2023/01/24
解体における補助金
近年増え続け問題視されている空き家。最終的には地方自治体への確認が必要となりますが、空き家の解体に補助金が出る場合があります。空き家の問題、国による空き家の解体における補助金、地方自治体の補助金制度の一部について述べていきます。
空き家の分類・空き家が増えている理由
空き家は大きく分けて「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つに分類されます。
(1)売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
(2)賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
(3)二次的住宅…別荘など普段は人が住んでいない住宅
(4)その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など
年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン (https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)より
「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」に関しては売買や賃貸、別荘として使用など管理されていると考えられますが、「その他の住宅」に関してはそのまま放置される可能性が高いとされています。「その他の住宅」に分類される空き家の原因は、核家族化で実家を継ぐ子どもがいない、相続税の負担を考慮しそのままにしているといった面が大きく空き家になっているといえます。
空き家のデメリット
なぜ空き家のまま放置だといけないのかというと、空き家であるだけで土地を所有していることとなり、固定資産税や都市計画税などの税金もかかってきます。一番大きい問題として挙げられるのが近隣に迷惑をかけてしまうことです。家は手入れをしていないと劣化していきます。放置された空き家は、動物が棲み着く・不法投棄される・放火の危険性・不審者や犯罪の危険性や直接的に隣家に影響を及ぼすこととして虫・雑草が生い茂り隣家に侵入し迷惑をかける等が挙げられます。
また、空家法で次の状態が1つでも当てはまれば自治体から「特定空家等」と認められ罰則が適応されることがあります。
「特定空家等」とは
(1)倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
(2)アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
(3)適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の境界や棲みついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態
「特定空家等」に認定されると自治体は所有者に適切に管理するよう助言や指導を行い、それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行います。所有者が命令に従わなければ最大50万円以下の過料に処される場合があります。(空家法 第14条、第16条)
年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン (https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)より
「特定空家等」に認定されないためにも空き家には対策が必要です。売買や賃貸、別荘として使用されない「その他の住宅」は、解体することにより空き家でなくすことができます。空き家の解体にはお金がかかりますが、国・地方自治体から補助金が出る場合があります。
空き家対策総合支援事業
空き家対策総合支援事業とは、平成27年施行の空家等対策の推進に関する特別措置法による財政面での支援措置の一つです。空き家や不良住宅の除却、空き家の活用、関連事業など総合的な空き家対策に取り組む市区町村の対象事業に対して、定められた割合での支援を国が行うものです。令和4年度では45億円の予算を費やしています。
補助の対象は、空家等対策計画を策定(実態把握を除く)・空家特措法に基づく協議会を設置するなど地域民間事業者等との連携体制がある市町村となります。すなわち個人への補助金ではなく国から地方自治体へ出る補助金で、個人が補助金を使うには地方自治体への問い合わせが必要となります。
補助率について-空き家対策基本事業
空き家対策総合支援事業内の空き家対策基本事業における空き家除却等の補助は、以下の通りとなります。
○空き家の除却【補助率2/5】地域環境の整備・改善を目的とし空き家を解体する場合、これにかかる費用が補助されます。
- ①特定空家等の除却(行政代執行・略式代執行に係る除却費用のうち回収不能なものを含む)
- ②不良住宅の除却
- ③各種災害により被害が生じた又は被害が見込まれる空家住宅等の緊急的又は予防的な除却
