アスベストレベル1の除去費用について

アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要なので、通常の解体作業と比較すると高額になります。アスベストの解体費用の相場は処理面積によってやや異なりますが、300㎡以下の相場は2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡と言われています。また、解体工事を行う際はアスベストが含有しているか同化の調査も必要となります。本記事ではアスベストレベル1の解体費用、調査費用について解説していきます。

アスベストとは

石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。

アスベストの危険性

アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

上記のことからアスベストの取り扱いは非常に危険であるため、調査や解体・処理は「石綿作業主任者の選任」、「労働者全員に石綿特別教育を実施」、「特別管理産業廃棄物管理責任者の設置」が必要です。

アスベスト調査とは?

解体予定の建物にアスベストが含まれているかどうかの調査を意味します。アスベストが含まれた建物をそのまま解体してしまうと、作業者や近隣住民に重大な健康被害をもたらす可能性があるため、解体前にしっかりとアスベストの有無を調査した上でアスベストが含まれていた場合は慎重に除去作業を行う必要があります。

アスベスト調査内容と費用相場

アスベスト調査の金額相場は?

アスベスト調査にかかる金額は「図面調査」「目視調査」「分析調査」含めおおよそ70,000円~130,000円が相場です。アスベストレベル (詳しくは後述) や建物の広さ、サンプルの採取の有無、分析検査の有無などによって費用が大きく変わりますので、あくまでも大まかな目安としての金額です。

アスベスト調査における費用の内訳としては、主に以下のものがあります。

・事前調査費用
・分析調査費用
・サンプル採取費用

上記の費用のほかに、調査報告書の作成費用がかかる場合があります。事前調査費用には、図面調査と現地調査の費用が含まれます。図面調査とは、建築された当時の図面を参考にしながら、建材にアスベストが含まれているどうかを調べることです。また、現地調査とは、図面調査の結果を元にして建物の外観や内部を目視で調査することを指します。目視で確認できない場合は分析調査を行います。分析調査費には定性分析と定量分析の費用が含まれます。定性分析とは、建材にアスベストが含まれているかどうかを分析する方法であり、定量分析とは建材にアスベストがどのくらい含まれているかを調べる方法です。そのため、定性分析でアスベストが含まれていることが判明した場合に定量分析を行います。定量分析はX線を利用して行いますが、より正確な分析を行うために建材から試料を採取して分析を行う場合があります。サンプルとしての試料を採取する場合は別途費用がかかります。自治体によってはアスベスト調査に関する補助も行っている場合があるので、必要に応じて利用するとよいです。

アスベスト調査の補助金について

アスベスト調査を行う際の補助金についても少々触れておきます。

民間の建築物のアスベスト調査などに関して、国土交通省は補助制度を設けており、それぞれの自治体によって補助制度は異なります。補助制度がある地方公共団体は活用することが可能です。

国が示している支給条件は以下のようになります。

・補助事業の対象:建築物の吹付け材のアスベスト含有の有無に関する調査
・対象建築物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトが使用されている可能性がある建築物
・補助額:限度額は原則として25万円/棟

※ 補助制度がない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

アスベスト除去ついて

アスベストには大きく分けて、レベル1から3までの分類があります。どの分類に該当するのかによって除去費用が変わるので、事前に確認しておきましょう。レベルの分類は、どの程度の「発じん性」があるかによって判断されることになります。発じん性とは、どれくらい粉じんが発生しやすいかを指しています。

アスベストのレベルについて

そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。

アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む建材を指します。アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがあるので注意が必要です。

アスベストレベル1解体費用相場

アスベストレベル1の解体費用相場は1.5万円~8.5万円です。アスベストレベル1は最も発じん性が高く、建物の柱や梁、天井に石綿とセメントの合剤の「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられていることが多く、アスベスト濃度と飛散性の両方が高いので非常に注意が必要です。「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられているため、処理免責が広くなる傾向にあるため、除去の作業費用は高額になりやすいです。

アスベストレベル1の除去作業には3つの工法があります。

①除去工法

アスベスト含有吹き付け材を下地から取り除いていく工法を除去工法と呼びます。専用の機材を使用して除去していくため、費用は高額になるケースが多いです。

②封じ込め工法

既存のアスベスト含有吹き付け材の上から溶剤を吹きかけることで外側からアスベストが飛散しないように封じ込める工法を封じ込め工法と言います。除去工法と比較すると、もともとあったアスベストが残ってしまう点が難点で、建物自体を解体する時にアスベストを除去しなければなりません。

