解体工事とは、マンションや戸建てなどの住宅や公共施設、倉庫、車庫といった「建築物」を取り壊す工事のことを言います。解体工は、解体現場の最前線に立っている職人であり、人力や重機の使用によって建物の解体作業を進めることが主な仕事となります。ユンボなどの重機を操作して大体な部分を壊す方法と、ハンマーやバールなどの工具や溶接機を用いて人力で解体する方法を使い分けて作業することになります。解体工事は常に危険が伴う作業のため、どんな現場でも、最前線に立つ作業員には安全への意識や近隣住民への気配りなどが求められます。また、雨や風、雷など、天気にも左右されやすいといった環境を踏まえると解体業において最もハードな仕事の一つとも言えます。

解体業に必要な許可申請

解体業を始めるには、「建設業許可」または「解体事業者の登録」が必要となります。また、工事内容によって必要な許可申請が異なるので、注意が必要です。

①建設業許可

建設業許可とは、建設工事を請け負って営業するための許可です。2つ以上の都道府県に営業所を設置する場合は国土交通大臣、1つの都道府県内だけで営業する場合は該当する都道府県知事が許可します。建設業許可は有効期限があり、5年ごとに更新が必要となります。解体業を営むためには、解体工事業以外、土木一式工事、建築一式工事、とび・コンクリート工事業のいずれかの建設業許可が必要です。

②解体工事業登録

解体工事業登録とは、建設業許可を保有しない場合でも解体工事ができる登録制度です。ただし、請負える工事の金額は500万円未満(税込)に限定されます。建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)に基づく規定です。営業所や施工する工事現場ごとに必要な標識、帳簿の記載や保存も定められています。小規模な解体専門業が多く登録しています。

500万円以上(税込)の解体工事を請け負う場合

平成2861日の改正建設業法施行により、「解体工事業」が新設されたため、平成3161日以降に500万円以上(税込)の解体工事を請け負う場合は、建設業許可「解体工事業」を受けることが必要となります。ただし、移行期間があり、「とび・土工工事業」の建設業許可を受けて解体工事業を行なっていた業者の場合は、平成31531日までは、「解体工事業」の許可を得ずに工事できます。

500万円未満(税込)の解体工事のみ請け負う場合

税込500万円未満の解体工事を請け負う場合、建設業許可は不要となります。ただし、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」により、「解体工事業者の登録」が必要と定められています。また、解体工事業者の登録は、工事を行う都道府県ごとに必要となります。

解体工事業登録に関する要件

都道府県ごとに受ける

解体工事業の登録は、工事を施工する都道府県ごとに申請が必要です。申請書には、会社名や個人の場合は氏名、住所、営業所の名称と所在地などを記載します。複数の都道府県で施工する時は管轄ごとに申請しますが、営業所の設置は不要です。登録は5年ごとの更新となります。解体工事業の登録業者が、建築一式や土木一式、とび工事の建設業許可を得た場合は、許可が重複するため失効します。

技術管理者の配置

解体工事の現場には、常勤の技術管理者を配置しなければなりません。技術管理者の要件としては、解体工事に8年以上の実務経験を有する人となります。学歴により実務経験は短縮されます。施工技士や施工管理技士、建築士、とび・とび工技能検定合格者、社団法人全国解体工事業団体連合会主催の「解体工事施工技士」試験合格者が該当者となります。技術管理者は適切な廃棄物処理と、建設リサイクル法に則した施工管理が目的です。

欠格要件に該当しないようにする

解体工事業登録を行う際、要件を満たさない欠格要件の場合は登録できません。欠格要件は解体工事業の登録取り消しから2年未満や業務停止命令期間が経過していないなどです。建設リサイクル法で罰金刑以上の違反後、2年以内の場合も対象で、法人と役員が該当します。技術管理者を選定していない場合も欠格要件にあたります。虚偽の申請を行った場合や、変更後の届けを怠った場合も同様です。

解体工事業の建設業許可要件

下記の資格を取得することで、解体工事業の専任技術者になることができます。

①土木施工管理技士

平成27年度までの合格者については、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要となります。土木施工管理技士は、道路や橋、トンネル、河川等の土木工事においての施工計画を作成し、現場で様々な作業工程の管理、安全や品質、コストの管理する仕事を行います。また、施工計画、工程管理以外にも、用地の確保から役所への手続き、書類の処理、周辺住民への説明など、幅広い範囲の仕事を任されます。

また、土木施工管理技士には、1級と2級があります。1級はすべての土木工事で、作業工程ごとの責任者である「主任技術者」と現場の全体を指揮する「監理技術者」の両方に選任されることができ、あらゆる土木工事で施工管理や安全管理の業務に従事することができます。2級は1級と資格形態が異なり、試験内容が「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分かれています。この中で合格した工事のその専門分野において、作業工程ごとの責任者である「主任技術者」として施工管理を行うことができます。

②建築施工管理技士

平成27年度までの合格者については、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要となります。

建築施工管理技士は建設現場において、施工計画を作成し、現場の工程管理や安全管理、品質管理など、工事全体の進行の管理、監督を行います。他にも、発注者との打ち合わせをはじめ、現場の技術者や職人の監督、指導、資材の発注、予算管理など、仕事内容は多岐にわたります。建築施工管理技士には1級と2級があります。1級建築施工管理技士は管理できる工事の規模に上限がないため、大規模な建設工事現場に関われる資格となっています。また、1級建築施工管理技士の資格を取得すると、業者が新たに営業所を立ち上げる場合に必要な一般建設業および特定建設業の専任技術者になることができます。2級建築施工管理技士は主任技術者までの資格となっており、監理技術者にはなることは出来ませんが、1級建築施工管理技士は主任技術者と管理技術者どちらにもなることができます。

 

その他、「技術士(建設部門・総合技術監理部門)」や「技能検定(一級とび、二級とび)、「解体工事施工技士」などがあります。

解体工事事業登録に関する罰則

①解体工事業登録を受けないで解体工事業を営んでいる場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

②技術者や事業所の地域等の変更届を提出しなかった場合や、虚偽の届け出を提出した場合には、30万円以下の罰金

③技術管理者を専任しなかった場合には、20万円以下の罰金

④事業所と解体工事現場に標識を掲げていない場合や、帳簿備付けがなされていない、帳簿に虚偽がある場合などは、10万以下の過料

 

解体工事業登録を受けないで解体工事をした場合、上記のような罰則がありますが、解体工事業登録を受けずとも請け負える工事があり、罰則適用対象外となりますので、事前に確認をお勧めします。