法及び上述の第二号に規定する、気体に含まれる調査対象物質の量を測定する。

A.地表からおおむね80〜100cmの地中において土壌ガスを採取し、第一種特定有害物質の量を測定する。

B.土壌ガス中に一定濃度以上の第一種特定有害物質が検出された場合には、土壌汚染が存在する恐れが最も多いと認められる地点において、深さ10mまでの土壌をボーリングにより採取し、土壌溶出量を測定するという追加調査の実施が必要となる(同施行規則第7条)。

土壌環境基準に基づく分析

① 土壌の汚染に係る環境基準の分析(平成3年環境庁告示46号)

令和3年4月1日施行で環境基準の見直しが行われ、カドミウム、トリクロロエチレンを改正(令和2年4月環境省告示第44号)。

農用地土壌汚染法に基づく分析

① 農用地の土壌汚染防止等に関する分析

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(以下、「農用地土壌汚染防止法」)は、農用地の土壌に含まれる特定有害物質により、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止することを目的として制定されたものであり、現在、特定有害物質としてカドミウム、銅及びヒ素が規定されています。

同法は、都道府県知事が、農用地土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の量が一定の要件(以下、「指定要件」といいます。)に該当する地域を「農用地土壌汚染対策地域」として指定した上で、「農用地土壌汚染対策計画」を策定し、かんがい排水施設の新設や客土等、汚染農用地を復元するための対策を講じることを規定しています。

油汚染対策ガイドラインに基づく分析

① 油臭・油膜について

油、特に石油は“産業の米”といわれる、ヒトが生活してうえで必要不可欠なものです。その油が井戸水に混じっているとか、近隣で匂いがするとか、我々は敏感に感じます。

同ガイドラインでは、鉱油類を含む土壌に起因して、その土壌が存在する土地の地表、 あるいはその土地にある井戸の水や池・水路等の水に油臭や油膜が生じているとき に、土地の所有者等が、その土地においてどのような調査や対策を行えばよいか、などについて、基本的な考え方と、取り得る方策を選択する際の考え方などを取りまとめています。

油臭や油膜の感じ方に影響する土地の利用方法、鉱油類を含む土壌が存在する土地における井戸水等の利用状況、周辺の土地や井戸水等への影響のおそれなどの現場ごとの状況に応じた対応方策の検討に活用できるようです。

② 全石油系炭化水素(TPH)による分析

THPとはTotal Petroleum Hydrocarbonの略です。このGC–FID(水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ)法によるTPH試験が油汚染土壌や地下水の状況を正確に調査します。

残土に関する条例・受け入れ適合基準に基づく分析

建物の建設時や工事等の時に残土(建設発生残土)が発生しますが、その残土は自治体等の所定の受け入れ地に搬出しなければなりません。受け入れ地によりそれぞれ分析項目や基準等が異なります。

最後に、特定有害物質は大きく3つに分類されます。それぞれの調査方法は以下の通りです。

第1種特定有害物質:揮発性有機化合物→土壌溶出量調査、土壌ガス調査

第2種特定有害物質:重金属等→土壌含有量調査、土壌溶出量調査

第3種特定有害物質:農薬等→土壌含有量調査

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土壌調査方法(ボーリング調査)について

土壌調査とは

土壌調査は、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第3条第1項(※1)に準じて環境大臣が指定した指定調査機関(約1500機関)に調査させることが望ましいです。原則として使用しなくなった有害物質使用特定施設に係る「工場又は事業場の敷地であった土地の全ての区域」がそれにあたります。他にも同法第4条(※2)にある、上記の土地の所有者等に対し、「移転や廃業に伴う操業の有無にかかわらず健康被害が生ずる恐れがあるとして都道府県知事から調査命令が発せられた場合」も調査の対象となります。
大気、公共用水域及び地下水等への汚染が認められる場合等必要と認められる場合も同様に対象となります。