- ④上記以外の空き家、空き建築物の除却であって、除却後の跡地が地域活性化のための計画的利用に供される場合
※崖地や離島など通常想定される除却費と比較して高額となる場合のかかりまし費用も補充
○空き家を除却した後の土地の整備【補助率:直接1/2、間接1/3(かつ市町村の1/2)】
(地域活性化要件が適用されない特定空家や不良住宅等を除却した後の土地を、公益性の高い用途で10年以上活用を行う場合)
○空き家の活用【補助率:直接1/2、間接1/3(かつ市町村の1/2)】
○空家等対策計画の策定等に必要な空き家の実態把握【補助率:1/2】
○空き家の所有者の特定【補助率:1/2】
空き家対策総合支援事業|国土交通省
(https://www.mlit.go.jp/common/001378951.pdf)より
地方自治体別解体における補助金一例
空き家対策総合支援事業において国から地方自治体へ補助金が出ることを紹介してきました。ここからは、地方自治体が個人に対し補助金を出す一例を弊社の本社が位置する東京都港区、本店が位置する大阪府大阪市の地方自治体別に紹介していきます。
①東京都港区
弊社の本社がある東京都港区では住宅の解体に対する補助金は設けられていませんが、「ブロック塀除却・設置工事等支援事業」を設けており、ブロック塀の除却・設置に対して補助金を支給しています。
除却の対象はコンクリートブロック塀、万年塀、大谷石塀、レンガ積塀等で、補助額は6,000円/m以内(除却長さ上限なし)となっています。
②大阪府大阪市
弊社の本店がある大阪府大阪市では解体関連の補助金はいくつかありますが解体に関する補助金について紹介いたします。
(1)古い木造住宅の解体費用を補助する「大阪市民間老朽住宅建替支援事業狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」を設けています。解体の対象は対象地区で昭和25年以前に建てられ敷地が面する道路が幅員4m未満の道路の場所、重点対策地区で昭和56年5月31日以前に建てられ敷地が面する道路が幅員6m未満の道路であること、補助率は対象地区で1/2、重点対策地区で2/3となっています。補助限度額は対象地区で戸建住宅75万円、集合住宅150万円、重点対策地区で戸建住宅100万円、集合住宅200万円となっています。
(2)古い建物を集合住宅(マンション・アパートなど)に建て替える際にかかる費用(実施設計費、工事監理費、解体費、共同施設設備費)の一部を補助する「大阪市民間老朽住宅建替支援事業建替建設費補助制度」を設けています。
除却の対象は重点対策地区に当てられている地区で、補助額は設計・解体に要する費用の2/3以内となっています。
(3)密集住宅市街地における古い木造住宅のさらなる除却促進を図るため、重点対策地区を対象に、木造住宅を解体し、跡地を災害時の避難等に役立つ防災空地として活用する場合の補助制度「防災空地活用形除却費補助」を設けています。
除去の対象は重点対策地区に当てられている地区で、補助額は、木造住宅の解体の場合2/3で補助限度額は戸建て住宅で100万円、集合住宅で200万円となっています。
(4)防災コミュニティ道路沿道での新築・建替えの際の建築・解体費用を補助する「大阪市主要生活道路不燃化促進整備事業」を設けています。
除去の対象は防災コミュニティ道路沿道の敷地で、補助率は建替前の建物の解体費2/3、建替後の建物の設計費及び耐火構造費1/2、セットバックに係る道路整備費1/2となっています。
(5)地震に強い安全なまちづくりを目指すため、耐震診断・耐震改修設計・耐震改修工事・耐震除却工事に要する費用の一部を補助する「民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度」を設けています。耐震改修工事・耐震除却工事の対象は、大阪市内にある民間住宅で平成12年5月31日以前に建築された住宅、申請者の年間所得が1,200万円以下であることなどいくつか条件があり、耐震改修工事の補助率は1/2、1戸あたり100万円まで、耐震除却工事の補助率は1/3、1戸あたり50万円、1棟あたり100万円となっています。
(6)地震の際のブロック塀等の倒壊による人的被害の防止等を図るため、道路等に面した一定の高さ以上のブロック塀等の撤去および軽量フェンス等の新設工事に要する費用の一部を補助する「大阪市ブロック塀等撤去促進事業」を設けています。対象となるブロック塀等は、道路等に面し安全性の確認ができない高さ80cm以上のブロック塀等で、補助金との限度額は撤去が15万円、新設が25万円となっています。
最後に
上記で述べてきた通り、解体における補助金は国が地方自治体に予算を出し、地方自治体によって個人に補助があります。そのため地方自治体により取り組みが異なります。対象地区の制度について地方自治体への確認が必要です。
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参考URL
