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セメント瓦にアスベストは含まれる?製造年代と撤去時の注意点

古い家の屋根を葺き替えたい、相続した実家を解体して土地を売りたい。そんなときに「この瓦、アスベストは大丈夫?」と不安になる方は少なくありません。セメント瓦は一般にアスベストを主原料とする建材ではありません。ただし製造時期や製品によっては含有の可能性を否定できず、屋根まわりには石綿スレートなど別の含有建材も使われています。そして、含有の有無は見た目では判断できず、解体・改修の前には法令で事前調査が義務づけられています。この記事では、製造年代の目安、確認の手順、撤去時の注意点を順に整理します。

セメント瓦にアスベストは含まれる?結論と考え方

セメント瓦そのものは「含まれていない製品が多いが、断定はできない」という位置づけです。まずは瓦の特徴と、なぜ混同や誤解が起きやすいのかを押さえておきましょう。

▼セメント瓦(コンクリート瓦)の原料と特徴

セメント瓦は、セメントと砂を混ぜて型で成形し、表面を塗装した屋根材です。昭和の住宅で広く使われ、和瓦に似た形のものや、平板で洋風のもの(コンクリート瓦、モニエル瓦と呼ばれる製品を含む)があります。厚みは1〜2cm程度と、粘土瓦に近いのが特徴です。

原料の中心はセメントと骨材で、補強材として石綿を大量に混ぜる製品とは作り方が異なります。そのため一般には「アスベストを主成分とする屋根材」には分類されません。一方で、製品によって配合が違い、過去に補強材として石綿を加えたものがあった可能性は残ります。本記事では「含有の可能性はゼロではない」という前提で話を進めます。

▼石綿スレートと混同されやすい理由

混同の原因になりやすいのが、同じセメント系の屋根材である「住宅屋根用化粧スレート(カラーベスト、コロニアルなどの名称で普及)」です。こちらは厚さ5mm前後の薄い板で、2000年代前半までの製品には石綿を含むものが多く流通していました。また、工場や倉庫で使われる波形スレートも、古いものは石綿を含む代表的な建材です。

どちらも「セメント系」「屋根材」という点で共通しているため、所有者の方が「うちはセメント瓦だと思っていたが、実はスレートだった」というケースも珍しくありません。

▼見た目では含有の有無を判別できない

瓦の色や形、劣化具合から石綿の有無を見分けることはできません。同じ形状でも、メーカーや製造ロットで配合が異なるためです。アスベストの見た目や年代による一般的な見分け方は別の記事でまとめていますが、最終的な判断は書類の確認か、成分分析によって行います。

製造・施工年代別に見る含有の可能性

石綿の使用は法規制によって段階的に禁止されてきたため、施工年はおおよその目安になります。ここでは規制の節目と、年代ごとの考え方を整理します。

▼規制の節目(2004年の原則禁止・2006年9月の全面禁止)

厚生労働省によると、石綿の製造・使用等は次のように段階的に規制されました。

  • 2004年(平成16年)10月:石綿を1%を超えて含む建材など、主要な石綿製品の製造・使用等を禁止
  • 2006年(平成18年)9月:石綿を0.1%を超えて含む製品の製造・使用等を原則禁止
  • 2012年(平成24年)3月:猶予されていた一部製品も含め全面禁止

建材に関しては、2006年9月以降に製造されたものには原則として石綿が使われていません。規制の流れや2006年基準と事前調査の義務化の背景については、別の記事で詳しく扱っています。

▼施工年別の早見表と自己判定の目安

施工年ごとの目安を表にまとめました。あくまで最初の当たりをつけるためのもので、含有の有無を確定するものではありません。

施工・製造時期 セメント瓦の含有可能性 考え方
2004年9月以前 否定できない 製品により補強材として石綿を使った可能性がある。書類確認か分析が必要
2004年10月〜2006年8月 低いが残る 1%超の製品は禁止済み。微量含有や在庫品の可能性を考慮する
2006年9月以降 原則なし 製造日が規制後であることを書類で確認できれば「含有なし」と判断できる

