空き家の火災保険はどこがいい?加入の条件と損保各社の対応を比較
空き家を所有しているけれど、火災保険に入れるのか不安に感じていませんか。「誰も住んでいない家だから加入を断られるのでは」「そもそも保険が必要なのか」と迷っている方も多いでしょう。実は、空き家でも火災保険への加入は可能です。ただし、物件の管理状況や使用実態によって、加入できる保険会社や保険料が大きく変わります。
空き家を放置したまま火災保険に未加入でいると、放火やもらい火による火災、老朽化による倒壊など、思わぬトラブルで高額な賠償責任を負うリスクがあります。特に近隣への延焼や通行人への被害が発生した場合、数千万円単位の損害賠償を求められるケースも珍しくありません。
本記事では、空き家に火災保険が必要な理由から、加入時の「物件種別」の壁、主要保険会社の対応状況、保険料を安く抑えるコツまで、具体的に解説します。この記事を読めば、自分の空き家に合った保険を迷わず選べるようになります。
空き家に火災保険は必要?未加入で放置する3つのリスク

空き家だからといって火災保険を軽視するのは危険です。人が住んでいない建物だからこそ、管理の目が届きにくく、予期せぬトラブルが発生しやすい環境にあります。ここでは、空き家を未加入のまま放置することで直面する3つの主なリスクを見ていきましょう。
▼放火やもらい火による火災被害
空き家は放火のターゲットになりやすい物件です。総務省消防庁の統計によれば、建物火災の出火原因で「放火」および「放火の疑い」は常に上位を占めています。人の気配がなく、雑草が伸び放題になっている空き家は、放火犯にとって格好の標的となります。
また、隣家からのもらい火によって自分の空き家が燃えてしまうケースもあります。日本の法律では「失火責任法」により、隣家の火災で自分の家が燃えても、隣家に重大な過失がない限り損害賠償を請求できません。つまり、自分の財産は自分で守るしかないのです。
火災保険に未加入の場合、建物が全焼しても一切の補償を受けられず、解体費用や撤去費用もすべて自己負担となります。老朽化した木造住宅であれば、解体だけで100万円以上かかることも珍しくありません。
▼老朽化による倒壊や屋根の飛散
定期的なメンテナンスを行わない空き家は、急速に老朽化が進みます。特に屋根や外壁の劣化は深刻で、台風や強風によって屋根材が飛散し、近隣の車や住宅を傷つけるリスクがあります。
2019年の台風15号では、多くの住宅で屋根が飛ばされる被害が発生しました。空き家の場合、日常的な点検が行われていないため、屋根材の固定が緩んでいても気づかず、被害が拡大しやすい傾向にあります。
また、地震による倒壊リスクも無視できません。1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物は、大地震で倒壊する可能性が高く、隣家を巻き込む二次被害につながる恐れがあります。火災保険に地震保険を付帯していれば、地震による損害もカバーできます。
▼管理不足による損害賠償責任
空き家の所有者には「工作物責任」があります。民法第717条では、建物の設置または保存に瑕疵があり、それが原因で他人に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負うと定められています。
具体的には、老朽化したブロック塀が倒れて通行人にケガをさせた、屋根瓦が落下して隣家の車を破損させた、といったケースが該当します。こうした事故で相手にケガをさせてしまえば、治療費や慰謝料として数百万円から数千万円の賠償を求められることもあります。
火災保険の「個人賠償責任特約」を付帯しておけば、こうした第三者への賠償リスクにも備えられます。月々数百円程度の特約料で、最大1億円程度の補償が得られるため、空き家所有者にとっては必須の備えといえるでしょう。
空き家で火災保険に入るための「物件種別」の壁
空き家の火災保険加入で最初に直面するのが「物件種別」の問題です。保険会社は物件を「住宅物件」と「一般物件」に分類し、それぞれ保険料や加入条件が大きく異なります。この違いを理解していないと、見積もり段階で断られたり、想定以上の保険料を請求されたりする可能性があります。
▼保険料が変わる「住宅物件」と「一般物件」の違い
「住宅物件」とは、専ら居住用に使用される建物を指します。具体的には、現在人が住んでいる持ち家や、家財が置いてあり週末に利用する別荘などが該当します。住宅物件は火災リスクが比較的低いとされ、保険料も割安に設定されています。
