令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられます。さらに令和5年(2023年)10月からは有識者によるアスベストの事前調査・分析が義務化されることが決まっています。調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。この記事ではアスベスト調査の項目について説明していきます。

アスベストとは?

石綿(アスベスト)とは、天然の繊維性けい酸塩鉱物で、日本語では「いしわた」「せきめん」と言われ、英語では「アスベスト」と言いわれています。

石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。

事前調査とは?

工事前に建築物等に使用されている建材の石綿含有の有無を調査することを指します。事前調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本とされています。

建築基準法など各種法律に基づき施工された石綿含有建材以外にも、改修・改造・補修などにより、想定できないような場所に石綿が使用されている場合があるため、建材等の使用箇所、種類等を網羅的に把握し的確な判断を行う必要があります。

事前調査は、書面による調査と、目視による調査の両方を行う必要があります。また、その結果を記録し、3年間保存する義務があります。さらにその記録を作業場所に備え付け、労働者に見やすい場所に掲示する必要があります。

また、一定規模以上の解体工事の場合、事前調査の結果を石綿の有無を問わず、労働基準監督署に報告する必要があります。

アスベスト事前調査の主な項目

アスベスト事前調査の主な項目は以下です。

・アスベスト含有建材の使用の有無

・アスベスト含有建材の種類

・アスベスト含有建材の使用個所

・アスベスト含有建材の量または面積

アスベスト事前調査の流れ

アスベストの事前調査の流れ

①書面調査

・調査実施計画作成

・計画承認

・図面調査

・発注者ヒアリング

・アスベスト含有の有無仮判定

・目視調査の準備

②現地調査(現地による目視調査)

・外観観察

・屋上・外構確認

・内部レイアウト・各部屋確認

③採取・分析調査

・現物確認

・分析用試料採取

④報告

掲示義務について

事業者は、建築物等(鋼製の船舶を含む)の解体等の作業、封じ込め又は囲い込みの作業を行うときは、あらかじめ、石綿の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければなりません。調査の結果、石綿の使用の有無が明らかとならなかったときは、分析調査し、その結果を記録しておかなければなりません。また、これらの調査を終了した日、調査の方法及び結果の概要について、労働者が見やすい箇所に掲示しなければなりません。ただし、石綿等が吹き付けられていないことが明らかで、石綿が使用されているとみなして対策を講じる場合、分析調査の必要はありません。

【報告対象となる工事】

建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80 ㎡以上)

建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

石綿障害予防規則に基づき労働基準監督署にも報告する必要があります。

石綿障害予防規則に基づく報告は、上記に加え、鋼製の船舶の解体又は改修工事(総トン数20トン以上)も必要です。

アスベスト事前調査の報告内容

事前調査結果は、都道府県・労働基準監督署へ提出・報告が必要です。

具体的には一部抜粋になりますが以下のような内容になります。

工事概要、建築物等の概要、調査概要、建材ごとの調査結果と石綿「有」「みなし」の場合の作業時の措置など、細かく記載し報告しなければなりません。事前に報告内容も確認するようにしましょう。

【 報告内容(一部抜粋)】

・書面による調査・及び目視を行った者

・分析に夜調査を行った箇所

・分析による調査を行った者の氏名及び所属する機関又は法人の名称

・建築材料の種類

 ┗事前の調査の結果(石綿有・みなし・石綿無)

 ┗特定建材に該当しない場合の判断

 (①目視 ②設計図面 ③分析 ④建設材料製造者による照明 ⑤建築材料の製造年月日)

報告対象となるアスベスト含有建材の種類

  • 吹付け材
  • 保温材
  • 煙突断熱材
  • 屋根用折版断熱材
  • 耐火被覆材(吹付け材を除き、けい酸カルシウム板第2種を含む。)
  • 仕上塗材
  • スレート波板
  • スレートボード
  • 屋根用化粧スレート
  • けい酸カ ルシウム板第1種
  • 押出成形セメント板
  • パルプセメント板
  • ビニル床タイル
  • 窯業系サイディング
  • 石膏ボード
  • ロックウール吸音天井板
  • その他の材料

アスベスト調査を行った後の対応

アスベスト含有建材の有無にかかわらず、下記4点を行わなければなりません。

調査結果の発注者への説明(書面を交付)

調査記録の作成・保存(工事終了後3年間)

調査結果の現場備え置き

調査結果の現場掲示(A3サイズ以上の掲示板を公衆の見やすい場所に設置)

調査結果の掲示に関しては、下記をご参照ください。

建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル

建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(環境省)

事前調査結果の報告について

一定規模以上の建築物等の解体等工事について、アスベスト含有建材の有無にかかわらず、都道府県等への報告が義務付けられています。

報告は、原則として石綿事前調査結果報告システムから電子申請で行ってください。システムの利用時には「gBizID」への登録が必要となります。

石綿事前調査結果報告システム

gBizID登録サイト

アスベスト調査の保存期間について

事前調査結果に関する記録は、解体等工事が行われている間、工事現場に備え置く必要があります。作業計画に基づく作業実施状況等を記し、作成した書類は解体等工事の終了後、3年間保存が必要です(電子保存も可)。

実施状況等の内容には以下などの例があります。

①掲示・表示(事前調査の概要、関係者以外立入禁止、喫煙・飲食禁止、石綿等を取り扱う作業場である旨等の掲示)

②隔離の状況、集じん・排気装置の設置状況、前室・洗身室・更衣室の設置状況、排気口からの漏えいの有無の点検結果、前室の負圧に関する点検結果、隔離解除前の確認の実施状況等(負圧隔離を要する作業を行う場合に限る)

③作業計画に示されている作業の方法、石綿粉じんの発散・抑制方法、石綿ばく露防止の方法のとおりに作業が行われたことが確認できる記録(湿潤化、保護具の使用状況等。作業を行う部屋や階が変わるごとに記録が必要)

④除去等を行った石綿等の運搬又は貯蔵を行う際の容器・包装、当該容器等への表示、保管の状況

また、作業者の記録、および健康診断の結果に関しては、石綿の作業に従事しなくなった日から40年間保存する義務が課せられています。

アスベスト調査の補助金について

上記のように、アスベストの解体前のアスベスト調査は必須となります。そこでアスベスト調査を行う際の補助金についても少々触れておきます。

民間の建築物のアスベスト調査などに関して、国土交通省は補助制度を設けており、それぞれの自治体によって補助制度は異なります。補助制度がある地方公共団体は活用することが可能です。

※ 補助制度がない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

国が示している支給条件は以下のようになります。

・補助事業の対象:建築物の吹付け材のアスベスト含有の有無に関する調査

・対象建築物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトが使用されている可能性がある建築物

・補助額:限度額は原則として25万円/棟