解体工事は、まず自治体や行政に必要な書類を提出することから始まります。法律に則った申請が必要で工事の前に提出することが原則です。提出書類は自治体により多少差異があります。ここでは、業者が行う9種、依頼主が行う4種を中心にみていきます。最終的には各自治体のHPなどで確認が必要です。

業者が行う届出

① 建築物除去届など建物関連

② 道路の使用許可申請など道路関連

③ 特定建設作業実施届など環境関連

④ 危険物貯蔵取扱許可申請など消防関連

⑤ 特定元方事業開始報告書など安全衛生に関連

⑥ アスベスト使用建築物に係る事前調査報告書などアスベスト関連

⑦ フロン製品(第一種特定製品)の有無確認

⑧ 臨時電力電灯申込書など電気関連

⑨ 自家用電気使用申込など上下水道関連

依頼主が行う届出

❶ 建物滅失登記など建物関連

❷ 解体建物の構造など建設リサイクル関連

❸ 各種廃止届

❹ 使用機器廃止並びに保管管理報告書

届出を怠ると罰金などが科されることがあり、工事が遅れたり、関係各所へ迷惑をかけることになりかねないので注意が必要です。

それでは順に詳しく見ていきます。

業者が行う届出

①建築物除去届(→都道府県知事へ、解体前)

解体工事を行う床面積が10平方メートルを超える建築物の除去を行う場合に提出が必要となります。この届は建築基準法第15条第1項の規定によります。

届出を怠りますと、50万円以下の罰金が科せられます。

参考までですが、建築物を建てる場合は、建築工事届が必要になります。届出を怠りますと、上記同様、50万円以下の罰金が科せられますので、いずれも注意してください。業者任せにせず、こちらから確認してもいいでしょう。

②道路の使用許可申請(該当する道路を管轄する警察署へ申請)

工事現場付近にトラックや車両を停める場合、必要となります。この申請は道路交通法第77条第1項の規定により、道路を管轄する警察署長へ許可を求めることになります。解体工事は、4つある許可のうち「1号許可」が該当します(他に2〜4号まであります)。申請には2,500円から2,700円くらいの審査手数料がかかります。

③特定建設作業実施届(→市区町村へ、着工の7日前まで)

工事によって発生する騒音や振動を規制(騒音規制法第14条、振動規制法第14条に基づく)から環境を保全するために届出が必要になります。規制地域は各市区町村が定めていますので問い合わせる必要があります。虚偽の届出など適切な届出をしない場合や、検査を拒み妨げる場合、改善命令に従わない場合には懲役、罰金又は過料が科せられます。

④危険物貯蔵取扱許可申請(→該当する地区の消防署へ、着工の15日前まで)

一般的に消防法では指定数量以上の危険物の貯蔵又は取り扱いを禁止しています。それらを扱う場合には、許可を受けた施設において政令で定める技術上の基準に従って行わなければならないと規定されています。「危険物貯蔵取扱許可申請」は15日前までに該当する地区の消防署へ行ってください。他に「圧縮アセチレンガス等の貯蔵取扱届」は同じ区消防署へ23日前までに申請しましょう。

⑤特定元方事業開始報告書(→監督署、7日前)

特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該作業の開始後、遅滞なく、事業の種類並びに当該事業場の名称及び所在地等労働安全衛生規則第 664条第1項各号に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。労働安全衛生法第30条第2項の規定により指名された事業者についても同様に、指名された後、遅滞なく前述の事項を報告しなければなりません。

⑥アスベスト使用建築物に係る事前調査報告書(→市区町村へ、着工前)

現在では原則としてアスベストの使用は禁止されていますが、古い建物では使用されている可能性があります。使用が疑わしい場合は調査が必要です。調査は使用の有無を目視したり、設計図書などを使用して調査をします。他には「アスベスト除去工事計画書(→監督署、14日前)」「特定粉塵排出作業実施届(→都道府県、14日前)」「アスベスト使用建築物に係る解体撤去工事完了報告書(→市区町村、工事が完了してから)」といった書類も提出しましょう。

