地中埋設物とは?土地売買で見つかったときの対応と費用の考え方
契約を済ませた土地、あるいはこれから買う土地を掘ってみたら、コンクリートガラや古い浄化槽が出てきた。撤去費用は誰が払うのか、契約書のどこを見ればよいのか、誰に相談すればよいのか分からず、不安になる方は少なくありません。地中埋設物の扱いは、民法の「契約不適合責任」と売買契約の特約によって決まります。この記事では、解体工事中の作業手順ではなく、土地売買での責任の所在、費用負担の考え方、交渉と特約に絞って整理します。読み終えるころには、まず何をすべきか、契約書のどこを確認し、誰に何を相談すればよいかが分かるはずです。
地中埋設物とは?土地売買で問題になる主なもの

地中埋設物とは、地表からは見えない地中に残された人工物や廃棄物の総称です。売買の場面では「何が埋まっているか」より「契約時に想定されていたか」が問題になります。
▼地中埋設物の主な種類
土地売買で見つかりやすいのは、次のようなものです。
- 旧建物の基礎コンクリート、杭(PC杭・木杭など)
- コンクリートガラ、レンガ、瓦などの解体廃材
- 使われなくなった浄化槽、井戸、地下タンク
- 古い配管、ケーブル、廃プラスチックや陶磁器くず
過去に建物を解体した際、基礎や廃材を地中に残したまま埋め戻した土地で見つかるケースが目立ちます。種類ごとの特徴や解体工事での扱いは、解体工事における地中埋設物の概要で詳しく紹介しています。
▼なぜ売買の場面でトラブルになりやすいのか
地中埋設物は、売主自身も存在を知らないことが多いものです。相続した土地や、何十年も前に取得した土地であれば、過去の解体の経緯を誰も把握していない場合もあります。
一方、買主は新築や建て替えの着工後に初めて気づくため、工期の遅れと追加費用が同時に発生します。撤去費用が数十万円から数百万円に及ぶこともあり、「知らなかった売主」と「想定外の出費を抱えた買主」の利害が正面からぶつかりやすいのです。
見つかった直後にやること
発見直後の対応は、その後の交渉で使える証拠の量を左右します。慌てて片付ける前に、次の3点を押さえてください。
▼工事や作業を止めて現状を記録する
まず掘削作業を止め、埋設物が出てきた状態のまま記録します。
- 埋設物の全体と近景を、日付が分かる形で写真・動画に残す
- 出てきた位置(敷地図への書き込み)と深さ、おおよその量をメモする
- 施工会社に、発見の経緯と状況を書面やメールで報告してもらう
工事中の具体的な対応方法は、工事中に埋設物が見つかった場合の対応方法にまとめています。
▼契約書を確認し、売主・買主・仲介会社へ連絡する
次に売買契約書と重要事項説明書を開き、「契約不適合責任」「瑕疵担保責任」「現状有姿」「地中埋設物」といった記載があるかを確認しましょう。あわせて、責任を負う期間や通知の期限も見ておきます。
買主であれば、仲介会社を通じて売主に「埋設物が見つかった」という事実を早めに伝えてください。この段階では費用の請求まで固めなくても構いません。発見の事実と記録を共有しておくことが、後の手続きを守ることにつながります。
▼勝手に撤去・埋め戻しをしない理由
工期が迫っていると、すぐに撤去したくなるものです。しかし相手方に知らせないまま撤去や埋め戻しをすると、「本当に埋まっていたのか」「量は妥当か」を後から確認できなくなります。結果として、費用の請求が認められにくくなるおそれがあります。
工期の都合でどうしても撤去を急ぐ場合は、売主や仲介会社に立ち会いを求めるか、少なくとも撤去前の状況と撤去量を記録してから進めましょう。
地中埋設物の責任は誰にある?契約不適合責任の考え方
売主が責任を負うかどうかは、主に民法の契約不適合責任で判断します。ここでは基本的な仕組みと、判断の分かれ目を整理します。
▼契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、引き渡された土地や建物が、種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合に売主が負う責任です。2020年4月施行の改正民法で、従来の「瑕疵担保責任」から改められました(法務省「民法(債権法)改正」)。
