初心者向け:焼却炉とは何かを徹底解説
「焼却炉って何?」「会社で焼却炉の導入を検討するように言われたけど、何から調べればいいか分からない…」「法律とか難しそうで不安」そう思う方もいるかもしれません。
実は、焼却炉の基本を理解するには、仕組み・種類・法規制の3つのポイントを押さえれば、初心者でも最適な判断ができるようになります。
この記事では、焼却炉の基本、その種類や仕組み、導入時に知っておくべき法規制などを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
焼却炉とは?基本的な仕組みと役割

焼却炉は、ゴミや不要になったものを高温で燃やして処理する設備です。家庭から出るごみをまとめて処理する大きな施設もあれば、工場や病院で使われる小型の焼却炉もあり、使われ方や大きさはさまざまです。
ここでは、焼却炉の基本的な仕組みや特徴をわかりやすく説明していきます。
▼焼却炉の定義と基本概念
焼却炉は、廃棄物を燃やして量を大きく減らすと同時に、有害な物質を分解するための装置です。単に「燃やす」だけではなく、燃やす温度や時間をきちんとコントロールすることで、ダイオキシンのような有害な物質が出にくいように処理します。
焼却炉は主に「燃焼室」「二次燃焼室」「排ガス処理装置」などからできています。廃棄物はまず燃焼室で高温で燃やされ、そのあとさらに高温の二次燃焼室で燃やされます。この二段階の仕組みによって、有害な物質が出るのを最小限に防いでいるのです。
▼焼却炉が果たす3つの主な役割
焼却炉は、私たちの生活や産業に欠かせない大切な役割を持っています。主な役割は3つあります。
- 1. 廃棄物の減量化:燃やすことで廃棄物の体積を約10分の1から20分の1まで削減
- 2. 衛生的な処理:高温で焼却することで病原菌やウイルスを完全に死滅させ、公衆衛生を守る
- 3. エネルギー回収:燃焼時に発生する熱を利用して発電や温水供給を行い、資源を有効活用する
こうした働きによって、焼却炉は最終処分場の延命や感染症の予防、資源を循環させる社会づくりに大きく役立っています。特に最近では、「廃棄物を処理する」だけでなく「エネルギー資源として活用する」視点がますます重視されています。
▼焼却炉の基本的な燃焼の仕組み
焼却炉での燃焼は、乾燥・熱分解・燃焼という3つの段階を経て進みます。最初に、ごみや廃棄物が炉に入ると、高温の環境で水分が蒸発して乾燥が行われます。次に温度がさらに上がると「熱分解」という段階に入り、ごみがガスと炭のようなものに分かれていきます。
それらのガスや炭が酸素と結びついてしっかり燃え、熱エネルギーと灰が生まれます。
焼却炉の種類と特徴を分かりやすく解説

焼却炉にはいくつかの種類があり、処理するごみの種類や量、設置する場所の条件によって、適したタイプを選ぶ必要があります。種類ごとに構造や機能、使い道が大きく異なるため、導入を考えるときは自社の目的や状況に合ったものを選ぶことが大切です。
ここでは、焼却炉の主な分類方法と、それぞれの特徴について説明していきます。
▼処理対象物による焼却炉の分類
焼却炉は、処理するごみの種類によっていくつかに分けられます。家庭から出る燃えるごみを処理するのが「一般廃棄物焼却炉」で、市町村の清掃工場がその代表です。工場や事業所から出るプラスチックや木くず、繊維くずなどを処理するのが「産業廃棄物焼却炉」です。
また、病院などで出る注射針や血液が付いたものを高温で安全に処理する「医療廃棄物専用焼却炉」は、感染症の予防に役立っています。さらに、動物専用の焼却炉や、重要な書類を安全に処理する機密文書焼却炉など、用途に合わせた特殊なタイプもあります。
▼燃焼方式による焼却炉の違い
焼却炉の燃焼方式は、処理する廃棄物の特性や施設の規模に応じて選択されます。主な燃焼方式は以下の3つです。
- 1. ストーカ式焼却炉:火格子上で廃棄物を移動させながら燃焼させる最も一般的な方式で大量処理に最適
- 2. 流動床式焼却炉:砂などの粒子を高温空気で流動させる中で廃棄物を燃焼させ、水分が多い廃棄物や性状が不均一な産業廃棄物の処理に最適
- 3. 回転式焼却炉:円筒形の炉体を回転させながら燃焼させる方式で、均一な燃焼が得られ、医療廃棄物や動物の死体処理などに最適
それぞれの方式にはメリットがあるため、廃棄物の種類や量、そして予算に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
▼規模別の焼却炉タイプと適用場面
