近年、土壌汚染は環境問題の中でますます注目されています。その理由は、土壌が私たちの生活や健康に直接影響を与える重要な要素であるからです。今回は土壌汚染・土壌汚染対策法について述べた後土壌汚染のリスクについて考えていきます。

土壌汚染とは

 土壌は私たち人間を含め地中にいる生き物が生活する場であり、土壌に含まれる水分や養分が私たちの食の元となる農作物を育てています。そのため土壌は私たち人間を含んだ生き物が生きていく上でなくてはならないものです。

土壌汚染とは、土壌が人間にとって有害な物質により汚染された状態のことをいいます。原因としては工場の操業に伴い原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまったり、有害な物質を含む液体を地下に染み込ませてしまったりすることなどが考えられます。土壌汚染の中には人間の活動に伴って生じた汚染だけでなく、自然由来で汚染されているものも含まれます。 (1)

①人為的原因による土壌汚染

工場等の操業に伴い原料として用いる有害物質を含む液体を地下に染み込ませてしまったり、有害物質を含む固体を不適切に取り除いてしまったりすることなどにより、土壌が有害物質によって汚染された状態。 

②自然由来の土壌汚染

人為的原因によるものではなく、自然状態の地層にもともと含まれている有害物質による土壌汚染のことをいい、地質的に同質な状態で広く存在しているのが特徴。

土壌汚染の特徴は、土壌汚染の原因となっている有害な物質は、水の中や大気中と比べて移動しにくく、土の中に長い期間とどまりやすいとされています。そして目に見えないため、汚染されていることに気づきにくく、いったん土が汚染されると排出をやめても長い間汚染が続きます。そのため、人の健康や生態系などに長い期間にわたり影響を及ぼします。

土壌汚染対策法とは

 土壌汚染対策法とは、土地の汚染を見つけるための調査や、汚染が見つかったときにその汚染により私たちに悪い影響が生じないように土壌汚染のある土地の適切な管理の仕方について定める、いわば健康を保護することを目的とされた法律です。 

平成14年に土壌汚染対策法が成立しました。課題として上がっているものを解決するために、

①法律に基づかない土壌汚染の発見の増加調査のきっかけを増やすことで解決させる

②汚染土壌を掘り出す掘削除去に偏重→健康リスクの考え方を理解してもらうことで解決させる

③汚染土壌の不適正処理→汚染土壌をきちんと処理してもらうことで解決させる

これらを実施することを目的として平成214月に土壌汚染対策法の改正法が成立され平成224月から改正法が施行されました。

その後も施行状況の見直し検討が行われ平成29519日に土壌汚染対策法の一部を改正する法律が公布され第1段階が平成3041日に施行され第2段階は平成3141日に施行されました。(1)

毎年のように改正され最新の改正は令和47月に土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令施行・汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令施行が施行されました。

土壌汚染対策法では、土壌汚染状況調査の結果、特定有害物質によって「汚染状態に関する基準」に適合しないとみなされた土地を、要措置区域等に指定された土地として扱うことになっています。

土壌汚染のリスク

 土壌汚染は、人間の活動や産業活動によって化学物質が土壌に放出され、土壌の品質が低下する現象です。これには工業廃棄物、農薬、貴金属、石油製品などが含まれます。これらの物質が土壌に浸透すると、土壌の生態系や地下水に悪影響を与え、最終的には人間の健康にも影響を及ぼします。

土壌汚染のリスクはさまざまな要因によって引き起こされます。工業化が進むにつれて、工場や製造施設からの排出物が土壌に流出しやすくなります。また、農薬や化学肥料の過剰な使用、廃棄物の不適切な処理も土壌汚染の原因です。さらに、事故や災害によっても土壌汚染が引き起こされる可能性があります。これらの要因が組み合わさると土壌が持つ本来の健康な状態が損なわれ、生態系全体が影響を受けるおそれがあります。

