空き家売却の税金を安くする3000万円控除の条件と確定申告の手順
相続した実家が空き家になっているけれど、売却すると高額な税金がかかるのではないかと不安に感じていませんか?実際、何も対策をせずに売却すると、利益の約20%が税金として差し引かれてしまうこともあります。
しかし、ご安心ください。国が用意している「3,000万円特別控除(空き家特例)」という制度を使えば、売却益から最大3,000万円を差し引いて税金を計算できるため、多くのケースで税額をゼロまたは大幅に減らすことが可能です。たとえば、2,500万円の利益が出た売却でも、この特例を適用すれば税金は一切かかりません。
本記事では、2026年最新の特例ルールから、適用条件のチェックポイント、具体的な計算方法、確定申告の手順まで、損をしないために知っておくべき情報を分かりやすく解説します。期限や必要書類を正しく把握して、手元に残る現金を最大化しましょう。
空き家売却にかかる税金の基礎知識

空き家を売却して利益が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税」と「住民税」が課税されます。まずは、どのような仕組みで税金が計算されるのかを理解しておきましょう。
▼譲渡所得税・住民税が課税される仕組み
不動産を売却したときの利益は「譲渡所得」と呼ばれ、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費とは、その不動産を購入したときの価格や相続時の評価額のことです。譲渡費用には、仲介手数料や測量費、解体費用などが含まれます。この譲渡所得がプラスになった場合、所得税と住民税が課税される仕組みです。
たとえば、3,000万円で売却した空き家の取得費が1,500万円、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は「3,000万円 −(1,500万円 + 200万円)= 1,300万円」となります。この1,300万円に対して税金が計算されるわけです。
▼所有期間で変わる税率(長期譲渡所得 vs 短期譲渡所得)
譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって大きく変わります。売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかどうかが分かれ目です。
長期譲渡所得(所有期間5年超)では、所得税15%、住民税5%の合計20%(復興特別所得税を含めると約20.315%)です。短期譲渡所得(所有期間5年以下)では、所得税30%、住民税9%の合計39%(復興特別所得税を含めると約39.63%)となります。
相続した空き家の場合、所有期間は被相続人(亡くなった方)が取得した日から計算します。多くのケースでは親が何十年も前に購入した家なので、長期譲渡所得に該当するでしょう。先ほどの1,300万円の譲渡所得なら、長期の場合は約264万円、短期の場合は約515万円の税金がかかる計算です。
この税負担を大幅に軽減できるのが、次に解説する「3,000万円特別控除」なのです。
税金が大幅に減る「3,000万円特別控除(空き家特例)」とは?
正式名称を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、一定の条件を満たした空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。
この特例を使えば、先ほどの1,300万円の譲渡所得は「1,300万円 − 3,000万円 = マイナス」となり、課税対象がゼロになります。つまり、税金を一切払わずに済むのです。
▼特例適用のための主要な要件チェックリスト
この特例を受けるには、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。以下のチェックリストで確認してみましょう。
□ 相続開始直前まで被相続人が一人で住んでいた家である → 親が老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば適用可能です。
□ 昭和56年5月31日以前に建築された家である → この日付は旧耐震基準の建物を指します。比較的新しい家は対象外です。
□ 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却する → たとえば2023年7月に相続した場合、2026年12月31日が期限です。
□ 売却価格が1億円以下である → 高額物件は対象外となります。
□ 売却時に以下のいずれかの状態である
- 家を解体して更地にしてから売却
- 耐震リフォームをしてから売却
- 買主が耐震リフォームまたは解体することを条件に売却
□ 相続してから売却まで、賃貸や事業用に使っていない → 空き家のまま保有していることが条件です。
これらの条件は複雑に見えますが、多くの相続空き家では「更地にして売却」というパターンで特例を適用できるケースがほとんどです。
▼2026年末が期限となるケースへの注意点
特例には「相続開始から3年を経過する年の12月31日まで」という期限があります。たとえば、2023年中に相続が発生した場合、2026年12月31日までに売却しなければ特例は使えません。
さらに、2023年12月31日までの売却分については、特例の適用条件が若干緩和されていました(家が建ったままの売却でも適用可能なケースがあった)が、現在は原則として更地化または耐震改修が必須となっています。
