
解体工事を行う際は、様々な規制や基準に従わなければなりません。適切な手続きを踏まない場合、法令違反となり、重い罰則が科せられることがあります。今回は、解体工事における違反事例とそれに対する対策についてご説明します。
解体工事における法規制の概要
解体工事は、その性質上、多くの法規制に関連しています。主な法規制には以下のものがあります。
①建設業法
建設業法は、建設業を営む業者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的にされた法令です。
許可をもたない業者が解体工事を行うことは違法です。
②廃棄物処理法
廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全の向上を図ることを目的として作られた法令です。
解体に伴う廃棄物を適正に処理しなければなりません。違法に廃棄物を処分することは厳しく罰せられます。
③労働安全衛生法
労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確率、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的として作られた法令です。
解体工事は危険を伴うため、作業者の安全を確保するために必要な措置を講じなければなりません。
④石綿(アスベスト)関連法(大気汚染防止法・特定粉じん障害予防規則・特定建設材料に該当する建築材料、等)
大気汚染防止法は、環境中の汚染物質を規制する法律であり、建築解体工事における粉じんも対象となります。大気汚染防止法では、人の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん」(現在、石綿(アスベスト)を指定)、それ以外の粉じんを「一般粉じん」と定めています。
特定粉じん障害予防規則は、特に有害な粉じんに対する予防策を定めた規則です。これには、石綿(アスベスト)やシリカなどの取り扱いに関する厳しい基準が含まれています。
石綿(アスベスト)を含む建材の建築解体作業を行う場合、石綿作業主任者の配置が義務付けられています。主任者は、作業の適切な管理と指導を行います。
大気汚染防止法により、建築解体等工事の元請負業者又は自主施工者は、建築物又は工作物の解体等を行うときはあらかじめ特定建設材料の使用の有無を調査することなどが義務づけられています。特定建設材料とは、吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材、石綿含有成型板等、石綿含有仕上塗材のことを示します。
このように解体対象の建物に石綿(アスベスト)が含まれている場合、特別な取り扱いが必要です。適切にアスベストを取り除かずに解体工事を行うことは重大な違反となります。
これらの法規則を遵守しない場合、解体工事が違反となり、法的責任を問われることになります。
解体工事における違反事例
解体工事における違反事例は多岐にわたります。代表的な違反事例をいくつか紹介します。
①許可なしでの解体工事
建設業法に基づき、解体工事を行うには「解体工事業」の許可を得た業者である必要があります。許可を持たない業者が解体作業を行うことは違法です。この違反事例は非常に多く、無許可で解体工事を行うことで、解体工事の品質や安全性が保障されないことが問題視されます。
対策として、無許可業者による解体工事を防ぐためには、発注者が業者の許可証を確認することが重要です。許可証は都道府県知事または国土交通大臣の発行するもので、確認しないまま業者に依頼することはリスクを伴います。
②廃棄物の不適正処理
解体工事では大量の廃材が発生しますが、これらを適切に処理せず、不法投棄を行う業者も存在します。廃棄物処理法に違反することになり、重い罰則を受けることになりますし、不法投棄された廃材は環境汚染を引き起こし、周囲の住民に迷惑をかけることにもつながります。
対策として、解体工事業者は廃棄物処理法を遵守し、適切な処理業者に廃材を引き渡す必要があります。解体工事前に廃棄物の処理方法を確認し、必要な許可を得た業者と提携することが求められます。また、廃棄物処理の際は、適正な処理記録を残すことが重要です。
③労働安全衛生法の違反
解体工事は高所作業や重機を使用するため、作業中の安全管理が非常に重要です。しかし、作業現場で適切な安全措置が講じられていない場合、労働安全衛生法違反となります。例えば、足場の設置が不十分であったり、作業員が適切な保護具を着用していなかったりなどの場合があります。
対策として、労働安全衛生法に基づき、解体工事業者は作業員の安全を確保するため、必要な措置を講じる責任があります。足場や仮設物の設置、保護具の着用、作業環境の管理が欠かせません。また、作業員に対して安全教育を行い、事故を未然に防ぐことが大切です。
④石綿(アスベスト)への不適切な取り扱い
石綿(アスベスト)は解体工事で問題となることが多い物質です。石綿(アスベスト)を含んだ建材を取り扱う際には、特別な管理が必要で、飛散を防止するために細心の注意を払わなければなりません。しかし、石綿(アスベスト)を含む建材を適切に取り扱わない業者が存在することもあります。この場合、石綿(アスベスト)関連法違反となり、健康被害を引き起こす可能性があります。
対策として、石綿(アスベスト)を取り扱う場合は、事前に石綿(アスベスト)調査を行い、その結果に基づいて適切な除去方法を計画することが必要です。除去作業を行う際には、専門の業者に依頼し、飛散を防ぐために封じ込め作業を行うことが求められます。また、作業中は作業員に対する保護具の着用や換気が欠かせません。
違反を防ぐための対策
解体工事における違反を防ぐためには、業者や発注者がしっかりと法令を理解し、適切な対応を行うことが重要です。以下に違反を防ぐための対策をいくつか挙げます。
①業者選びの徹底
解体工事を依頼する際には、許可を持った信頼できる業者を選ぶことが最も重要です。許可証や過去の施工実績を確認し、業者の信頼性をチェックすることが必要です。また、適切な保険に加入しているかどうかも確認しましょう。
②環境への配慮
解体工事においては、廃棄物処理法を遵守することが不可欠です。廃材の適正処理を行い、不法投棄を防止するために、廃棄物の分別とリサイクルを進めることが求められます。
③安全管理の強化
解体工事は非常に危険を伴う作業であるため、労働安全衛生法を遵守し、現場の安全管理を徹底することが求められます。作業前に安全計画を立て、作業員への教育を行い、事故を未然に防ぐための取り組みを行うべきです。
④石綿(アスベスト)取り扱いの適正化
石綿(アスベスト)を含む建材を取り扱う際は、専門的な知識と技術が求められます。石綿(アスベスト)調査を徹底し、適切な除去方法を採用することが必要です。また、作業員が石綿(アスベスト)関連の教育を受け、適切な保護具を着用することを徹底することが重要です。

最後に
解体工事における違反は、法的な問題を引き起こすだけでなく、環境や作業員の安全にも深刻な影響を与える可能性があります。そのため、解体工事業者は法令を遵守し、安全かつ適切に解体工事を進めることが求められます。発注者も、解体工事管理を徹底し、違反を未然に防ぐための対策を講じることが必要で、解体工事を依頼する際には、許可を持った信頼できる業者を選ぶことが最も重要です。
参考URL
・法令検索|e-GOV
(https://laws.e-gov.go.jp/)
・建設リサイクル法の概要|環境省
(https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html)
・大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について | 環境省
(https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/)
・石綿総合情報ポータルサイト | 厚生労働省
(https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/)
・特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)
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