土壌調査とは

土壌調査は、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第3条第1項(※1)に準じて環境大臣が指定した指定調査機関(約1500機関)に調査させることが望ましいです。原則として使用しなくなった有害物質使用特定施設に係る「工場又は事業場の敷地であった土地の全ての区域」がそれにあたります。他にも同法第4条(※2)にある、上記の土地の所有者等に対し、「移転や廃業に伴う操業の有無にかかわらず健康被害が生ずる恐れがあるとして都道府県知事から調査命令が発せられた場合」も調査の対象となります。
大気、公共用水域及び地下水等への汚染が認められる場合等必要と認められる場合も同様に対象となります。

土壌調査には様々な方法があります。

1フェーズ

既存資料等調査(地歴調査とも言います)は過去の土地利用履歴を各種資料から調べて、汚染の可能性を探ります。

第2フェーズ

概況調査は第1フェーズで汚染の可能性があった場合に行います。
①表層土壌調査は表層土壌調査で表層ガスも調べます。
②ボーリング調査(以下に記します)。
③地下水調査は地下水への汚染状況を調べます。

ここからはボーリング調査について触れていきます。

ボーリングとは穴を開けるという意味の「bore」からきています。進行形を示す-ingというご単語が付いて「boring」となりました。ですがboringの正式な意味は形容詞として「退屈な〜、うんざりするような〜」ですが、「穴をあける」というボーリングを意味するときは名詞として使います。

ボーリング調査とは

ボーリング調査とは、一般的に建物や構造物などの支持基盤の深度と強度の確認をするために行われますが、土壌汚染対策法においては、地質調査の基本となる重要なものです。地盤に細い孔を深く開けて、採取した土や岩盤の試料を調べて、その状況を把握することで、有害物質の有無を調べます。

例えば、土壌汚染調査をせずに売買契約が成立した後、買主が自ら土壌調査を行い、有害物質が見つかった場合、売主には瑕疵責任が問われます。損害賠償請求を起こされたり、契約が無効になったり、会社としての信用を無くしてしまうことになりかねません。

「有害物質使用特定施設の廃止時」「3000㎡以上の土地の形質変更時」などは土壌汚染調査が義務付けられています(義務調査)が、買主は住民の健康リスクへの不安を解消しなければなりません。そのためには自主調査をする必要があります。信用信頼を築くのは長い年月がかかりますが、失うのは一瞬です。念には念を入れる必要があるのです。

土壌調査の流れ

土壌調査の第一段階は「資料等調査」です。過去から現在までの土地の利用状況や土地の特性を調べます。この調査では該当する土地の過去の利用履歴、特定有害物質の使用等の状況、古い地図、行政に残されている資料類、さらには現地視察などにより土壌汚染の可能性を見極めるものです。

特定有害物質は大きく3つに分類されます。

・第一種特定有害物質(12項目)揮発性有機化合物等→土壌ガス調査
・第二種特定有害物質(9項目)重金属等→土壌溶出量調査、土壌含有量調査
・第三種特定有害物質(5項目)農薬等→土壌溶出量調査

調査の手順は、自主的な調査の場合でも土壌汚染対策法施行規則(平成14年)で定められた方法に準拠することが一般的となっています。
第一段階(既存資料等調査)で疑わしい場合は、第二段階として上記の「概況調査」を行います。
通常「資料等調査」は3週間程度かかり、リスクがあれば「概況調査」へと移ります。その調査には「土壌ガス調査」と「表層土壌調査」があります。

「土壌ガス調査」は単位区画ごとにガスを採取して分析します。通常12か月を要します。

「表層土壌調査」は単位区画ごとに表層土壌を採取して分析をします。こちらはも1〜2か月程度かかります。
「表層土壌調査」での結果に関わらず、下層の土壌に汚染のおそれがあれば、ボーリング調査を行うことになります。

ボーリング調査の特徴

ボーリング調査は汚染土壌処理対策のデータとするために対象地域全域において状況に応じて実施します。ここでボーリング調査の種類を記しておきます。

[標準貫入試験][孔内載荷試験][現場透水試験][揚水試験][PS検層・密度検層][物理探査・検層][不撹乱試料採取][オールコアボーリング][地盤改良の効果確認]

