外壁サイディングのアスベストの見分け方|年代と刻印の確認手順
外壁を張り替えたい、または解体を控えているのに、自宅や所有物件のサイディングにアスベストが入っているか分からない。見た目では判断がつかず、不安なまま工事の相談を先延ばしにしている方も少なくありません。サイディングは見た目だけで含有を断定できない建材ですが、築年数、図面、刻印や製品表示の順に確認すれば、触らずに当たりを付けられます。本記事では外壁サイディングに絞り、年代と刻印を確かめる手順と、手元で分からない場合に事前調査・分析調査へつなぐ流れを整理します。
サイディングにアスベストが含まれる理由と危険度

窯業系サイディングには、かつて補強材として石綿(アスベスト)が使われていた時期があります。ここで先に押さえるのは、使われていた背景と、日常生活での危険度、避けたい行為です。
なお、スレート板や吹付け材など建材全般の特徴は建材全般の見た目や年代による見分け方でまとめています。本記事で扱うのは、外壁のサイディングに絞った内容です。
▼窯業系サイディングに石綿が使われていた背景
窯業系サイディングは、セメントに繊維質の原料を混ぜて板状に成形した外壁材です。石綿は安価で強度や耐火性を高められるため、補強繊維として使われていました。国土交通省の「目で見るアスベスト建材」でも、窯業系サイディングは石綿を含む可能性がある成形板として紹介されています。
一方、金属系サイディングや樹脂系サイディングは素材の性質が異なります。まずは自宅の外壁がどの種類かを把握しておくと、その後の確認がスムーズです。
▼成形板で非飛散性とされるが、割る・削ると別
サイディングは石綿をセメントで固めた成形板で、通常の状態では繊維が飛び散りにくい「非飛散性」の建材とされています。外壁として普通に使っている限り、住んでいるだけで健康被害につながるものではありません。
ただし、切断や破砕をすると繊維が飛散するおそれがあります。そのため大気汚染防止法では、2021年4月の改正で成形板などの「レベル3建材」も規制対象となりました。張り替えや解体の際には、事前調査や飛散防止措置が必要になります(出典:環境省「大気汚染防止法の一部を改正する法律について」)。
▼まず避けたい行為(割る・削る・穴あけ・高圧洗浄)
含有の有無が分からない段階で、次の作業は控えてください。
- 確認のために端を割る、カッターで削る
- アンテナや物置の固定でドリル穴を開ける
- 劣化した外壁にサンダーをかける
- 傷んだ表面に強い高圧洗浄をかける
DIYでの塗装前処理や小さな補修でも、削る作業を含むなら一度立ち止まりましょう。確認は「見る」「書類を探す」の範囲で十分に進められます。
サイディングのアスベストを見分ける手順
サイディングの含有確認は、手がかりの得やすい順に4つのステップで進めます。どのステップも外壁を傷つけずに行えます。
▼ステップ1 築年数と施工年で当たりを付ける
最初に確認するのは、建物の新築年や外壁の張り替え年です。登記簿の建築年、建築確認済証、固定資産税の課税明細書などで分かります。
石綿を1%超含む窯業系サイディングは2004年10月に製造等が禁止され、2006年9月には含有率0.1%超の製品が原則禁止となりました。このため、2006年8月以前に施工されたサイディングは含有の可能性がある前提で確認を進めます。注意したいのは「建物の築年」と「外壁の施工年」がずれる場合です。途中で外壁を張り替えていれば、その時期を基準にします。
▼ステップ2 設計図書・施工記録・改修履歴を探す
次に、新築時の設計図書(仕上表・矩計図など)や施工記録を探します。仕上表にはメーカー名や商品名、品番が書かれていることがあります。
- 新築時の図面一式、仕様書、見積書
- ハウスメーカーや工務店に残る施工記録
- 外壁の張り替え・塗装時の見積書や保証書
相続した物件で書類が見当たらない場合は、建てたハウスメーカーや工務店に問い合わせると記録が残っていることがあります。法人所有の建物なら、管理会社や前所有者からの引継ぎ資料も確認しましょう。
▼ステップ3 裏面・小口・見切り部の刻印と製品表示を見る
書類がなくても、サイディング本体の表示から製品が分かることがあります。窯業系サイディングの裏面には、メーカー名、商品名、JIS表示、製造ロットなどが印字されている場合があります。
確認しやすいのは、次のように裏面や断面が見えている箇所です。
- 張り替え工事で外した端材や、物置に保管された予備材
- 換気口・配管まわりの開口部の小口
- 軒天や見切り縁の取り合いで裏側がのぞく部分
石綿含有建材には、業界団体の自主表示として「a」マークが付けられた製品もあります。ただし、すべての製品に表示があるわけではありません。逆に「a」マークがないから非含有とは言い切れない点に注意してください。表示を確認するために外壁を外すのは避け、見える範囲で写真を撮っておきましょう。
▼ステップ4 品番をメーカー資料や公的データベースで照合する
メーカー名や商品名が分かったら、国土交通省と経済産業省が公開する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で照合できます。調べられる項目は、製品名、製造期間、石綿含有の有無などです。
