アスベストを使った建材製品は1955年ごろから使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として、1960年代の高度成長期に多く使用されました。しかし、アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることにより、1975年(昭和50年)特定化学物質等障害予防規則の改正により、石綿含有率が重量の5%を超える場合、吹き付け作業は禁止とされました。(ただし、5%未満であれば、吹き付け作業は許容されていました。)その後、何度か法改正が行われ、アスベストおよび石綿製品は、2006年(平成18年)91日より製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止とされました。全面禁止となったから健康被害が全くなくなったかというと、それは間違いで、2006年以前に建てられた建築物のリフォームや解体を行う際にアスベストが飛散するリスクが大きくあります。それによる健康被害を最低限に抑えるために、解体工事を行う際に必要な資格や講習が定められています。

アスベスト含有建築物解体工事に関する資格や講習について

アスベストを含む建築物の解体を安全に行うために必要な資格や講習

アスベスト解体にあたっては、事前にアスベスト含有の調査が必要となります。それにあたって、厚生労働省から出された石綿指針では、「アスベストに関し広い知見を有する者」とされ、「石綿作業主任者」や「アスベスト診断士」が例示されています。アスベスト調査に関する資格には以下があります。

1.「石綿作業主任者(厚生労働省)」

「石綿作業主任者」とは、作業に従事する労働者が石綿等の粉じんにより汚染され、またはこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮し、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を、1ヶ月を超えない期間ごとに点検、保護具の使用状況を監視する主任者です。事業者は、労働災害を防止するため、工場、建築物等の解体・改修工事現場などで、石綿を取り扱う作業については「石綿作業主任者」を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければなりません。

受講資格

特になし

講習内容

・健康障害及びその予防措置に関する知識
・作業環境の改善方法に関する知識
・保護具に関する知識
・関係法令
・修了試験

2.「アスベスト診断士(一般社団法人JATI協会)」

アスベスト診断士は、アスベストの有無を判断する仕事です。既存建築物等に使用されているアスベストの調査や安全な取り扱いについて適切なアドバイスを行うのがアスベスト診断士の役割です。そのためアスベスト診断士はアスベストにおいて広範囲の知識が必要となります。

受講資格

下記のいずれかに該当する者とされています。
①石綿作業主任者技能講習修了者又は特定化学物質等作業主任者技能講習修了者(平成183月まで)
②第1種の作業環境測定士
③建築士法に基づく、一級建築士及び二級建築士の免許登録者
④建設業法に基づく、一級施工管理技士(建築施工管理)の資格を有する者
⑤労働安全衛生法に基づく、労働衛生コンサルタントの資格を有する者
⑥アスベストを含むものの除去に関し、3年以上の実務経験をもつ者
⑦アスベスト有無の事前調査に関し、1年以上の実務経験をもつ者

講習内容

基礎編
石綿の基礎知識、石綿の健康影響、関係法令、建築物に関する基礎知識

調査、診断編
アスベスト含有建材に関する基礎知識(サンプル研修含む)、調査の手順および調査方法(実習含む)、報告書の作成方法(実習含む)、分析に関する基礎知識(実習含む)

石綿処理編
飛散防止対策、廃棄物の処理方法、保護具の正しい使い方、建築リサイクルに関する知識

3.「建築物石綿含有建材調査者(国土交通省)

建築物等の解体または改修の作業を行うときには、対象建築物等の石綿等使用有無についての調査が必要とされ、令和27月の石綿障害予防規則等の改正により、事前調査を実施するために必要な知識を有する者として、建築物石綿含有建材調査者が行うことが義務付けられました(石綿則第3条、関係告示)

受講資格

下記以外にも受講資格は規定されているので、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程第7条をご覧ください。
①石綿作業主任者技能講習修了者
②大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
③短期大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
④高等学校または中等教育学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
⑤建築に関して11年以上の実務経験を有する者
⑥特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者

講習内容

・建築物石綿含有建材調査者講習(一般)
・建築物石綿含有建材調査者講習(一戸建て等)
※一般建築物:一戸建て等を含むすべての建築物
※一戸建て等:一戸建て住宅および共同住宅(長屋を含む。)の住戸の専有部分。共同住宅の住戸の内部以外の部分(ベランダ、廊下等の共用部分)や店舗併用住宅は含まれない。

4.酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者(厚生労働省)

酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者とは、トンネルや下水道などの酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業場所に係る作業で、酸素欠乏等の空気を吸入しないように、作業方法を決定し、労働者を指揮し、作業を行う場所の空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定し、測定器具、換気装置、空気呼吸器等その他労働者が酸素欠乏症にかかることを防止するための器具または設備を点検、空気呼吸器等の使用状況の監視を行う責任者です。

受講資格

A区分: 特に無し
B区分: ①日本赤十字社の救急法の講習を修了し、救急員認定証を受けた者
②平成10年3月31日までに日本赤十字社の救急法一般講習Ⅱを修了して合格証を受けた者
③平成6年12月31日までに日本赤十字社の救急法の講習を修了して救急員適任証を受けた者

講習内容

①学科講習
・酸素欠乏症、硫化水素中毒及び救急そ生に関する知識
・酸素欠乏及び硫化水素の発生の原因及び防止措置に関する知識
・保護具に関する知識
・関係法令
・学科修了試験

②実技講習
A区分:救急そ生の方法、酸素及び硫化水素の濃度の測定方法、実技修了試験
B区分:酸素及び硫化水素の濃度の測定方法、実技修了試験

5.高所作業者運転特別教育(厚生労働省)

事業者は、作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く)の業務に労働者を就かせるときは、安全又は衛生のための特別な教育をしなければならないことが義務付けられています。

受講資格

特になし

講習内容

①学科講習
・作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識
・原動機に関する知識
・運転に必要な一般的事項に関する知識

②実技講習
・作業のための装置の操作

アスベストを含む建築物の解体を 安全に行うために必要な資格や講習

実際に解体作業に係る資格

1.建設機械施工技師(1級や2級)
2.土木施工管理技士(1級や2級)
3.建築施工管理技士(1級や2級)
4.とび技能士(1級や2級)
5.解体工事施工技士

アスベストを含む建築物の解体工事業者を選ぶ際は、安すぎる業者には注意をすること、調査資格から解体工事に係る資格を保有する業者の選定が重要です。アスベスト含有調査では、気が付かない箇所の見落としが原因で健康被害のリスクがあります。また、解体工事における大きな問題に不法投棄があります。廃棄費用を削って利益を上げる目的で行われるようですが、不法投棄が発覚した場合、解体業者と排出業者に行政から原状回復の措置命令が出され、この命令に従わなかった場合、5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が適用されることになっています。