・年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン (https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)
・空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報|国土交通省
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html)
・空き家対策総合支援事業|国土交通省
(https://www.mlit.go.jp/common/001378951.pdf)
・ブロック塀除却・設置工事等支援事業|東京都港区
(https://www.city.minato.tokyo.jp/taishinkasuishintan/burokkubei.html)
・大阪市民間老朽住宅建替支援事業狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度|大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000531/531835/zyokyaku.pdf)
・大阪市民間老朽住宅建替支援事業建替建設費補助制度|大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000531/531918/tatekaer3.pdf)
・大阪市密集住宅市街地重点整備事業(防災空地活用型除却費補助) |大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000268/268918/bousaikuuchi_hp.pdf)
・大阪市主要生活道路不燃化促進整備事業|大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000062/62769/boukomi_hp.pdf)
・民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度|大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/page/0000370839.html)
・大阪市ブロック塀等撤去促進事業|大阪府大阪市
(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000440/440127/burokku.pdf)
2023/01/18
土壌汚染対策法のガイドラインについて
ガイドラインとは
法律の条文は読んでいて、なかなか理解できないことが多いのではないでしょうか。土壌汚染対策法は民法などの古くからある法律と比べると比較的新しく、わかりやすい方ですが、一読しただけでは簡単できないでしょう。そこで環境省はガイドラインを作り、ホームページ上に公開しています。
ガイドラインとは「指針」「指標」といえば抽象的なので「法律や政策を守るための指針」というと幾分か理解度が高まるでしょう。同じような言葉にマニュアルがありますが、こちらは「ガイドラインの指針に従った行動内容、方法」と言えます。一般的には、取り扱い説明書といった方がわかりやすいでしょう。
ガイドラインは土壌汚染対策法をより理解するために作られたものです。これをもとに、各自治体は地域事情に合わせて発表しているので各HPを参照すればいいでしょう。地域の事情に応じた内容になっています。
環境省HPをのぞいてみると…
「土壌汚染対策法 ガイドライン」で検索すると、「ガイドライン・マニュアル等/土壌関係」の項目の中に、それを見つけることができます。そこには「令和4年8月31日に同ガイドライン公開しました」と書かれており、直下には「主な改定事項」とあるので、クリックすると62ページにわたって詳しく書かれています。
今回の同法一部改正では3つのガイドラインが示されています。
・「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改定第2版)」
・「汚染土壌の運搬に関するガイドライン(改定第3版)」
・「汚染土壌の処理業に関するガイドライン(改定第3版)」及び「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関の情報開示・業務品質管理に関するガイドライン(新改訂版)」
以下、それぞれをまとめてみます。
主な内容
第1編 土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改定第3版)
第1編は、全体的な見直しが行われ、令和4年8月31日に改訂3.1版が公開されています。主な改訂は次の通りです。
まず、土壌汚染状況調査(法第3条〜第5条)において、汚染のおそれの由来ごとに調査することして、改正後の規定に基づいた調査方法に係る図解等を掲載しています。
中でも、新たに調査の深さ限定できる規定が盛り込まれたことから、深さ限定の考え方について図解で示すとともに、土壌汚染状況調査の結果を報告する際に使える記入シートが掲載されています。
