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業界コラム

ダイオキシンの測定方法とその重要性

「ダイオキシンの測定って具体的にどうやるの?」「法的基準に適合した正確な測定方法を知りたい」「測定機器の選定や手順で失敗したくない」そう思う方もいるかもしれません。

実は、ダイオキシン測定を成功させるには、適切なサンプリング方法、前処理技術、分析機器の選定という3つのポイントを押さえることが重要です。

この記事では、ダイオキシンの具体的な測定手順から法的要求事項、測定精度を高めるためのノウハウまでの情報を詳しく紹介します。

 

ダイオキシンとは?基本知識と測定の必要性

ダイオキシンは、塩素を含む有機化合物の仲間で、とても強い毒性を持つ環境汚染物質です。工場での製造工程や廃棄物の焼却などで、意図せず発生します。環境中で長く分解されずに残り、生物の体内に蓄積しやすいため、世界各国で厳しく規制されています。

ここでは、ダイオキシンの特徴や人体への影響、そして測定が必要とされる理由について説明します。

 

ダイオキシンの化学的性質と毒性

ダイオキシンは、ベンゼン環に塩素原子が結合した化合物のグループで、理論上は75種類あります。その中でも、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-パラ-ジオキシンは最も毒性が高く、発がん性物質に分類されています。

化学的に非常に安定しており、自然環境では分解されにくく、土や水底に長く残ります。ごく低い濃度でも生物に深刻な影響を与え、急性では皮膚炎や肝障害、慢性的な暴露ではがんのリスク増加や免疫力の低下が報告されています。

参照元:厚生労働省【職場のあんぜんサイト】

 

環境中でのダイオキシンの発生源と分布

ダイオキシンは、廃棄物焼却施設や製鉄所、アルミ精錬所などの高温燃焼過程で多く発生します。特に塩化ビニルなど塩素を含むプラスチックを不完全に燃やすと大量に生成され、環境に放出されたダイオキシンは風で遠くまで運ばれ、最終的に土や水にたまります。

土に蓄積したものは農作物や地下水を通じて、底にたまったものは魚介類を汚染し、食物連鎖で人間の体に入り込む可能性が高いです。

 

人体への影響とリスク評価

ダイオキシンが体に入る主な経路は、汚染された食品を食べることです。特に脂肪分の多い魚、肉、乳製品からの摂取が全体の約9割を占めます。体に入ったダイオキシンは脂肪にたまり、7年ほどかけて半分になるほど長く残ります。

短期間に多く取り込むと、塩素挫瘡という皮膚症状や肝機能の障害が起こることがあり
非常に危険です。長期間にわたり少しずつ取り込む場合でも、肺がんや悪性リンパ腫などのがんのリスクが高まるほか、生殖機能や胎児の発育への悪影響も懸念されています。

参照元:厚生労働省「令和3年度 食品からのダイオキシン類一日摂取量調査結果」

 

 

ダイオキシン測定の法的要求事項と規制基準

ダイオキシンの測定は、環境基本法や大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの法律で厳しく管理されています。企業は定期的に測定を行い、その結果を行政に報告する義務があります。もし基準値を超えた場合は、改善命令や罰則が科されます。

ここでは、ダイオキシン測定に関する法律上のルールや基準、そして企業の責任について説明します。

 

環境基準法に基づくダイオキシン規制値

ダイオキシン類対策特別措置法により、大気、水質、土壌、底質それぞれに環境基準が設定されています。これらの基準値はTEQ(毒性等価係数)という概念を用いて、異なる種類のダイオキシン類の毒性を2,3,7,8-TCDDの毒性に換算して評価されます。

対象媒体 環境基準値 備考
大気 0.6pg-TEQ/m³ 年平均値
水質 1pg-TEQ/L 年平均値
土壌 1,000pg-TEQ/g
底質 150pg-TEQ/g

排出基準は、廃棄物焼却施設の場合、排ガス中のダイオキシン濃度を施設の規模に応じて0.1~5ng-TEQ/m³N以下にするよう定められています。製鉄所や電気炉などの特定施設にも、それぞれの用途に合わせた基準が設定されています。

これらの基準は、人の健康や生活環境を守るために科学的根拠に基づいて決められており、事業者には必ず守る義務があります。

 

測定頻度と報告義務について

ダイオキシン類対策特別措置法では、特定施設を持つ事業者に定期的な測定と結果の報告を義務付けています。廃棄物焼却施設は年1回以上、大規模施設は年2回の測定が必要です。

測定結果は30日以内に都道府県知事や政令指定都市の市長に報告し、測定は環境計量士や環境省登録機関がJIS規格に沿った公定法を使うことが決められています。事業者は測定記録を5年間保存し、行政の立入検査があった場合にはすぐに提示できる体制を整えておく必要があります。

参照元:愛知県「測定の義務等(ダイオキシン類)」ページ

 

違反時の罰則と企業責任

ダイオキシン類対策特別措置法に違反すると、段階的に処分が行われます。基準値を超えた場合は、まず改善命令が出され、30日以内に改善計画書を提出し、実行しなければなりません。改善命令に従わなかったり、虚偽の報告をした場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

さらに、測定結果を報告しなかったり、虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金です。加えて、汚染が発覚すると健康被害や環境被害に対する損害賠償責任が生じ、企業の信用低下によって事業継続に大きな影響が出る恐れがあります。そのため、法律を守ることは経営上の重要なリスク管理といえます。

参照元:三共熱研株式会社【ダイオキシン類対策特別措置法の概要】

 

 

ダイオキシンのサンプリング方法と注意点

ダイオキシンを正確に測定するには、まずサンプリング(試料採取)を正しく行うことが欠かせません。採取の時点で汚染や劣化が起きると、その後の分析結果に大きな誤差が出てしまうため、厳しい手順と品質管理が必要です。

ここでは、正確で信頼できる測定結果を得るための、採取場所の選び方、適切な器具の使い方、汚染を防ぐ方法について説明します。

 

適切なサンプリング地点の選定方法

サンプリング地点の選び方は、測定の目的や対象によって異なります。大気の場合は、発生源からの距離や風向・風速、地形の影響を考えて、代表的な場所を選び、焼却施設の近くでは、風下側で住宅地に近い場所を優先し、比較用に風上側にも測定点を設けます。水質の場合は、河川は橋の上から流れの中心部分で採取し、湖や沼では表面から底まで深さごとに採取しましょう。

土壌や底質の場合は、表面から一定の深さまで複数の層を採取して、汚染の広がりを正確に把握します。また、採取場所周辺の土地利用や過去の汚染状況も事前に調べ、異常な数値が出たときに原因を特定できるようにしておくことが大切です。

 

サンプリング器具と保存条件の管理

ダイオキシン類のサンプリングでは、極低濃度を正確に定量するため、専用器具の使用と厳格な保存条件の管理が求められます。大気試料の採取には、石英繊維フィルターとポリウレタンフォーム(PUF)を組み合わせたハイボリュームエアサンプラーを用い、24時間連続で採取して十分な代表性を確保します。

土壌・底質試料の採取では、ステンレス製またはガラス製の器具を使用し、採取後は冷暗所に保管し、できるだけ早く前処理に着手します。すべての採取器具は使用前にアセトンおよびヘキサンで十分に洗浄し、ブランク試験により汚染がないことを確認しましょう。

採取した試料は、温度・光・酸素による分解を防ぐため密封容器に収め、冷暗所で保存し、可能であれば48時間以内に分析を開始することが望まれます。

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