解体工事は、建物を撤去する際に行われる重要なプロセスです。しかし、解体作業には大きな騒音を伴うことが一般的であり、周辺の環境や住民に影響を与える可能性があります。そのため、解体工事現場での防音対策は重要な課題となっています。今回は解体工事における騒音や振動の規制について述べた後、防音シートについてご紹介します。

解体における振動や騒音の要因

 建物解体における振動や騒音の要因は一つではありません。複数の要因で振動と騒音が発生します。

①建物解体時の振動や騒音

主に重機で解体するため大きな振動が発生します。建物の壁や柱などを壊すときの重機による振動が建物の基礎部分を通じて周辺に伝わります。重機を使用する際の音も大きいため騒音となります。

②重機の搬入による振動や騒音

重機は約1t10tほどの重量があり、地面に衝撃を与えながら移動するため重機の搬入時には振動と騒音が地面を介して伝わります。

③資材落下による振動や騒音

建物解体の際資材が地面に落下することで周辺に振動が伝わります。落下する資材が大きければ大きいほど振動と騒音が発生し、頻繁に落下する場合は揺れも生じます。

騒音規制法・振動規制法

 建物解体中にどうしても起こってしまう騒音。騒音により近隣住民からクレームが発生しかねません。そこで騒音規制法・振動規制法という環境省が定めている法律があります。

騒音規制法とは、建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行うとともに、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とされた法律です。

建設工事として行われるくい打機などの作業のうち、著しい騒音を発する作業であって政令で定める作業を規制対象としています。

具体的には、都道府県知事が規制地区を指定し環境大臣が騒音の大きさ、作業時間帯、日数、曜日などの基準を定めており、市町村長が対象規制の建設作業に対して必要に応じて改善勧告をおこなうといったような、建設作業騒音の規制が騒音規制法により決まっています。(1) 

一方、振動規制法も騒音規制法と同じ概念と考えられます。解体工事により発生する振動により生活が脅かされないようにするための法律です。(2)

騒音規制法・振動規制法を超える騒音・振動は近隣住民とのトラブルにつながるため守ることが必要不可欠です。

振動や騒音の規制基準について

振動の上限は75デシベルまで、騒音の上限は85デシベルまでが基準値として定められています。この基準値を超えた場合は、市町村長から改善勧告を受けることがあります。そのため基準値を超えずに作業をすることが好ましいです。

規制内容

1号区域における規制基準

2号地域における規制基準

特定建設作業の場所の敷地境界上における基準値

騒音:85デシベル

振動:75デシベル

騒音:85デシベル

振動:75デシベル

作業可能時刻

午前7時から午後7

午前6時から午後10

最大作業時間

一日あたり10時間

一日あたり14時間

最大作業期間

連続6日間

連続6日間

作業日

日曜その他の休日を除く日

日曜その他の休日を除く日

区域区分

該当区域

1号区域

1,2種低層住居専用地域、第1,2種中高層住宅専用地域、第1,2住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、用途指定のない地域、工業地域及び条例の追加規制地域のうち学校、保育所、病院、入院施設を有する診療所、図書館、特別養護老人ホーム及び幼保連携型認定こども園の敷地の周囲80メートルの区域内

2号区域

工業地域及び条例の追加規制地域のうち1号区域以外の地域

特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)より

防音シートとは

 防音シートとは、養生シートの種類の一つで騒音を吸収しまたは遮断するために使用される特殊な素材から作られた薄いシート状の製品です。一般的には解体工事や建設現場などの騒音の多い環境で利用され、外部への騒音の漏れを最小限に抑えることが目的とされています。

防音シートは吸音素材を組み合わせた構造を持ち、振動や音波を吸収して反射を抑制します。これにより、周囲への騒音の影響を軽減し、周辺住民への配慮、作業環境の改善が可能となります。防音シートは柔軟で取り付けが容易なためさまざまな場所や形状に適用することが出来ます。

防音シートと養生シートの違いについて

 防音シートと養生シートは、それぞれ異なる目的で使用される建設現場や工場現場での保護材料です。

防音シートは、前述の通り、主に騒音の制御と低減が目的です。特殊な素材や構造を持ち、騒音を吸収または遮断することで、周囲への騒音の影響を最小限に抑えます。解体工事や建設作業などの騒音の多い環境で使用され、周辺住民への配慮や作業環境の向上が重視されます。