③囲い込み工法

アスベスト層部分を板材などのアスベストではない素材のものを取り付けて、完全に覆うことによりアスベストを密封することでアスベストの飛散を防ぐ方法を「囲い込み工法」と呼びます。「囲い込み工法」も「封じ込め工法」と同様にもともとあったアスベストが残ってしまうのが難点です。

アスベストレベル1の解体作業の補助金について

アスベストレベル1に該当する解体作業には補助金が支給される場合があります。民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して、国で補助金制度を設けており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されます。しかしながら、補助制度を導入していない地方公共団体もあるので、補助金制度に関しては近くの地方公共団体に確認が必要です。

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建築解体における産業廃棄物の処理について

産業廃棄物とは

解体工事によってできる産業廃棄物といっても様々なものが出てきます。業者に任せているので、直接目にすることは少ないですが、知っておいてもいいものなので詳しく紹介します。

一般に産業廃棄物とは以下のように定義されています。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月25日法律第137号)です。ちょっと古い昭和にできた法律ですが、令和の今でも効力を保っているのです。

「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」(第2条第4項第1号)および「輸入された廃棄物」(同第2号)とされており、産業廃棄物以外のものが一般廃棄物とされています。

付け加えると「放射性物質及びこれによって汚染自分されたものを除く」とあります。

ここで、一般廃棄物とは何かについても触れておきます。産業廃棄物以外が一般廃棄物と言われても、きっちり分けられないのではないでしょうか。法律上では「一般廃棄物」と「特別管理一般廃棄物」に大別されます。聞きなれない後者は「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの」です(同法第2条第3項)。簡単にいえば、一般廃棄物とは、人間がし生活する際に発生する廃棄物のことです。爆発性が生ずるものも元はと言えば、人間が作り出したものです。

解体業者=排出事業者

廃棄物の排出事業者は解体業者

普通、排出事業者というと、家庭に当てはめるとゴミを出した住人を指します。これが解体工事の場合、施主(解体を依頼した法人や個人)が排出事業者ではありません。こう書くと「??」と疑問を抱くでしょう。住人が出したゴミに廃棄物が含まれていたのに、そのゴミを収集した業者が排出事業者となるのです。「ウチの建物の解体工事を依頼したのは社長の俺だから、施主(俺)が排出業者になるのか」と考えるでしょう。

解体工事を廃棄物処理法の観点で見ると、「会社の建物や住居という有価物が、解体工事を通じて、(産業)廃棄物に変わった」と解釈することが廃棄物処理法の考え方です。例えば、ゴミを出したのは工事を行った解体工事会社ですから、解体工事会社が排出事業者となります。廃棄物処理法に次の条文があります。

建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外

第二十一条の三  土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。

廃棄物を出すことになる解体工事は、施主(解体を依頼した側)が自力で解体工事をする施設や能力がないケースがほとんどです。解体工事会社はプロフェッショナル集団。ですから、責任を負和なければならない、という考え方を理解しておきましょう。

廃棄物とは

ここで廃棄物とは何かを確認しておきます。占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売ることができないために不要となったものです。

対称的な言葉に有価物があります。例えば使わなくなったスマートフォンです。占有者にとって価値がなくなっても、他人から見ると「まだ使えるから売ってくれ」となり貨幣的価値を持っています。もちろん誰もこのスマホを必要とする人がいなければ有価物にはなりません。ちなみに有価物を取り扱うには古物商の許可があればいいのですが、廃棄物の場合はそうはいきません。

廃棄物処理法のポイントは3つ

①廃棄物は適正に責任を持って処理しなければならない

(同法第11条、第12条)

第11条 「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」

第12条 「事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準に従わなければなならない」

(排出)事業者とは、処理することとなる産業廃棄物を生み出した原因を作った事業を営むものです。家庭に当てはめるとゴミを出した本人を指します。しかし、ここで思うのは、事業者が「収集、運搬及び処分」を行う施設を所有しているのかです。そこで、行政から許可をとっている「収集運搬業者」「中間処理業者」「最終処分業者」であれば委託できるのです。

