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業界コラム

ダイオキシン曝露による症状と健康リスク

「ダイオキシンって具体的にどんな症状が出るの?」「自分や家族は大丈夫なのか不安…」「ニュースで聞いたけど、実際どれくらい危険なの?」そう思う方もいるかもしれません。

実は、ダイオキシンによる健康影響は曝露量や期間によって異なり、一般的な生活環境では過度に心配する必要はありませんが、正しい知識を持つことで適切な予防と判断ができるようになります。

この記事では、ダイオキシン曝露による具体的な症状、健康リスクの実態、そして日常生活で注意すべきポイントについて分かりやすく解説します。

 

ダイオキシンとは?基礎知識を理解する

ダイオキシンという言葉を耳にしたことがあっても、実際にどのような物質なのか正確に理解している方は少ないかもしれません。ダイオキシン類は、塩素を含む物質が不完全燃焼する際などに生成される化学物質の総称で、私たちの生活環境に広く存在しています。

ここではダイオキシンの定義、発生原因、体内への蓄積メカニズムについて解説します。

 

ダイオキシン類の定義と種類

ダイオキシン類は単一の物質ではなく、化学構造が類似した複数の化合物群の総称です。世界保健機関(WHO)では、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)、コプラナーPCB(Co-PCBs)の3種類をダイオキシン類として定義しています。

これらの異性体は400種類以上存在し、それぞれ毒性の強さが異なります。中でも2,3,7,8-TCDDは最も毒性が強く、国際がん研究機関(IARC)により人に対して発がん性のある物質と判定されています。

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット、食品からのダイオキシン類一日摂取量調査

 

ダイオキシンが発生する主な原因

ダイオキシン類は主に焼却炉や産業廃棄物の不完全燃焼によって生成されます。かつては家庭ごみや産業廃棄物を焼却する際の温度管理が不十分だったため、多量のダイオキシンが発生していました。また、過去に使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)や一部の農薬などにも含まれていたことが知られています。

現在では、廃棄物処理施設の技術向上や法規制の強化により、環境中へのダイオキシン排出量は大幅に減少しています。しかし、過去に排出されたダイオキシンは土壌や海底の泥などに蓄積されており、完全には消失していません。

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット、食品からのダイオキシン類一日摂取量調査

 

体内への取り込まれ方と蓄積のメカニズム

人がダイオキシン類を体内に取り込む経路は、主に食品を通じた摂取です。環境中のダイオキシンは食物連鎖を通じて魚介類や肉類、乳製品などに蓄積され、それらを食べることで私たちの体内に入ります。ダイオキシン類は脂溶性が高いため、体内の脂肪組織に蓄積しやすく、排泄されにくいという特徴があります。

一度体内に入ったダイオキシンの半減期は数年から数十年と非常に長く、高濃度曝露を受けた場合には長期間体内に残留し続けます。このため、日常的な低濃度曝露であっても、長期間にわたって摂取し続けることで体内濃度が上昇する可能性があります。

 

 

ダイオキシン曝露による主な症状

ダイオキシンに曝露された場合、体にはどのような症状が現れるのでしょうか。曝露量や期間によって症状の種類や程度は大きく異なります。

ここではダイオキシン曝露による具体的な症状について解説します。

 

急性曝露時に現れる初期症状

高濃度のダイオキシンに短期間で曝露された場合、初期段階では皮膚症状が最も特徴的に現れます。1968年のカネミ油症事件では、汚染された食用油を摂取した直後から数週間以内に、多くの患者に様々な症状が出現しました。初期症状としては、皮膚の異常、眼の症状、全身倦怠感などが報告されています。

ただし、このような急性症状が現れるのは、通常の生活環境では考えられないほど高濃度のダイオキシンに曝露された場合に限られます。現在の日本では、食品や環境の安全管理が徹底されているため、急性中毒症状が起こる可能性は極めて低いと考えられています。

参照元:厚生労働省 ダイオキシン類による健康影響等の調査結果、カネミ油症の手引き

 

呼吸器系への影響と症状

ダイオキシン類は呼吸器系にも影響を及ぼすことが知られています。気道の上皮細胞にダイオキシンが作用すると、粘液の分泌が過剰になり、痰が増えたり咳が出やすくなったりします。カネミ油症の患者では、喀痰や咳嗽といった呼吸器症状が長期にわたって持続するケースが報告されています。

また、ダイオキシン類は肺組織においてAhR(アリール炭化水素受容体)の発現が高いため、肺への影響が出やすいと考えられています。ただし、これらの症状も高濃度曝露を受けた場合に限られ、通常の生活環境でこのような呼吸器症状が現れることはありません。