土壌調査には様々な方法があります。

1フェーズ

既存資料等調査(地歴調査とも言います)は過去の土地利用履歴を各種資料から調べて、汚染の可能性を探ります。

第2フェーズ

概況調査は第1フェーズで汚染の可能性があった場合に行います。
①表層土壌調査は表層土壌調査で表層ガスも調べます。
②ボーリング調査(以下に記します)。
③地下水調査は地下水への汚染状況を調べます。

ここからはボーリング調査について触れていきます。

ボーリングとは穴を開けるという意味の「bore」からきています。進行形を示す-ingというご単語が付いて「boring」となりました。ですがboringの正式な意味は形容詞として「退屈な〜、うんざりするような〜」ですが、「穴をあける」というボーリングを意味するときは名詞として使います。

ボーリング調査とは

ボーリング調査とは、一般的に建物や構造物などの支持基盤の深度と強度の確認をするために行われますが、土壌汚染対策法においては、地質調査の基本となる重要なものです。地盤に細い孔を深く開けて、採取した土や岩盤の試料を調べて、その状況を把握することで、有害物質の有無を調べます。

例えば、土壌汚染調査をせずに売買契約が成立した後、買主が自ら土壌調査を行い、有害物質が見つかった場合、売主には瑕疵責任が問われます。損害賠償請求を起こされたり、契約が無効になったり、会社としての信用を無くしてしまうことになりかねません。

「有害物質使用特定施設の廃止時」「3000㎡以上の土地の形質変更時」などは土壌汚染調査が義務付けられています(義務調査)が、買主は住民の健康リスクへの不安を解消しなければなりません。そのためには自主調査をする必要があります。信用信頼を築くのは長い年月がかかりますが、失うのは一瞬です。念には念を入れる必要があるのです。

土壌調査の流れ

土壌調査の第一段階は「資料等調査」です。過去から現在までの土地の利用状況や土地の特性を調べます。この調査では該当する土地の過去の利用履歴、特定有害物質の使用等の状況、古い地図、行政に残されている資料類、さらには現地視察などにより土壌汚染の可能性を見極めるものです。

特定有害物質は大きく3つに分類されます。

・第一種特定有害物質(12項目)揮発性有機化合物等→土壌ガス調査
・第二種特定有害物質(9項目)重金属等→土壌溶出量調査、土壌含有量調査
・第三種特定有害物質(5項目)農薬等→土壌溶出量調査

調査の手順は、自主的な調査の場合でも土壌汚染対策法施行規則(平成14年)で定められた方法に準拠することが一般的となっています。
第一段階(既存資料等調査)で疑わしい場合は、第二段階として上記の「概況調査」を行います。
通常「資料等調査」は3週間程度かかり、リスクがあれば「概況調査」へと移ります。その調査には「土壌ガス調査」と「表層土壌調査」があります。

「土壌ガス調査」は単位区画ごとにガスを採取して分析します。通常12か月を要します。

「表層土壌調査」は単位区画ごとに表層土壌を採取して分析をします。こちらはも1〜2か月程度かかります。
「表層土壌調査」での結果に関わらず、下層の土壌に汚染のおそれがあれば、ボーリング調査を行うことになります。

ボーリング調査の特徴

ボーリング調査は汚染土壌処理対策のデータとするために対象地域全域において状況に応じて実施します。ここでボーリング調査の種類を記しておきます。

[標準貫入試験][孔内載荷試験][現場透水試験][揚水試験][PS検層・密度検層][物理探査・検層][不撹乱試料採取][オールコアボーリング][地盤改良の効果確認]

以上ですが、土壌調査で最もポピュラーな方法は[標準貫入試験]です。
その特徴はあらゆる地層において掘削が可能であり、土質試料の採取ができる調査です。地下水位の確認も可能です。

一般にボーリング調査と呼ばれる方法は、正式には「ボーリング・標準貫入試験」と言います。ボーリングによって掘削した孔を利用して、1メートルごとの地盤の硬さを測定します。と同時に土のサンプリングも行います。