②委託先は処理業者とする

2つ目のポイントになります(廃棄物処理法第12条第5項)。

③排出業者はマニフェストを発行しなければならない

廃棄物処理法では、廃棄物が適正に処理される過程を確認・保存する方法として、排出事業者(解体工事会社)に対して産業廃棄物管理票(通称:マニフェスト伝票)の発行を義務付けています(同法第12条第3項)。マニフェストというと、選挙公約のことが思い浮かぶ方が多いでしょうが、ここでは廃棄物処理過程で処理した過程を記したもので、選挙公約のように実行しなくてもいいわけではなく、罰則を伴います。

この管理表は、事業者が廃棄物処理の管理をしやすいように定めたもので、5年間の保管を義務付けられ、違反すると罰則があります。

ちなみに同法違反は「五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」となっています。施主が課されることはなく、収集運搬業者と処分業者に課せられるのですが、トラブル(事件)には巻き込まれたくないものです。

次に廃棄物処理の大雑把な流れをつかんでおきましょう。

処理の流れ

排出事業者は、廃棄物処理の流れを把握しておかなければ、マニフェストを発行できません。処理法の考え方は、施主(法人個人)には専門的知識がないので、解体工事会社(排出事業者)に委託するべき、という考えが根底にあります。

まず、最初に処理業者と運搬業者にそれぞれ処理を委託します。廃棄物の流れを簡単に追っていくと、まず収集運搬業者へ移り、次に処分業者へと渡り、処分されます。その際、排出事業者は処理業者と収集運搬業者それぞれと委託契約を書面で結ばなければなりません。

産業廃棄物の委託手順

委託には手順があります。

①処理業者の事業の範囲、許可証を確認

収集運搬は積み込み積み下ろし場所と積み替えて保管する場所の許可が必要です。

②収集運搬業者と処分業者とそれぞれ書面で契約を締結する

許可証の写しが添付されて、必要事項が漏れなく記入されているかを確認します。

③廃棄物を引き渡すと同時にマニフェストを発行交付する

これは1回の積み込み毎に必要です。

④返送されてくるマニフェストで処理状況を確認

⑤委託契約書とマニフェストは5年間保存します。

ここで、委託契約書の記載項目は同法で規定されています。例えば、中間処理を委託する場合であっても、最終処分の場所・方法・処理能力の記載も必要となります。

マニフェストを詳しく

排出事業者が交付するマニフェストは、事業者が廃棄物の移動、処理の状況を把握して、適正に処理がなされているかを把握するために導入されました。排出事業者は都道府県知事へ報告する義務を負っているため、きっちり報告をあげてくる信頼できる処理業者に委託しています。施主は安心できる排出事業者を選ばなければなりません。

廃棄物の保管

普通は工事現場から廃棄物処理施設へ直接運ばれますが、やむを得ない事情で解体工事会社(排出事業者)の自社の土地で一時的に保管することがあります。その際、保管の基準が定められています。「囲いや掲示板を設置しなければならない」「保管が長期に渡ると、投棄したとみなされる」など、細かい基準がありますが安心できる排出事業者に委託すれば施主は安心できます。

排出事業者の処理責任

産業廃棄物は排出事業者が自らの責任において適正に処理しなければならない。これが大原則です。自らが適正に処理するか、業者に委託して適正に処理するかのいずれかです。

処理業者を把握できていれば問題はないのですが、下請け、孫請けと範囲が広がると、どこでどれを処理したのか、わかりにくいことがあります。責任の所在がはっきりしなくなるとトラブルの元になります。

委託するうえでの注意点

産業廃棄物処理業の許可がない下請業者に処理を委託すると、元請業者(解体工事会社)は委託基準違反、下請け業者は受託禁止違反又は無許可営業に問われます。

処理費用は

各都道府県によって差異はありますが、処理費用の目安をあげておきます(あくまで参考です)。

工場の解体工事における坪単価別費用

10坪未満→坪単価4万8000円、10坪台→3万円、20坪台→2万7000円、30坪台→2万8000円…70坪以上2万3000円

廃棄物の種類(1トンあたり)

木くず→1万4000円、金属くず→3500円、繊維くず→4万円、アスファルト→1300円、コンクリートガラ→1500円、廃プラスチック→5万6000円、ガラス→7500円