焼却炉は処理能力によって規模が分類され、施設のニーズに応じて選択されます。主な規模分類は以下の通りです。
- 1. 小型焼却炉:1日数十〜数百キログラムの処理能力で、小規模工場や病院、設置スペースが限られた施設に最適
- 2. 中型焼却炉:1日数トンの処理能力を持ち、中規模工場で自社廃棄物を効率的に処理でき外部委託コストを削減可能
- 3. 大型焼却炉:1日数十〜数百トンの処理能力があり、市町村の清掃工場や大規模産業廃棄物処理施設で使用可能
廃棄物の量を正しく把握し、それに合った大きさの焼却炉を選ぶことが、効率よく運用し、コストを無駄なく管理するために大切です。
焼却炉の導入に必要な法規制と許可
焼却炉を導入するときには、環境保護や公衆衛生の面から、さまざまな法律や規制を守らなければなりません。
ここでは、焼却炉に関わる主な法律、必要な届出や許可申請、さらに排ガスに関する基準について説明していきます。
▼焼却炉に関わる主な法律と規制
焼却炉の設置と運用には複数の法律が関わってきます。主な法律は以下の通りです。
- ⚫︎廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律):焼却炉の構造基準や維持管理基準を定め、適正な廃棄物処理を義務付け
- ⚫︎大気汚染防止法:排ガス中の有害物質濃度の基準を設定し、ダイオキシン類や窒素酸化物などの排出を規制
- ⚫︎環境影響評価法:一定規模以上の施設では環境アセスメントの実施が必要
これらの法律は焼却炉の安全性と環境保全を確保するために設けられており、違反すると罰則の対象となるため、導入前に十分な確認が必要です。
▼焼却炉設置に必要な届出と許可申請
焼却炉を設置するには、処理するごみの種類や施設の規模に応じて、行政への届出や許可申請が必要です。たとえば、産業廃棄物を処理する施設として設置する場合は、都道府県知事や政令市の市長から許可を受けなければなりません。
また、焼却炉は「ばい煙を出す施設」として扱われるため、大気汚染防止法に基づき、設置の60日前までに都道府県知事などへの届出が必要です。さらに、建物として焼却炉を設置する場合には、建築基準法に基づく確認申請が求められることもあります。
▼排ガス基準と環境保全の義務
焼却炉から出る排ガスには、環境を守るために厳しい基準が設けられています。特にダイオキシン類については、焼却炉の種類や規模ごとに排ガス中の濃度の上限が決められており、定期的に測定することが義務づけられています。
また、ばいじん(粉じん)や硫黄酸化物、窒素酸化物といった大気を汚す物質についても、排出できる濃度や量に基準があります。さらに、燃焼温度をしっかり管理することや、排ガス処理装置を正しく運転することなど、日常の維持管理ルールも定められています。
こうした基準を守るためには、適切な排ガス処理設備を整えることと、継続的に管理していくことが欠かせません。
焼却炉のメリットとデメリット
焼却炉を導入する際には、良い点だけでなく不利な点もしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、焼却炉を導入する主なメリットや注意すべきデメリットについて説明します。
▼焼却炉導入の3つの主なメリット
焼却炉を導入することで得られる主なメリットは以下の3つです。
- ⚫︎廃棄物処理コストの削減:外部業者への委託費用を削減でき、長期的には大きなコスト削減可能
- ⚫︎廃棄物の迅速な処理:自社内で処理できるため、廃棄物の保管スペースを削減でき、衛生的な環境を維持に効果的
- ⚫︎機密保持の強化:機密文書や製品サンプルなどを外部に出さずに処理でき、情報漏洩のリスクを最小限に防止
これらのメリットは、特に廃棄物が継続的に多く出る企業にとって大きな価値があります。自社の状況に合わせて、どのメリットを優先するかをよく考えることが大切です。
▼焼却炉導入で注意すべきデメリット
焼却炉導入には注意すべきデメリットもあります。主なデメリットは以下の通りです。
- ⚫︎高額な初期投資:焼却炉本体だけでなく排ガス処理設備や設置工事費用を含めると数百万円から数千万円の投資が必要
- ⚫︎維持管理の負担:定期的な点検やメンテナンス、排ガス測定などに継続的な人員と費用が必要
- ⚫︎法規制への対応:基準が厳しくなった場合には追加の設備投資が求められる
- ⚫︎近隣への配慮:煙や臭いに関する苦情対応が必要になる可能性がある
これらのデメリットを事前に把握し、対応策を準備しておくことで、導入後のトラブルを防ぐことができます。