買主が売主に求められる主な内容は、次の4つです。
| 請求の種類 | 内容 | 根拠(民法) |
|---|---|---|
| 追完請求 | 埋設物の撤去など、契約内容に合う状態にするよう求める | 562条 |
| 代金減額請求 | 追完がされない場合などに、代金の減額を求める | 563条 |
| 損害賠償請求 | 撤去費用や工期遅延による損害の賠償を求める(売主の帰責事由が必要) | 564条・415条 |
| 契約解除 | 不適合が軽微でない場合に、契約を解除する | 564条・541条・542条 |
旧法の「隠れた瑕疵」と違い、買主が知っていたかどうかより「契約で何を約束したか」が判断の中心になる点が特徴です。土壌汚染が絡むケースは、土壌汚染のある土地を売却する際の契約不適合責任とトラブル防止もあわせて参考にしてください。
▼責任の有無を分ける判断ポイント
埋設物が見つかっても、必ず売主の責任になるわけではありません。主に次の点から判断されます。
- 契約の目的:住宅の建築用地として売ったのか、資材置き場として現状のまま売ったのか
- 埋設物の規模:通常の建築工事に支障が出るほどの量・大きさか、少量のガラ程度か
- 契約時の説明:重要事項説明書や物件状況報告書に、旧建物の存在や埋設物の可能性が書かれていたか
- 特約の内容:責任の免除や期間の短縮について定めがあるか
たとえば住宅用地として売買した土地から、建物の基礎を打てないほどの旧基礎が出てきた場合は、契約不適合と判断されやすくなります。反対に、こぶし大のガラが少し混じる程度なら、通常想定される範囲として不適合に当たらないとされる可能性があります。
▼通知期間を過ぎるとどうなるか
種類・品質の不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則として請求ができなくなります(民法566条)。ただし、売主が引き渡し時に不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合は、この制限は適用されません。
また実務では、特約で「引き渡しから3か月」などと期間を短く定めている契約も多く見られます。通知は「不適合がある」という事実を伝えれば足りるとされていますが、期限が迫っているなら、まず書面やメールで伝えておくことが大切です。なお、権利そのものも消滅時効にかかる点には注意しましょう。
撤去費用は誰が負担する?
撤去費用の負担は、契約不適合に当たるかどうかと、特約の内容によって決まります。売主負担・買主負担になりやすい典型例を見ていきます。
▼売主負担となりやすいケース
- 建築用地として売買し、通常の基礎工事ができない量の埋設物が出てきた
- 売主が埋設物の存在を知っていたのに、買主に伝えていなかった
- 契約書に免責特約がなく、通知期間内に買主が通知した
- 売主が宅地建物取引業者で、買主が一般の個人である
売主が宅建業者で買主が業者でない場合、引き渡しから2年以上とする通知期間の特約を除き、民法より買主に不利な特約は無効になります(宅地建物取引業法40条、国土交通省所管)。
▼買主負担となりやすいケース
- 契約時に埋設物の存在や可能性が説明され、それを前提に価格が決まっていた
- 有効な免責特約があり、売主が埋設物を知らなかった
- 通知期間を過ぎてから請求した
- 見つかった量が少なく、通常想定される範囲にとどまる
とくに相場より安く購入した土地では、「埋設物のリスクを価格に織り込んでいた」と判断されることがあります。
▼現状有姿・免責特約の効力と限界
「現状有姿で引き渡す」という文言は、それだけで売主の責任をすべて免除するものとは限りません。引き渡しの状態を定めた表現にすぎないと解釈されることもあり、責任を免れるには「契約不適合責任を負わない」と明記した免責特約が必要になるのが一般的です。
ただし免責特約にも限界があります。売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れません(民法572条)。さらに、事業者が売主で消費者が買主の場合は、消費者契約法により免責条項が無効とされる場合があります。特約の有効性は契約の当事者や経緯によって変わるため、個別の判断は弁護士に確認しましょう。
