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アスベストと石綿の違いとは全く同じ物質である理由と関連疾患

解体工事の説明書には「石綿」、ニュースでは「アスベスト」——同じ話題を扱っているはずなのに、なぜか言葉が違う。そう感じて混乱している方は少なくありません。

「石綿は天然素材で安全なのかも」「アスベストの方が危険なんじゃないか」と感じている方もいるかもしれませんが、この認識には注意が必要です。結論から言えば、アスベストと石綿は全く同じ物質であり、危険性もまったく同じです。

この記事では、二つの言葉が使い分けられる理由から、石綿肺をはじめとする健康被害の仕組み、紛らわしいロックウールとの違い、そして解体・改修時に必要な法律上の対応まで、順を追って解説します。

「なんとなく怖いけれどよくわからない」というモヤモヤを、ここで一度すっきりと整理しましょう。

結論:アスベストと石綿は全く同じ物質で違いはない

まず最初に、この記事でいちばん大切な結論をお伝えします。アスベストと石綿は、名前こそ異なりますが、指している物質はまったく同じです。使い分けられているのは言語の違いによるものであり、危険性や性質に差はありません。

天然の鉱物繊維を指す言葉で危険性は100%同じ

アスベスト(石綿)は、自然界に存在する繊維状のけい酸塩鉱物です。「石綿(せきめん・いしわた)」は日本語での呼び名であり、「アスベスト」はオランダ語に由来する外来語です。どちらも同じ鉱物を指しており、特別な違いはありません。

石綿は蛇紋石族と角閃石族の2種類に大別され、全部で6つの種類があります。日本でよく使われてきたのは、白石綿(クリソタイル)、茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)の3種類です。中でも白石綿は柔軟性が高く加工しやすいため、世界で使用されたアスベストの9割以上を占めてきました。

この物質が問題とされるのは、繊維がきわめて細かく、空気中に飛散して人体に吸い込まれやすいためです。一度肺に入り込んだ繊維は自然に排出されにくく、長期間にわたって体内に蓄積されます。こうした特性が、石綿肺や肺がんなどの深刻な健康被害を引き起こす原因になります。

かつては耐熱性・耐摩耗性・耐薬品性に優れた「奇跡の鉱物」として、建築材料や工業製品に幅広く活用されてきました。しかし人体への有害性が明らかになり、日本では2006年までに製造・輸入・使用が全面的に禁止されています。

なぜ言葉が使い分けられるのか(法律と一般用語の違い)

現在、法律や行政の文書では「石綿」という表記が使われることが一般的です。石綿障害予防規則、大気汚染防止法など、国が定めるルールでは「石綿」が正式な用語として採用されています。一方、「アスベスト」はニュース報道や一般の会話の中でよく使われる呼び名です。

国土交通省のQ&Aでも「一般的には『石綿(いしわた)』と『アスベスト』が同じ意味で使用されている」と明記されており、両者に意味の違いはないことが公式に確認されています。

つまり「石綿」と「アスベスト」の違いは、和語か外来語かというだけの話です。「お米」と「ライス」が同じものを指すように、どちらの言葉を使っても指している物質は同一です。行政の書類で「石綿」という表記を見ても、ニュースで「アスベスト」という言葉を聞いても、同じ物質について語られていると理解して問題ありません。

石綿肺とアスベストの違いと関連する健康被害

「石綿肺」という言葉を目にして、「石綿肺とアスベストは別の話なのだろうか」と疑問に感じた方もいるかもしれません。石綿肺とはアスベスト(石綿)の吸い込みによって引き起こされる疾患の一つです。アスベストという「原因物質」と、石綿肺という「疾患名」の関係を整理しておきましょう。

アスベストを吸い込むことで発症する石綿肺(じん肺)

石綿肺(せきめんはい)は、アスベストの繊維を長期間にわたって吸い込み続けた結果、肺の組織が線維化してしまう病気です。医学的には「じん肺」の一種に分類されます。

肺が線維化すると、本来しなやかに動くはずの肺が硬くなり、酸素をうまく取り込めなくなります。進行するにつれて息切れや呼吸困難が現れ、日常生活にも支障をきたすようになります。発病してからある程度進行するまで無症状のことが多く、気づいたときには病状が進んでいるケースも少なくありません。潜伏期間は15〜20年とされています。