たとえば1985年築の木造住宅で、新築時からセメント瓦が載っている場合は「否定できない」の区分に入ります。慌てる必要はありませんが、解体や葺き替えを計画する段階で確認を進めておくと安心です。

▼2006年以降の施工でも確認したいケース

施工が2006年9月以降でも、次のような場合は確認を省略しないほうが無難です。

  • 着工が規制前で、規制前に製造された材料が使われた可能性がある
  • 部分補修で、古い瓦や在庫品を使い回している
  • カバー工法などで、古い屋根材が新しい屋根の下に残っている
  • 増改築を繰り返していて、どの部分がいつの施工か分からない

事前調査では、製造日が規制後であることを書類で確認できれば、分析をせずに「含有なし」と判断できます。逆に言えば、書類がなければ年代だけで判断することはできません。

セメント瓦のアスベスト含有を確認する手順

確認は「書類で調べる」「メーカー情報と照合する」「分からなければ分析する」の順に進めます。自分でできる部分も多いので、まずは手元の資料から当たってみてください。

▼設計図書・施工記録で施工年と製品名を調べる

最初に見るのは、新築時の設計図書(仕上表、矩計図など)、確認申請書の控え、リフォーム時の見積書や請求書です。屋根材の欄に、メーカー名と商品名が書かれていることがあります。登記簿の新築年月日も、施工年の目安として役立ちます。

相続した家で書類が見当たらない場合でも、心配はいりません。建てた工務店やリフォーム会社が分かれば、当時の記録が残っていないか問い合わせる方法もあります。

▼メーカーの情報・建材データベースで確認する

製品名が分かったら、国土交通省と経済産業省が公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で検索できます。メーカー各社も、過去製品の石綿含有の有無や製造期間を公表している場合があります。

ただし、データベースに載っていないことは「含有なし」を意味しません。掲載はメーカーの報告に基づくもので、すでに廃業した会社の製品などは情報が残っていないこともあります。

▼不明な場合は有資格者の調査と成分分析を依頼する

書類やデータベースで判断できない場合は、専門の調査者に依頼します。2023年10月以降、建築物の解体・改修工事の事前調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行う決まりです。調査者が現地で目視し、必要に応じて瓦の一部を採取して分析機関で成分を調べます。

調査から工事までの全体像は、解体工事におけるアスベストの事前調査の流れで確認できます。分析をせずに「含有あり」とみなして工事を進める選択肢もあり、工期や費用の面で有利になる場合もあります。

セメント瓦を撤去するときの注意点

屋根の葺き替えや建物の解体では、法令上の手続きと飛散防止の両方が求められます。施主として知っておきたいポイントを整理します。

▼解体・改修前の事前調査と届出の義務

大気汚染防止法と石綿障害予防規則により、建築物の解体・改修工事では規模にかかわらず石綿の事前調査が必要です。さらに2022年4月からは、一定規模以上の工事について、調査結果を労働基準監督署と自治体へ電子システムで報告する義務があります。

  • 解体工事:解体部分の床面積の合計が80㎡以上
  • 改修工事:請負代金の合計額が100万円以上(税込)

屋根の葺き替えは改修工事にあたるため、工事金額が100万円以上なら報告の対象です。調査と報告を行うのは元請業者ですが、施主には調査に協力し、設計図書などを提供する努力義務が課されています。

▼レベル3建材としての扱いと飛散防止(割らない・砕かない・湿らせる)

石綿を含む屋根瓦やスレートは、発じん性が比較的低い「レベル3建材」に分類されます。アスベストレベル3の基準や危険性でも触れているとおり、通常の状態で石綿がすぐに飛び散ることはありません。問題になるのは、割ったり砕いたりしたときです。

そのため撤去は、次の手順を基本とします。

  1. 作業前に散水などで瓦を十分に湿らせる
  2. 釘や留め具を外し、1枚ずつ手作業で取り外す
  3. 投げ落とさず、荷揚げ機などで静かに降ろす
  4. 割れた破片も含め、袋やシートで包んで保管する