期限を過ぎてしまうと、数百万円単位で税金が増えてしまう可能性があるため、相続から2年以上経過している方は早めの行動をおすすめします。
自分でできる!空き家売却時の税金計算シミュレーション
特例を使った場合に実際どれくらい税金が減るのか、自分で計算してみましょう。計算式さえ分かれば、専門家に頼らなくても概算を把握できます。
▼譲渡所得の計算式と「取得費・譲渡費用」に含められるもの
改めて、譲渡所得の計算式を確認します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除(3,000万円)
取得費に含められるものとしては、不動産の購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用・不動産取得税、建物の場合は「購入代金 − 減価償却費」で計算したものがあります。
譲渡費用に含められるものとしては、売却時の仲介手数料、測量費用、解体費用(更地にした場合)、売買契約書の印紙代、立ち退き料(賃貸していた場合)があります。
たとえば、以下のようなケースで計算してみましょう。売却価格が3,500万円、取得費が1,800万円、解体費用が150万円、仲介手数料が120万円の場合です。
譲渡所得 = 3,500万円 −(1,800万円 + 150万円 + 120万円)− 3,000万円 = マイナス570万円
この場合、譲渡所得がマイナスになるため、税金は一切かかりません。
▼取得費が分からない場合の「5%ルール」活用法
相続した実家の場合、「親がいくらで買ったのか分からない」「売買契約書が見つからない」というケースは珍しくありません。このような場合、税法では「売却価格の5%」を取得費として計算することが認められています。
たとえば、3,000万円で売却した場合、取得費は「3,000万円 × 5% = 150万円」として計算します。
ただし、この5%ルールを使うと取得費が非常に少なくなるため、譲渡所得が大きくなり税金も増えてしまいます。できる限り、以下の方法で取得費を証明できる資料を探しましょう。
- 法務局で登記簿謄本の過去の記録を取得(抵当権設定額から購入価格を推定)
- 不動産会社に当時の売買事例を問い合わせ
- 固定資産税評価額や路線価から合理的に推定
これらの方法で取得費を立証できれば、5%ルールよりも有利な計算ができる可能性があります。
空き家特例を受けるための具体的な5ステップ
ここからは、実際に3,000万円特別控除を受けるための手続きを、順を追って解説します。初めての方でも迷わないよう、具体的なステップに分解しました。
▼ステップ1:建物の建築時期と耐震基準を確認する
まず、対象となる空き家が「昭和56年5月31日以前に建築された」ものかどうかを確認します。建築時期は、登記簿謄本(登記事項証明書)の「表題部」に記載されています。法務局の窓口またはオンライン(登記・供託オンライン申請システム)で取得できます。
昭和56年6月1日以降に建築された建物は、新耐震基準を満たしているため、この特例の対象外となります。
▼ステップ2:更地にするか耐震改修するかを判断する
特例を受けるには、売却時に以下のいずれかの状態である必要があります。
パターンA「更地にして売却」では、解体費用の相場は木造住宅で1坪あたり3〜5万円程度、30坪の家なら90〜150万円が目安です。手続きがシンプルで買主が見つかりやすいメリットがある一方、解体費用がかかるデメリットがあります。
パターンB「耐震改修して売却」では、耐震改修費用の相場は100〜300万円程度です。建物を残せてリフォーム済み物件として付加価値がつくメリットがある一方、費用が高額で買主の好みに合わない可能性があります。
パターンC「買主が解体・改修することを条件に売却」では、売買契約書に「買主が解体または耐震改修を行う」旨を明記します。売主の負担がないメリットがある一方、買主探しに時間がかかる可能性があります。
多くのケースでは、パターンA(更地化)が最もスムーズです。解体費用は譲渡費用として経費に計上できるため、税金計算上も有利になります。
▼ステップ3:売却して「被相続人居住用家屋等確認書」を取得する
売却が完了したら、空き家が所在していた市区町村の役所で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得します。これは、特例の適用要件を満たしていることを証明する書類です。
申請に必要な書類(一般的なケース)としては、申請書(役所の窓口またはウェブサイトで入手)、売買契約書のコピー、被相続人の除票(相続開始直前の住所が空き家であることの証明)、相続人全員の同意書(複数の相続人がいる場合)、解体証明書または耐震基準適合証明書があります。
申請から交付まで2〜3週間かかることもあるため、売却後は早めに手続きを始めましょう。
▼ステップ4:必要書類(売買契約書・除票など)を揃える
確定申告に向けて、以下の書類を準備します。
必ず必要な書類としては、売買契約書(コピー可)、被相続人居住用家屋等確認書(原本)、被相続人の除票(相続開始直前の住所を証明)、取得費が分かる資料(購入時の売買契約書など)、譲渡費用の領収書(仲介手数料、解体費用など)があります。
場合によって必要な書類としては、耐震基準適合証明書(耐震改修した場合)、相続時の遺産分割協議書(複数相続人がいる場合)があります。
これらの書類は、確定申告の際に税務署に提出または提示する必要があります。原本は手元に保管し、コピーを提出するケースが多いです。
