土壌汚染とは?原因・特定有害物質・調査の流れをやさしく解説
「工場の跡地を売却したい」「相続した土地に古い建物が残っている」。そんなときにふと気になるのが土壌汚染です。土の中は掘ってみるまで中身がわからず、見た目がきれいでも数十年前の操業に由来する汚染が残っていることがあります。この記事では、土壌汚染とは何かという定義から、主な原因、規制対象となる特定有害物質の分類、調査が必要になる場面、調査の進め方、対策の選択肢、費用の目安までを一度に見渡せるよう整理しました。専門用語は出てくる順にかみ砕いて説明します。はじめて調べる方でも、自分の土地が何に当てはまるのか判断できる状態を目指しました。
土壌汚染とは
土壌汚染とは、工場の操業や薬品の取り扱いなどが原因で、人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質が土や地下水に含まれてしまった状態を指します。まずは、その特徴と法律上の位置づけを押さえておきます。
▼見た目ではわからない「見えない汚染」という特徴
土壌汚染の厄介なところは、色や臭いで判別できないケースがほとんどだという点です。不法投棄のように目に見える形では現れません。しかも土壌は大気や水と違って動きにくいため、汚染物質がその場に長くとどまります。1970年代に使われた洗浄剤が、いまも地中に残っていた例は珍しくありません。
つまり土壌汚染の調査は「今の土地の様子」ではなく「過去にここで何が行われていたか」から始まります。この発想の順番が、後で説明する地歴調査につながります。なお、汚染された土壌が人体にどう影響するのかという経路の話は、当サイトの土壌汚染のリスクを扱った記事で詳しく説明しています。
▼土壌汚染対策法(土対法)における位置づけ
土壌汚染を規制する中心的な法律が、2003年に施行された土壌汚染対策法(土対法)です。目的は「土壌汚染による人の健康被害を防ぐこと」であり、土をきれいにすること自体が目的ではありません。この点を誤解すると、必要のない過剰な対策にお金をかけてしまいます。
土対法では、規制対象となる物質を特定有害物質として指定し、それぞれに土壌溶出量基準(地下水経由で口に入る量の基準)と土壌含有量基準(土を直接口や皮膚から取り込む量の基準)を定めています。基準を超えた土地は、汚染の摂取経路があるかどうかで「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定されます。基準超過が判明しても、ただちに掘削除去が義務づけられるわけではありません(出典:環境省「土壌汚染対策法のしくみ」)。
土壌汚染が起こる主な原因

土壌汚染の原因は、大半が過去の事業活動です。ただし人の活動とは無関係に、その土地の地質そのものが原因になることもあります。代表的な5つのパターンを見ていきます。
▼工場・事業所の跡地
もっとも多いのが工場跡地です。金属加工やメッキ工場では六価クロム・シアン化合物・鉛が、化学工場や印刷工場では有機溶剤が使われてきました。汚染は事故だけでなく、配管の微小な漏えい、ドラム缶の保管場所からのしみ出し、洗浄排水の地中浸透といった日常の積み重ねで生じます。操業当時は適法だった取り扱いが、現在の基準では汚染に該当するケースもあります。
▼ガソリンスタンド・給油所
給油所は地下タンクと配管を持つため、腐食による漏えいリスクを抱えています。問題になるのはベンゼン、そして旧来の有鉛ガソリンに由来する鉛です。なお油分そのもの(油臭・油膜)は土対法の特定有害物質ではありませんが、環境省の「油汚染対策ガイドライン」に基づく生活環境上の支障として、土地取引の場面ではほぼ必ず論点になります。
▼クリーニング店
意外に見落とされがちなのがクリーニング店の跡地です。ドライクリーニングの溶剤として長年テトラクロロエチレンが使われてきました。店舗の規模は小さくても、同じ場所で20年30年と使い続けた結果、局所的に高濃度の汚染が残っている例があります。市街地の小さな敷地だからと油断はできません。
▼農薬の使用
かつての農地や果樹園では、水銀系・有機塩素系の農薬や、殺虫剤として使われたヒ酸鉛に由来する砒素・鉛が検出されることがあります。農地を宅地や商業用地へ転用する際に判明するパターンが典型です。
▼自然由来の汚染
砒素・鉛・ふっ素・ほう素は、火山灰質土壌や海成堆積層などにもともと含まれていることがあります。誰も汚していないのに基準を超えるわけですが、土対法は原因を問わないため、この自然由来の汚染も規制の対象です。とくに掘削した土を場外に搬出する段階で問題化しやすく、地下工事を伴う開発では事前の確認が欠かせません。
特定有害物質の3分類
土対法が定める特定有害物質は全26物質で、性質によって3つに分類されています。分類が重要なのは、どのグループに該当するかで調査方法そのものが変わるからです。