この試験によって得られるデータをN値と呼び、地盤の安定性を推定する目安になります。N値とは、63.kgのおもりを76cmの高さから落下させて、先端に取り付けたサンプラーを土中に30cm貫入させるのに要する回数の測定値のことです。
標準貫入試験で何が得られるものは

N値 ②土の密度 ③地盤の種類 ④地盤の液状化の度合い ⑤地盤の弾性係数

以上です。

ポピュラーな標準貫入試験

標準貫入試験がなぜポピュラーなのか。それは世界の多くの国で基準化されており、結果の比較が容易にできるためです。他にも長所があります。N値の利用分野が建築や土木において地盤や杭の支持力、各種計算の土着定数を推定するのに便利なのが理由です。標準の地盤指数といえます。実際の試験方法には細かな規定がJIS(日本産業規格)で決められていますので、そちらを参照してください。

逆にマイナス点は、広い調査スペースが必要であり、試験が数日間に及び、コストパフォーマンスが低いことなどが挙げられます。

ボーリング掘削方法

次に代表的なボーリングの掘削方法を以下に列挙します。

①一般のボーリング機器によるボーリング(ロータリー式ボーリング)

先端に取り付けたビットに機械的な回転と圧力を加えて地層を掘削する方法です。土壌の測定、地層の把握及び土壌試料の採取をする際に適しています。やぐらを設置しますので、高さがない室内での調査には不向きです。

②標準貫入式ボーリング

油圧ハンマーの打撃貫入によりサンプラーを地盤に挿入して、土壌試料を採取する方法です。最も一般的な方法です。

③機械式簡易ボーリング

仮設足場が不要なのでコストパフォーマンスに優れています。深度35メートルならば掘削完了まで1日で済みます。

④孔内水平載荷試験

地震発生の際の液状化現象や地面の強さを計測する方法です。

土壌汚染調査市場のいま

一般社団法人土壌環境センター が令和2年度における土壌汚染調査・対策事業の受注件数、受注高等を取りまとめたところ、前年度に比べ受注件数は6,773件と753件減少し、受注額も687億円と47億円減少しています(対象企業数100社うち回答企業数:82社、受注実績がある企業67社、受注件数は6,773件、受注高は687億円)。

平成20年度の土壌汚染状況調査・対策受注実績は11,591件もあったことを思うと、環境に対する企業や個人の意識が変わっていることが数字にも表れています。

《まとめ》

土地の売買において互いの信頼関係が重要なのはいうまでもありません。ビジネスの根本は正にそこにあるからです。特に土壌汚染の疑いが考えられる時は、万全を期して調査を行うべきであり、疑念なく取引ができるまで究明するべきです。その際、ボーリング調査を行っている会社は多様であり、状況に応じて調査を行うことが肝要であります。

1 土壌汚染対策法第三条 使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設(第三項において単に「特定施設」という。)であって、同条第二項第一号に規定する物質(特定有害物質であるものに限る。)をその施設において製造し、使用し、又は処理するものをいう。以下同じ。)に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)であって、当該有害物質使用特定施設を設置していたもの又は第三項の規定により都道府県知事から通知を受けたものは、環境省令で定めるところにより、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、環境大臣又は都道府県知事が指定する者に環境省令で定める方法により調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。
同第四条 土地の形質の変更であって、その対象となる土地の面積が環境省令で定める規模以上のものをしようとする者は、当該土地の形質の変更に着手する日の三十日前までに、環境省令で定めるところにより、当該土地の形質の変更の場所及び着手予定日その他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
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解体費用の相場について

アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要なので、通常の解体作業と比較すると高額になります。
結論から述べると、アスベストの解体費用の相場は処理面積によってやや異なりますが、300㎡以下の相場は2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡と言われています。