▼ステップ5:売却翌年の2月・3月に確定申告を行う
不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、所轄の税務署で確定申告を行います。
申告に使う書類としては、確定申告書B(第一表・第二表)、確定申告書第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)があります。
国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の指示に従って入力するだけで自動計算してくれるため、初めての方でも比較的スムーズに作成できます。
不安な場合は、税理士に依頼することも検討しましょう。報酬の相場は5〜10万円程度ですが、数百万円の節税効果を確実にするための必要経費と考えれば、決して高くはありません。
空き家売却で失敗しないための注意点
特例を使う際には、いくつか注意すべきポイントがあります。知らずに進めると、特例が使えなくなったり、想定以上のコストがかかったりする可能性があります。
▼売却価格が1億円を超えると特例対象外になる
この特例には「売却価格1億円以下」という上限があります。都心部の一等地など、評価額が高いエリアの空き家を売却する場合は注意が必要です。
もし売却査定で1億円を超えそうな場合は、土地と建物を分けて売却する(建物部分のみ先に売却し、土地は別のタイミングで売却)、価格交渉で1億円以下に抑える、他の特例(居住用財産の3,000万円控除など)が使えないか税理士に相談する、といった対策を検討しましょう。
ただし、大半の地方都市や郊外の空き家では、1億円を超えるケースは稀です。
▼解体費用(更地化)の相場とコストバランスの考え方
更地にして売却する場合、解体費用が大きな負担になることがあります。しかし、この費用は譲渡費用として経費計上できるため、実質的な負担は軽減されます。
解体費用の相場(目安)は、木造で1坪あたり3〜5万円、鉄骨造で1坪あたり5〜7万円、RC造で1坪あたり6〜8万円です。たとえば、30坪の木造住宅なら90〜150万円程度です。
ここで考えたいのは、「解体費用をかけても更地にした方が高く売れるか」という点です。不動産会社に相談して、古家付きの土地として売却した場合と更地にして売却した場合の2つのパターンで査定を取ってみましょう。
たとえば、古家付きの査定額が2,500万円、更地の査定額が2,800万円(解体費用120万円)の場合、更地にすることで手取りは「2,800万円 − 120万円 = 2,680万円」となり、古家付きより180万円多く手元に残ります。さらに、解体費用120万円は譲渡費用として経費になるため、税金も減ります。
逆に、解体しても売却価格がほとんど変わらないエリアなら、古家付きのまま売却する方が得策です。
放置はNG!2026年以降の空き家リスクと売却のタイミング
空き家を放置すると、税金面だけでなく、さまざまなリスクが発生します。特に2026年以降は、空き家対策が一層厳しくなる見込みです。
固定資産税の増額リスクとしては、自治体から「特定空家」に指定されると、固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)が適用されなくなり、税額が最大6倍になる可能性があります。建物の劣化リスクとしては、人が住まない家は急速に傷み、雨漏りやシロアリ被害が進むと売却時の価値が大幅に下がります。近隣トラブルのリスクとしては、倒壊の危険や雑草の繁茂、害虫・害獣の発生などで近隣住民から苦情が来ることもあります。管理の手間と費用としては、定期的な見回りや草刈り、設備の維持に時間とお金がかかります。
3,000万円特別控除の期限(相続から3年)が迫っている方は、早めに売却を決断することで、税金を大幅に節約できます。迷っている間に期限を過ぎてしまい、数百万円の税金を払うことになってはもったいありません。
まとめ:期限内の手続きで手元に残る現金を最大化しよう
相続した空き家を売却する際、何も対策をしなければ高額な税金が発生しますが、3,000万円特別控除(空き家特例)を活用すれば、多くのケースで税金をゼロまたは大幅に減らすことが可能です。
本記事のポイントをおさらいしましょう。
- 空き家売却の利益には、所有期間に応じて約20%(長期)または約40%(短期)の税金がかかる
- 3,000万円特別控除を使えば、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける
- 適用には「昭和56年以前の建築」「相続から3年以内の売却」「更地化または耐震改修」などの条件がある
- 売却価格が1億円を超えると特例対象外になる
- 取得費が分からない場合は「5%ルール」で計算できるが、できる限り証明資料を探す
- 確定申告は売却翌年の2〜3月に必ず行う
特に重要なのは「期限」です。相続から3年を経過する年の12月31日を過ぎると、どれだけ条件を満たしていても特例は使えません。2023年に相続した方は、2026年末が期限となります。
まずは不動産会社に査定を依頼し、売却価格の見込みを把握しましょう。そのうえで、更地にするか耐震改修するかを判断し、必要書類を揃えて確定申告に臨めば、手元に残る現金を最大化できます。
一人で進めるのが不安な方は、相続に強い税理士や不動産会社に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けながら、期限内にしっかりと手続きを完了させ、大切な財産を無駄なく次のステップに活かしてください。