何度も繰り返しますが、悪徳業者は少なからずいます。それら法律に違反する業者に委託することは、自ら犯罪の片棒を担ぐようなものです。業者選びは慎重に行いましょう。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。全国(東京、名古屋、大阪、岡山、福岡など)で無料相談、無料見積もりを実施しておりますので、解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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土壌汚染対策法施行規則の改正について

環境省が今年2022324日、土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)及び汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令を公布しました。
ちなみに省令とは大臣が発する命令のことで、執行命令と委任命令がありますが、ここでは土壌汚染対策法の施行規則の改正についてですから、執行命令を指します。

この施行規則の改正のポイントはどこにあるのでしょうか。

改正の趣旨

そもそも、なぜ改正するのでしょうか。土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)は、土壌汚染に関する調査の契機を広く確保するために、同法第4条第1項に、一定規模以上の土地の形質を行う際の事前届出の義務規定を設けています。

例をあげますと、住宅用地のような土壌汚染と無縁のように見える土地であっても、3000m2以上の土地の形質の変更(解体工事や新築工事など地面を掘削したり盛土したりする行為)を行う際、工事着手前に土壌汚染対策法第4条第1項の届出を要します。また、特定有害物質を使用する水質汚濁防止法の特定施設を有する工場においては、900m2以上の土地の形質の変更において事前の届出や調査が必要なことはご存じかと思います。

その形質変更届(同法施行規則2322号)は全国で数多く出されており(令和元年度合計11,227件、環境省HPより)、うち79件に調査命令が出されました。調査機会が確保できた一方で、事業者や自治体の事務負担が少なくない状況にあります。共有地等の土地の所有者が多いケースでは負担が大きくなってしまうのが一因ではないでしょうか。

汚染土壌処理施設の処理能力等を変更する際に都道府県知事の許可が必要となりますが、その事務負担も同様に少なくないです。そのため「軽微変更」の場合はその限りではない(変更を届ける必要がない)となりました。
令和の世はIT化が進み、役所もその例に洩れませんが、それでも自治体にとって大きな事務負担を減らそうという方向性が今回の改正に至った根底にあるわけです。
以下、詳しく見てみます。

改正のポイントは2

①一定規模以上の土地の形質の変更に関する届出における添付書類の変更(同規則第23条第2項第2号)

土地の形質変更届に添付が求められている土地所有者全員の同意書(当該土地の所有者等の当該土地の形質変更の実施についての同意書)が必要でした。しかし、共有者が多く、相続登記が未了で連絡が取れない場合、同意書がなかなか取得できません。それは土地の有効活用ができず弊害を生むことにつながると指摘されていました。

そこで、この改正により「登記事項証明書その他の当該土地の所有者等の所在が明らかとなる書面」を添付することとなり、同意書に土地の所有者等の所在が明らかとなる内容が記載されているのであれば、該当する書類として扱うことができるようになったのです。

②汚染土壌処理施設に関する軽微な変更の規定の変更(汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令第9条)

法第23条第1項の環境省令で定める軽微な変更は、次のいずれにも該当しない変更とするとなりました。

汚染土壌処理施設の種類の変更

汚染土壌処理施設の構造の変更であって、次に掲げるいずれかに該当するもの

  • ・処理の根幹となる設備の変更(浄化等処理施設のうち、浄化を行うための施設にあっては浄化設備、溶融を行うための施設にあっては溶融設備、不溶化を行うための施設にあっては反応設備、セメント製造施設にあっては熱処理設備、埋立処理施設にあっては遮水構造、擁壁又はえん堤、分別等処理施設にあっては異物除去設備又は含水量調整設備、自然由来等土壌利用施設にあっては全ての設備)
  • ・悪臭の発散又は騒音若しくは振動の発生、処理業省令第4条第1号リに掲げる排出水基準、同号ヌに掲げる排除基準又は同号ヲに掲げる大気有害物質の量に係る変更(当該変更によって周辺地域の生活環境に対する影響が増大しないものを除く)

○汚染土壌処理施設の処理能力の増大

汚染土壌処理施設において処理する汚染土壌の特定有害物質による汚染状態の変更

改正前と後を比較

改正された箇所は以下の通りです。

①(同法第四条第一項の土地の形質の変更の届出)