一方で養生シートは主に作業現場や建物の保護が目的です。建物を作業中の汚損や損傷から守り施工品質を保つために使用されます。防水性があり、塗料やクレーン操作などの作業による影響から守ります。養生シートは一時的な保護が求められる様々な場面で利用され、作業効率の向上から重要な役割を果たします。

すなわち、防音シートは主に騒音の管理に焦点を当て、養生シートは主に建物や作業現場の保護に焦点を当てた用途が異なります。

防音シートの役割と効果

 解体工事において防音シートは、騒音を吸収・遮断し、周辺への騒音の拡散を最小限に抑える役割を果たします。その主な効果には以下の点が挙げられます。

①騒音の吸収・・・防音シートは特殊な素材や構造を持ち、音波を吸収することが出来ます。これにより解体作業による騒音を低減させます。

②騒音の遮断・・・防音シートは外部からの騒音を遮断する働きもあります。これにより、解体工事現場周辺の住民や近隣施設への影響を最小限に抑えることができます。

③作業環境の改善・・・騒音が低減されることで、業者の作業環境が向上し作業効率の向上や業者の健康への影響を軽減することが期待できます。

防音シートを選ぶポイント

 防音シートを選ぶ際には様々な要因を考慮する必要があります。以下に防音シートを選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。

①素材の選定・・・防音シートの素材は様々であり、吸音性や遮音性が異なります。繊維質の素材や特殊なコーティングが施された素材など、用途に応じて最適な素材を選ぶことが重要です。

②厚みの考慮・・・防音シートの厚みも防音性能に影響を与えます。一般的には厚いほど高い防音性能が期待できますが、現場の制約やコストも考慮して適切な厚みを選定する必要があります。

③耐久性・・・解体工事は屋外での作業が主体となるため、防音シートは耐久性を備えていることが重要です。長期間の使用に耐え、悪天候にも強い防音シートを選ぶことが望ましいです。

近隣トラブルを回避するために

 建物解体においてどうしても起きてしまう振動や騒音。その被害を受けるのは近隣住民です。近隣住民にある程度我慢してもらう必要があります。そのために事前に出来ることはすることが大切です。

①解体業者選びを妥協しない

建物解体の知識を施主は持ち合わせていない場合が多いです。そのため近隣挨拶を行う際にしっかりと知識を持った解体業者に説明してもらうことが必要となります。そこで丁寧な対応をしてくれる解体業者を選ぶことが大切となります。解体業者選びを妥協すると近隣挨拶の際説明不足で近隣トラブルの発生につながりかねないため解体業者は慎重に選ばなければなりません。

②近隣挨拶

着工前のご挨拶を行います。工事の概要をご説明し、騒音や振動、粉じんなどに関する近隣クレームが発生しないよう、ご説明します。具体的に何時から何時       までが工事、何日から何日まで、いつが休日なのかということも伝えます。建物解体の1週間前くらいには挨拶を終わらせることが理想です。

通常は解体業者が主導として行い専門的知識を解体業者が説明し説明不足による近隣クレームの回避になります。施主も一緒に挨拶に回ることでトラブルを回避しやすくなります。菓子折りなどを用意して持参することがおすすめです。

最後に

解体工事における防音シートは、周囲への騒音の影響を軽減するために欠かせないアイテムです。適切な素材や厚み、取り付け方法を考慮して防音シートを選定することで解体工事現場の騒音問題を解決することが出来ます。そして建物の解体にはどうしても振動や騒音がつきものです。そのため近隣へのご挨拶・説明など近隣へのサポートが一番大事と言えます。建物解体をスムーズに進めるためにもコミュニケーションを取りやすく、近隣サポートが万全な業者を見つけることが大事です。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。

全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください

参考URL

(1)騒音規制法| 環境省
(
https://www.env.go.jp/air/noise/low-gaiyo.html) 

(2)振動規制法| 環境省
(
https://www.env.go.jp/air/sindo/low-gaiyo.html)

(3)特定建設作業の規制について| 大阪府
(
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)

参考URL

特定建設作業の規制について| 大阪府
(
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)

建設業法|法令検索
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)