解体工事は、建築物の老朽化や都市再開発などに伴い、日常的に行われる作業です。しかし、解体作業には多くのリスクが伴い、その中でも特に問題視されるのが「粉じん」です。粉じんは、健康被害を引き起こす可能性があり、適切な管理が求められます。今回は、解体工事における粉じんの規制や基準についてご紹介します。

粉じんとは

粉じんとは、解体工事や建設現場などで発生する微細な固体粒子のことを指します。これらの粒子は空気中に浮遊し、吸入することで呼吸器系に深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、石綿(アスベスト)やシリカなど有害物質を含む粉じんは、長期にわたって健康に悪影響を与えることが知られています。

解体工事において発生する粉じんの種類・健康への影響

解体工事において発生する粉じんには、さまざまな種類が存在します。これらは主に解体される建物の材料や使用される工法によって異なります。解体工事で特に問題となる粉じんの種類を下記でみていきましょう。

①鉱物性粉じん

名称

発生源

健康被害

特徴

シリカ粉じん

コンクリート、レンガ、タイル、石材の解体

吸入するとシリコーシスや肺がんのリスクが高まる

微細なシリカ粒子は肺に侵入しやすく、長期的の吸入で健康被害を引き起こす

石綿(アスベスト)粉じん

古い建物の断熱材、屋根材、壁材などに使用されているアスベスト

吸入すると石綿肺、中皮腫、肺がんなどの深刻な健康問題を引き起こす

非常に細かい繊維状の粒子で、特に解体時に空中に飛散しやすい

②金属粉じん

名称

発生源

健康被害

特徴

鉛粉じん

古い塗料やパイプ、電気配線の被覆素材に含まれる鉛

吸入や接種によって鉛中毒を引き起こし、神経系や腎臓、血液に悪影響を与える

微細な鉛粒子は長期間にわたって体内に蓄積される

鉄粉じん

鉄骨構造の建物の解体、鉄製の部材の切断や研磨作業

鉄粉じんは吸入すると肺や気道に炎症を引き起こすことがある

鉄の粉じんは比較的大きく、主に呼吸器の上部に影響を与える

③有機粉じん

名称

発生源

健康被害

特徴

木材粉じん

木造建築物の解体、木製部材の切断や研磨

吸入するとアレルギー性鼻炎、喘息、さらには一部の木材に含まれる化学物質による発がん性リスクもある

微細な木材粉じんは吸入しやすく、アレルギー反応を引き起こす可能性が高い

④その他の粉じん

名称

発生源

健康被害

特徴

プラスチック粉じん

プラスチック製品や合成樹脂を含む建材の解体

吸入すると呼吸器系に炎症を引き起こし、特に焼却時に発生する有毒ガスによる健康リスクが高い

微細なプラスチック粉じんは空中に長時間浮遊することがある

塗料や接着剤由来の粉じん

古い塗料や接着剤を含む建材の解体

吸入すると化学物質によるアレルギー反応や中毒症状を引き起こすことがある

粉じんは揮発性有機化合物(VOC)を含むことがあり、吸引すると体内で化学反応を起こす

粉じんの規制や基準について

 粉じんに関する法的規制や基準は、主に労働安全衛生法や大気汚染防止法および関連する政令や省令によって規定されています。

①労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るために制定された法律であり、粉じんに関する規定も含まれています。粉じんが発生する作業を行う場合、事業者は適切な管理措置を講じる義務があります。これは、局所排気装置の設置や作業環境測定の実施が含まれます。

作業者は防塵マスクなど個人保護具を着用しなければなりません。特に、高濃度の粉じんが発生する現場では、高性能の保護具が必要です。

粉じん作業に従事する労働者は、定期的に健康診断を受けることが義務付けられています。これにより、早期に健康被害を発見し、適切な対応を取ることができます。

②大気汚染防止法

大気汚染防止法は、環境中の汚染物質を規制する法律であり、解体工事における粉じんも対象となります。大気汚染防止法では、人の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん」(現在、石綿(アスベスト)を指定)、それ以外の粉じんを「一般粉じん」と定めています。

飛散防止対策として、解体工事中に粉じんが周囲に飛散しないように、防塵シートの設置や散水による抑制が義務付けられています。また、一定規模以上の解体工事を行う場合、事前に行政機関への届出が必要です。これには、工事計画や飛散防止対策の詳細が含まれます。