第二十三条 法第四条第一項の届出は、様式第六による届出書を提出して行うものとする

2 前項の届出書には、次に掲げる図面及び書類を添付しなければならない。

 一 土地の形質の変更をしようとする場所を明らかにした平面図、立面図及び断面図

 二 土地の形質の変更をしようとする者が当該土地の所有者等でない場合にあっては、

登記事項証明書その他の当該土地の所有者等の所在が明らかとなる書面←【改正後】

(平二二環境令一・追加、平三一環境令三・令四環境令六・一部改正)

当該土地の所有者等の当該土地の形質のへ変更の実施についての同意書←【改正前】

(平二二環境令一・追加、平三一環境令三・一部改正)

②(処理業省令第9条の汚染土壌処理施設に関する軽微な変更の規定の変更)
(汚染土壌処理業の許可の基準)

第四条 法第二十二条第三項第一号の環境省令で定める基準は、次のとおりとする。

  • 一 汚染土壌処理施設に関する基準
  • ~ ()
  • リ 浄化等処理施設、セメント製造施設、埋立処理施設、分別等処理施設又は自然由来等土壌利用施設のうち自然由来等土壌構造物利用施設にあっては、排出水を公共用水域に排出す場合には、次に掲げる設備が設けられていること。
  • (1) 排水口における排出水の水質を次に掲げる基準(以下 「排出水基準」という。)に適合させるために必要な処理設備←【改正後】
  • (2) 排水口における排出水の水質を次に掲げる基準(次条 第十八号イにおいて「排出水基準」という。)に適合させるために必要な処理設備←【改正前】

【改正後】(許可を要しない汚染土壌処理業に係る軽微な変更)

第九条 法第二十三条第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更は、次の各号のいずれにも該当しない変更とする。

申請書に記載した種類の変更

申請書に記載した構造(当該構造について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。以下この号において同じ。)の変更であって、次のいずれかに該当するものとする

申請書に記載した処理能力(当該処理能力について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。)の増大

申請書に記載した特定有害物質による汚染状態の変更

【改正前】(許可を要しない汚染土壌処理業に係る軽微な変更)

第九条 法第二十三条第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更は、法第二十二条第二項の申請書に記載した処理能力(当該処理能力について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの)の減少であって、当該減少の割合が十パーセント未満であるものとする。

 

同法はいくつかの改正を経てきました。

・平成3041日施行、平成3141日施行
 改正点 → 土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大、汚染の除去等の措置内容に関する計画提出命令の創設等、リスクに応じた規制の合理化など
・平成2941日施行
 改正点 → 土壌の汚染に係る環境基準の追加(クロロエチレンおよび1,4-ジオキサン)、
土壌汚染対策法の特定有害物質の追加(クロロエチレン)など
・平成2241日施行
 改正点 → 規制対象区域の分類化、汚染土壌の搬出の規制、汚染土壌処理業の許可制の導入など。

他に、建築工事、造成工事等で3000平方メートル以上の土地の形質の変更を行う場合は、工事着手の30日前までに届出が必要になる。

以上、過去も含めて土壌汚染対策法の改正時は環境省や自治体のホームページを閲覧するのもいいですが、株式会社エコ・テックのホームページ(コラムなども)は、コンパクトにまとめられており、要点を把握するには最適です。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。

全国(東京、名古屋、大阪、岡山、福岡など)で無料相談、無料見積もりを実施しておりますので、解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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アスベスト調査義務化の対象について

法改正によりアスベスト調査の結果報告が必須に

大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、令和4年4月1日以降に着工する一定規模以上の解体・改造・補修工事について、アスベストの有無に関わらず、アスベスト調査結果の報告が必要になりました。さらに令和5年(2023年)10月からは有識者によるアスベストの事前調査・分析が義務化されることが決まっています。

この記事では法改正によって解体工事の際のアスベストの対応がどのように変わるのかを説明していきます。

アスベストとは?

