土壌調査とは、対象となる土地の、「土壌」「土壌ガス」「地下水」を採取・分析して、その土地に土壌汚染物質が無いか、基準値を超えていないかを調べる調査のことを言います。

『土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護する(土壌汚染対策法第1条)』として、平成15年に土壌汚染対策法は施行されました。

土壌汚染調査会社選定のポイント

①指定調査機関から選定する

環境省は土壌調査を行うにあたって調査機関を指定しています。

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染状況調査は、土地の所有者等が調査の義務を負いますが、その調査は指定調査機関に実施させなければならないこととなっています。また、土壌汚染対策法第16条第1項の調査(認定調査)も、指定調査機関が実施しなければならないこととなっています。

指定調査機関は法定調査を実施することのできる唯一の機関です。その一方で、法第36条第1項により、指定調査機関には、法定調査を求められたときに正当な理由がある場合を除き、遅滞なく法定調査を行う義務が課されています。 しかし、法定調査以外の土壌の調査を行う場合は、必ずしも指定調査機関の指定を受けている必要はありませんが、法に基づき行う詳細調査等については、指定調査機関が行うことが望ましいです。

【環境省が定める土壌汚染対策法に基づく指定調査機関】

https://www.env.go.jp/water/dojo/kikan/

②各指定機関の法律や条例対応実績の確認

土壌の汚染状況に関する調査は、試料の採取地点の選定、試料の採取方法などにより結果が大きく左右されるため、調査結果の信頼性を確保するためには、調査を行う者に一定の技術的能力等が求められます。

また、法第38条及び指定省令第20条により、指定調査機関は、技術管理者が業務規程に従って監督を行ったこと等を含む土壌汚染状況調査等の業務に関する事項を帳簿に記載し、結果を都道府県知事又は市長に報告した日から5年間保存しなければなりません。

調査機関の対応実績について確認されることをおすすめします。

③数社から調査費用の見積もりや必要な情報をもらう

土壌汚染調査は、対象地の条件や調査項目で費用が変わってきます。

初期の現地調査の場合、土壌汚染のおそれがある調査地は100㎡あたり20万円~30万円、土壌汚染のおそれが少ない調査地は900㎡あたり20万円~30万円というところが一般的です。

状況によって見積りは変わってきますので、何社か見積りと調査の内容を確認し比較検討することが望ましいです。

土壌調査が義務付けられているケース

①土壌汚染対策法第31項「有害物質使用の特定施設を廃止する時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場の中には、土壌汚染対策法で定められている特定有害物質を使用している工場もあり、特定施設の使用を廃止する際には必ず調査が必要になります。

②土壌汚染対策法第37項「調査の猶予を受けている土地の形質変更時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場で、廃止届を出して調査の猶予を受けている土地について、900m2以上土地の形質変更時、軽易な変更を除き、届出を行い調査を実施する必要があります。

③土壌汚染対策法第4条「3000㎡以上の土地の形質変更の時」

3000㎡以上の土地の形質変更で、掘削する面積+盛り土する面積≧3000㎡の場合、都道府県知事への届出が必要になります。

④土壌汚染対策法第4条3項「有害物質使用工場(稼働中)900㎡以上の土地の形質変更の時」

水質汚濁防止法、下水道法に基づき「特定施設」として役所へ届け出をしている工場の中には、土壌汚染対策法で定められている特定有害物質を使用している工場については、稼働中に900㎡以上の土地の改変を行う際に、必ず調査が必要になります。

⑤土壌汚染対策法第5条「土壌汚染により健康被害が生じるおそれがある時」

都道府県から土壌汚染調査の命令がでた場合には、必ず調査が必要になります。

 

上記以外にも、都道府県によっては各条令で土壌汚染調査の範囲を広げている場合もあります。

土壌汚染による影響

①環境への影響

土壌汚染は、農作物や植物に有害物質が広まって生育を阻害したり、飲用の地下水が油膜したり、生態系への悪影響が出るといったことが考えられます。

②人体への影響

汚染された土壌の土が直接皮膚に触れたり、大気汚染された有害物質を吸い込むといったことで汚染物質を体内へ取り込んでしまう危険性があります。また、①の環境汚染にて汚染された有害物質を取り込んだ魚介類を食べたり、汚染された土壌で育てられた農作物を食べたことによる間接的な影響も大いにあります。

土壌汚染による健康被害例

①足尾鉱毒事件

足尾鉱毒事件(足尾銅山鉱毒事件)は、19世紀後半の明治時代初期から栃木県と群馬県の渡良瀬川周辺で起きた、日本で初めてとなる公害事件です。足尾銅山の開発により排煙、鉱毒ガス、鉱毒水などの有害物質が周辺環境に著しい影響をもたらし、1890年代より栃木の政治家であった田中正造が中心となり、国に問題提起するものの、加害者決定はされませんでした。

②イタイイタイ病

全国的に有名となった4大公害病として知られる「イタイイタイ病」は、富山県神通川流域で第二次世界大戦の頃から発生した公害病です。 子供を出産した女性に多く発症し、手足の骨がもろくなり、激しい痛みが伴うので、イタイイタイ病と名が付けられました。 最終的に認定された患者数は、190人となり、鉱山廃液にふくまれるカドミウムが原因であることがわかりました。 裁判結果は、会社に賠償命令及び毎年、排水と川の水質検査を義務づけられました。

土壌は、水や空気と同じように、人間を含んだ生き物が生きていく上でなくてはならないものです。地中にいる生き物が生活する場であり、土壌に含まれる水分や養分が、私たちの口にする農作物を育てています。土壌汚染とは、こういった働きを持つ土壌が人間にとって有害な物質によって汚染された状態をいいます。原因としては、工場の操業に伴い、原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまったり、有害な物質を含む液体を地下に浸み込ませてしまったりすることなどが考えられます。また、土壌汚染の中には、人間の活動に伴って生じた汚染だけでなく、自然由来で汚染されているものも含まれます。

まとめ

土壌汚染調査が必ず必要となる、法律で義務付けられているケースは、上記で述べたような「土壌調査が義務付けられているケース」で、2017年はこの法律に義務で実施されたものは全体の17%でした。

残りの84%は自主的に実施されており、大部分が自主的な調査であるということになります。自主的に調査が行われるきっかけは、土地売買が大半になります。義務調査には該当しなくとも、土壌汚染が確認されて土地価格が下がることや、風評被害を避けるために、買主もしくは借主から調査を依頼されるケースも多くなっています。特に、工場であった土地、ガソリンスタンドやクリーニング店舗など、特定有害物質を使用する可能性のある業種が営業されていた土地などで実施されることが多いです。

このように土壌調査が必要となる土地を扱う場合は、指定調査機関に相談の上で、何社か事例と見積りを取った上での調査実施をおすすめします。