次に、要措置区域について、「汚染除去等計画」の作成・提出が義務付けられ、措置の種類ごとに技術的基準が定められたことから、措置の種類ごとに同計画の記載例が掲載されています。
形質変更時要届出区域における土地の形質変更届出の例外として「臨海部特例区域」に係る規定が設けられたことで、「土地の形質の変更の施行及び管理に関する方針」の確認申請時の手続きや臨海部特例区域に指定された土地に係る運用等について詳しく解説されています。
第2編 汚染土壌の運搬に関するガイドライン(改定第4版)
ここでは、実際に案件に対応する地方公共団体や事業者が汚染土壌の運搬を行う際に参考となる方法が書かれています。
用語の定義や搬出時の届出や計画変更について、運搬に関係する基準、処理の委託義務、法の対象外となる不適合な土壌の処理や運搬方法が記されています。土壌汚染物の運搬には、様々な課題や問題点があるのかが理解できるでしょう。
具体的には、汚染土壌の搬出に関して、特例として「自然由来等形質変更時要届出区域間の移動」及び「飛地間の移動」が規定されているので、これらを搬出する際の届出の記載事項の具体例等が示されています。
第3編 汚染土壌の処理業に関するガイドライン(改定第4版)
処理業の実務に関することがまとめられています。用語や汚染土壌処理業の基本、汚染土壌処理業の許可申請の詳細や法から外れた不適合土壌の処理・運搬に関する構成となっています。
汚染土壌処理施設の種類に「自然由来等土壌利用施設」が追加されて、許可や処理の基準等が規定されていることから、許可申請書における記載内容、処理の方法に係る解説や留意事項等が記載されています。
第4編 指定調査機関に関するガイドライン
調査結果が信用できると証明するために、具体的な指定調査機関に関する情報がまとめられています。
指定調査機関が作成する業務規定の記載事項に「技術管理者による土壌汚染状況調査等に従事する他の者の監督に関する事項」が追加され、その具体的な記載は、技術管理者は1回以上現地踏査した上で、調査計画を策定して、調査結果の内容の確認や評価の最終判断を行うこと等が記載されています。
他に、「土壌汚染対策法に規定する指定調査機関に係る指定等の手引き(平成30年3月版)」の内容がこのガイドラインに統合されています。
以上の4つになります。
要点をまとめると…
・第1編は土壌汚染対策法の概要、土壌汚染の状況調査、要措置区域等の指定方法及びそのルール、実際に汚染を除去する際の措置など
・第2編では、地方公共団体や事業者が汚染土壌の運搬の際に参考となる手引きについて
・第3編は、処理業の実務に関する情報について
・第4編は調査結果が信用できるに足ることを証明するために、具体的な指定調査機関に関すること
Appendixとは
環境省から公開されているPDF版を調べていると、Appendixという言葉を見つけられるでしょう。この意味は、補足、追加、付録のことで、このガイドラインのブログでは解説のことを指しています。
第1編のAppendixでは1.「特定有害物質を含む地下水が到達し得る『一定の範囲』の考え方」をはじめ、27項目377ページにわたってわかりやすく書かれています。
『一定の範囲』とは、「地下水汚染が生じたとすれば規則第30条第1項各号に規定する地点が地下水汚染が拡大するおそれがある当該土地の周辺に該当することとなる場合の考え方(特定有害物質を含む地下水が到達し得る範囲)」のことで、その考え方の詳細が約2ページに書かれています。地下水が到達し得る距離の計算手法などが示されています。
以下2.「地下水の飲用利用等の判断基準」
3.「自然由来による基準不適合土壌の判断方法及びその解説」
4.「地表から一定の深さまでに帯水層がない旨の確認に係る手続」
5.「土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法」
6.「地下水に含まれる試料採取等対象物質の量の測定方法」
7.「地下水試料採取方法」
8.「第二種特定有害物質及び第三種特定有害物質に係る土壌試料採取方法」
9.「土壌溶出量調査に係る測定方法」
10.「土壌含有量調査に係る測定方法」
以下、27.「土壌汚染状況調査の対象地の土壌汚染のおそれの把握等(地歴調査)における過去の調査結果の利用」
まで続きます。
ガイドラインの中でも、このAppendixがより実務に近く、業者のみならず、一般住民でも理解できる文章や図式で書かれています。
第2編「汚染土壌の運搬に関するガイドライン(改定第4版)」ではAppendix1.「管理票のしくみ」、2.「区域間移動が可能な要件の確認方法」。
第3編「汚染土壌の処理業に関するガイドライン(改定第4版)」ではAppendix1.「土壌溶出量調査に係る測定方法」など13項目。
第4編「指定調査機関に関するガイドライン」ではAppendix1.「提出書類の様式一覧」など4項目。
以上が補足として付加されています。ページ数の多さに尻込みしそうですが、実践的なAppendixを読んで業者選びの参考にしましょう。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、土壌汚染事前調査から土壌汚染対策工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。