石綿(アスベスト)とは、天然の繊維性けい酸塩鉱物で、日本語では「いしわた」「せきめん」と言われ、英語では「アスベスト」と言いわれています。
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。

アスベストレベルについて

アスベストのレベルは先述した通り、「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」によって分けられています。アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む建材を指します。アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

アスベストに関わる法改正の流れ

①規制対象の拡大(令和3年4月1日施行)

規制対象について、石綿含有成形板などを含む全てのアスベストを含む建材に拡大。
もともと規制対象とされていた吹付け石綿(アスベストレベル1の建材)及びアスベストを含む断熱材等(アスベストレベル2の建材)だけではなく、令和3年4月1日以降はアスベストを含む成形板など(アスベストレベル3の建材)も法律の規制対象となり、新たに作業基準が設けられました。

なお、レベル3建材については、従来通り特定粉じん排出等作業(※)を伴う建設工事(特定工事)の実施の届出は不要ですが、作業計画を作成し、当該計画に基づき作業を行うこととなりました。

※アスベストを多量に発生する、または飛散させる原因となるアスベストを含む建材(アスベストレベル1の建材やアスベストレベル2の建材)が使用されている建築物等の解体、改造、補修作業

②作業基準遵守義務者の拡大(令和3年4月1日施行)

作業基準遵守の徹底のため、元請業者のみに課せられていた作業基準の遵守義務を、令和3年4月1日以降は、下請負人にも課せられるようになりました。

③発注者への作業結果の報告(令和3年4月1日施行)

特定工事の元請業者は、特定粉じん排出等作業が完了したときは、作業が適切に行われているか確認し、その結果を書面で発注者へ報告することが新たに義務付けられました。

④事前調査結果の報告(令和4年4月1日施行)

一定規模以上の解体等工事の元請業者又は自主施工者は、調査結果を事前に報告することが義務付けられました。

<報告の対象>

■床面積合計80平米以上の解体工事

■請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の建築物の改造・補修作業

■請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の環境大臣が定める工作物の解体・改造等工事

⑤事前調査の有資格化(令和5年10月1日施行)

事前調査について、令和5年10月1日以降は、一定の知見を有する者(建築物石綿含有建材調査者等)にしか行わせることができなくなります。

⑥罰金の強化

隔離等をせずに石綿(アスベストレベル1の建材)及びアスベストを含む断熱材等(アスベストレベル2の建材)の除去作業を行った場合や事前調査の結果を報告しない場合に対する直接罰の規定が新たに設けられました。

【令和3年4月1日施行】

■「吹付け石綿、石綿を含有する断熱材・保温材・耐火被覆材」を改正法(第18条の19)で定める方法により行わなかったとき、3月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

■元請業者及び自主施工者だけでなく、下請負人についても作業基準の遵守義務の対象に追加されます。

⑦不適切な作業の防止

元請業者に対し、石綿含有建材の除去等作業の結果の発注者への報告や作業に関する記録の作成・保存を義務付けます。

【令和3年4月1日施行】

■元請業者は特定粉じん排出等作業(石綿含有建材が使用されている建築物等を解体・改造・補修する作業)の結果を遅滞なく発注者に書面で報告するよう義務付けられます。

■元請業者は特定粉じん排出等作業の記録を作成し、その記録及び上記の書面の写しを保存する必要があります。(保存期間は解体等工事が終了した日から3年間)

■元請業者又は自主施工者は、特定建築材料の除去等の完了後に、除去等が完了したことの確認を適切に行うために必要な知識を有する者に目視により確認させる必要があります。

アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です

アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。

アスベスト調査の金額相場は?

アスベスト調査にかかる金額は「図面調査」「目視調査」「分析調査」含めおおよそ70,000円~130,000円が相場です。アスベストレベル (詳しくは後述) や建物の広さ、サンプルの採取の有無、分析検査の有無などによって費用が大きく変わりますので、あくまでも大まかな目安としての金額です。

アスベスト調査の補助金について

上記のように、アスベストの解体前のアスベスト調査は必須となります。そこでアスベスト調査を行う際の補助金についても少々触れておきます。

民間の建築物のアスベスト調査などに関して、国土交通省は補助制度を設けており、それぞれの自治体によって補助制度は異なります。補助制度がある地方公共団体は活用することが可能です。

国が示している支給条件は以下のようになります。

・補助事業の対象:建築物の吹付け材のアスベスト含有の有無に関する調査
・対象建築物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトが使用されている可能性がある建築物
・補助額:限度額は原則として25万円/棟

※補助制度がない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

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