▼第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)
テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ベンゼン、クロロエチレンなど12物質が該当します。共通するのは揮発しやすいこと。土の中でガス化して上がってくるため、土壌ガスを吸引して測る方法が使えます。一方で水に溶けて地下水とともに動くため、汚染範囲が敷地外まで広がりやすい点に注意が必要です。
▼第二種特定有害物質(重金属等)
カドミウム、六価クロム、シアン化合物、水銀、セレン、鉛、砒素、ふっ素、ほう素の9物質です。揮発しないので土そのものを採取して分析します。移動しにくい反面、その場にとどまり続けます。
▼第三種特定有害物質(農薬等)
シマジン、チオベンカルブ、チウラム、PCB、有機りん化合物の5物質です。こちらも表層の土を採取して分析します。物質ごとの基準値や検出されやすい土地の条件については、特定有害物質の3分類をより詳しく整理した解説で確認できます。
土壌汚染調査が必要になる場面
土地を持っているだけで調査義務が生じるわけではありません。土対法が調査を求めるのは、大きく分けて次の3つの場面です。自分がどれに当てはまるかを先に確認すると、必要な手続きの見当がつきます。どんな場合に調査義務が生じるかを詳しく解説した記事もあわせてご覧ください。
▼有害物質使用施設を廃止するとき(法3条)
水質汚濁防止法上の有害物質使用特定施設(メッキ槽、洗浄施設など)の使用をやめたときは、土地の所有者等が調査を実施し、原則として廃止から120日以内に都道府県知事へ報告します。ただし引き続き工場として使い、人が立ち入らないなど一定の条件を満たす場合は調査の一時免除が認められます。免除中でも900平方メートル以上の掘削などを行うときは届出が必要になり、そこで調査が求められます。
▼一定規模以上の土地の形質を変更するとき(法4条)
3,000平方メートル以上の土地の形質変更を行うときは、着手の30日前までに届出が必要です。過去に有害物質使用特定施設があった敷地では、この基準が900平方メートル以上に下がります。知事が「汚染のおそれがある」と判断すれば調査命令が出ます。解体工事で基礎やピットを撤去する行為も形質変更にあたるため、解体を計画する段階で面積要件を確認しておくと工程の手戻りを防げます。
▼健康被害のおそれがあるとき(法14条・自主申請)
周辺の井戸水から基準超過が確認されるなど、健康被害が生じるおそれがあると判断された場合、知事が調査を命じることがあります(法5条)。逆に、義務がなくても土地所有者が自主的に調査し、その結果をもとに区域指定を申請できる制度が法14条です。実務でもっとも多いのは、売買や担保設定の前に買主・金融機関から求められて行う自主調査です。義務ではないから不要、とはならない点は押さえておきたいところです。
土壌汚染調査の流れ
土壌汚染調査は、いきなり土を掘るわけではありません。書類調査から始めて対象範囲を絞り込み、必要な部分だけ深掘りする3段階で進みます。この順番のおかげで、多くの土地は初期段階で調査を終えられます。
▼地歴調査(フェーズ1)
登記簿、古い住宅地図、航空写真、行政に残る水質汚濁防止法の届出書類、そして当時を知る関係者へのヒアリングから、その土地の使われ方を年代順に復元する調査です。ここで汚染のおそれを3区分に整理し、「おそれなし」と判断されればそれ以上の調査は不要になります。費用も期間も後続工程より軽いため、まずここから始めるのが定石です。詳細は地歴調査が義務化される契機や費用を詳しく解説した記事で説明しています。
▼表層土壌調査・土壌ガス調査(フェーズ2)
地歴調査で汚染のおそれが残った区画について、実際にサンプルを採取します。第二種・第三種は敷地を10メートル格子(100平方メートルの単位区画)に区切り、表層0〜5センチと5〜50センチの土を採取して分析します。第一種は30メートル格子で土壌ガスを吸引します。この段階で、汚染の有無と平面的な広がりが確定します。
▼ボーリング調査(フェーズ3)
平面の次は深さです。汚染が確認された地点で掘削機を使い、深度1メートルごとに試料を採取して、汚染が地下のどこまで及んでいるかを調べます。ここで判明する汚染土量が、そのまま対策工事の見積り根拠になります。この段階を省くと対策費の精度は出ません。
土壌汚染対策の選択肢
基準超過が判明したら掘削除去しかない、と思われがちですが、実際には複数の選択肢があります。法の目的は摂取経路を断つことなので、土地の使い方に合った方法を選ぶのが基本です。
▼掘削除去
汚染土壌を掘り出し、許可を受けた処理施設へ搬出する方法です。汚染そのものがなくなるため区域指定も解除でき、売却や再開発を予定する土地では第一候補になります。反面、費用はもっとも高く、搬出時には管理票による運搬管理が必要です。
