土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及び、その汚染による人の健康にかかわる被害の防止に関する措置を定めること等によって、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することを目的として、平成14年5月に成立し、平成15年2月に施行された法律です。
土壌汚染対策法の内容には、土壌汚染調査について(同法第三条から第五条)や、汚染の除去等の措置が必要な区域(要措置区域)の指定等の区域の指定等についての規定(同法第六条から第十五条)、汚染土壌の搬出や処理についての規定(第十六条から第二十八条)、指定調査機関についての規定(第二十九条から第四十三条)、指定支援法人についての規定(第四十四条から第五十三条)等が含まれています。
前回の記事では、土壌汚染対策法の成り立ちや、調査、区域の指定についての部分について解説いたしましたが、今回の記事では、土壌汚染の除去等の措置の考え方を確認したうえで、前回に引き続き、土壌汚染対策法の内容のうち、汚染土壌の搬出等に関する規制について、指定調査機関、指定支援法人、その他について説明いたします。

汚染の除去等の措置の考え方

http://www.env.go.jp/water/dojo/gl-man/dojogl2020_1-rrr.pdfより

まず前提として、汚染の除去等の措置に関する基本的な考え方を確認します。平成15年の土壌汚染対策法の施行後、汚染の除去等の措置について、誤った施工方法による汚染の拡散や、措置完了時の書類上の不備により要措置区域の指定を解除できない等の問題が持ち上がりました。そこで、都道府県知事による措置内容の確認を確実に行うため、要措置区域の指定をする際に、その土地の所有者等に対し、講ずべき汚染の除去等の措置及びその理由、措置を講ずるべき期限を明示し、汚染の除去等の措置方法を記載した汚染除去等計画を作成し、それを都道府県知事に提出することにしました。都道府県知事から汚染除去等計画の提出の支持を受けた者は、都道府県知事によって指示された当該土壌汚染または地下水汚染の状況等に応じて技術的に適用でき汚染の除去等の措置のうちから、その指示措置またはそれと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置を選択することができます(土壌汚染対策法第7条、土壌汚染対策法施行規則36条等)。

汚染土壌の搬出等に関する規制について(第十六条から第二十八条)

要措置区域内の汚染土壌を掘削し、区域外の処理施設へと搬出し移動させることは、汚染の拡散をもたらす可能性があります。汚染土壌の適正な運搬及び処理を確保するため、土壌汚染対策法の第十六条から第二十一条では、事前届出義務や、汚染土壌の運搬基準の遵守、処理の委託義務、管理表の交付・保存義務等が定められています。また第二十二条から第二十八条では、汚染土壌処理施設についての規定等が定められています。
要措置区域等内から汚染土壌を搬出する場合には、事前の届出義務があります。搬出に着手する14日前までに、搬出の計画について都道府県知事に届け出なければなりません。汚染土壌の届出事項には、汚染土壌の特定有害物質による汚染状態、汚染土壌の体積、運搬の方法、運搬する者の氏名、処理をする者の氏名、施設の所在地、着手予定日等が含まれます(第十六条)。
汚染土壌の運搬は、運搬に伴う汚染の拡散とともに、汚染土壌の所在を不明にするおそれがあることから、環境リスクの管理のための運搬基準を環境省令によって定め、運搬者にその遵守を義務付けることにより、汚染土壌の適正な運搬の確保が図られています(第十七条)。ここでいう土壌汚染の運搬に関する具体的な基準には、自動車等及び運搬容器を選択する際の留意事項や、自動車等への表示、積替え場所についての規定等が含まれており、「汚染土壌の運搬に関する基準等について」(平成31年3月1日付け環水大土発第1903017号)によって通知されています(1)。
また、汚染土壌を要措置区域等の外へ搬出する者は、原則的にその汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなければならないと定められています(第十八条)。
汚染土壌処理業者は、営業に当たって、汚染土壌処理施設の所在地を管轄する都道府県知事等の許可が必要で、五年ごとに許可の更新を受けなければいけません(第二十二条)。汚染土壌処理施設の種類には、①浄化等処理施設、②セメント製造施設、③埋立処理施設、④分別等処理施設があり、汚染土壌処理業者許可の基準や、汚染土壌の処理に関する基準等とともに、「汚染土壌処理業に関する省令」(平成二十一年環境省令第十号)によって定められています(2)。
また、汚染土壌の運搬・処理の詳細については、環境省によって発行されている「汚染土壌の運搬に関するガイドライン」、「汚染土壌の処理業に関するガイドライン」で、それぞれ確認することができます(3)。

指定調査機関について(第二十九条から第四十三条)

土壌汚染状況調査は、その後の土壌汚染対策の方針を決定する重要なものであるため、調査結果の信頼性を確保するため、技術的能力等を有し環境大臣によって指定された指定調査機関が行うこととされています(第三条、第二十九条)。指定調査機関は、五年ごとに指定の更新を受けなければならないことや、技術管理者を選任しなければならないことが定められています(第三十二条、第三十三条)。指定調査機関は、土壌汚染状況調査等を行うことを求められた時には、正当な理由がある場合を除いて、遅滞なく調査を行う義務があるとされています(第三十六条)。また、指定調査機関は業務規程を定め、環境大臣に届け出る必要があります。業務規程で定めるべき事項は、「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関及び指定支援法人に関する省令」の第十九条によって定められています(4)。

指定支援法人について(第四十四条から第五十三条)

第四十四条から第五十三条では、土壌汚染状況調査や汚染の除去等の措置を円滑にするため、汚染の除去等の措置を講ずる者に対する助成や、調査についての助言、普及啓発等の事務を行う指定支援法人に関して、指定方法や業務、基金の設置等の必要な事項が定められています。2022年6月1日現在は、公益財団法人日本環境協会が土壌汚染対策法に基づく指定支援法人に指定されており、助成金交付や照会・相談、普及・啓発などの支援業務を行っています(5)。

その他(雑則、罰則)について(第五十四条から第六十九条)

第五十四条から第六十四条では、国の援助や研究の推進、資料の提出の要求や権限の委任等に関する雑則が定められ、第六十五条から第六十九条では、同法に基づく命令や規定に違反した者に対する罰則が定められています。違反者に対する罰則の一例をあげると、第六十五条に該当する場合は一年以下の懲役または百万円以下の罰金が科せられます。

株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

http://www.env.go.jp/water/dojo/dojogl2021_2.pdf

    • 汚染土壌の処理業に関するガイドライン

http://www.env.go.jp/water/dojo/dojogl2021_3.pdf