▼見積書の内訳で確認する項目
撤去費用の金額は、埋設物の種類・量・深さ、重機の搬入条件などで大きく変わります。相場の数字だけで妥当性を判断せず、見積書の内訳を確認することが交渉の出発点です。
- 掘削・撤去の作業費と重機費用
- 産業廃棄物としての運搬費・処分費(品目ごとの数量と単価)
- 埋め戻し・整地に使う土砂の費用
- 追加調査や分析が必要な場合の費用
数量が「一式」とだけ書かれた見積もりは、相手方から金額の根拠を問われやすくなります。品目ごとの数量と単価が分かる形で出してもらいましょう。
売主・買主それぞれの交渉の進め方
同じ埋設物でも、立場によって準備すべきことは異なります。それぞれの進め方と、相談先の使い分けを整理します。
▼買主の場合:請求できる内容と伝え方
買主は、記録写真、施工会社の報告、撤去見積書をそろえたうえで、売主に請求内容を伝えます。撤去の実施を求めるのか、費用の支払いや代金の減額を求めるのかを明確にすると、話がかみ合いやすくなります。
感情的なやり取りになりそうなときは、仲介会社に間に入ってもらいましょう。期限が近い場合や話し合いが進まない場合は、内容証明郵便での通知も選択肢になります。
▼売主の場合:過大な請求への備え
売主の側も、請求を受けたら事実確認から始めます。現場写真や撤去量の根拠を求め、契約書の特約や通知期間に照らして責任の範囲を確認しましょう。
撤去量が実際より多く見積もられていたり、本来の工事費が上乗せされていたりすることもあります。必要に応じて別の専門会社に見積もりを依頼し、金額の妥当性を比べると、冷静に話し合いを進められます。
▼弁護士・宅建業者と解体・環境の専門会社の相談範囲
相談先は、扱う内容で分けると迷いません。
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 弁護士 | 責任の有無、特約の有効性、請求額の妥当性、交渉・調停・訴訟 |
| 宅建業者(仲介会社) | 契約書・重要事項説明の内容確認、売主・買主間の連絡調整 |
| 解体・環境の専門会社 | 埋設物の調査、撤去範囲と費用の見積もり、廃棄物の適正処理、土壌汚染の調査 |
法的な判断は弁護士、事実関係と費用の裏づけは専門会社、と役割を分けて動くと、交渉の材料がそろいやすくなります。
トラブルを防ぐ事前の備えと契約書の記載
地中埋設物のトラブルは、売買前の調査と契約書の書き方でかなり防げます。これから土地を売る方・買う方は、次の点を確認してください。
▼売買前の地中調査と価格交渉への反映
過去の建物の履歴を調べたうえで、試掘やボーリングなどの地中調査を行うと、埋設物の有無や量の目安が分かります。調査結果を売買価格に反映させるか、撤去を売主・買主のどちらが行うかを先に決めておけば、引き渡し後の争いを避けられます。
売主にとっても、事前に調査結果を開示しておくことは「知りながら告げなかった」と言われるリスクを減らす手段の一つです。
▼契約書に入れておきたい条項
- 地中埋設物が見つかった場合の撤去費用の負担者と上限額
- 契約不適合責任を負う期間と通知の方法
- 免責とする場合の範囲(何について責任を負わないか)
- 事前調査の結果と、その内容を前提に価格を決めた旨
「現状有姿」の一言で済ませず、何をどちらが負担するかを具体的に書くことが要点です。
▼埋設リスクが高い土地の見分け方
次のような土地は、埋設物が残っている可能性を想定して調査を検討しましょう。
- 以前に建物が建っていて、解体の記録が残っていない土地
- 工場、倉庫、ガソリンスタンドなどの跡地
- 田畑や池を埋め立てて造成した土地
- 下水道の整備前から建物があった土地(浄化槽や井戸が残りやすい)
古い住宅地図や登記簿、航空写真をたどると、過去の土地利用の手がかりが得られます。
埋設物が見つかった土地で併せて確認したいこと
埋設物そのものの撤去だけで終わらないケースもあります。周辺のリスクも視野に入れておくと、二度目の想定外を防げます。
