ダイオキシンは、人間の健康や環境に深刻な影響を及ぼず可能性がある有害な化学物質の一種です。特に焼却施設や産業廃棄物の不適切な処理によって発生しやすく、空気や水、土壌に蓄積されやすいため、環境を通じて人間の体内に入りやすい性質があります。今回は、ダイオキシンの健康被害などのリスクについてご紹介します。

ダイオキシンとは

ダイオキシンは、ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDDs)やポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)などの化学物質の総称で、約400種類の異なる化合物を含んでいます。その中でも、2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)は特に毒性が高い物質として知られています。ダイオキシンは自然環境ではほとんど分解されず、土壌や水中に長期間残留します。1980年代以降、毒性が強く、環境中で分解されにくいことが問題視され、特定の種類は「持続性有機汚染物質」(POPs)にも分類されています。これらの物質は、微量でも人体に深刻な悪影響を与える可能性があるため、国際的な規制の対象となっています。

ダイオキシンは、主としてものを燃やすところから発生し、処理施設で取り切れなかった部分が大気中に出ます。また、かつて使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)や一部の農薬に不純物として含まれていたものが環境中に蓄積している可能性があります。 

ダイオキシンの主な発生源は以下の通りです。

■廃棄物の焼却処理(特に不完全燃焼)

■化学工業による副産物

■農業や除草剤の使用

■森林火災や家庭ごみの焼却

ダイオキシンは意図的に作られることはありません。炭素・酵素・水素・塩素を含む物質が熱せられるような過程で自然にできてしまう副生成物です。 

通常は無色の固体で、水に溶けにくく、蒸発しにくい反面、脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。また、ダイオキシンは他の化学物質や酸、アルカリにも簡単に反応せず、安定した状態を保つことが多いのですが、太陽光の紫外線で徐々に分解されるといわれています。

ダイオキシンの発生源と拡散メカニズム

ダイオキシンの発生源として、特に問題とされているのが産業廃棄物の焼却や森林火災、家庭用ごみの焼却などです。ダイオキシンは高温で塩素を含む物質が燃焼した際に副産物として生成されるため、不完全燃焼が起こる焼却プロセスで発生しやすい特徴があります。焼却施設で発生したダイオキシンは空気中に放出され、周囲の大気、土壌、そして水を汚染し、最終的には食物連鎖を通じて生物の体内に蓄積されます。

環境中に出た後の動きの詳細はまだよくわかっていませんが、例えば、大気中の粒子などにくっついたダイオキシンは地上に落ちてきて土壌や水を汚染し、様々な経路から長い年月の間に土壌など環境の中にすでに蓄積されているものも含めて、プランクトンや魚介類に食物連鎖を通じて取り組まれていくことで生物にも蓄積されていくと考えられています。

さらに、ダイオキシンは脂肪に溶けやすい性質を持つため、生物の体内では脂肪組織に蓄積されることが多く、一度体内に取り込まれると排出されにくくなります。この蓄積性と生体濃縮性が、特に人間の健康リスクを高める原因の一つとなっています。

ダイオキシン発生抑制のためにできること

ダイオキシンはものを焼却する過程などで発生するため、ごみの量を減らすことがダイオキシンの発生量を抑制する上でも効果的です。そのため、ものを大切に長く使ったり、使い捨て製品を使わないようにすることを心がけ、ごみを減らし、再利用やごみの分別・リサイクルに協力することがとても重要です。

ダイオキシンの健康被害

ダイオキシンは、「青酸カリよりも毒性が強く、人工物質としては最も強い毒性を持つ物質」といわれることがありますが、これは日常生活の中で摂取する量の数十万倍の量を摂取した場合の急性毒性のことです。ダイオキシンは意図的に作られる物質ではなく、実際に環境中や食品中に含まれる量は超微量なので、私たちが日常生活で摂取する量により急性毒性が生じることはないと考えられます。

ダイオキシン自体の発がん性は比較的弱く、遺伝子に直接作用して発がんを引き起こすのではなく、他の発がん物質による遺伝子への直接作用を受けた細胞のがん化を促進する作用であるとされています。(プロモーション作用)

しかし、現在の日本において通常の環境の汚染レベルではダイオキシンによりがんになるリスクはほぼないと考えられています。

私たちが日常生活で摂取する量により急性毒性が生じることはないと考えられていますが、以下で具体的な健康リスクについて詳しくみていきましょう。

発がん性リスク

ダイオキシンは国際がん研究機関(IARC)によって「ヒトに対して発がん性がある」と分類されています。研究によれば、ダイオキシンに長期間さらされることで、特に皮膚がんや肝臓がんなどのリスクが高まるとされています。ダイオキシンは細胞内の遺伝子に損傷を与え、異常な細胞増殖を引き起こす可能性があるため、がん発生のメカニズムに直接関与することが示唆されています。 

②生殖および発達への影響

ダイオキシンは生殖機能や胎児の発達にも悪影響を与えることが確認されています。特に妊婦がダイオキシンにさらされると、胎児の成長に影響を与え、先天的な発達障害や異常を引き起こすリスクが高まるとされています。また、ダイオキシンの曝露は精子の質の低下やホルモン異常を引き起こし、不妊や子どもの発育不全につながる可能性もあります。 

③免疫系への影響

ダイオキシンは免疫系に悪影響を及ぼし、免疫力の低下を招くことがわかっています。免疫系が弱まることで感染症にかかりやすくなり、健康全般に悪影響が出る可能性があります。特に子どもや高齢者など、免疫力がもともと弱い人々にとって、ダイオキシン曝露はさらにリスクを高める要因となります。

④内分泌攪乱物質としての作用

ダイオキシンは内分泌系に影響を与える「内分泌攪乱物質」としても知られており、ホルモンの分泌や代謝に悪影響を及ぼします。これにより、成長や発達、さらには代謝機能にまで幅広い影響が及び、生活習慣病のリスクが増加する可能性があるとされています。

ダイオキシンの摂取量について

ダイオキシンの耐用一日摂取量(TDI)は、1日・体重1kg当たり4pg-TEQとされています。一方厚生労働省の調査によると、日本人の一般的な食生活で1日に取り込まれるダイオキシンの量は、合計で1日・体重1kg当たり約1.06pg-TEQと推定され、この水準は耐用一日摂取量(TDI)を下回っており、健康に影響を与えるものではないとされています。

ダイオキシンは脂肪組織に溶けやすく残留しやすいため、食生活で取り込まれるダイオキシンのうち、魚介類からの摂取量が約90%を占め、肉、卵、乳、乳製品を含めた3食品群で約99%を占めていますが、国民の平均的な食品の摂取量であれば耐用一日摂取量(TDI)を下回るものであり、各種の食品に含まれる栄養素は健康のために大切なので、たくさんの種類の食品をバランスよく食べることが大切であるとされています。 

食品に含まれるダイオキシンの量は、食品の種類によって異なるほか、同じ食品でも産地や時期によっても異なります。なお、ダイオキシンが体内に入ると、その大部分は脂肪に蓄積されて体内にとどまります。分解されたり体外に排出される速度は非常に遅く、人間の場合は半分の量になるのに約7年かかるとされています。

最後に

ダイオキシンは極めて有害で蓄積性の高い化学物質であり、人間や環境に深刻な影響を与えるリスクがあるため、注意が必要です。ダイオキシン発生抑制のためにも、私たち一人一人が持続可能な社会を目指して、ごみを減らし再利用やごみの分別・リサイクルに協力することが求められています。 

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

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参考URL

関係省庁パンフレット ダイオキシン類| 環境省
(https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph/2012.pdf)