2022年41日から、石綿の有無の「事前調査結果の報告」の義務化が施行されます。全ての建築物、特定の工作物の一定規模以上の解体や改修工事は、202241日着工の工事から原則全数が報告対象となります。アスベスト関連の法規性は、諸外国からの情報や実際に日本で受けた被害から取締を強化してきました。年々法改正による取り締まりが強化されているので随時情報のチェックが重要です。

アスベストが全面禁止になるまでの歴史

1975年「石綿吹き付け作業を原則禁止」

「特定化学物質等障害予防規則」の改正によるもので、同年101日から施行されました。石綿をその重量の5%を超えて含有するものが規制の対象となります。

1987年「石綿対策全国連絡会議が設立」

段階的全面禁止をめざす「石綿製品の規制等に関する法律案」が1992年に国会に提出されましたが、廃案となりました。

1995年「労働安全衛生法第55条の「製造等禁止」規定による禁止」

「製造等禁止」物質を列挙した労働安全衛生法施行令第16条に、クロシドライト及びアモサイトを追加する改正が、同年41日から施行されました。同時に、規制対象が、石綿をその重量の1%を超えて含有するものに拡大されました。

2002

20021212日の「石綿及び同含有製品の代替化等の調査結果の概要」公表に続いて、「石綿の代替化等検討委員会」が設置されました。市場に存在していることがわかった石綿含有製品のうち、3種類(耐熱・電気絶縁板、ジョイントシート・シール材、石綿布・石綿糸等)を除いて禁止するという趣旨のものです。石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、クラッチフェーシング、クラッチライニング、ブレーキパッド、ブレーキライニング、接着剤を禁止する労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成15年政令第457号)が20031016日に公布され、2004101日から施行されました。

2005

クボタショックの影響があり、「2008年までにアスベスト全面禁止」の方針が表明されました。経済産業省とともに関係業界を集めた「石綿の代替化に関する緊急会議」を招集するとともに、「石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討会」を設置しました。

2006

2006118日に公表された労働安全衛生法施行令の一部改正(平成18年政令第257号、同年82日公布)が同年91日から施行されました。禁止措置の適用が除外されるものが列挙されており、規制対象が、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するものに拡大されました。列挙されたもの以外はすべて禁止されるという意味で「原則禁止」ではありましたが、厚生労働省はこれを「全面禁止」と称しました。(2006910月号等)

2005年のクボタショックの、従業員が肺がんや中皮腫で死亡していたこと、工場の近隣の住民や従業員の家族が中皮腫を発症・死亡していたことを公表したことが発端となり、アスベストによる健康問題が、それを取り扱う労働者だけでなく多くの国民の問題であることが広く知られ、社会的な問題となりました。アスベストは、細かい繊維状でできた天然の鉱物繊維で、不燃性、耐熱性及び耐腐食性に優れていることから、生活を取り巻く様々な場面において使用されてきました。特に高度経済成長期においては、アスベストが大量に輸入され、アスベスト含有製品が大量に製造されましたが、現在このような時期から中皮腫の平均的な潜伏期間と言われる35年前後が経過しています。このため、アスベストによる健康被害は今後、更に増加すると懸念されており、環境省の推計によると、アスベストが原因とみられる中皮腫及び肺がんを今後発症する人は約85千人とされています。

これらの危険性を考慮して202065日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)」が定められました。この法律は、20214月から順次施行されています。

2021年「アスベスト規制対象の拡大」

アスベストの規制対象が、レベル1(吹付け石綿)、レベル2(石綿含有保温材、石綿含有断熱材、石綿含有耐火被覆材)だけではなく、レベル3(石綿含有成形板等、石綿含有仕上塗材)にまで拡大され、全ての石綿含有建材が対象となりました。また、レベルごとの作業基準も更新、新設されました。

2021年「不適切な作業防止」

元請業者は、石綿含有建材が使用されている建築物等の除去等が完了したことの確認を適切に行うために、必要な知識を有する者による目視での確認が義務付けられました。さらに作業の結果を、遅滞なく発注者に書面で報告、工事現場に掲示する義務が課され、その際に作成した書類や解体工事に関する書類は、作業完了日から3年間保管することも義務化されました。

2021年「事前調査」の義務化

「図面又は目視」から「図面及び目視」に変更となり義務化されました。目視調査でアスベスト含有が判明しない場合、サンプリングと成分分析が必要となります。しかし、20069月以降に着工された住宅などに関しては、アスベストが使用禁止になった後のため、当該着工日や製造日等の確認を行うことで事前調査を完了とすることができます。また、解体工事の元請業者は解体工事の前に行った事前調査に関する記録を作成し、解体工事完了から3年間は保存しなければならなくなりました。

2022年「事前調査結果の報告」

一定規模以上の解体等工事の元請業者又は自主施工者は、調査結果を事前に報告することが義務付けられました。報告方法は原則、「石綿事前調査結果報告システム」からの電子報告です。

・床面積合計80平米以上の解体工事

・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の建築物の改造・補修作業

・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の環境大臣が定める工作物の解体、改造等工事

202310月以降「建築物の事前調査を行う者の資格要件の新設」

アスベストの事前調査を行うための資格が創設され、事前調査を行うには一定の知見を有する者(建築物石綿含有建材調査者等)にしか行わせることができなくなりました。建築物石綿含有建材調査者とは、解体や改修する建物や構造物におけるアスベストの有無を、中立かつ公正に調査する有資格者のことです。厚生労働省、国土交通省、環境省告示第1号に基づく講習を受講し、さらに修了考査に合格する必要があります。

アスベストに関するその他の法規定

①建築基準法

2006年に建築基準法が改正され、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール(含有率が0.1%を超えるもの)が規制対象となり、新たに建築する建築物への使用が禁止になりました。また、2006年以前に建築された建築物においても、増改築等を行う場合は除去等(一定規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)が必要となります。

②廃棄物の処理及び清掃に関する法律

廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、廃棄物の排出抑制と処理の適正化により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律です。廃棄物処理法、廃掃法と略されます。

③建設リサイクル法

建設リサイクル法とは、建設工事で発生する廃材(建築廃棄物)を正しく処理し、リサイクルを促すために作られた法律です。正式名称は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といい、2000年に制定、2002530日に施行されました。

④労働安全衛生法

「労働安全衛生法」に基づく「石綿障害予防規則」第10条第1項や第2項では、すべての事業者に労働者の石綿ばく露防止対策を義務づけています。例えば、事業者は、自らの雇用する労働者が通常働く場所で吹付け石綿などが劣化し、労働者が石綿にばく露するおそれがあるときは、その場所で労働者を働かせてはなりません。