あわせて、メーカーの公式サイトやお客様窓口でも、過去製品の石綿含有情報を公開・回答している場合があります。データベースに掲載がない製品もあるため、照合できなければ次の調査に進む流れです。
年代別の目安と2006年前後の注意点
年代は最も手軽な判断材料ですが、境目の時期には落とし穴があります。規制の経緯と、年代だけで判断しにくいケースを整理します。
規制の流れと事前調査の義務の関係は、2006年基準と事前調査の義務化でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
| 施工時期 | 規制の状況 | 含有の可能性の目安 |
|---|---|---|
| 2004年9月以前 | 窯業系サイディングへの石綿使用が認められていた | 含有の可能性あり。確認が必要 |
| 2004年10月〜2006年8月 | 1%超の含有製品は製造等禁止、0.1%超〜1%以下は規制外 | 低含有製品や在庫品の可能性あり |
| 2006年9月以降 | 0.1%超の含有製品は原則禁止 | 原則として非含有。ただし工事では書面確認が必要 |
出典:厚生労働省「石綿障害予防規則など関係法令について」、国土交通省「目で見るアスベスト建材」をもとに作成
▼原則全面禁止となった2006年が分岐点
2006年9月1日の労働安全衛生法施行令の改正により、石綿を0.1%超含む製品の製造・輸入・使用などが原則禁止されました。2006年9月以降に着工した建物の外壁であれば、含有の可能性は低いと判断できます。
実際の事前調査でも、着工日が2006年9月1日以降であることを書面で確認できれば、その建材は分析を経ずに「石綿なし」と扱えます。年代の確認は、調査の手間と費用を左右する大事な作業です。
▼2004年前後の移行期製品は要注意
2004年から2006年にかけては、各メーカーがノンアスベスト製品へ切り替えていた移行期にあたります。同じ商品名でも製造時期によって含有・非含有が分かれる例があり、年代だけでは判断しきれません。
また、禁止前に製造された在庫品が施工されたケースも考えられます。この時期の外壁は、品番と製造時期まで照合するのが安全です。
▼ノンアスベスト表示でも非含有の証明が必要な場面
カタログに「ノンアスベスト」とあっても、解体や改修の事前調査ではそれだけで足りない場合があります。調査では、使われた製品を特定できる図面や製品情報、メーカーの非含有証明などの根拠を記録として残す必要があるためです。
売却や解体を予定しているなら、手元で集めた図面や写真、メーカー回答は捨てずに保管しておきましょう。後の事前調査でそのまま根拠資料として役立ちます。
手元の確認で分からないときの調査方法
書類も刻印も見つからない場合は、専門家による調査で判断します。流れと費用の目安を知っておけば、見積もり内容も比べやすくなります。
▼有資格者による事前調査の流れ
解体や改修の前には、元請業者による事前調査が法律で義務付けられています。2023年10月以降、建築物の事前調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行う必要があります(出典:厚生労働省「石綿障害予防規則の改正について」)。
- 設計図書などによる書面調査
- 現地での目視調査(刻印・製品表示の確認を含む)
- 判断できない建材の試料採取と分析
- 調査結果の記録と現場への掲示
- 一定規模以上の工事は、労働基準監督署と自治体へ電子報告
手順の詳細は法改正に則った事前調査の進め方で解説しています。本記事のステップ1〜4は、この書面調査と目視調査を発注者側で先に進めておくイメージです。
▼分析調査で判定する方法と費用感
書面と目視で判断できない場合は、外壁の一部を採取して分析機関で調べます。採取は飛散防止措置をとったうえで調査者が行うため、所有者が自分で削る必要はありません。
分析には、含有の有無を調べる定性分析と、含有率を調べる定量分析があります。費用は分析方法や検体数、結果が出るまでの日数で変わり、1検体あたり数万円程度が目安です。外壁が1種類のサイディングなら、検体数は少なく済む場合が多いでしょう。詳しい相場はアスベスト調査費用の相場を参考にしてください。
▼みなし判定で進める場合の考え方
分析をせずに「石綿含有あり」とみなして工事を進める方法もあります。分析の費用と期間を省ける一方で、処分費などが上がる場合もあるのが、みなし判定の注意点です。除去工事は含有ありの前提で行うためです。
外壁の面積が大きい建物や、建物全体を解体する場合は、分析して「なし」と分かれば工事費を抑えられる可能性があります。どちらが有利かは、面積と工期で判断するとよいでしょう。
よくある失敗と見落としやすい点
サイディングの確認で起こりやすい失敗を3つ挙げます。いずれも事前に知っておけば防げるものです。
▼築年数だけで大丈夫と判断してしまう
「新しめの家だから大丈夫」と考えがちですが、築年数は建物全体の年です。たとえば2008年築でも、着工が2006年8月以前なら確認の対象になり得ます。逆に1995年築でも、2010年に外壁を張り替えていれば外壁は非含有の可能性が高くなります。基準にするのは、あくまで外壁材の施工時期です。
▼外壁以外の屋根材・内壁・煙突材を見落とす