アスベストの繊維が危険なのは、その構造に理由があります。繊維は非常に細く、鋭利な針のような形状をしているため、肺の深部まで到達しやすく、体内の免疫細胞を刺激して慢性的な炎症を引き起こします。この炎症が続くことで、徐々に肺組織が傷ついていくのです。

肺がんや悪性中皮腫などの深刻なリスクと潜伏期間

アスベストが引き起こす健康被害は、石綿肺だけにとどまりません。肺がんや悪性中皮腫など、命にかかわる疾患との関連も明らかになっています。

肺がんについては、アスベストへの暴露(ばく露)から発症まで15〜40年の潜伏期間があるとされています。暴露した量が多いほど発症リスクが高まることが知られており、特に過去に建設・製造業などでアスベストを扱っていた方は注意が必要です。

悪性中皮腫は、肺を包む胸膜や、腹腔内の臓器を包む腹膜などにできる悪性の腫瘍です。アスベストが原因疾患として強く関連しており、若い時期にアスベストを吸い込んだ方が発症しやすいことが知られています。潜伏期間は20〜50年と非常に長く、世界保健機関(WHO)の調査では2019年に世界で24万人を超える人々がアスベスト関連疾患で亡くなったと報告されています。

日本のアスベスト関連疾患による死亡数は、アメリカ・中国に次いで世界第3位というデータもあります。国内では高度経済成長期にアスベストが大量に使用されたため、今後もしばらくは関連疾患の患者数が増加すると見込まれています。

なお、アスベストは「そこに存在すること自体」が直ちに問題なのではありません。飛び散り、吸い込むことが問題です。アスベストを含む建材が劣化して粉砕されたり、適切な対策なしに解体工事が行われたりしたときに、はじめて健康リスクが生じます。

アスベスト(石綿)によく似たロックウールとの違い

解体や改修の現場で「ロックウール」という建材名を耳にしたことがある方も多いでしょう。アスベストと同じく繊維状の素材であり、断熱材や吸音材として広く使われてきた建材です。見た目が似ていることから「アスベストと同じもの?」と誤解されやすいのですが、両者はまったく異なる物質です。

ロックウール(岩綿)は人工的に作られた鉱物繊維

ロックウールは、玄武岩や鉄炉スラグなどを高温で溶かし、人工的に繊維状に加工した鉱物繊維です。別名「岩綿(いわわた)」とも呼ばれます。これに対してアスベスト(石綿)は、自然界に存在する天然の鉱物繊維です。製造方法も由来もまったく異なります。

アスベストとロックウールが混同されやすい理由は、どちらも断熱材・吸音材・耐火材として使われてきた歴史があるためです。かつてアスベストが使用禁止となった後、ロックウールはその代替品として普及しました。用途が同じであるため、外見上も似た印象を与えることがあります。

ただし、ひとつ注意が必要な点があります。古い建物の吹き付け材の中には、ロックウールとアスベストを混合して使用したものが存在します。「吹き付けロックウール」と呼ばれるこうした材料は、アスベストを含む可能性があるため、2006年以前に建てられた建物では専門家による分析調査が必要です。ロックウールという名称だからといって、自己判断で安全と決めつけることは危険です。

グラスウールなどの断熱材は発がん性がなく安全

ロックウールと並んで住宅の断熱材としてよく使われるのが、グラスウールです。グラスウールはリサイクルガラスを主原料とした人工の無機繊維で、ロックウールと同様にアスベストの代替品として普及しました。

WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)の評価では、アスベストは人に対する発がん性が明確に証明された「グループ1」に分類されています。一方、グラスウールとロックウールは「グループ3(人に対する発がん性物質として分類できない)」に位置づけられており、コーヒーやお茶と同レベルのきわめてリスクの低いカテゴリーです。

また、アスベストの繊維と比べてロックウールやグラスウールの繊維は数十倍〜100倍ほど太いとされています。繊維が太いと、仮に吸い込んでも肺の深部まで届きにくく、体外に排出されやすいという特性があります。この繊維の太さの違いが、安全性の大きな差につながっています。

まとめると、アスベスト・ロックウール・グラスウールの関係は以下のように整理できます。

  • アスベスト(石綿):天然の鉱物繊維、発がん性あり、現在は使用禁止
  • ロックウール(岩綿):人工の鉱物繊維、発がん性なし、現在も使用可能(ただし古い吹き付け材にはアスベスト混合品が存在する)
  • グラスウール:人工のガラス繊維、発がん性なし、現在も使用可能