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2023/01/12
アスベストレベル2の除去費用について
アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要なので、通常の解体作業と比較すると高額になります。
また、解体工事を行う際はアスベストが含有しているか同化の調査も必要となります。本記事ではアスベストレベル2の解体費用、調査費用について解説していきます。
アスベストの解体費用の相場は以下です。
アスベスト処理面積 |
解体費用相場 |
300㎡以下 |
2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡ |
300㎡~1000㎡ |
1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡ |
1000㎡以下 |
1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡ |
上野表を見ると、1㎡あたりに価格幅があるのがわかります。アスベストは発じん性によってレベル分けがされています。
アスベストレベルは1~3まであり、アスベストレベル1が最も危険性が高いです。
アスベストとは
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。
アスベストの危険性
アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。
アスベストのレベルについて
そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。
アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。
レベル1:発じん性が非常に高い
最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。
レベル2:発じん性が高い
2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。
レベル3:発じん性が比較的低い
3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む 建材を指します。
アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。
上記のことからアスベストの取り扱いは非常に危険であるため、調査や解体・処理は「石綿作業主任者の選任」、「労働者全員に石綿特別教育を実施 」、「特別管理産業廃棄物管理責任者の設置」が必要です。
アスベストレベル2の作業について
レベル2で行う作業は、アスベストを含む保温材、耐火被覆材、断熱材の除去作業とアスベストの囲い込み、封じ込め作業です。ただし、囲い込みと封じ込めの作業はレベル1のアスベストを除きます。
レベル2のアスベストの除去作業は、原則としてレベル1の除去作業と同様に、アスベストが飛散しないように作業場所を隔離して行いますが、配管保温材を切断するときにアスベストが含まれていない部分を切断するなど、アスベストが飛散しない方法をとれば、作業場所の隔離は不要となる場合があります。
建材の種類
石綿含有保温剤や耐火被覆材・断熱材がレベル2に該当します。
シート状の形状で配管などに巻き付けて利用されるのが一般的です。
使用箇所例
ボイラー本体や配管、空調ダクトの保温材
建築物の柱や梁・壁の耐火被覆材
屋根用折板裏断熱材
煙突用断熱材
また、周囲への注意喚起や飛散防止策・作業員の厳重なばく露対策も必要になります。
ただし、作業員が使用する保護具はレベル1に比較するとやや簡易的なものに変わります。
尚、石綿障害予防規則の改正により、令和3年4月1日からレベル2についても「工事開始の14 日前までに、所轄労働基準監督署長に計画届を提出」が必要になりました。
アスベスト解体における本体工事費用について
1.本体工事費
本体工事費は、解体工事の費用の中でも大部分を占めるものです。そのほとんどは人件費に当てられますが、強度が高い建物ほど工事費も上がっていきます。解体工事の費用は坪単価を出す時は、この本体工事と廃棄処分費を合わせて計算します。鉄筋コンクリート・鉄骨は木造よりも強度が高く、壊しにくいため、費用は高くなります。建物本体の解体費用は1坪あたりの工事単価「坪単価」を元に算出します。
坪単価とは?
解体工事の単価とは?
解体工事の単価とは建物1坪(約3.3㎡)あたりの解体費用のことを指し、「坪単価」と言われます。この単価は建物全体の解体費用を求める時に用いられ、【坪単価(の相場)】に【延床面積(坪数)】を掛けることで、おおよその「建物本体の解体費用」が算出できます。
坪単価の相場はどのくらい?