▼原位置浄化
土を掘り出さずに、その場で分解・抽出する方法です。微生物を利用するバイオレメディエーション、薬剤による化学分解、地下水の揚水処理などがあります。操業を続けながら実施できるのが利点ですが、効果の確認まで数か月から年単位の時間がかかります。売却期限が決まっている土地には向きません。
▼封じ込め・盛土
汚染土壌を動かさず、舗装・盛土・遮水壁などで人が触れない状態にする方法です。費用は抑えられますが、区域指定は形質変更時要届出区域として残り、将来掘削するときには改めて手続きと対策が必要になります。当面その土地を使い続ける場合には合理的な選択です。
調査・対策にかかる費用の目安
費用は敷地面積、汚染物質、深さ、搬出先までの距離で大きく変わります。あくまで概算ですが、検討の出発点として次の水準を目安にしてください。
| 工程 | 費用の目安 |
|---|---|
| 地歴調査(フェーズ1) | 20万〜50万円程度 |
| 土壌ガス調査・表層土壌調査(フェーズ2) | 100万〜300万円程度(1,000平方メートル規模の場合) |
| ボーリング調査(フェーズ3) | 1本あたり10万〜30万円程度 |
| 掘削除去 | 汚染土1立方メートルあたり2万〜5万円程度 |
| 原位置浄化・封じ込め | 掘削除去の3割〜7割程度 |
金額の幅が大きく見えるかもしれませんが、地歴調査の段階では数十万円規模で収まります。いきなり数千万円の判断を迫られるわけではないので、まずはフェーズ1で自分の土地の状況を把握し、そこから先を考える進め方で問題ありません。なお解体工事を伴う場合、解体・アスベスト調査・土壌汚染調査を別々の会社に発注すると、重機や仮設の段取りが重複して費用がかさみます。まとめて相談したほうが総額を抑えられるケースは多いです。
よくある質問
この記事に関してよく寄せられる質問をまとめました。
▼土地を売るときは必ず土壌汚染調査が必要ですか
法律上の義務ではありません。ただし買主や融資を行う金融機関から求められることが多く、実務では自主調査を行うのが一般的です。調査をしないまま売却して後から汚染が判明すると、契約不適合責任を問われるおそれもあります。
▼汚染が見つかった土地は売れなくなりますか
売れなくなるわけではありません。区域指定を受けた土地でも、対策内容と費用を明示したうえで価格に反映させれば取引は成立します。むしろ、汚染の有無と範囲がわからない状態のほうが買主はリスクを見積もれず、話が止まりやすくなります。
▼調査費用は土地の所有者と汚染原因者のどちらが負担しますか
土対法上の調査義務は原則として土地の所有者等にあります。ただし汚染の原因が第三者(過去の賃借人など)にあることが明らかな場合は、その原因者に費用を請求できる余地があります。賃貸借契約の原状回復条項の書きぶりが実際の負担を左右するため、契約書の確認が先です。
▼調査から対策完了までどのくらいの期間がかかりますか
地歴調査だけなら2週間から1か月程度です。フェーズ2の分析まで含めると2か月前後、ボーリング調査と対策工事まで進む場合は、規模にもよりますが半年から1年程度を見込んでください。原位置浄化を選ぶとさらに長くなります。
まとめ
土壌汚染は目で見て判断できないぶん不安になりやすいテーマですが、調べる手順も対策の選択肢も、法律のなかで整理されています。全体像をつかんでおけば、どこから手をつければよいかは見えてきます。
- 土壌汚染対策法の目的は健康被害の防止であり、基準超過がただちに掘削除去を意味するわけではない
- 主な原因は工場跡地・給油所・クリーニング店・農薬・自然由来の5パターン
- 特定有害物質は26物質あり、3分類のどれに当たるかで調査方法が変わる
- 調査義務が生じるのは法3条(施設の廃止)・法4条(一定規模以上の形質変更)・健康被害のおそれがある場合の3場面
- 調査は地歴調査から段階的に進めるため、多くの土地は初期段階で判断できる
次のアクションとしては、まず自分の土地の履歴を確認することをおすすめします。登記簿や過去の航空写真を見るだけでも、工場や給油所として使われていた時期があったかどうかはある程度わかります。売却を予定している方は、土壌汚染のある土地を売却する際の注意点をまとめた記事もあわせて読んでおくと、買主とのやり取りで慌てずに済みます。
解体工事とセットで土壌汚染が問題になる場面では、解体・アスベスト調査・土壌汚染対策を一括で相談できる体制があると、工程も費用も見通しが立てやすくなります。エコ・テックでは全国で建築物・プラントの解体から土壌汚染調査・対策までを手がけていますので、「うちの土地はどこから調べればよいのか」という段階のご相談でもお気軽にお問い合わせください。判断材料がそろえば、土壌汚染は必要以上に恐れるものではありません。