一方、「一般物件」は、店舗や事務所、倉庫など住宅以外の用途に使われる建物です。そして重要なのが、完全に空き家となっている物件の多くは、この一般物件に分類されるという点です。
一般物件の保険料は、住宅物件の1.5倍から2倍程度になることが一般的です。たとえば、住宅物件で年間2万円の保険料であれば、一般物件では3万円から4万円になる計算です。この差は長期契約になるほど大きくなります。
ただし、すべての空き家が一般物件になるわけではありません。家財が置いてあり、所有者が定期的に訪問して管理している場合や、近い将来に居住予定がある場合は、住宅物件として扱われるケースもあります。保険会社によって判断基準が異なるため、複数社で見積もりを取ることが重要です。
▼加入を断られないためのチェックリスト
空き家の火災保険加入をスムーズに進めるためには、事前の準備が欠かせません。以下のチェックリストを確認してから、保険会社に見積もりを依頼しましょう。
まず、建物の管理状況を明確にすることです。月に何回訪問しているか、清掃や換気を行っているか、郵便物の管理はどうしているかなど、具体的な管理実態を説明できるようにしておきましょう。定期的に管理している証拠があれば、住宅物件として認められる可能性が高まります。
次に、家財の有無です。家具や家電、生活用品などが残っているかどうかで、物件種別の判断が変わります。完全に空っぽの建物より、家財が残っている方が住宅物件として扱われやすい傾向にあります。
建物の劣化状況も重要なポイントです。屋根や外壁に明らかな損傷がある、雨漏りしている、基礎にひび割れがあるといった場合、加入を断られる可能性があります。見積もり前に簡単な修繕を済ませておくと良いでしょう。
また、将来の利用予定を明確にすることも有効です。「1年以内に売却予定」「子どもが数年後に住む予定」など、具体的な活用計画があれば、保険会社の判断もポジティブになりやすくなります。
最後に、地域の特性も考慮しましょう。水害リスクの高いエリアや土砂災害警戒区域内の物件は、加入条件が厳しくなる傾向があります。ハザードマップで事前に確認し、必要に応じて水災補償を外すなどの対応を検討しましょう。
【主要各社】空き家の火災保険への対応状況を比較
空き家の火災保険は、保険会社によって加入条件や保険料、手続きの流れが大きく異なります。ここでは、主要な保険会社と共済の対応状況を具体的に比較していきます。
▼ソニー損保:ネット完結で手続きがスムーズ
ソニー損保は、ネット型保険の代表格として、手続きのシンプルさが魅力です。空き家についても、物件の状況によってはオンラインで見積もりから契約まで完結できます。
ソニー損保の強みは、見積もりの段階で「住宅物件」か「一般物件」かの判定が比較的柔軟な点です。家財が残っており、定期的に管理している実態があれば、住宅物件として扱われる可能性があります。ただし、完全に放置されている空き家の場合は、一般物件扱いとなり、保険料は高くなります。
また、ソニー損保は補償内容のカスタマイズ性が高く、不要な補償を外すことで保険料を抑えやすいのも特徴です。たとえば、水災リスクの低いエリアであれば水災補償を外す、免責金額を高く設定するなど、細かい調整が可能です。
デメリットとしては、建物の劣化が著しい場合や、長期間人が住んでいない状態が明らかな場合は、加入を断られるケースがあります。また、対面での相談ができないため、複雑な事情がある場合は不便に感じるかもしれません。
▼大手3社(損保ジャパン・東京海上・あいおい):対面相談の安心感
損保ジャパン、東京海上日動、あいおいニッセイ同和損保といった大手損保は、全国に代理店網を持ち、対面での相談ができる安心感があります。空き家の火災保険についても、個別の事情に応じて柔軟に対応してもらえる可能性が高いでしょう。
大手損保の最大のメリットは、複雑なケースにも対応できる点です。たとえば、相続したばかりで名義変更がまだ完了していない、建物の一部だけ使用している、将来的にリフォームして賃貸に出す予定があるなど、特殊な事情がある場合でも、代理店の担当者が保険会社と交渉してくれます。
また、個人賠償責任特約や地震保険の付帯についても、詳しく説明を受けながら検討できます。空き家特有のリスクに対して、どの補償が必要かを専門家の視点でアドバイスしてもらえるのは大きな利点です。
一方、保険料はネット型に比べて高めに設定されています。代理店手数料が含まれるため、同じ補償内容でもソニー損保などより1割から2割程度高くなることが一般的です。また、代理店によって対応の質にばらつきがあるため、信頼できる担当者を見つけることが重要になります。