アスベストとは

石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。

アスベストの危険性

アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。

また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

アスベストのレベルについて

そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。

アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む    建材を指します。

アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

アスベストの解体について

アスベストの解体工事には以下の手順が必要となります。

1.事前調査 2.除去作業準備 3.除去作業 4.事後作業

義務化された解体工事前のアスベスト調査や必要な事前準備作業があるので、そちらを遵守し、解体作業者および近隣の方々の健康に配慮し、作業計画、作業実行、事後処理を行いましょう。

アスベストの解体費用の相場は以下です。

アスベスト処理面積

解体費用相場

300㎡以下           

2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡

300㎡~1000㎡    

1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡

1000㎡以下         

1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡

上野表を見ると、1㎡あたりに価格幅があるのがわかります。アスベストは発じん性によってレベル分けがされています。

アスベストレベルは1~3まであり、アスベストレベル1が最も危険性が高いです。

アスベストレベル1解体費用相場

アスベストレベル1の解体費用相場は1.5万円~8.5万円です。アスベストレベル1は最も発じん性が高く、建物の柱や梁、天井に石綿とセメントの合剤の「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられていることが多く、アスベスト濃度と飛散性の両方が高いので非常に注意が必要です。「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられているため、処理免責が広くなる傾向にあるため、除去の作業費用は高額になりやすいです。

アスベストレベル1の除去作業には3つの工法があります。

①除去工法

アスベスト含有吹き付け材を下地から取り除いていく工法を除去工法と呼びます。

専用の機材を使用して除去していくため、費用は高額になるケースが多いです。

②封じ込め工法

既存のアスベスト含有吹き付け材の上から溶剤を吹きかけることで外側からアスベストが飛散しないように封じ込める工法を封じ込め工法と言います。

除去工法と比較すると、もともとあったアスベストが残ってしまう点が難点で、建物自体を解体する時にアスベストを除去しなければなりません。

③囲い込み工法

アスベスト層部分を板材などのアスベストではない素材のものを取り付けて、完全に覆うことによりアスベストを密封することでアスベストの飛散を防ぐ方法を「囲い込み工法」と呼びます。

「囲い込み工法」も「封じ込め工法」と同様にもともとあったアスベストが残ってしまうのが難点です。

先述した通り、「封じ込め工法」と「囲い込み工法」は既存のアスベストが残ってしまいますが、どちらも以下のメリットがあります。

・費用が比較的安い

・工事期間が短い

・アスベストが飛散を抑えられる

補助金について

アスベストレベル1に該当する解体作業には補助金が支給される場合があります。

民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して、国で補助金制度を設けており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されます。しかしながら、補助制度を導入していない地方公共団体もあるので、補助金制度に関しては近くの地方公共団体に確認が必要です。

補助金の概要

①補助事業の内容:建築物の吹付けアスベスト等1)のアスベスト除去、または囲い込み、封じ込め

②対象建築物:吹付けアスベスト等1)が施工されている建築物

③対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)

④補助率: 2/3以内(ただし地方公共団体の補助額を超えない範囲)

注1)アスベスト除去等で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。

参考:”アスベスト対策Q&A - “,”国土交通省”https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q&A/index.html#a43

アスベストレベル2の解体費用相場

アスベストレベル2の解体費用は、1㎡あたり1万円~6万円が目安です。アスベストレベル2の取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。

アスベストレベル2も飛散性とアスベスト濃度が高く、解体工事には注意が必要です。

アスベストレベル3の解体費用相場

アスベストレベル3の解体費用の目安は0.3万円/㎡です。アスベストレベル3の解体作業はアスベストレベル1や2と比較するとアスベストの飛散リスクが低いため、解体費用は低くなります。

一般的な住宅もアスベストレベル3に相当する可能性があるので、住宅を例に挙げると30坪二階建ての建物の場合、屋根にアスベストが使用されていた場合は解体費用がおおよそ20万円です。同じく30坪二階建ての建物で外壁にアスベストが使用されていた場合は、解体費用がおおよそ30万円~40万円となります。