2021年4月の改正大気汚染防止法の施行以降、レベル3建材の除去も同法の規制対象です。作業基準の遵守や、作業記録の作成・保存(3年間)が業者に義務づけられています。

▼DIYや屋根業者だけで撤去する場合のリスク

自宅の屋根だからと自分で瓦を外したり、石綿の知識がない業者に任せたりすると、本人や家族、近隣の方が石綿を吸い込むおそれがあります。重機で一気に崩す、電動工具で切断するといった方法は特に危険です。

また、事前調査をしないまま工事を進めた場合、元請業者は法令違反に問われる可能性があります。見積もりの段階で「石綿の事前調査は誰が、どのように行うのか」を確認しておくと、後のトラブルを防げます。

含有が分かった場合の処分と費用の考え方

含有が確認されても、適切な業者に任せれば必要以上に心配することはありません。処分のルールと、費用の見方を押さえておきましょう。

▼石綿含有産業廃棄物としての適正処理

工事で撤去した石綿含有の瓦は「石綿含有産業廃棄物」として、廃棄物処理法に基づいて処理します。ほかの廃材と分けて保管し、飛散しないよう梱包したうえで、許可を持つ収集運搬業者と処分場へ引き渡します。最終処分は、管理型などの許可を受けた処分場での埋立てや溶融処理が中心です。

石綿を含まない一般的な瓦がらと混ぜてしまうと、全体を石綿含有廃棄物として扱わなければならず、処分量も費用も増えてしまいます。撤去の段階で分別しておくことが、結果的にコストを抑える近道です。

▼費用が変わる要因と見積もり時の確認点

石綿含有の瓦を撤去する費用は、建物の条件によって大きく変わります。主な要因は次のとおりです。

  • 屋根の面積と勾配(急勾配なら足場や安全対策が増える)
  • 事前調査で分析を行うかどうか
  • 処分場までの距離と処分量
  • 葺き替えか、建物全体の解体か

見積もりを比べるときは、総額だけでなく「事前調査」「石綿除去作業」「運搬・処分」が項目として分かれているかを見てください。石綿関連の費用がひとまとめで書かれている見積もりは、作業内容を確認しておくと安心です。

瓦以外の屋根材や相続・売却物件での確認ポイント

セメント瓦に石綿が含まれていなくても、屋根や建物のほかの部分に含有建材が使われていることはあります。物件全体を見渡す視点も持っておきましょう。

▼石綿スレート・下地材・防水シートなど他の屋根材

屋根まわりで確認したい建材には、次のようなものがあります。

  • 化粧スレートや波形スレート(増築部分や物置に使われていることがある)
  • 軒天(軒裏)の板材
  • 雨どいや換気口まわりの部材
  • 一部の古いアスファルト系防水材や下地材

瓦だけを見て「問題なし」と判断せず、調査では屋根全体と付属部材を対象にしてもらうのが確実です。

▼相続・空き家・売却予定の物件での進め方

相続した実家を解体して土地を売る場合、石綿の調査結果は解体費用と工期の両方に影響します。買い手との価格交渉や引き渡し時期にも関わるため、売却の話を進める前に事前調査を済ませておくと計画を立てやすくなります。

遠方に住んでいて現地に何度も行けないという方も多いでしょう。その場合は、調査・解体・処分をまとめて任せられる業者を選ぶと、立ち会いや連絡の手間を減らせます。工場跡地など土壌汚染の懸念がある土地では、土壌調査も同時に検討しておくと手戻りを防げます。

▼自治体の調査・除去補助金の確認

国土交通省の支援制度を活用し、石綿含有の分析調査や除去工事に補助を出している自治体があります。ただし、対象を吹付け石綿など飛散性の高い建材に限っている例が多く、屋根瓦のようなレベル3建材は対象外のこともあります。

