建築解体工事は、既存の建物を撤去するための重要なプロセスであり、さまざまな法律や規制が関わっています。適切な手続きと法令遵守が求められるため、関係する法律について理解することは、施工業者や施主にとって欠かせません。今回は、日本における建築解体工事に関連する主要な法令についてご紹介します。
建築基準法
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的にされた法令です。
建築基準法では、主に以下の基準が規定されています。
①解体工事の届出
→延べ面積が10㎡以上の建築物を解体する場合、市区町村に届出を行う必要があります。
②周辺環境への配慮
→工事現場の防音や防塵対策を適切に行うことが義務付けられています。
③建築物除却確認
→解体後に建築物が適切に除却されたことを確認するプロセスが含まれることがあります。
建設業法
建設業法は、建設業を営む業者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的にされた法令です。
建設業法では、主に以下の基準が規定されています。
①許可制度
→建築解体工事における掲示物、看板設置は、建設業法第40条・建設リサイクル法第33条によって義務付けられています。そのため、建築解体工事を行う際は必ず看板を設置しなければなりません。
②技術者の配置
→解体工事を行うには、以下の建設業に関する許可を得なければなりません。
・建築工事業
・土木工事業
・とび・土木工事業
これらの工事業許可を得ている業者であれば建築解体工事を行うことができます。一方で、建築工事業や土木工事業などの許可がない場合、解体工事業登録を行うことが求められます。
③契約の適正化
→工事の契約内容や請負金額、工期などを明確にし、不当な契約を防止します。
建設リサイクル法
建設リサイクル法は、特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を促進するための措置を講ずるとともに、建築解体工事業者について登録制度を実施すること等により、再資源の十分な利用及び廃棄物の減量等を通じて、資源の有効な利用の確保及び廃棄物の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的として作られた法令です。
建設リサイクル法では、特定建設資材(コンクリート(プレキャスト板等を含む)、アスファルト・コンクリート・木材)を用いた建築物に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって一定規模以上の建設工事(対象建設工事)について、その受注者に対して分別解体等及び再資源化等を行うことを義務付けています。
建設リサイクル法では、主に以下の基準が規定されています。
①建築物等に使用されている建設資材に係る分別解体及び建設資材廃棄物の再資源化等の義務付け
→特定建設資材を用いた建築物等の建築解体工事、特定建設資材を使用する新築工事等で一定規模以上の工事(対象建設工事)については、特定建設資材廃棄物を基準に従って工場現場で分別(分別解体等)し、再資源化等することが義務付けられています。
②事前届出
→対象建設工事の発注者及び自主施工者は、工事に着手する日の7日前までに届出を各市町村へ出さなければなりません。
③技術者の配置
→解体工事を行うには、以下の建設業に関する許可を得なければなりません。
・建築工事業
・土木工事業
・とび・土木工事業
これらの工事業許可を得ている業者であれば建築解体工事を行うことができます。一方で、建築工事業や土木工事業などの許可がない場合、解体工事業登録を行うことが求められます。
廃棄物処理法
廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全の向上を図ることを目的として作られた法令です。
廃棄物処理法では、主に以下の基準が規定されています。
①産業廃棄物の取り扱い
→建設廃業は産業廃棄物に分類され、その処理は専門業者を利用する必要があります。
②管理票制度
→廃棄物が適切に処理されたことを確認するための管理票を使用する義務があります。これにより、廃棄物が不法投棄されるリスクを減少させることができます。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確率、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的として作られた法令です。
労働安全衛生法では、主に以下の基準が規定されています。
①特定粉じん障害防止
→石綿(アスベスト)などの有害物質が含まれる建材の解体作業では、飛散防止対策が義務付けられています。作業員に適切な保護具を着用させることや、飛散防止シートの使用が求められます。
②安全衛生教育
→建築解体工事を行う前に、作業員に対して必要な安全教育を実施する必要があります。
③作業計画の策定
→高所作業や重機の使用を含む場合、事前に詳細な作業計画を策定し、安全対策を講じることが求められます。
その他関連法令
建築解体工事に関係する法令や基準は他にも複数存在します。以下でいくつかご紹介します。
①大気汚染防止法
大気汚染防止法は、環境中の汚染物質を規制する法律であり、建築解体工事における粉じんも対象となります。大気汚染防止法では、人の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん」(現在、石綿(アスベスト)を指定)、それ以外の粉じんを「一般粉じん」と定めています。
②特定粉じん障害予防規則
特定粉じん障害予防規則は、特に有害な粉じんに対する予防策を定めた規則です。これには、石綿(アスベスト)やシリカなどの取り扱いに関する厳しい基準が含まれています。
石綿(アスベスト)を含む建材の建築解体作業を行う場合、石綿作業主任者の配置が義務付けられています。主任者は、作業の適切な管理と指導を行います。
③騒音規制法・振動規制法
騒音規制法・振動規制法は、建築解体工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音・振動について必要な規制を行うとともに、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とされた法令です。
振動の上限は75デシベルまで、騒音の上限は85デシベルまでが基準値として定められています。この基準値を超えた場合は、市町村長から改善勧告を受けることがあります。そのため基準値を超えずに作業をすることが好ましいです。
④特定建設材料に該当する建築材料
大気汚染防止法により、建築解体等工事の元請負業者又は自主施工者は、建築物又は工作物の解体等を行うときはあらかじめ特定建設材料の使用の有無を調査することなどが義務づけられています。特定建設材料とは、吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材、石綿含有成型板等、石綿含有仕上塗材のことを示します。
⑤道路使用許可
道路使用許可は、道路や歩道を工事や作業で一時的に占用する際に必要な許可です。これは他の利用者の安全や通行の妨げとならないように自治体が管理する公共の道路や歩道を利用する際に必要な手続きです。建築解体工事は大型の重機やトラックが使用されるため、特に道路使用許可を取得することが重要となってきます。
法令遵守のためのポイント
建築解体工事を適切に進めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
①専門業者の選定
→建築解体工事や廃棄物処理に関する知識と経験を持つ信頼できる業者を選びましょう。
②事前調査の実施
→建物の構造や使用されている建材を事前に調査し、必要な手続きを把握しましょう。
③行政への届出と相談
→法令に基づき、必要な届出を適切に行い、不明点があれば行政に相談しましょう。
また、国土交通省では、「建築物解体工事共通仕様書」によりすべての建築解体工事で共通の仕様を細かく定めています。
国が定める安全対策の他にも行政ごとの指導が入る場合があります。建築解体工事を行う地域や自治体によって基準を設けていることもあり、その場合は基準にしたがって建築解体工事を行わなければなりません。
最後に
建築解体工事には、多くの法律や規制が関わっており、それらを遵守することが不可欠です。今回ご紹介した主な法令を理解し、適切な手続きと対策を講じることで、安全な解体工事を実現できます。
参考URL
・法令検索|e-GOV
(https://laws.e-gov.go.jp/)
・建設リサイクル法の概要|環境省
(https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html)
・大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について | 環境省
(www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/)
・石綿総合情報ポータルサイト | 厚生労働省
(ishiwata.mhlw.go.jp/)
・特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)
・道路使用許可の概要、申請手続等 | 警察庁
(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/shinsei-todokede/dourosiyoukyoka/permission.html)
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