 

その他、内壁や配管にスベスト含有建材が貼り付けられている場合は、1㎡あたり1万円~6万円程度の除去費用がかかり、天井や梁、柱などにアスベストが吹き付けられている場合は、撤去に1㎡あたり1.5万円~8.5万円程度かかります。

アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です

アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。

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アスベストレベル3の基準や危険性について

石綿(アスベスト)とは、天然の繊維性けい酸塩鉱物で、日本語では「いしわた」「せきめん」と言われ、英語では「アスベスト」と言いわれています。
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。この記事では、アスベストレベルの違いと必要な対処に関して解説していきます。

アスベストとその危険性に関して

アスベストは天然の繊維状珪酸塩鉱物の一種で先述した通り、アスベストは耐熱性・絶縁性・保温性に優れていることから、、防音材、断熱材、保温材などの建材として多く使用されてきました。

しかしながら、1970年代にアスベストの健康への被害が報告されるようになりました。

アスベストがそこにあることで、直ちに大きな問題を引き起こすというわけではありません。しかし、肉眼では見ることができない程繊維が細かいため飛散しやすく、人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。

アスベストが原因で発病する恐れのある病気とは?

WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

1.中皮腫

中皮腫は、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜、精巣鞘膜にできる悪性の腫瘍です。発症頻度は胸膜原発のものが最も多く全中皮腫の 90%前後にまで昇ります。若い時期にアスベストを吸い込んだ人の方が悪性中皮腫なりやすいことが知られており、潜伏期間は20年~50年と言われています。

2.アスベスト肺

アスベスト肺とは、アスベストを大量に吸い込んでしまうことにより、肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一種です。肺の線維化が徐々に進行し、酸素-炭酸ガスの交換を行う機能が損なわれるため、呼吸困難が生じます。肺の線維化を起こすものとしては石綿以外の鉱物性粉じんをはじめ様々な原因や原因不明も多くあります。アスベストを大量に吸引せざるを得ない職業、例えば石綿鉱山、石綿製品製造工場、断熱作業など、アスベストが原因となって引き起こされた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しています。潜伏期間は15~20年といわれております。アスベスト曝露をやめたあとでも進行することもあります。

3.肺がん(原発性肺がん)

原発性肺がんは気管支あるいは肺胞を覆う上皮に発生する悪性の腫瘍です。中皮腫と異なり、喫煙をはじめとして石綿以外の多くの原因でも発生します。肺がんは肺細胞の遺伝子にに傷が付くことで発生すると言われており、先述した通り、喫煙、遺伝、環境汚染なども発病の原因となる可能性があります。

しかしながら、アスベストの吸引量が多く、その濃度が高い程肺がんになるリスクは高いことがわかっています。潜伏期間は30~40年程と他のアスベストから引き起こされる可能性がある病気よりも長くなっています。

 

アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていますが、どの程度以上のアスベストを、どのくらいの期間吸い込めば、発症に至のかということは今だ不明な点が多いです。

1975年に取り扱いが規制されたアスベストですが、2006年に含有量0.1%を超えるアスベストを含む製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。つまり2006年以前に建てられた建造物にはアスベストが含まれている可能性があります。アスベスト使用の可能性がある建物の解体のピークは2028年頃になると言われています。アスベストの解体作業ではアスベストの飛散が想定されます。そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。次のパートではアスベストのレベルについて説明していきます。

アスベストのレベルについて

アスベストのレベルは先述した通り、「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」によって分けられています。アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

アスベストの危険性に関しては以下のようにレベル分けされています。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。建物の機械室、ボイラー室等の天井、壁に、石綿とセメントの合剤を吹き付けて所定の被膜を形成させ、吸音、結露防止(断熱用)として使われていることが多いです。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。ボイラーの本体やその配管、空調のダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けているなどの使用例があります。

これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む    建材を指します。使用例としては建築物の天井、壁、床などに石綿含有成形板、ビニール床タイル等の貼り付けなどが挙げられます。アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

ここからはアスベストレベル3における必要な対処や作業について説明していきます。

アスベストレベル3の解体工事について

アスベストレベル3の解体工事は以下の手順で行われます。

1.事前調査 2.除去作業準備 3.除去作業 4.事後作業

2022年4月1日の法改正により解体工事の際のアスベスト調査が義務化されました。従来はアスベストが含まれていることを前提に、必要な対策を行い解体工事を実施すれば事前調査は不要でした。しかし、2022年4月より事前調査が実質義務化されました。この法改正以降ではアスベスト含有建材の有無に関わらず事前調査の結果を都道府県に報告することが義務化されました。

ただし、以下の条件下の場合は除外されます。

建築物の解体:対象の床面積の合計が80㎡未満
建築物の改造・補修、工作物の解体・改造・補修: 請負金額の合計が100万円未満
※請負金額には事前調査の費用は含まず、消費税は含む。

では①の事前調査から詳細を説明していきます。

事前調査とは、工事前に建築物等に使用されている建材のアスベスト含有の有無を調査することをいいます。調査はアスベスト含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。

事前調査では「書面調査」と「現地調査」を行う必要があります。

それぞれ費用は「書面調査」が2万円~3万円、「現場調査」が2万円~5万円(どちらも1現場あたり)です。

「図面調査」は図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、アスベストの使用の有無に関係する情報を読み取ります。

「現地調査」は建物の実地検査を指します。アスベスト含有建材が使用されている可能性が比較的高いとされている天井、壁、柱等を中心に全体を目視により検査します。

 

事前準備作業

事前準備作業は以下の作業を実施する必要があります。

 

事前準備作業

 

(1)作業計画書等の作成   

石綿作業主任者の選任

作業の方法や順序

(2)必要機材・設備の準備              

除去作業に必要な器具の準備

保護具の準備

休憩場所・更衣施設・洗面設備の設置

(3)解体処理工事実施の表示        

 

 

各種掲示の設置

立ち入り禁止区域の設定

周辺環境対策

 

除去作業準備

解体作業前に、以下を準備する必要があります。

除去作業準備

 

(1)養生の実施

床、壁、設備機器への養生

(2)仮設工事の実施

足場等安全設備の設置

(3)設備機器等撤去作業

作業場内の事前清掃の実施

除去の妨げになる、照明器具等を撤去

 

除去作業

実際の除去作業に関しては、以下のことに注意し、作業を実施します。

除去作業

 

(1)アスベスト成形板の湿潤化

浸透しやすい材料(けい酸カルシウム板、岩綿吸音板等)は水又は湿潤剤の噴霧

浸透しにくい材料(Pタイル、スレート板等)は散水しながら除去

 

(2)アスベスト成形板の除去        

 

保護具を着用し原形のままの手ばらしが原則

手ばらしにより除去した成形板は手渡しで運搬

 

事後作業

事後の作業は以下の作業を実施する必要があります。

事後作業

 

(1)施工区画内の清掃       

 

毎日の作業終了時、整理整頓、清掃を実施

清掃中は保護具を着用

(2)養生・仮設物等の撤去

 

床、壁、設備機器への養生撤去

足場等の撤去

(3)除去した建材の搬出   

 

 

安定型最終処分場で埋立処分

マニフェストに「石綿含有産業廃棄物」と記載

(4)後片付け、仕上清掃   

 

 

破片やくずが残らないよう清掃

HEPAフィルタ付き真空掃除機で仕上清掃

 

 

アスベストレベル3の除去解体費用の目安

 

アスベストレベル3の工事費用の目安は、3,000円(税別)/㎡(アスベスト処分費込)となります。

アスベスト解体工事の費用の相場に関しては別記事にてご紹介しているのでぜひご参照ください。

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