補助金は着工前の申請が条件になっているのが一般的です。工事の契約前に、物件のある市区町村の建築指導課や環境部局に問い合わせてみてください。

石綿調査から解体まで依頼できる専門業者の選び方

石綿が関わる工事は、調査、除去、解体、処分と工程が多く、業者選びで手間とリスクが大きく変わります。依頼先を選ぶ際の考え方をまとめます。

▼調査・除去・解体を一括で任せるメリット

工程ごとに別の業者へ依頼すると、調査結果の引き継ぎ漏れや、責任の所在があいまいになる問題が起きがちです。調査から除去、解体、廃棄物処理まで一貫して対応できる業者なら、窓口が一つで済み、工程の調整もスムーズに進みます。

選ぶ際は、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が在籍しているか、石綿除去の施工実績があるか、産業廃棄物の処理ルートを確保しているかを確認しましょう。

▼相談前に手元に用意しておく情報

次の情報がそろっていると、見積もりや調査の段取りが早く進みます。すべてそろっていなくても相談はできるので、分かる範囲で構いません。

  • 建物の所在地、構造、延床面積
  • 新築年(登記簿や固定資産税の通知書で確認できる)
  • 設計図書やリフォーム履歴の書類
  • 屋根や外観の写真
  • 葺き替えか解体か、売却予定の有無などの今後の方針

よくある質問

セメント瓦とアスベストについて、よくある疑問に答えます。

▼セメント瓦の家に住み続けても健康に影響はありますか?

石綿を含む瓦であっても、割れたり砕けたりしていない状態では、石綿が大量に飛び散ることは考えにくいとされています。問題になるのは、撤去や補修で瓦を壊すときです。ひび割れや破損が目立つ場合は、むやみに触らず専門業者に相談してください。健康面で気になる症状がある場合は、医療機関に相談しましょう。

▼屋根の一部補修だけでも事前調査は必要ですか?

必要です。事前調査は工事の規模にかかわらず義務づけられており、瓦数枚の差し替えでも対象になります。一方、行政への結果報告が必要になるのは、改修工事なら請負代金100万円以上の場合です。

▼セメント瓦と粘土瓦はどう見分ければよいですか?

粘土瓦は焼き物のため、表面に釉薬の光沢があったり、割れ口まで同じ色だったりします。セメント瓦は表面の塗装が劣化すると色あせやはがれが目立ち、割れ口は灰色のセメント質です。ただし、外観での区別は目安にとどめ、含有の判断は書類か分析で行ってください。

▼カバー工法なら古い屋根材を撤去しなくて済みますか?

既存の屋根材を残して上から新しい屋根材をかぶせるため、撤去や処分は不要になります。ただし、石綿を含む建材が屋根の内部に残り続けるため、将来の解体時には除去が必要です。売却時に買い手へ説明する場面も想定し、どちらを選ぶか検討しましょう。

まとめ

セメント瓦は一般に石綿を主成分としない屋根材ですが、2006年9月以前の製品では含有の可能性を否定できません。見た目では判断できないため、書類や分析で確認する必要があります。

  • セメント瓦は石綿スレートとは別物だが、含有の可能性はゼロではない
  • 2006年9月以降の製造と書類で確認できれば、原則として含有なしと判断できる
  • 解体・改修前の事前調査は規模を問わず義務。一定規模以上は報告も必要
  • 撤去時は湿らせて手作業で外し、割らない・砕かないが基本
  • 含有建材は石綿含有産業廃棄物として分別・適正処理する

まずは手元の設計図書やリフォーム記録を探し、施工年と製品名を確かめるところから始めてみてください。書類が見つからない、相続した物件で事情が分からないといった場合も、専門業者に相談すれば調査から解体、処分まで順序立てて進められます。屋根の葺き替えや解体、土地の売却を検討している方は、計画の早い段階で石綿の確認を済ませておくと、費用と工期の見通しが立てやすくなります。

出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」、環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」、国土交通省・経済産業省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」

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