③特定粉じん障害予防規則

特定粉じん障害予防規則は、特に有害な粉じんに対する予防策を定めた規則です。これには、石綿(アスベスト)やシリカなどの取り扱いに関する厳しい基準が含まれています。

石綿(アスベスト)を含む建材の解体作業を行う場合、石綿作業主任者の配置が義務付けられています。主任者は、作業の適切な管理と指導を行います。また、石綿(アスベスト)を扱う作業場では、定期的に作業環境を測定し、その結果を記録・保存する必要があります。これにより、労働者の安全を確保します。

特定建設材料に該当する建築材料

大気汚染防止法により、解体等工事の元請負業者又は自主施工者は、建築物又は工作物の解体等を行うときはあらかじめ特定建設材料の使用の有無を調査することなどが義務づけられています。特定建設材料とは、吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材、石綿含有成型板等、石綿含有仕上塗材のことを示します。

改正前は、石綿含有仕上塗材は規制対象ではありませんでしたが、改正後に追加されすべての石綿含有建材が対象になりました。

特定建築材料の区分

建築材料の具体例

吹付け石綿

①  吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、③石綿含有ひる石吹付け材、④石綿含有パーライト吹付け材

石綿を含有する断熱材

①  屋根用折板裏断熱材、②煙突用断熱材

石綿を含有する保温材

①  石綿保温材、②石綿含有けいそう土保温材、③石綿含有パーライト保温材、④石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑤石綿含有水練り保温材

石綿を含有する耐火被覆材

①  石綿含有耐火被覆板、②石綿含有けい酸カルシウム板第2

石綿を含有する仕上塗材

①  石綿含有建築用仕上塗材

石綿含有成形板等

①  石綿含有成形板、②石綿含有セメント管、③押出成形品

特定建設材料に該当する建築材料の例
www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/より

粉じん対策・管理

解体工事においては、これらの粉じんの発生を最小限に抑えることが重要です。具体的な対策・管理方法を以下みていきましょう。

①防塵シート

解体工事を囲むように防塵シートを設置し、粉じんの外部への飛散を防止します。シートは建物全体を覆う形で取り付けることが一般的です。防塵シートは風による粉じんの飛散を抑える効果があり、周囲の環境や住民への影響を減少させます。補足対策として、シート自体に散水することで、粉じんの付着を促し、さらに飛散を抑える効果が期待できます。

②散水による抑制

解体工事が行われる現場全体、特に粉じんが大量に発生する建材の破砕や切断作業周辺に散水装置を設置します。作業中および作業前後に定期的に散水を行い、粉じんの舞い上がりを抑えます。散水により、粉じんが湿気を帯びて重くなり、地面に落ちやすくなるため、空気中の粉じん濃度を低減できます。

③局所排気装置の設置

粉じんが発生する作業エリアに排気フードを設置し、ダクトを通じて外部に粉じんを排出する方法と、高濃度の粉じんが発生する作業エリアや機械の近くに集塵機を設置する方法があり、排気フードとダクトの設置は、発生源から直接粉じんを吸引するため、作業環境中の粉じん濃度を大幅に低減することができて、集塵機の設置は、粉じんをフィルターで捕集し、クリーンな空気を排出するため、作業者の吸入リスクを軽減することができます。

④個人保護具の着用

防塵マスク・保護メガネ・作業服を着用することで、粉じんの吸入、皮膚への粉じんの付着を最小限に防ぐことができます。

⑤作業環境の定期的な測定と管理

重力法や光散乱法を用いて、作業環境中の粉じん濃度を定期的に測定します。これにより粉じん濃度が基準値を超えた場合、直ちに対策を講じることができます。また、作業環境の安全性を常に最適な状態に保つため、測定結果に基づき、排気装置の設置箇所の見直しや散水頻度の増加、作業手順の改善などを行うことで粉じんの管理ができます。

最後に

解体工事における粉じん対策は、労働者の健康と安全を守るために欠かせない要素です。業者は、労働安全衛生法や大気汚染防止法、特定粉じん障害予防規則に基づく管理を徹底し、環境や地域住民への影響も考慮した対策を行うことが求められます。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。 

全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

  

参考URL

大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について | 環境省
(
www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/) 

石綿総合情報ポータルサイト | 厚生労働省
(ishiwata.mhlw.go.jp/)