産業廃棄物とは

解体工事によってできる産業廃棄物といっても様々なものが出てきます。業者に任せているので、直接目にすることは少ないですが、知っておいてもいいものなので詳しく紹介します。

一般に産業廃棄物とは以下のように定義されています。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月25日法律第137号)です。ちょっと古い昭和にできた法律ですが、令和の今でも効力を保っているのです。

「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」(第2条第4項第1号)および「輸入された廃棄物」(同第2号)とされており、産業廃棄物以外のものが一般廃棄物とされています。

付け加えると「放射性物質及びこれによって汚染自分されたものを除く」とあります。

ここで、一般廃棄物とは何かについても触れておきます。産業廃棄物以外が一般廃棄物と言われても、きっちり分けられないのではないでしょうか。法律上では「一般廃棄物」と「特別管理一般廃棄物」に大別されます。聞きなれない後者は「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの」です(同法第2条第3項)。簡単にいえば、一般廃棄物とは、人間がし生活する際に発生する廃棄物のことです。爆発性が生ずるものも元はと言えば、人間が作り出したものです。

解体業者=排出事業者

廃棄物の排出事業者は解体業者

普通、排出事業者というと、家庭に当てはめるとゴミを出した住人を指します。これが解体工事の場合、施主(解体を依頼した法人や個人)が排出事業者ではありません。こう書くと「??」と疑問を抱くでしょう。住人が出したゴミに廃棄物が含まれていたのに、そのゴミを収集した業者が排出事業者となるのです。「ウチの建物の解体工事を依頼したのは社長の俺だから、施主(俺)が排出業者になるのか」と考えるでしょう。

解体工事を廃棄物処理法の観点で見ると、「会社の建物や住居という有価物が、解体工事を通じて、(産業)廃棄物に変わった」と解釈することが廃棄物処理法の考え方です。例えば、ゴミを出したのは工事を行った解体工事会社ですから、解体工事会社が排出事業者となります。廃棄物処理法に次の条文があります。

建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外

第二十一条の三  土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。

廃棄物を出すことになる解体工事は、施主(解体を依頼した側)が自力で解体工事をする施設や能力がないケースがほとんどです。解体工事会社はプロフェッショナル集団。ですから、責任を負和なければならない、という考え方を理解しておきましょう。

廃棄物とは

ここで廃棄物とは何かを確認しておきます。占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売ることができないために不要となったものです。

対称的な言葉に有価物があります。例えば使わなくなったスマートフォンです。占有者にとって価値がなくなっても、他人から見ると「まだ使えるから売ってくれ」となり貨幣的価値を持っています。もちろん誰もこのスマホを必要とする人がいなければ有価物にはなりません。ちなみに有価物を取り扱うには古物商の許可があればいいのですが、廃棄物の場合はそうはいきません。

廃棄物処理法のポイントは3つ

①廃棄物は適正に責任を持って処理しなければならない

(同法第11条、第12条)

第11条 「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」

第12条 「事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準に従わなければなならない」

(排出)事業者とは、処理することとなる産業廃棄物を生み出した原因を作った事業を営むものです。家庭に当てはめるとゴミを出した本人を指します。しかし、ここで思うのは、事業者が「収集、運搬及び処分」を行う施設を所有しているのかです。そこで、行政から許可をとっている「収集運搬業者」「中間処理業者」「最終処分業者」であれば委託できるのです。

②委託先は処理業者とする

2つ目のポイントになります(廃棄物処理法第12条第5項)。

③排出業者はマニフェストを発行しなければならない

廃棄物処理法では、廃棄物が適正に処理される過程を確認・保存する方法として、排出事業者(解体工事会社)に対して産業廃棄物管理票(通称:マニフェスト伝票)の発行を義務付けています(同法第12条第3項)。マニフェストというと、選挙公約のことが思い浮かぶ方が多いでしょうが、ここでは廃棄物処理過程で処理した過程を記したもので、選挙公約のように実行しなくてもいいわけではなく、罰則を伴います。

