空き家解体の補助金はいくらもらえる?国土交通省の指針や各自治体の条件を解説
相続した実家が空き家になっていて、そのまま放置するわけにもいかず解体を考えているものの、費用が100万円以上かかると聞いて二の足を踏んでいる方は少なくありません。木造住宅でも100万円前後、鉄骨造なら200万円を超えることもある解体費用は、決して気軽に出せる金額ではないでしょう。
実は、空き家の解体には国や自治体から補助金が出る制度があります。うまく活用すれば、50万円から100万円以上の補助を受けられるケースもあり、自己負担を大幅に減らせます。ただし、この補助金には「工事の着工前に申請しなければならない」という絶対的なルールがあり、知らずに解体を始めてしまうと1円も受け取れません。
この記事では、空き家解体の補助金制度について、国土交通省がどのように関わっているのか、どんな種類の補助金があるのか、受け取るための条件や申請の流れ、そして横浜市などの具体的な事例まで詳しく解説します。読み終えるころには、補助金を確実に受け取るために何をすべきか、自分の空き家が対象になるかどうかが明確になっているはずです。
空き家解体で補助金はいくらもらえる?制度の仕組みと国交省の役割

▼補助金の平均相場は50万〜100万円
空き家解体の補助金額は自治体によって異なりますが、多くの場合、解体費用の2分の1から5分の4程度が補助対象となり、上限額が設定されています。一般的な相場としては、50万円から100万円程度の補助を受けられるケースが多く見られます。
たとえば、解体費用が150万円かかる場合、補助率が2分の1で上限100万円なら、75万円が補助されます。補助率が3分の2なら100万円の補助となり、実質的な負担は50万円で済む計算です。
ただし注意したいのは、補助金は「後払い」である点です。まず自分で全額を業者に支払い、工事完了後に必要書類を提出して審査を経てから補助金が振り込まれます。そのため、当面の資金は自分で用意しておく必要があります。
▼国土交通省が自治体を支援する「空き家再生等推進事業」とは
空き家解体の補助金は基本的に各自治体が独自に設けている制度ですが、その財源の一部は国土交通省の「空き家再生等推進事業」によって支えられています。
この事業は、地域の住環境改善や防災上の観点から、老朽化した危険な空き家の除却(解体)や、空き家を活用した地域活性化を推進するために創設されました。国が自治体に対して補助金を交付することで、自治体が住民向けの補助制度を手厚くできる仕組みです。
つまり、私たちが受け取る補助金の多くは「国→自治体→住民」という流れで届いており、国土交通省が間接的に支援していることになります。このため、自治体ごとに制度内容は異なりますが、基本的な考え方や対象となる空き家の基準には共通点が多く見られます。
空き家解体補助金の主な3つの種類
自治体が提供する空き家解体補助金は、その目的によっていくつかの種類に分かれています。自分の空き家がどのタイプに該当するかを知ることで、申請すべき補助金が見えてきます。
▼老朽危険家屋解体補助(倒壊の恐れがある建物)
最も一般的なのが、倒壊の危険性がある老朽化した空き家を対象とした補助金です。屋根や外壁が崩れかけている、基礎部分にひび割れがある、柱が傾いているなど、放置すれば周辺住民に危害を及ぼす可能性がある建物が対象となります。
多くの自治体では、建築士などの専門家による現地調査を実施し、危険度を判定します。「特定空家」に指定される前段階の建物でも、一定の基準を満たせば補助対象となるケースがあります。
この種類の補助金は、公益性が高いため補助率が高めに設定されていることが多く、中には補助率80%(5分の4)や上限150万円といった手厚い自治体も存在します。
▼都市景観・不燃化促進補助(防災や景観維持)
密集市街地や防災上重要なエリア、あるいは景観保護地区などで、空き家の解体が地域全体の利益につながる場合に適用される補助金です。
木造住宅が密集している地域では、老朽化した空き家が火災の延焼リスクを高めるため、自治体が積極的に解体を支援します。また、歴史的な街並みを保全するエリアでは、景観を損なう空き家の除却に補助を出すこともあります。
この種類の補助金は、対象エリアが限定されていることが多いものの、該当すれば一般的な老朽危険家屋補助よりも優遇される場合があります。
▼跡地利用促進補助(解体後の土地活用を前提とした支援)
解体後の土地を地域のために活用することを条件に、補助金を交付する制度です。たとえば、解体後に駐車場やポケットパーク(小さな公園)、防災用の空地として整備することを約束すれば、通常よりも高い補助率が適用されるケースがあります。
この種類の補助金は、単に危険な建物を取り壊すだけでなく、その後の土地利用まで含めた総合的なまちづくりの一環として位置づけられています。解体後に土地を売却する予定がある場合は対象外となることが多いため、注意が必要です。
補助金を受け取るための必須条件と対象物件
補助金を受け取るには、いくつかの条件をクリアする必要があります。自分の空き家が該当するかどうか、事前にしっかり確認しましょう。
