2023年(令和5年)10月以降は、建築物(建築設備を含む)の解体・改修工事を行う際は、資格者等による事前調査の実施が義務付けられます。

解体工事のほか、建築物の模様替・修繕等の改修工事、建築設備の取付・取外し・修理等の工事も含まれます。

事前調査を適切に実施するため、義務づけ適用以前においても、資格者等が事前調査を行うことが望ましいですが、解体等工事を行う建築物が平成18年9月1日以後に設置の工事に着手したことが書面により明らかである場合は、資格者等による調査を行う必要はありません。

また、自主施工者である個人が、建築物の改造又は補修の作業であって、排出され、又は飛散する粉じんの量が著しく少ないもののみを伴う軽微な建設工事を施工する場合には、資格の有無に係らず自ら事前調査を行うことができます。

事前調査を行うことができる者

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)
※一戸建て等調査者は一戸建て住宅や共同住宅の住戸の内部のみ事前調査を行うことができます。

④令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者。

建築物石綿含有建材調査者は、「特定」と「一般」「戸建て」の3つの種類があります。建物の解体や改修の際に、石綿を含む建材等の有無を調査します。令和27月に石綿障害予防規則等が改正され、建築物石綿含有建材調査者が調査にあたることが義務付けられました。令和5101日より義務化が始まるため、それまでに建築物石綿含有建材調査者の資格を取得する必要があります。建築物石綿含有建材調査者になるには、講習登録規定に基づく登録講習機関で講習を受講し、かつ修了考査に合格しなければなりません。

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)とは

特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)は、一戸建ても含めた、全ての建築物、構造物を調査できます。令和27月時点では、一般と特定の業務内容に相違点はありません。ただし、法改正があった場合は、両者が明確に区分される可能性があります。なお、建築物石綿含有建材調査者講習において、平成30年に新たな規定が施行されました。旧制度の講習を受講していた場合、「特定建築物石綿含有建材調査者」とみなされます。「建築物石綿含有建材調査者コース」は講義と修了試験を含めて3日間にわたって実施されますが、「特定建築物石綿含有建材調査者コース」は講義、実地、修了試験を含めて5日間にわたって実施されます。

・講習内容:講義(11時間)、実地研修、筆記試験、口述試験

 第1講座 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識

 第2講座 石綿含有建材の建築図面調査

 第3講座 現場調査の実際と留意点

 第4講座 建築物石綿含有建材調査報告書の作成

 第5講座 成形板等の調査

・受講資格:一般調査者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)とは

一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)は、令和27月時点では、特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)と業務内容に相違点はありません。一戸建ても含めた、全ての建築物、構造物を調査できます。ただし、法改正があった場合は、両者が明確に区分される可能性があります。

・講習内容:講義(11時間)、筆記試験

 第1講座 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識

 第2講座 石綿含有建材の建築図面調査

 第3講座 現場調査の実際と留意点

 第4講座 建築物石綿含有建材調査報告書の作成

 第5講座 成形板等の調査

・石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)とは

一戸建ては文字通り、戸建て住宅の調査を専門とする資格です。また、共同住宅の住居箇所における、全ての材料の事前調査が可能です。一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)では住居箇所の調査のみにとどまり、廊下などの共用部分は対象外となります。

・講習内容:講義(7時間)、筆記試験

・受講資格:石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

登録講習機関例

◆(一社)日本環境衛生センター

◆(一社)環境科学対策センター

◆建設業労働災害防止協会

◆(一社)日本石綿講習センター

◆中央労働災害防止協会 東京安全衛生教育センター

◆中央労働災害防止協会 大阪安全衛生教育センター

◆(一社)茨城労働基準協会連合会

◆(一社)三重労働基準協会連合会

◆(公社)石川県労働基準協会連合会

◆(公社)東京労働基準協会連合会

◆(一社)企業環境リスク解決機構

◆建設業労働災害防止協会 神奈川支部

◆(株)安全教育センター

◆建設業労働災害防止協会 宮城県支部

◆建設業労働災害防止協会 新潟県支部

◆建設業労働災害防止協会 長野県支部

◆建設業労働災害防止協会 愛知県支部

◆建設業労働災害防止協会 千葉県支部

◆(公社)岩手労働基準協会

※講習の詳細や最新の登録講習機関情報は、厚生労働省のウェブサイトからご確認ください。

【登録教習機関一覧(都道府県別)】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei05.html

アスベスト事前調査の必要性について

アスベストは、天然に存在する繊維状の鉱物です。石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれます。熱や摩擦等に強く、安価であることから、建設資材の他にも、私たちの身近なさまざまな工業製品に使われてきました。特に断熱目的やむき出しの鉄骨に直接吹き付けられたものは、非常に危険性が高くなっています。発じんの危険があるため、速やかに除去などの対策を講じなければいけません。昔はアスベストは断熱用として使われていたことが多く、天井に直接吹き付けられたりしました。そのため、古い建物ほど危険性が高く、作業の際には防護服や手袋などの装備も必須になっています。これらは飛散する可能性も残されているため、呼吸器系へ障害を起こす危険も高くなっています。空気中に浮遊するアスベスト繊維を吸入すると、肺がんや中皮腫などの重篤な疾患が発症するおそれがあるため、現在では製造や使用等が禁止されています。

しかし、アスベスト禁止以前に建築物に使用されている吹付けアスベスト等は、経年劣化や損傷などにより飛散し、建物の利用者の健康障害につながるおそれがあります。早めに飛散防止対策をしないと、建物の利用者が飛散したアスベストにばく露する可能性があります。また、アスベストを使用した建築物を解体したり、リフォームする際にも、そのアスベストが飛散するリスクが高くあります。そのため、アスベストを使用した建築物を取り扱う際は、事前にアスベスト使用箇所を書面や関係者から聞き取り、実際に書面等では確認できない箇所を目視で確認する必要があるのです。

事前調査は、解体等工事や石綿除去工事などの一連の工程における石綿の飛散及びばく露を最小化することを目的に行うものであり、事前調査中に石綿が大気中に飛散することや労働者が石綿にばく露することがあれば本末転倒です。そのため、事前調査では、石綿を含有する可能性がある粉じんを飛散させないこと、調査者等の粉じん吸入を防ぐことが必要となります。私たちの健康被害を最小限に抑えるためにも、事前確認及び、それに関わる調査者に資格保有を義務付ける必要があると言えます。