土壌の汚染があってもすぐ私たちの健康に影響があるわけではなく、土壌汚染対策法では、土壌汚染による健康リスクを以下の2つの場合に分けて考えています。

① 地下水等経由の摂取リスク

土壌に含まれる有害物質が地下水を溶け出して、その有害物質を含んだ地下水を口にすることによるリスク

例:土壌汚染が存在する土地の周辺で、地下水を飲むための井戸や蛇口が存在する場合

② 直接摂取リスク

土壌に含まれる有害物質を口や肌などから直接摂取することによるリスク

例;子どもが砂場遊びをしているときに手についた土壌を口にする、風で飛び散った土壌が直接口に入ってしまう場合

土壌汚染対策法はこれらの健康リスクをきちんと管理するために作られました。同法では、①地下水等経由の摂取リスクの観点からすべての特定有害物質について土壌溶出量基準が、②直接摂取リスクの観点から特定有害物質のうち9物質について土壌含有量基準が設定されています。

① 地下水経由の摂取によるリスクに対する基準(土壌溶出量基準)

汚染土壌から特定有害物質が地下水に溶出し、その地下水を飲用することによる健康リスクに対して定められている基準で、一生涯(70年間)12Lの地下水を飲用し続けることを想定して設定されています。

② 直接摂取によるリスクに対する基準(土壌含有量基準)

特定有害物質が含まれる汚染土壌を直接摂取することによる健康リスクに対して定められている基準で、一生涯(70年間)汚染土壌のある土地に居住し、1日当たり子ども(6歳以下)200mg、大人100mgの土壌を摂食することを想定して設定されています。

土壌汚染に関する問題とは、土壌汚染が存在すること自体ではなく、土壌に含まれる有害な物質が私たちの体の中に入ってしまう経路(摂取経路)が存在していることです。この経路を遮断するような対策を取れば有害な物質は私たちの中に入ってくることはなく、土壌汚染による健康リスクを減らすことができます。つまり土壌汚染があったとしても、摂取経路が遮断されきちんと健康リスクの管理ができていれば私たちの健康に何も問題はありません。(2)

有害物質の摂取による健康リスク

 土壌汚染を引き起こしている有害物質の摂取経路が存在すると考えられる場合は、健康被害が生じる可能性があり、その健康被害が生じる恐れ(健康リスク)の程度は、有害物質に有害性がどの程度高いかという点と、有害物質がどの程度摂取されているかという2つの要素から決まります。健康リスクは、土壌中の有害物質の有害性が高くなればなるほど、また、有害物質の摂取量が多くなれなるほど高くなります。

土壌中の有害物質の有害性×土壌中の有害物質の摂取量=土壌汚染による健康リスク

土壌汚染のリスクへの備え

土の中の有害物質は大気中や水中と比べて移動しにくく、拡散されにくいため、汚染された土や地下水は人に暴露しないように遮断する措置をとれば、リスクを低減することができます。土壌汚染対策法によって措置の方法は封じ込め、遮断、浄化などの方法があります。措置の方法によってメリット・デメリットがあるため、それを見極めて措置を行わなければなりません。早めに状況把握し、土壌汚染対策を行うことが重要といえます。そして土壌汚染を発生させないことが土壌汚染のリスクへの備えとなります。

最後に

土壌汚染は調査をしなければ汚染されているか否か判断が難しい場合があります。土壌汚染対策法基準を超えた土壌汚染が見つかった場合には、有害物質等取扱事業者や土地改変者が土壌汚染等対策指針に従って適切な措置を講ずることとなります。 

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

(1)パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)

(2)土壌汚染対策法|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/law/outline.html)

(3)土壌汚染対策基準|愛知県
(https://www.pref.aichi.jp/kankyo/kansei-ka/houreii/jyorei-1/rinku/d-kijyun.html)

参考URL

・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)

・パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)

・土壌汚染による環境リスクを理解するために|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/06/all.pdf)