損保ジャパンは「THE すまいの保険」、東京海上日動は「トータルアシスト住まいの保険」、あいおいニッセイ同和損保は「タフ・住まいの保険」という商品名で展開しており、いずれも空き家への対応実績は豊富です。
▼都道府県民共済:割安だが加入条件が厳しい点に注意
都道府県民共済の火災共済は、掛金の安さが最大の魅力です。月々数百円から加入でき、営利を目的としない組織のため、年度末には割戻金が返ってくることもあります。
しかし、空き家の場合は加入条件が厳しい点に注意が必要です。多くの県民共済では、「居住の用に供している建物」が加入条件となっており、完全な空き家は対象外となるケースがほとんどです。
ただし、定期的に訪問して管理しており、家財が置いてあり、将来的に居住予定がある場合は、加入できる可能性があります。各都道府県の共済によって基準が異なるため、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
また、県民共済は補償内容が比較的シンプルで、地震保険や個人賠償責任の補償が弱い、または付帯できない場合があります。空き家の場合、第三者への賠償リスクが高いため、この点はデメリットといえるでしょう。
割安な掛金で最低限の火災リスクをカバーしたい、かつ物件が比較的良好な状態で定期管理している場合には、県民共済も選択肢の一つとなります。
空き家の火災保険料を安く抑える3つのポイント
空き家の火災保険料は一般物件扱いになると高額になりがちです。しかし、工夫次第で保険料を大幅に削減することが可能です。ここでは、具体的な節約テクニックを3つ紹介します。
▼2024年の保険料改定に備えた長期契約の検討
火災保険料は近年、自然災害の増加を背景に値上げが続いています。2024年以降もさらなる改定が予想されるため、今のうちに長期契約を結んでおくのが賢明です。
現在、火災保険の契約期間は最長5年となっています(以前は10年契約も可能でしたが、2022年に廃止されました)。5年契約にすることで、1年契約を5回繰り返すより、トータルの保険料を10%程度抑えられます。
さらに、一括払いを選択すれば、追加で数%の割引が適用されることもあります。初期費用は大きくなりますが、長期的に見れば確実に節約になります。
ただし、長期契約のデメリットとして、契約期間中に建物を売却したり取り壊したりする場合、中途解約による返戻金が少なくなる点があります。空き家の処分予定が数年以内に決まっている場合は、短期契約の方が良いケースもあります。
▼水災補償の除外など不要な補償を削る
火災保険の補償内容を見直すことで、大幅な保険料削減が可能です。特に水災補償は、ハザードマップで浸水リスクが低いと確認できれば外すことを検討しましょう。
水災補償を外すだけで、保険料が2割から3割下がることもあります。たとえば、高台に建つ空き家や、過去に水害の被害歴がないエリアであれば、水災補償は不要と判断できるでしょう。
また、建物の評価額を適正に設定することも重要です。古い空き家の場合、再調達価額(同等の建物を新築する費用)ではなく、時価額で評価することで保険料を抑えられます。ただし、時価額評価の場合、実際の損害額より保険金が少なくなる可能性がある点は理解しておきましょう。
家財保険についても、空き家で家財がほとんどない場合は付帯する必要はありません。建物のみの補償にすることで、さらに保険料を削減できます。
▼免責金額(自己負担額)を高く設定する
免責金額とは、損害が発生した際に自己負担する金額のことです。免責金額を高く設定すれば、保険料は安くなります。
たとえば、免責金額を0円から10万円に引き上げると、保険料が1割から2割程度下がることがあります。空き家の場合、小さな損害は自己負担で対応し、大きな損害や第三者への賠償リスクだけを保険でカバーするという考え方も合理的です。
ただし、免責金額を高く設定しすぎると、いざという時に自己負担が大きくなります。自分の資金状況と相談しながら、バランスの取れた設定を選びましょう。
また、複数の保険会社で見積もりを取り、同じ補償内容でも保険料に差があることを確認することが重要です。特に空き家の場合、会社によって物件種別の判断基準が異なるため、A社では一般物件でもB社では住宅物件として扱われる可能性があります。手間を惜しまず、3社以上から見積もりを取ることをおすすめします。
空き家ならではのよくある疑問
空き家の火災保険には、通常の住宅とは異なる特有の疑問や不安がつきものです。ここでは、特に問い合わせの多い2つのテーマについて解説します。
▼相続したばかりで名義変更前でも加入できる?