以下の書類は、それぞれ電力会社、水道局へ提出します。

⑦フロン製品(第一種特定製品)有無の確認

フロンはかつて冷蔵庫で使用されていることで地球温暖化の元凶のように言われていました。フロン製品は業務用エアコンや冷凍冷蔵機器、ビールサーバー、自動販売機で使われています。ここでは解体工事元請業者が製品の有無、処分に関する義務を説明します。

・業務用冷凍空調機器の有無の確認(事前確認)

・解体工事前に事前確認書により施主(工事の依頼者)に対して結果を説明

以上の2点です。他に、フロン類の引き渡しを受託した解体業者等の義務は以下の通りです。

・フロン類充填回収業者へのフロン類の引き渡し

・業務用冷凍空調機器の所有者から交付された「委託確認書」をフロン類充填回収業者に回付、写しを3年間保存

・フロン類充填回収業者から受け取った「引取証明書」を3年間保存

以上3点です。フロン排出抑制法(平成27年4月施行)を守るのは当然でしょう。大袈裟に言えば、人類の未来を考えれば、温暖化に歯止めをかけるには、個々人はフロンの排出を少なくするなどしかできません。

⑧臨時電力電灯申込書(→各電力会社へ、30日前)

⑨自家用電気使用申込(→各水道局へ、1530日前)

依頼主が行う届出

❶ 建物滅失登記(→各法務局へ、1か月以内)

この言葉を聞き慣れていない人が多いのではないでしょうか。現在ある建物は登記がなされていますが、それと逆に建物がなくなった場合に必要な手続きが「滅失登記」です。簡単にいうと、登記簿から抹消することです。

・建物滅失登記が必要なケース

解体工事だけでなく、自然災害や火災によって建物がなくなった時にも行う必要がありますので注意してください。解体工事後、1か月以内に滅失登記を行わなければなりません。1か月以上経ちますと10万円以下の過料が科せられることになります。他には、「家屋取り壊し届(→市区町村へ、遅滞なく)」「官民境界境界確定順(→財務局、2か月〜3か月)」があります。

ここで参考までに「表題登記」に触れます。滅失とは逆の建物が完成した段階で行います。滅失届の反対語として覚えておきましょう。

❷ 解体建物の構造(→都道府県へ、7日前)

建設リサイクル法の届出は施主(依頼主)が行いますが、手数料を支払えば解体業者が代行してくれることがあります。

・対象となる工事には、2つの条件があります。

1つ目は、特定建設資材が使われているかどうか、です。具体的には、コンクリート、コンクリートと鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの資材が使われている構造物が対象となります。

2つ目は、工事の種類や規模の確認です。上記の資材の使用が確認された後に行います。

建築物の解体工事は床面積の合計が80平方メートル以上、新築・増築工事の場合は床面積の合計が50平方メートル以上です。確認ができたら、建設リサイクル法の届出が必要となります。解体工事の発注者(施主)が工事開始の7日前までに都道府県に対して行いましょう。他には、「着手時期及び工期、工程表」「分別解体の計画」「廃材量の見込み」も工事開始の7日前までに都道府県に対して行いましょう。

❸ 各種廃止届

「低圧電灯電力撤去申込み(→各電力会社へ、廃止7日前)」

「自家用電気廃止申込み(→各電力会社へ、廃止30日前)」

「電話機撤去申込み(→NTTへ、廃止7日前)」

「水道使用中止届(→各水道局へ、廃止7日前)」

「ガス装置撤去申込み(→各ガス会社へ、廃止7日前)」

「危険物貯蔵所廃止届(→各消防署へ、遅滞なく)」

「消防指定水利廃止届(→各消防署へ、工事前)」

「ボイラー廃止報告書(→各監督署へ、遅滞なく)」

「昇降機廃止届(→都道府県へ、廃止する時)」などがあります。

❹ 使用機器廃止並びに保管管理報告書(→各通産局へ、迅速に行う)

その他、埋蔵文化財関連の解体(取り壊し)を行う場合は、工事開始30日前までに文化庁に行わなければならない。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。全国(東京、名古屋、大阪、岡山、福岡など)で無料相談、無料見積もりを実施しておりますので、解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。