ダイオキシンは、極めて毒性の強い化学物質として広く認識されており、その影響は人の健康や環境に深刻なダメージを与える可能性があります。特に、産業活動や廃棄物処理から発生するため、適切な規制と管理が不可欠です。日本では、ダイオキシンによる環境汚染を防止し、国民の健康を保護するために、いくつかの重要な法令が制定されています。今回は、主にダイオキシン類対策特別措置法についてご紹介し、その他ダイオキシン対策における関係法令についてもご紹介します。
ダイオキシン類対策特別措置法
ダイオキシン類対策特別措置法(正式名称: ダイオキシン類による環境汚染の防止及び除去等に関する特別措置法)は、ダイオキシンが人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある物質であることを考慮して、ダイオキシンによる環境の汚染防止及びその除去等をするため、ダイオキシンに関する施策の基本とすべき基準を定めるとともに、必要な規制、汚染土壌に係る措置を定めることにより、国民の健康の保護を図ることを目的とされています。
ダイオキシン類対策特別措置法では、主に以下の基準が規定されています。
①排出基準の設定
→ダイオキシンを人が生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に影響を及ぼす恐れがない1日当たりの摂取量のことを、耐容一日摂取量(TDI)といい、耐容一日摂取量は、人の体重1kg当たり4peg-TEQとされています。
また、大気、水質、底質、土壌へのダイオキシンの排出基準が設定されており、事業者はこれを遵守する必要があります。
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基準値 |
大気 |
0.6 pg-TEQ/㎥ 以下(年間平均値) |
水質 |
1 pg-TEQ/L 以下(年間平均値) |
底質 |
150 pg-TEQ/g 以下 |
土壌 |
1,000 pg-TEQ/g 以下 |
②調査と報告義務
→特定施設を運営する事業者は、定期的なダイオキシンの排出状況の調査および報告が義務付けられています。
特定施設とは、ダイオキシン類対策特別措置法で定められた届出対象となる施設のことです。特定施設は大気基準適用施設と水質基準対象施設に分かれています。
特定施設の設置者は、届出内容と相違ないように設置し、使用しなければなりません。また、法で定められた頻度及び方法で排出ガス等のダイオキシン濃度を測定し、その結果を知事に報告しなければなりません。
排出ガス、ばいじん、排出水等に含まれるダイオキシンの濃度の測定を毎年1回以上実施する必要があります。
測定結果は、試料採取日から起算して60日以内に報告をしなければなりません。ただし、測定結果が定められた排出基準を超過している場合には、直ちに報告が必要です。
③立入検査
→行政機関は必要に応じて施設に立入検査を行い、違反があった場合には是正命令を出すことができます。
行政機関は立入検査を実施し、特定施設の状況やその他必要な事項の報告を求めることがあります。立入検査を実施する職員は法で定められた身分証を携帯し、関係者に提示して行います。
④汚染除去
→土壌や水域がダイオキシンで汚染された場合、適切な除去措置が求められます。
ダイオキシンによる土壌汚染対策を円滑に実施するためには、処理効果の確実性、処理に伴う周辺環境への影響の防止対策などについて客観的かつ詳細に技術評価がなされた処理技術を用いることが不可欠です。
⑤罰則について
ダイオキシン類対策特別措置法で定める罰則は以下の通りです。
罰則一覧
計画変更命令・改善命令違反 |
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
排出基準違反 |
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(過失によるものは3ヶ月以下の禁錮又は30万円以下の罰金) |
事故時の措置命令違反 |
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
設置届・変更届の未届又は虚偽の届出 |
3ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
使用届けの未届又は虚偽の届出 |
20万円以下の罰金 |
工事実施の制限違反 |
20万円以下の罰金 |
虚偽の報告・立入検査の拒否・忌避 |
20万円以下の罰金 |
大気基準適用施設が水質基準対象施設に水質基準対象施設が大気基準適用施設になった場合の未届又は虚偽の届出 |
10万円以下の過料 |
氏名等変更届、使用廃止届、承継届の未届・虚偽報告 |
10万円以下の過料 |
廃棄物処理法
廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全の向上を図ることを目的として作られた法令です。ダイオキシンは焼却施設などで不適切に廃棄物を処理した際に発生しやすいため、廃棄物処理法がダイオキシン対策にも重要な役割を果たしています。
廃棄物処理法では、主に以下の基準が規定されています。
①適正処理基準
→廃棄物焼却施設には、ダイオキシンの発生を抑えるための適正処理基準が設定されています。
②管理型処理施設
→ダイオキシンを含む廃棄物は、特別管理産業廃棄物として厳格な基準に従って処分する必要があります。
③施設の許可制度
→焼却施設の設置や運営には許可が必要で、許可基準にはダイオキシンの排出抑制が含まれます。
④監視・報告
→廃棄物処理業者は、処理状況の監視と行政への報告が義務付けられています。
⑤罰則規定
→廃棄物処理法に違反し、不適切な処理を行った場合には重い罰則が科せられます。
大気汚染防止法
大気汚染防止法は、大気中への有害物質の排出を規制し、大気汚染を防止するための法令です。ダイオキシンは廃棄物の焼却や一部の工業活動で大気中に排出されるため、大気汚染防止法で排出規制が行われています。
大気汚染防止法では、主に以下の基準が規定されています。
①排出基準
→大気中へのダイオキシンの排出基準が定められており、事業者はこれを守らなければなりません。
②ばいじん・ガス対策
→排出ガス処理装置の設置が義務付けられており、ダイオキシンの除去対策が求められます。
③定期検査
→事業者には、定期的に排出ガスの測定を行い、基準遵守を確認する義務があります。
④罰則規定
→大気汚染防止法に違反した場合、事業者には罰金や操作停止などの措置が科せられます。
水質汚濁防止法
水質汚濁防止法は、水域への有害物質の排出を規制し、水質汚濁を防ぐための法令です。ダイオキシンが水中に排出されると、生態系に深刻な影響を与えるため、厳格な規制が設けられています。
水質汚濁防止法では、主に以下の基準が規定されています。
①排出基準
→工場や事業場からの排出中のダイオキシンの濃度基準が設定されています。
②排水処理設備
→排水を適切に処理するための設備の設置が義務付けられています。
③監視・報告
→事業者には定期的な排出の検査及び報告が求められます。
④罰則規定
→基準を超える排水を行った場合や虚偽報告をした場合には、罰金や懲役が科せられる可能性があります。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確率、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的として作られた法令です。ダイオキシンは発がん性物質があるため、取り扱う業者の健康被害を防ぐための措置が求められます。
労働安全衛生法では、主に以下の基準が規定されています。
①作業環境測定
→ダイオキシンを取り扱う職場では、定期的な作業環境測定が必要です。
②安全衛生教育
→作業者に対して必要な安全教育を実施する必要があります。また作業者には防毒マスクや防護服の使用が義務付けられます。
③健康診断
→作業者に対する定期的な健康診断が求められます。
④罰則規定
→安全措置を怠った場合は、事業者に罰金や業務停止が科される可能性があります。
最後に
ダイオキシン対策は、複数の法令によって網羅的に規制されています。ダイオキシン類対策特別措置法を中心に、他の法令が相互に関連し合い、環境汚染と健康被害を防ぐための仕組みが構成されています。企業や事業者はこれらの法令を遵守し、適切な管理と対策を行うことで、ダイオキシンによるリスクを最小限に抑えることが求められています。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考URL
・法令検索|e-GOV法令検索
(https://laws.e-gov.go.jp/)
・関係省庁パンフレット ダイオキシン類| 環境省
(https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph/2012.pdf)