アスベスト(石綿)の解体・改修時に必要な対応

古い建物を取り壊す、あるいはリフォームするときに「うちの家にもアスベストがあるかもしれない」と不安を感じる方は多くいます。1975年以前の吹き付け材や、2004年頃まで使用されたスレートボードなど、かつてアスベストは幅広い建材に使われていました。適切な対応を取れば安全に工事を進められますので、ここで必要な手順を確認しておきましょう。

自己判断によるDIY解体の危険性

「自分でできそうだから」と、アスベストが含まれている可能性のある建材を自己判断でDIY解体することは、非常に危険です。アスベストが含まれた建材を適切な対策なしに切断・破砕すると、微細な繊維が空気中に大量に飛散します。そのままの状態で吸い込めば、将来的に石綿肺や肺がん、悪性中皮腫などの重大な健康被害につながる可能性があります。

建物の外観や建材の見た目だけでは、アスベストが含まれているかどうかを判断することは困難です。また「古い家だから大丈夫だろう」「石綿っぽくない」という感覚的な判断も禁物です。アスベストの有無は、専門家による調査と分析を通じてはじめて正確に確認できます。

もし自己判断でDIY解体を行い、後からアスベストが含まれていたことが判明した場合、周囲の住民や家族も飛散した繊維を吸い込んでいる可能性があります。「自分だけの問題」にとどまらない点でも、自己判断は慎むべきです。

法律で義務化された石綿事前調査と専門業者への依頼

現在、建築物の解体・改修工事を行う際は、石綿障害予防規則(石綿則)に基づき、アスベストの有無を事前に調査することが法律で義務づけられています。

さらに2023年10月からは、この事前調査を「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行うことが義務化されました。有資格者とは、厚生労働大臣が定める講習を受講して修了試験に合格した専門家です。一般建築物石綿含有建材調査者・特定建築物石綿含有建材調査者・一戸建て等石綿含有建材調査者の3種類があり、調査する建物の種類によって対応する資格が異なります。資格を持たない者が調査を行うことはできません。

一定規模以上の工事では、調査結果を労働基準監督署と都道府県等の両方に報告する義務もあります。対象となるのは、解体部分の床面積が80㎡以上の解体工事や、請負金額が税込100万円以上の改修工事などです。調査結果は3年間保存することも求められています。

工事の発注者(建物の所有者など)も、有資格者が調査・対策を実施できるよう、工期や費用面で配慮・協力する責任があります。アスベスト対策を省略したり、費用削減のために見て見ぬふりをしたりすることは、法律違反につながるだけでなく、関係者全員の健康を脅かすことになります。

解体・改修を検討しているなら、まず石綿含有建材調査者の資格を持つ専門業者に相談することが最初のステップです。調査依頼から結果が届くまでには通常1〜2週間程度かかるため、工事の計画段階から余裕を持って動き出すことが重要です。

まとめ

この記事で解説してきた内容を振り返りましょう。

  • アスベストと石綿は全く同じ物質であり、違いは日本語か外来語かという呼び名だけです
  • 法令や行政では「石綿」が正式な用語、ニュースや会話では「アスベスト」が使われる傾向があります
  • 石綿肺はアスベストを吸い込むことで肺が線維化する病気で、潜伏期間は15〜20年とされています
  • 肺がんや悪性中皮腫など、より深刻な疾患のリスクもあります(潜伏期間は最長50年)
  • ロックウールやグラスウールはアスベストとは異なる人工繊維で、発がん性は認められていません
  • ただし古い建物の吹き付けロックウールにはアスベストが混合されている場合があり、専門調査が必要です
  • 2023年10月から、建築物の解体・改修工事の石綿事前調査は有資格者による実施が義務化されています

アスベストが怖いのは、吸い込んでからずっと後になって症状が現れるという点です。今は何も感じなくても、数十年後に健康被害として現れるケースがあります。だからこそ、解体や改修の前に専門業者へ相談し、正しい手順で対処することが何より大切です。

「もしかしてうちの家も大丈夫かな」と少しでも気になったなら、まずは石綿含有建材調査者の資格を持つ専門業者に問い合わせてみてください。正確な調査と適切な対策が、あなたと家族の健康を長く守ることにつながります。

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