建物の解体費用は構造によって相場が変わります。各構造の坪単価は以下のとおりです。
木造:3~5万円/坪
鉄骨造:6~7万円/坪
鉄筋コンクリート造:7~8万円/坪
種別 |
坪単価 |
総額※1 |
総額※2 |
木造 |
3万円~5万円/坪 |
105万円~175万円 |
150万円~250万円 |
鉄骨造 |
4万円~6万円 |
140万円~210万円 |
200万円~300万円 |
鉄筋コンクリート造 |
5万円~7万円 |
175万円~245万円 |
250万円~350万円 |
※1…延床面積35坪の場合
※2…延床面積50坪の場合
木造住宅が一番安く、次いで鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に単価が上がっていくのが一般的です。しかしながら、立地や廃材の処分量、方法など他の要因によって費用が左右されることが多く、上記はあくまでも目安です。
2.アスベストレベル別の除去作業費用相場
作業レベル |
作業箇所 |
1㎡あたりの単価 |
レベル1 |
天井・壁等の石綿含有吹き付け材 |
1.5万円~8.5万円 |
レベル2 |
内壁・配管・柱などの保温材・耐火被覆材・断熱材 |
1.0万円~6.0万円 |
レベル3 |
外壁材 |
2.0万円~9.0万円 |
屋根材 |
1.0万円~6.0万円 |
|
その他建材 |
0.3万円~1.0万円 |
その他に解体費用に影響を与える項目には以下があります。
付帯工事
解体工事の際には面となる本体建物の他にも撤去しなければならないものがあります。例えば、「樹木」「ブロック塀」「倉庫」「門や扉」などです。これらの撤去・処理にかかる費用が付帯工事費用です。この他にもそれぞれの現場によって様々な付帯工事が発生する可能性があります。どの付帯工事についても、処分するべき物の量や作業の危険性、必要な人員、重機の種類などによって金額の振れ幅が大きいことが特徴です。
3.仮設工事
工事に取り掛かる前に必要となる作業経費です。主に「足場養生費」と呼ばれます。養生とは、周囲の家への騒音やほこりなどの被害を抑える為に行う作業です。
解体工事中は建物内に残っているゴミやホコリ、建材を壊した際の細かな破片やガラス片などが広範囲に飛散します。もし養生を設置していなければ、これらが隣家に飛散し洗濯物を汚してしまう、車を傷つけてしまう、部屋の中をホコリだらけにしてしまう、現場前を通りかかった人が吸い込んで健康被害を招いてしまうといったリスクが考えられます。
基本的には足場を組み、「養生シート」と呼ばれる防音シートで建物を覆います。稀に、工事費を削減するために養生シートを付けずに工事を行う業者がいますが、近隣に大迷惑をかけるので、絶対に見積書で確認してください。
4.廃棄処分費
解体によって出た建築材料(瓦、木材、コンクリート、ブロック)の廃棄物を処理する費用です。解体費と処分費をまとめて「解体処分」「撤去処分」と表記する場合もあります。
主な産業廃棄物種類ごとの単価目安が以下です。市区町村によって違いはありますが参考にしていただければと思います。
種類 |
費用目安 |
アスファルト |
1,200円/1トン |
コンクリートガラ |
1,500円/1トン |
木くず |
14,000円/1トン |
金属くず |
3,500円/1トン |
繊維くず |
41,000円/1トン |
ガラス |
7,500円/1トン |
廃プラスチック |
56,000円/1トン |
2023/01/06
アスベスト調査の保管期間について
大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、令和4年4月1日以降に着工する一定規模以上の解体・改造・補修工事について、アスベストの有無に関わらず、アスベスト調査結果の報告が必要になりました。
アスベストとは
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。
アスベストの危険性
アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。
令和4年4月1日以降に着工する一定規模以上の解体・改造・補修工事について、アスベストの有無に関わらず、アスベスト調査結果の報告が必要になりました。さらに令和5年(2023年)10月からは有識者によるアスベストの事前調査・分析が義務化されることが決まっています。
この記事ではアスベスト調査の保管期間やその内容、またアスベスト調査に関してを説明していきます。
事前調査結果の報告対象(年間 200万件程度)
石綿の事前調査結果の報告対象は、以下のいずれかに該当する工事 (令和4年4月1日以降 に工事に着手するもの)で、個人宅のリフォームや解体工事 なども含まれます 。
報告対象となる工事
建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80 ㎡以上)
建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
石綿障害予防規則に基づき労働基準監督署にも報告する必要があります。
石綿障害予防規則に基づく報告は、上記に加え、鋼製の船舶の解体又は改修工事
(総トン数20トン以上)も必要です。
アスベスト調査とは?