この管理表は、事業者が廃棄物処理の管理をしやすいように定めたもので、5年間の保管を義務付けられ、違反すると罰則があります。

ちなみに同法違反は「五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」となっています。施主が課されることはなく、収集運搬業者と処分業者に課せられるのですが、トラブル(事件)には巻き込まれたくないものです。

次に廃棄物処理の大雑把な流れをつかんでおきましょう。

処理の流れ

排出事業者は、廃棄物処理の流れを把握しておかなければ、マニフェストを発行できません。処理法の考え方は、施主(法人個人)には専門的知識がないので、解体工事会社(排出事業者)に委託するべき、という考えが根底にあります。

まず、最初に処理業者と運搬業者にそれぞれ処理を委託します。廃棄物の流れを簡単に追っていくと、まず収集運搬業者へ移り、次に処分業者へと渡り、処分されます。その際、排出事業者は処理業者と収集運搬業者それぞれと委託契約を書面で結ばなければなりません。

産業廃棄物の委託手順

委託には手順があります。

①処理業者の事業の範囲、許可証を確認

収集運搬は積み込み積み下ろし場所と積み替えて保管する場所の許可が必要です。

②収集運搬業者と処分業者とそれぞれ書面で契約を締結する

許可証の写しが添付されて、必要事項が漏れなく記入されているかを確認します。

③廃棄物を引き渡すと同時にマニフェストを発行交付する

これは1回の積み込み毎に必要です。

④返送されてくるマニフェストで処理状況を確認

⑤委託契約書とマニフェストは5年間保存します。

ここで、委託契約書の記載項目は同法で規定されています。例えば、中間処理を委託する場合であっても、最終処分の場所・方法・処理能力の記載も必要となります。

マニフェストを詳しく

排出事業者が交付するマニフェストは、事業者が廃棄物の移動、処理の状況を把握して、適正に処理がなされているかを把握するために導入されました。排出事業者は都道府県知事へ報告する義務を負っているため、きっちり報告をあげてくる信頼できる処理業者に委託しています。施主は安心できる排出事業者を選ばなければなりません。

廃棄物の保管

普通は工事現場から廃棄物処理施設へ直接運ばれますが、やむを得ない事情で解体工事会社(排出事業者)の自社の土地で一時的に保管することがあります。その際、保管の基準が定められています。「囲いや掲示板を設置しなければならない」「保管が長期に渡ると、投棄したとみなされる」など、細かい基準がありますが安心できる排出事業者に委託すれば施主は安心できます。

排出事業者の処理責任

産業廃棄物は排出事業者が自らの責任において適正に処理しなければならない。これが大原則です。自らが適正に処理するか、業者に委託して適正に処理するかのいずれかです。

処理業者を把握できていれば問題はないのですが、下請け、孫請けと範囲が広がると、どこでどれを処理したのか、わかりにくいことがあります。責任の所在がはっきりしなくなるとトラブルの元になります。

委託するうえでの注意点

産業廃棄物処理業の許可がない下請業者に処理を委託すると、元請業者(解体工事会社)は委託基準違反、下請け業者は受託禁止違反又は無許可営業に問われます。

処理費用は

各都道府県によって差異はありますが、処理費用の目安をあげておきます(あくまで参考です)。

工場の解体工事における坪単価別費用

10坪未満→坪単価4万8000円、10坪台→3万円、20坪台→2万7000円、30坪台→2万8000円…70坪以上2万3000円

廃棄物の種類(1トンあたり)

木くず→1万4000円、金属くず→3500円、繊維くず→4万円、アスファルト→1300円、コンクリートガラ→1500円、廃プラスチック→5万6000円、ガラス→7500円

何度も繰り返しますが、悪徳業者は少なからずいます。それら法律に違反する業者に委託することは、自ら犯罪の片棒を担ぐようなものです。業者選びは慎重に行いましょう。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。全国(東京、名古屋、大阪、岡山、福岡など)で無料相談、無料見積もりを実施しておりますので、解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。