▼1981年以前の「旧耐震基準」であること
多くの自治体では、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物を補助対象としています。この日を境に建築基準法の耐震基準が大きく改正されたため、それ以前の建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、現行の基準を満たしていません。
築年数でいえば、2025年時点で築44年以上の建物が該当します。相続した実家が昭和40年代や50年代に建てられたものであれば、この条件を満たす可能性が高いでしょう。
ただし、自治体によっては築年数の下限を設けず「著しく老朽化している」ことを条件とする場合や、逆に「昭和25年以前」など、より古い建物に限定している場合もあります。
▼所有者本人の申請で税金の滞納がないこと
補助金の申請者は、原則として建物の所有者本人である必要があります。複数人で共有している場合は、全員の同意が必要となるケースがほとんどです。また、固定資産税や住民税などの税金を滞納していると、補助対象外となります。
相続によって取得した空き家の場合、名義変更(相続登記)が完了していることが求められます。被相続人の名義のままでは申請できないため、解体を考え始めたら早めに登記手続きを済ませておくことが重要です。
▼申請前に「特定空家」の予備軍と判断されること
補助金の対象となるのは、基本的に「このまま放置すれば周辺に悪影響を及ぼす可能性がある空き家」です。具体的には、以下のような状態が判断材料となります。
- 屋根や外壁の一部が剥がれ落ちている
- 窓ガラスが割れたまま放置されている
- 雑草が生い茂り、害虫やゴミの不法投棄を招いている
- 構造部分(柱・梁・基礎)に明らかな損傷が見られる
自治体の担当者や建築士が現地調査を行い、一定の基準を満たすと判断されれば補助対象となります。逆に、まだ十分に住める状態の建物や、管理が行き届いている空き家は対象外となることが多いでしょう。
【重要】空き家解体補助金を申請する際の流れと注意点
補助金を確実に受け取るためには、正しい手順を踏むことが不可欠です。特に「着工前申請」は絶対に守らなければならないルールです。
▼必ず「工事の着工前」に申請を行う
空き家解体補助金で最も重要なのは、解体工事を始める前に申請を完了させることです。これは全国どの自治体でも共通するルールで、工事が始まってしまった後に申請しても、一切受理されません。
「先に解体してから後で申請すればいい」と考えてしまうと、数十万円から100万円以上の補助金を逃すことになります。たとえ解体業者と契約を結んでいても、実際に重機が入って建物を壊し始める前であれば申請可能です。
申請から交付決定までには通常1〜2カ月程度かかるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。解体業者との契約も、自治体の交付決定通知を受け取ってから正式に結ぶのが安全です。
▼補助金は「後払い」なので当面の資金準備が必要
前述の通り、補助金は工事完了後に支払われます。一般的な流れは以下の通りです。
①補助金の交付申請
②自治体による審査・交付決定通知
③解体業者と契約
④解体工事の実施
⑤業者への支払い(全額)
⑥完了報告書の提出(写真・領収書など)
⑦自治体の完了検査
⑧補助金の振り込み
つまり、工事費用の全額を一旦は自己資金で支払う必要があります。100万円の解体費用がかかる場合、たとえ50万円の補助が出るとしても、まずは100万円を用意しなければなりません。補助金が振り込まれるのは、完了検査が終わってから1〜2カ月後となるのが一般的です。
▼自治体の予算には上限があるため早めの相談を
多くの自治体では、補助金の予算を年度ごとに設定しており、予算に達した時点で受付を終了します。年度の後半になると「今年度分の受付は終了しました」というケースも珍しくありません。
また、申請が集中する春や秋は審査に時間がかかることもあります。空き家の解体を考え始めたら、まずは自治体の担当窓口(多くの場合、都市計画課や建築指導課)に電話やメールで問い合わせ、現在の受付状況や必要書類を確認しましょう。
事前相談の段階で現地調査の日程を調整してもらえることもあり、スムーズな申請につながります。
自治体別の補助金事例(横浜市・千葉県など)
具体的な自治体の事例を見ることで、自分の地域ではどの程度の補助が期待できるかイメージしやすくなります。
▼横浜市:住宅除却補助事業や不燃化推進事業
横浜市では、老朽化した住宅の除却を支援する「老朽住宅除却補助事業」を実施しています。対象となるのは昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅で、補助率は対象経費の3分の2、上限額は100万円です。
たとえば解体費用が120万円の場合、3分の2にあたる80万円が補助されます。150万円かかる場合は100万円(上限額)が補助され、実質負担は50万円となります。