相続で空き家を取得した場合、相続登記(名義変更)が完了していなくても、火災保険には加入できます。ただし、保険契約上の「被保険者」や「保険金受取人」の設定には注意が必要です。
相続登記が完了していない段階では、法的には故人の名義のままですが、実質的な所有者として相続人が火災保険を契約することは可能です。保険会社に対して、相続が発生した事実と自分が相続人であることを説明し、戸籍謄本などの書類を提出すれば、スムーズに契約できるケースが多いでしょう。
ただし、複数の相続人がいる場合は、誰を契約者にするか事前に話し合っておくことが重要です。保険金の受取人が明確でないと、万が一の際にトラブルになる可能性があります。
また、2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しないと過料(罰金)が科される可能性があります。火災保険の加入と並行して、早めに相続登記の手続きも進めることをおすすめします。
▼「特定空家」に指定されると保険や税金はどうなる?
「特定空家」とは、空家等対策特別措置法に基づき、著しく保安上危険、衛生上有害、景観を損なう、または周辺環境に悪影響を及ぼす空き家として自治体から指定された物件を指します。
特定空家に指定されると、まず税制上の優遇措置が外れます。通常、住宅が建っている土地は固定資産税が最大6分の1に軽減されていますが、特定空家に指定されるとこの軽減措置が適用されなくなり、固定資産税が大幅に増額します。
火災保険への影響としては、特定空家に指定されるほど劣化が進んでいる建物の場合、新規加入を断られる可能性が高くなります。すでに保険に加入している場合でも、更新時に契約を断られたり、保険料が大幅に上がったりすることがあります。
特定空家の指定を受ける前に、自治体から「助言・指導」「勧告」「命令」という段階的な通知が来ます。この段階で適切な管理や修繕を行えば、指定を回避できます。火災保険の加入と維持のためにも、特定空家に指定されないよう、定期的な管理とメンテナンスを心がけましょう。
まとめ:万が一に備えて最適な火災保険を選ぼう
空き家でも火災保険への加入は可能であり、放火や老朽化による損害、第三者への賠償リスクに備えるために必要不可欠です。ただし、物件の管理状況によって「住宅物件」か「一般物件」かの判定が分かれ、保険料や加入条件が大きく変わる点に注意しましょう。
主要保険会社の対応状況を比較すると、ソニー損保はネット完結の手軽さ、大手3社は対面相談の安心感、県民共済は割安な掛金がそれぞれの強みです。自分の空き家の状況や予算に合わせて、複数社で見積もりを取ることが重要です。
保険料を抑えるには、長期契約の活用、水災補償など不要な補償の除外、免責金額の引き上げが効果的です。また、相続時の名義変更や特定空家の指定といった空き家特有の問題にも、早めに対処しておきましょう。
空き家を所有している以上、万が一のリスクから逃れることはできません。適切な火災保険に加入し、定期的な管理を行うことで、安心して空き家を維持できる環境を整えましょう。