解体予定の建物にアスベストが含まれているかどうかの調査を意味します。アスベストが含まれた建物をそのまま解体してしまうと、作業者や近隣住民に重大な健康被害をもたらす可能性があるため、解体前にしっかりとアスベストの有無を調査した上でアスベストが含まれていた場合は慎重に除去作業を行う必要があります。
報告書の作成
大防法上、特定粉じん排出等作業の届出は発注者に義務づけられており、当該作業に該当するか否か、発注者に報告するための書面を作成することになります。事前調査による記録から、事前調査の結果報告書を作成します。改修工事や今後も建築物等を使用する場合の石綿の除去等については、事前調査の範囲が建築物の工事関連箇所のみとなり、事前調査の報告書も当該箇所のみの結果となります。改修工事等の事前調査の結果が、将来解体等する場合に、調査結果が誤って流用されないよう、調査を実施した範囲、調査対象建材、石綿含有建材の有無と使用箇所について図面や概略図で具体的な場所がわかるように記録を報告書に添付することが必要です。
アスベスト調査の保存期間について
事前調査結果に関する記録は、解体等工事が行われている間、工事現場に備え置く必要があります。作業計画に基づく作業実施状況等を記し、作成した書類は解体等工事の終了後、3年間保存が必要です(電子保存も可)。
実施状況等の内容には以下などの例があります。
①掲示・表示(事前調査の概要、関係者以外立入禁止、喫煙・飲食禁止、石綿等を取り扱う作業場である旨等の掲示)
②隔離の状況、集じん・排気装置の設置状況、前室・洗身室・更衣室の設置状況、排気口からの漏えいの有無の点検結果、前室の負圧に関する点検結果、隔離解除前の確認の実施状況等(負圧隔離を要する作業を行う場合に限る)
③作業計画に示されている作業の方法、石綿粉じんの発散・抑制方法、石綿ばく露防止の方法のとおりに作業が行われたことが確認できる記録(湿潤化、保護具の使用状況等。作業を行う部屋や階が変わるごとに記録が必要)
④除去等を行った石綿等の運搬又は貯蔵を行う際の容器・包装、当該容器等への表示、保管の状況
また、作業者の記録、および健康診断の結果に関しては、石綿の作業に従事しなくなった日から40年間保存する義務が課せられています。
アスベスト調査内容と費用相場
アスベスト調査にかかる金額は「図面調査」「目視調査」「分析調査」含めおおよそ70,000円~130,000円が相場です。アスベストレベル (詳しくは後述) や建物の広さ、サンプルの採取の有無、分析検査の有無などによって費用が大きく変わりますので、あくまでも大まかな目安としての金額です。
アスベスト調査における費用の内訳としては、主に以下のものがあります。
・事前調査費用
・分析調査費用
・サンプル採取費用
アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です
アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。
アスベスト調査の金額相場は?
アスベスト調査にかかる金額は「図面調査」「目視調査」「分析調査」含めおおよそ70,000円~130,000円が相場です。アスベストレベル (詳しくは後述) や建物の広さ、サンプルの採取の有無、分析検査の有無などによって費用が大きく変わりますので、あくまでも大まかな目安としての金額です。
アスベスト調査の補助金について
上記のように、アスベストの解体前のアスベスト調査は必須となります。そこでアスベスト調査を行う際の補助金についても少々触れておきます。
民間の建築物のアスベスト調査などに関して、国土交通省は補助制度を設けており、それぞれの自治体によって補助制度は異なります。補助制度がある地方公共団体は活用することが可能です。
国が示している支給条件は以下のようになります。
・補助事業の対象:建築物の吹付け材のアスベスト含有の有無に関する調査
・対象建築物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトが使用されている可能性がある建築物
・補助額:限度額は原則として25万円/棟
※ 補助制度がない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。
また、アスベスト調査だけでなく、解体工事にも補助金制度が設けられているので、そちらも地方公共団体の発信内容を確認することで補助金を使える場合があるので、確認しておきましょう。
アスベスト解体工事に関わる補助金の例は以下となります。