さらに横浜市には、不燃化を推進する特定のエリアにおいて、より手厚い補助を行う「不燃化推進事業」もあります。該当地区に空き家がある場合、補助率が5分の4(80%)に引き上げられ、上限額も150万円となるケースがあります。
▼手厚い自治体では補助率4/5や上限100万円以上のケースも
千葉県内のある自治体では、特定空家に指定される前の段階でも、老朽危険度が高い建物については補助率5分の4、上限120万円という手厚い支援を行っています。また、東京都内の一部自治体では、木造密集地域の防災対策として上限200万円の補助を出すケースもあります。
一方で、財政状況が厳しい自治体では補助率2分の1、上限50万円といった水準にとどまることもあります。自分の自治体がどの程度の補助を行っているかは、ホームページや窓口で確認しましょう。
解体せずに放置するリスクと「固定資産税6倍」の罠
空き家を放置すると、補助金を逃すだけでなく、税金面でも大きな不利益を被る可能性があります。
▼特定空家に指定されると税制優遇が解除される
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が大幅に軽減されています。具体的には、200平米以下の部分(小規模住宅用地)については固定資産税評価額の6分の1、都市計画税は3分の1に減額されます。
しかし、空き家が「特定空家」に指定され、自治体から改善勧告を受けても対応しない場合、この特例が適用されなくなります。結果として、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることになります。
たとえば、年間5万円だった固定資産税が30万円になれば、年間25万円の負担増です。数年放置すれば、解体費用を上回る税金を支払うことになりかねません。
▼解体後の土地活用で使える「3,000万円控除」の特例
空き家を解体して土地を売却する場合、一定の要件を満たせば「空き家に係る譲渡所得の特別控除」を利用できます。これは、相続した空き家を解体して土地を売却した際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
適用要件は複雑ですが、主なポイントは以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたこと
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
この特例を使えば、売却益が3,000万円以下なら譲渡所得税がかからず、大幅な節税になります。解体補助金と合わせて活用すれば、空き家問題を経済的にも有利に解決できます。
補助金以外で解体費用を抑えるためのコツ
補助金を活用するのはもちろんですが、解体費用そのものを抑える工夫も重要です。
▼相見積もりで解体業者の適正価格を知る
解体費用は業者によって大きく異なります。同じ建物でも、50万円の見積もりを出す業者もあれば、120万円を提示する業者もあります。この差は、作業の効率性や廃材処理のルート、下請け構造の有無などによって生まれます。
最低でも3社から見積もりを取り、内訳を比較しましょう。「一式」とだけ書かれた見積もりではなく、解体工事費、廃材処分費、養生費、整地費などが明確に分かれているものを選ぶと、適正価格かどうか判断しやすくなります。
▼家財道具は自分で処分して作業工程を減らす
空き家の中に家具や家電、生活用品が残っている場合、解体業者に一緒に処分してもらうと「残置物撤去費用」が上乗せされます。これが意外と高額で、2トントラック1台分で10万円以上かかることも珍しくありません。
時間と体力に余裕があれば、自分で粗大ゴミとして出したり、リサイクルショップに引き取ってもらったりすることで、この費用を削減できます。特に、タンスや冷蔵庫などの大型家具・家電を事前に片付けておくだけでも、見積額は下がります。
まとめ
空き家の解体には大きな費用がかかりますが、国や自治体の補助金を活用すれば、50万円から100万円以上の支援を受けられる可能性があります。重要なポイントを改めて整理しましょう。
- 補助金の平均相場は50万〜100万円で、自治体によっては補助率80%、上限150万円といった手厚い支援も
- 国土交通省の「空き家再生等推進事業」が財源の一部を支えており、自治体ごとに独自の制度を設けている
- 必ず工事の着工前に申請しないと1円も受け取れない。これが最も重要なルール
- 補助金は後払いなので、当面の資金は自分で用意する必要がある
- 1981年以前の旧耐震基準の建物が対象となることが多く、税金の滞納がないことも条件
- 特定空家に指定されると固定資産税が最大6倍になるリスクがある
- 解体後の土地売却では3,000万円控除の特例が使える可能性がある
まずは、自分の自治体のホームページで補助金制度を確認するか、担当窓口に電話で問い合わせてみましょう。早めの行動が、補助金を確実に受け取る鍵となります。解体業者との契約を急ぐ前に、必ず自治体の交付決定を待つことを忘れないでください。
空き家問題は先延ばしにするほど負担が増えていきます。この記事で得た知識を活かし、計画的に解体を進めて、経済的にも心理的にも負担の少ない解決を目指しましょう。