以上ですが、土壌調査で最もポピュラーな方法は[標準貫入試験]です。
その特徴はあらゆる地層において掘削が可能であり、土質試料の採取ができる調査です。地下水位の確認も可能です。

一般にボーリング調査と呼ばれる方法は、正式には「ボーリング・標準貫入試験」と言います。ボーリングによって掘削した孔を利用して、1メートルごとの地盤の硬さを測定します。と同時に土のサンプリングも行います。

この試験によって得られるデータをN値と呼び、地盤の安定性を推定する目安になります。N値とは、63.kgのおもりを76cmの高さから落下させて、先端に取り付けたサンプラーを土中に30cm貫入させるのに要する回数の測定値のことです。
標準貫入試験で何が得られるものは

N値 ②土の密度 ③地盤の種類 ④地盤の液状化の度合い ⑤地盤の弾性係数

以上です。

ポピュラーな標準貫入試験

標準貫入試験がなぜポピュラーなのか。それは世界の多くの国で基準化されており、結果の比較が容易にできるためです。他にも長所があります。N値の利用分野が建築や土木において地盤や杭の支持力、各種計算の土着定数を推定するのに便利なのが理由です。標準の地盤指数といえます。実際の試験方法には細かな規定がJIS(日本産業規格)で決められていますので、そちらを参照してください。

逆にマイナス点は、広い調査スペースが必要であり、試験が数日間に及び、コストパフォーマンスが低いことなどが挙げられます。

ボーリング掘削方法

次に代表的なボーリングの掘削方法を以下に列挙します。

①一般のボーリング機器によるボーリング(ロータリー式ボーリング)

先端に取り付けたビットに機械的な回転と圧力を加えて地層を掘削する方法です。土壌の測定、地層の把握及び土壌試料の採取をする際に適しています。やぐらを設置しますので、高さがない室内での調査には不向きです。

②標準貫入式ボーリング

油圧ハンマーの打撃貫入によりサンプラーを地盤に挿入して、土壌試料を採取する方法です。最も一般的な方法です。

③機械式簡易ボーリング

仮設足場が不要なのでコストパフォーマンスに優れています。深度35メートルならば掘削完了まで1日で済みます。

④孔内水平載荷試験

地震発生の際の液状化現象や地面の強さを計測する方法です。

土壌汚染調査市場のいま

一般社団法人土壌環境センター が令和2年度における土壌汚染調査・対策事業の受注件数、受注高等を取りまとめたところ、前年度に比べ受注件数は6,773件と753件減少し、受注額も687億円と47億円減少しています(対象企業数100社うち回答企業数:82社、受注実績がある企業67社、受注件数は6,773件、受注高は687億円)。

平成20年度の土壌汚染状況調査・対策受注実績は11,591件もあったことを思うと、環境に対する企業や個人の意識が変わっていることが数字にも表れています。

《まとめ》

土地の売買において互いの信頼関係が重要なのはいうまでもありません。ビジネスの根本は正にそこにあるからです。特に土壌汚染の疑いが考えられる時は、万全を期して調査を行うべきであり、疑念なく取引ができるまで究明するべきです。その際、ボーリング調査を行っている会社は多様であり、状況に応じて調査を行うことが肝要であります。

1 土壌汚染対策法第三条 使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設(第三項において単に「特定施設」という。)であって、同条第二項第一号に規定する物質(特定有害物質であるものに限る。)をその施設において製造し、使用し、又は処理するものをいう。以下同じ。)に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)であって、当該有害物質使用特定施設を設置していたもの又は第三項の規定により都道府県知事から通知を受けたものは、環境省令で定めるところにより、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、環境大臣又は都道府県知事が指定する者に環境省令で定める方法により調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。
同第四条 土地の形質の変更であって、その対象となる土地の面積が環境省令で定める規模以上のものをしようとする者は、当該土地の形質の変更に着手する日の三十日前までに、環境省令で定めるところにより、当該土地の形質の変更の場所及び着手予定日その他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。