大気汚染防止法の一部を改正する法律が令和2年6月5日に公布されました。建築物等の解体等工事における石綿の飛散を防止するため、全ての石綿含有建材へ規制を拡大するとともに、都道府県等への事前調査結果の報告の義務付け及び作業基準遵守徹底のための直接罰の創設等、対策を一層強化するものです。また、令和4年4⽉1⽇以降に開始する⼯事からは、一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、石綿含有の有無の事前調査の結果等を、あらかじめ、電子システムで報告することが義務になっています。事前調査や届出などの石綿障害予防規則に規定する措置を怠った場合、罰則規定(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)があるため、適切な対応が求められています。

報告が必要な工事(※石綿が含まれていない場合もその旨の報告が必要)

①解体部分の床面積が80m2以上の建築物の解体工事

※建築物の解体工事とは、建築物の壁、柱および床を同時に撤去する工事をいう

②請負⾦額が税込100万円以上の建築物の改修工事

建築物の改修⼯事とは、建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のものをいう

請負⾦額は、材料費も含めた⼯事全体の請負⾦額をいう

③請負⾦額が税込100万円以上の下記工作物の解体工事・改修工事

・反応槽、加熱炉、ボイラー、圧⼒容器

・配管設備(建築物に設ける給⽔・排⽔・換気・暖房・冷房・排煙設備等を除く)

・焼却設備

・煙突(建築物に設ける排煙設備等を除く)

・貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く)

・発電設備(太陽光発電設備・⾵⼒発電設備を除く)

・変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む)

・トンネルの天井板 ・プラットホームの上家、鉄道の駅の地下式構造部分の壁・天井板

・遮⾳壁、軽量盛⼟保護パネル

複数の事業者が同一の工事を請け負っている場合は、元請事業者が請負事業者に関する内容も含めて報告する必要となります。また、平成18年9⽉1⽇以降に着⼯した⼯作物について、同⼀の部分を定期的に改修する場合は、⼀度報告を⾏えば、同⼀部分の改修⼯事については、その後の報告は不要です。

アスベスト事前報告システムとは

パソコン、タブレット、スマートフォンから、行政機関の開庁日や開庁時間にかかわらず、いつでも報告を行うことができます。1回の操作で、大気汚染防止法に基づく都道府県等への報告と労働基準監督署への報告を同時に行うことができ、複数の現場の報告も、まとめて行うことができます。なお、電子システムによる報告が基本となりますが電子システムを使用できない等やむを得ない場合は、書面での報告を行うことができますが、都道府県等及び労働基準監督署にそれぞれ提出する必要があります。石綿事前調査結果報告システムを利用するためには、認証システム(GビズID)により事前にアカウントを作成する必要があります。GビズIDでアカウントを取得することにより、複数の行政サービスにアクセスすることが可能になります。

▼石綿事前調査結果報告システムにログイン、GビズIDを作成は以下から行えます

https://www.ishiwata-houkoku.mhlw.go.jp/shinsei/

アスベスト事前調査について

・解体、改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります。

・事前調査は、令和3年(2021年)4月から設計図書等の文書による調査(設計図書等の文書が存在しないときを除きます)と、目視による調査の両方を行う必要があります。

・事前調査の結果については、令和3年(2021年)4月から事前調査の結果の記録を作成して3年間保存するとともに、作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示する必要があります。

・令和4年(2022年)4月から、一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体・改修工事の場合、事前調査の結果を労働基準監督署に電子システムで報告することが必要となります。

・令和5年(2023年)10月からは、建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす者が事前調査を行う必要があります。

【一定の要件】

1.建築物

①建築物石綿含有建材調査者講習の修了者

・特定建築物石綿含有建材調査者

・一般建築物石綿含有建材調査者

・一戸建て等石綿含有建材調査者(※一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部に限る)

②令和5年(2023年)930日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き同協会に登録されている者

2.船舶

船舶石綿含有資材調査者教育(仮称)を受け、修了考査に合格した者

アスベスト事前調査の流れ

対象建物中にアスベスト含有建材が、いくつあるのか設計図書及び現地調査を行って検体数を算出し、分析調査を行います。建築物の解体に際してアスベストが使用有無の確認は事前に書面等を用いて調査を行い、不明なものについては現地調査を行います。それでも、不明なものに関しては、分析を実施し含有の有無を確認する必要があります。

①調査依頼

建築物所有者から調査業者へ調査依頼をします。

②調査計画

調査の目的、現場の立ち入り可否、建築物の使用用途、制約などの確認を行います。

③図面調査(書面調査)

図面調査では、図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く石綿の使用の有無に関係する情報を読み取り、現地での目視による調査を効率的かつ効果的に実施できるよう準備を行います。図面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質も高めるものであり、重要な工程となります。

④現場調査

設計図書や竣工図等の書面は石綿含有建材の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、図面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿の使用状況を網羅的に把握するため、原則として現地で目視調査を行うことが必要です。例えば、仕様を満たすため現場判断で設計図書と異なる施工をした場合や、設計図書には残っていない改修が行われている場合があります。図面調査はあくまで下調べに過ぎず、相違があれば、現地での目視調査の結果が優先されます。

⑤試料採取

分析を行うこととなった建材の試料採取については、目的とする分析対象を採取できるよう同一材料と判断される建築材料ごとに、代表試料を選定し、採取しなければなりません。

⑥分析調査

大法及び石綿則において、石綿含有ありとみなす場合を除き、石綿含有の有無が不明な場合は分析を行うことが義務づけられています。分析方法は、日本工業規格(JISA1481規格群をベースとし、その実施に当たっては、厚生労働省の「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル」の記載内容を優先する必要がある点に留意する必要があります。まず、建材中の石綿の含有の有無を調べるための定性分析を行い、定性分析で石綿が含有していると判定された場合は、含有率を調査するための定量分析を行い、建材中の石綿の含有率(0.1%以下か否か)を確定させます。ただし、定性分析で石綿ありと判定された場合においては、定量分析を行わずに、石綿が0.1%を超えているとして扱うことも可能です。吹付け材については、ばく露防止措置を講ずる際の参考とするための含有率を調査するための定量分析を行うことが望ましいとされています。

⑦調査報告書

事前調査を行う業者は、書面調査、目視調査時の現場メモをもとに、事前調査の記録を作成します。その後、その記録をもとにして事前調査の報告書を受注者が責任者となりとりまとめ、大防法に基づき、発注者に書面で報告する必要があります。また、調査業者が受注者とは別の場合は、調査業者は、発注者、除去業者及び解体業者に対して、実際の現場において事前調査を行った範囲や内容について説明をする場を設けることが望ましいです。