▼土壌汚染やアスベスト含有廃材の可能性
工場跡地の地下タンクや廃材の周辺では、油や有害物質による土壌汚染が見つかることがあります。土壌汚染対策法では、有害物質使用特定施設の廃止時や、一定規模以上(原則3,000㎡以上)の土地の形質変更時に、調査や届出が必要になる場合があります(環境省「土壌汚染対策法の概要」)。
また、古い建物の解体廃材にはスレート板などアスベスト含有建材が混じっていることがあります。石綿障害予防規則や大気汚染防止法に沿った取り扱いが必要になるため、見た目で判断せず専門家に確認しましょう(厚生労働省・環境省)。売主の立場での注意点は、売主が土壌汚染対策で注意すべきことで解説しています。
▼撤去した埋設物は産業廃棄物として適正に処理する
撤去したコンクリートガラや廃材は、原則として産業廃棄物の扱いです。廃棄物処理法に基づき、許可を持つ業者が運搬・処分し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)で処理の流れを確認する必要があります。
不法投棄されると、委託した側も責任を問われることがあります。極端に安い見積もりには注意し、処理ルートを確認できる業者を選びましょう。
株式会社エコ・テックでは、解体工事や埋設物の撤去に加え、アスベスト調査や土壌汚染調査・対策まで一括して対応しています。土地の状況を調べてから判断したい段階でも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
土地売買での地中埋設物について、よくある疑問に答えます。
▼引き渡しから数年たって埋設物が見つかった場合も請求できますか?
民法上は、不適合を知った時から1年以内に通知すれば請求できる可能性があります。ただし、契約で責任期間が「引き渡しから3か月」などと短く定められていれば、その期間が優先されるのが原則です。売主が埋設物を知りながら告げていなかった場合は扱いが変わるため、契約書を確認したうえで弁護士に相談してください。
▼「現状有姿」と書かれていれば、売主は一切責任を負わないのですか?
必ずしもそうとは限りません。「現状有姿」は引き渡し時の状態を示す表現と解釈されることがあり、責任の免除には明確な免責特約が必要とされるのが一般的です。免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実には責任が残ります。
▼相続した土地で、売主自身も埋設物を知りませんでした。責任はありますか?
契約不適合責任は、売主が知らなかった場合でも生じえます。追完請求や代金減額請求は売主の過失を問いません。一方、損害賠償請求は売主に帰責事由がない場合は認められないとされています。相続した土地を売る際は、事前調査と特約の記載で備えておくと安心です。
▼撤去費用の見積もりは誰に頼めばよいですか?
解体工事や産業廃棄物の処理を手がける専門会社に依頼します。売主・買主の双方が見積もりの根拠を確認できるよう、品目ごとの数量と単価、処分先が分かる見積書を出してもらいましょう。土壌汚染の可能性がある場合は、調査に対応できる会社を選ぶと手戻りを防げます。
まとめ
土地売買で地中埋設物が見つかったとき、撤去費用の負担は「契約不適合に当たるか」と「特約の内容」で決まります。発見直後の記録と通知が、その後の交渉を支える材料です。
- 発見したら作業を止め、写真・位置・量を記録してから相手方に連絡する
- 契約書で、契約不適合責任の期間、免責特約、現状有姿の記載を確認する
- 通知は不適合を知ってから1年以内が原則。特約で短縮されていることもある
- 免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実には責任が残る
- 費用の妥当性は、見積書の品目別の内訳で判断する
- 土壌汚染やアスベスト含有廃材の可能性もあわせて確認する
まずは手元の契約書を開き、責任期間と特約の内容を確かめることから始めてください。法的な判断は弁護士に、埋設物や土壌の調査と撤去費用の見積もりは専門会社にと相談先を分ければ、想定外の出来事でも一つずつ整理して進められます。