サイディングだけ確認して安心してしまうのもよくある失敗です。同じ年代の建物では、スレート屋根材、軒天の成形板、浴室や台所の内装材、煙突の断熱材などにも石綿が使われている場合があります。解体を予定しているなら、外壁と合わせて建物全体を調べる必要があります。
▼事前調査や報告をせずに工事を発注する
外壁の張り替えや解体を、調査の説明がないまま安値で請け負う業者もいます。2022年4月からは、解体部分の床面積が80㎡以上の解体工事や、請負金額100万円以上の改修工事などで、事前調査結果の電子報告が義務になりました(出典:環境省・厚生労働省「石綿事前調査結果報告システム」)。見積もりの段階で、事前調査と報告を誰が行うかを確認しておくと安心です。
含有が分かった場合の解体・改修の進め方
含有が分かっても、慌てる必要はありません。成形板であるサイディングは、適切な方法を選べば安全に工事を進められます。
▼解体・張り替え・塗装・カバー工法の考え方
選ぶ工事によって、必要な対策は変わります。
- 解体・張り替え:切断や破砕を避け、湿らせながら手作業で外す「手ばらし」が原則です。外した材は石綿含有産業廃棄物として処理します。
- 塗装:表面を削らない範囲であれば、外壁を残したまま改修できます。ただし高圧洗浄やケレンの方法には配慮が必要です。
- カバー工法:既存の外壁の上から新しい外壁材を張る方法です。除去しないため飛散のリスクを抑えられますが、ビス留めの穴あけ作業には対策が要ります。また、将来の解体時に改めて対応が必要です。
当面住み続けるなら塗装やカバー工法、売却や建て替えを控えているなら解体時にまとめて除去、というように今後の予定から選ぶと判断しやすくなります。
▼発注者が押さえる法的義務(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)
大気汚染防止法では、工事の発注者にも役割が定められています。元請業者が行う事前調査に協力し、調査や作業に必要な費用や工期を適正に確保するよう配慮することなどが、発注者に求められる内容です。
石綿障害予防規則では、施工業者に作業計画の作成、湿潤化、保護具の使用、作業記録の保存などが義務付けられています。発注者としては、見積書や工事説明でこうした対策が含まれているかを確認しておきましょう。
▼相続・売却予定の物件や法人所有建物での注意点
相続した空き家を解体して土地を売る場合、石綿の除去費用が解体費に上乗せされることがあります。売却価格や相続人間の費用分担に影響するため、早めに調査しておくと計画が立てやすいです。
工場や店舗、賃貸ビルなど法人所有の建物では、外壁以外にも石綿含有建材が使われていることが多く、調査範囲が広がります。土地の売却を伴う場合は、土壌汚染の調査が必要になるケースもあるため、解体と環境調査をまとめて相談できる窓口があると手間を減らせます。
よくある質問
サイディングのアスベストの見分け方について、よくある疑問に答えます。
▼サイディングの見た目や色でアスベストの有無は分かりますか?
見た目や色、模様で判断することはできません。含有・非含有の製品で外観がほとんど同じ場合があるためです。施工年、図面、刻印や製品表示、データベースでの照合を順に行い、それでも分からなければ分析調査で確かめます。
▼アスベスト入りのサイディングの家に住み続けても大丈夫ですか?
サイディングは石綿をセメントで固めた成形板で、通常の状態では繊維が飛び散りにくい建材です。ひび割れや欠けがあっても、削ったり割ったりしなければ直ちに危険とは考えにくいでしょう。気になる劣化がある場合は、補修方法を専門業者に相談してください。
▼2006年以降に建てた家なら調査は不要ですか?
2006年9月1日以降に着工したことを書面で確認できれば、分析は不要です。ただし解体・改修では事前調査そのものは必要で、着工日を示す書類で確認した結果を記録に残します。一定規模以上の工事では報告も必要です。
▼自分で外壁の一部を削って分析に出してもよいですか?
おすすめしません。採取時に繊維が飛散するおそれがあり、法令上の事前調査としても有資格者による採取・分析が求められます。分析が必要な場合は、調査会社や解体業者に依頼しましょう。
まとめ
サイディングのアスベストは見た目では判断できませんが、外壁を傷つけずに確認を進める方法があります。年代と書類、刻印の順で当たりを付け、分からなければ専門家の調査に進むのが基本です。
- 2006年8月以前に施工された窯業系サイディングは含有の可能性がある
- 確認は「築年数・施工年 → 図面・施工記録 → 刻印・製品表示 → データベース照合」の順で進める
- 2004〜2006年の移行期は、年代だけでなく品番と製造時期まで確認する
- 割る・削る・穴あけ・強い高圧洗浄は、含有が分かるまで避ける
- 解体・改修時は有資格者による事前調査が必要で、一定規模以上は報告義務もある
まずは手元にある図面や契約書、固定資産税の明細を探し、外壁の施工年を確かめるところから始めてみてください。書類が見つからない、相続した物件で経緯が分からないといった場合でも、事前調査で判断できます。エコ・テックでは、アスベストの事前調査・分析から、解体工事、土壌汚染対策までを全国で一貫して承っています。外壁の張り替えや解体を検討している方は、調査の段階からお気軽にご相談ください。