参照元:厚生労働省 ダイオキシン類による健康影響等の調査結果、カネミ油症の手引き

 

全身症状(倦怠感・頭痛・しびれ)

ダイオキシン曝露による全身症状として、倦怠感、頭痛、手足のしびれなどが報告されています。全身倦怠感は日常生活の質を低下させる要因となり、頭痛や手足のしびれも患者さんの生活に影響を与え続けています。これらの症状は、ダイオキシンが神経系に作用することや、全身の細胞で酸化ストレスを引き起こすことが関係していると考えられています。

参照元:厚生労働省 ダイオキシン類による健康影響等の調査結果、カネミ油症の手引き

 

 

ダイオキシンの健康リスクと長期的影響

ダイオキシンの健康への影響は、急性症状だけでなく、長期的な健康リスクも懸念されています。ダイオキシン類は体内に長期間残留し、様々な臓器や組織に影響を及ぼす可能性があります。特に発がん性、免疫系への影響、生殖機能への影響、内分泌攪乱作用などが科学的に研究されてきました。

ここではダイオキシンの長期的な健康リスクについて解説します。

 

発がん性リスクについて

ダイオキシン類の中で最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDは、国際がん研究機関(IARC)により人に対して発がん性のある物質として分類されています。動物実験では、ダイオキシン曝露によって肝臓がんや肺がんの発症が増加することが報告されています。

カネミ油症患者を対象とした長期追跡調査では、一般人と比較して肝臓がんや肺がんによる死亡率が高いことが確認されています。具体的には、肝臓がんが1.82倍、肺がんが1.75倍という結果が示されました。ただし、これは極めて高濃度のダイオキシンに曝露された特殊なケースであり、通常の生活環境における低濃度曝露での発がんリスクは限定的と考えられています。

参照元:厚生労働省 ダイオキシン類による健康影響等の調査結果、カネミ油症の手引き

 

免疫系への影響と免疫毒性

ダイオキシン類は免疫系にも影響を及ぼすことが研究で明らかになっています。動物実験では、ダイオキシン曝露により胸腺の萎縮や免疫細胞の機能低下が観察されており、人においても、高濃度曝露を受けた場合には免疫機能が低下する可能性が指摘されています。

また、免疫系が弱まることで、感染症にかかりやすくなったり、病気からの回復が遅れたりするリスクが考えられます。ただし、厚生労働省が実施した廃棄物焼却施設労働者の健康調査では、リンパ球幼若化試験やNK細胞活性などの免疫機能検査において、ダイオキシン曝露による明確な影響は認められませんでした。

参照元:厚生労働省 ダイオキシン類による健康影響等の調査結果、カネミ油症の手引き

 

 

日常生活におけるダイオキシン曝露の実態

ダイオキシンの健康リスクについて理解した上で、次に気になるのは「実際に私たちはどの程度ダイオキシンに曝露されているのか」という点でしょう。

ここでは日常生活におけるダイオキシン曝露の実態について解説します。

 

日本人の平均的なダイオキシン摂取量

厚生労働省が実施している調査によると、令和4年度の食品からのダイオキシン類一日摂取量は、平均0.42 pg TEQ/kg bw/日(範囲:0.13~0.96 pg TEQ/kg bw/日)と推定されています。この値は、日本における耐容一日摂取量(TDI)である4 pg TEQ/kg bw/日の約10%程度に相当し、安全性には十分な余裕があります。また、過去のデータと比較すると、ダイオキシン摂取量は経年的に減少傾向にあることが確認されています。

これは、廃棄物処理施設の技術向上や環境規制の強化により、環境中へのダイオキシン排出量が大幅に削減されてきた成果と言えます。体重50kgの成人で換算すると、一日あたり約21 pg TEQの摂取量となります。

参照元:厚生労働省 令和4年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査

 

食品からの摂取:魚介類・肉類・乳製品

ダイオキシン類は脂溶性が高いため、脂肪分を多く含む食品に蓄積しやすい特徴があります。特に魚介類は食物連鎖を通じてダイオキシンが濃縮されやすく、日本人のダイオキシン摂取源として最も寄与度が高いことが分かっています。

次いで肉類や卵類、乳製品などが摂取源となります。ただし、これらの食品から検出されるダイオキシン濃度は、健康に影響を及ぼすレベルではありません。魚介類には良質なタンパク質やDHA、EPAなどの有益な栄養素が豊富に含まれており、健康維持には欠かせない食品です。一部の食品を過度に摂取するのではなく、バランスの取れた食生活を心がけることが重要です。

参照元:厚生労働省 食品からのダイオキシン類一日摂取量調査、令和2年度調査結果

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