アスベスト含有建築物解体工事に関する資格や講習について

アスベストを使った建材製品は1955年ごろから使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として、1960年代の高度成長期に多く使用されました。しかし、アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることにより、1975年(昭和50年)特定化学物質等障害予防規則の改正により、石綿含有率が重量の5%を超える場合、吹き付け作業は禁止とされました。(ただし、5%未満であれば、吹き付け作業は許容されていました。)その後、何度か法改正が行われ、アスベストおよび石綿製品は、2006年(平成18年)91日より製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止とされました。全面禁止となったから健康被害が全くなくなったかというと、それは間違いで、2006年以前に建てられた建築物のリフォームや解体を行う際にアスベストが飛散するリスクが大きくあります。それによる健康被害を最低限に抑えるために、解体工事を行う際に必要な資格や講習が定められています。

アスベスト含有建築物解体工事に関する資格や講習について

アスベストを含む建築物の解体を安全に行うために必要な資格や講習

アスベスト解体にあたっては、事前にアスベスト含有の調査が必要となります。それにあたって、厚生労働省から出された石綿指針では、「アスベストに関し広い知見を有する者」とされ、「石綿作業主任者」や「アスベスト診断士」が例示されています。アスベスト調査に関する資格には以下があります。

1.「石綿作業主任者(厚生労働省)」

「石綿作業主任者」とは、作業に従事する労働者が石綿等の粉じんにより汚染され、またはこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮し、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を、1ヶ月を超えない期間ごとに点検、保護具の使用状況を監視する主任者です。事業者は、労働災害を防止するため、工場、建築物等の解体・改修工事現場などで、石綿を取り扱う作業については「石綿作業主任者」を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければなりません。

受講資格

特になし

講習内容

・健康障害及びその予防措置に関する知識
・作業環境の改善方法に関する知識
・保護具に関する知識
・関係法令
・修了試験

2.「アスベスト診断士(一般社団法人JATI協会)」

アスベスト診断士は、アスベストの有無を判断する仕事です。既存建築物等に使用されているアスベストの調査や安全な取り扱いについて適切なアドバイスを行うのがアスベスト診断士の役割です。そのためアスベスト診断士はアスベストにおいて広範囲の知識が必要となります。

受講資格

下記のいずれかに該当する者とされています。
①石綿作業主任者技能講習修了者又は特定化学物質等作業主任者技能講習修了者(平成183月まで)
②第1種の作業環境測定士
③建築士法に基づく、一級建築士及び二級建築士の免許登録者
④建設業法に基づく、一級施工管理技士(建築施工管理)の資格を有する者
⑤労働安全衛生法に基づく、労働衛生コンサルタントの資格を有する者
⑥アスベストを含むものの除去に関し、3年以上の実務経験をもつ者
⑦アスベスト有無の事前調査に関し、1年以上の実務経験をもつ者

講習内容

基礎編
石綿の基礎知識、石綿の健康影響、関係法令、建築物に関する基礎知識

調査、診断編
アスベスト含有建材に関する基礎知識(サンプル研修含む)、調査の手順および調査方法(実習含む)、報告書の作成方法(実習含む)、分析に関する基礎知識(実習含む)

石綿処理編
飛散防止対策、廃棄物の処理方法、保護具の正しい使い方、建築リサイクルに関する知識

3.「建築物石綿含有建材調査者(国土交通省)

建築物等の解体または改修の作業を行うときには、対象建築物等の石綿等使用有無についての調査が必要とされ、令和27月の石綿障害予防規則等の改正により、事前調査を実施するために必要な知識を有する者として、建築物石綿含有建材調査者が行うことが義務付けられました(石綿則第3条、関係告示)

受講資格

下記以外にも受講資格は規定されているので、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程第7条をご覧ください。
①石綿作業主任者技能講習修了者
②大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
③短期大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
④高等学校または中等教育学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
⑤建築に関して11年以上の実務経験を有する者
⑥特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者

講習内容

・建築物石綿含有建材調査者講習(一般)
・建築物石綿含有建材調査者講習(一戸建て等)
※一般建築物:一戸建て等を含むすべての建築物
※一戸建て等:一戸建て住宅および共同住宅(長屋を含む。)の住戸の専有部分。共同住宅の住戸の内部以外の部分(ベランダ、廊下等の共用部分)や店舗併用住宅は含まれない。

4.酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者(厚生労働省)

酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者とは、トンネルや下水道などの酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業場所に係る作業で、酸素欠乏等の空気を吸入しないように、作業方法を決定し、労働者を指揮し、作業を行う場所の空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定し、測定器具、換気装置、空気呼吸器等その他労働者が酸素欠乏症にかかることを防止するための器具または設備を点検、空気呼吸器等の使用状況の監視を行う責任者です。

受講資格

A区分: 特に無し
B区分: ①日本赤十字社の救急法の講習を修了し、救急員認定証を受けた者
②平成10年3月31日までに日本赤十字社の救急法一般講習Ⅱを修了して合格証を受けた者
③平成6年12月31日までに日本赤十字社の救急法の講習を修了して救急員適任証を受けた者

講習内容

①学科講習
・酸素欠乏症、硫化水素中毒及び救急そ生に関する知識
・酸素欠乏及び硫化水素の発生の原因及び防止措置に関する知識
・保護具に関する知識
・関係法令
・学科修了試験

②実技講習
A区分:救急そ生の方法、酸素及び硫化水素の濃度の測定方法、実技修了試験
B区分:酸素及び硫化水素の濃度の測定方法、実技修了試験

5.高所作業者運転特別教育(厚生労働省)

事業者は、作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く)の業務に労働者を就かせるときは、安全又は衛生のための特別な教育をしなければならないことが義務付けられています。

受講資格

特になし

講習内容

①学科講習
・作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識
・原動機に関する知識
・運転に必要な一般的事項に関する知識

②実技講習
・作業のための装置の操作

アスベストを含む建築物の解体を 安全に行うために必要な資格や講習

実際に解体作業に係る資格

1.建設機械施工技師(1級や2級)
2.土木施工管理技士(1級や2級)
3.建築施工管理技士(1級や2級)
4.とび技能士(1級や2級)
5.解体工事施工技士

アスベストを含む建築物の解体工事業者を選ぶ際は、安すぎる業者には注意をすること、調査資格から解体工事に係る資格を保有する業者の選定が重要です。アスベスト含有調査では、気が付かない箇所の見落としが原因で健康被害のリスクがあります。また、解体工事における大きな問題に不法投棄があります。廃棄費用を削って利益を上げる目的で行われるようですが、不法投棄が発覚した場合、解体業者と排出業者に行政から原状回復の措置命令が出され、この命令に従わなかった場合、5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が適用されることになっています。

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アスベストによる病気関連

アスベストは天然にできた鉱物で、繊維状のとても細かい物質であることが特徴です。また、石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれています。アスベストは、蛇紋石族と角閃石族に大別され、以下に示す6種類があります。

蛇紋石族

クリソタイル(白石綿)
ほとんどすべての石綿製品の原料として使用されており、世界で使われた石綿の9割以上を占めます。

角閃石族

クロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)
吹付け石綿として使用されており、他に青石綿は石綿セメント高圧管、茶石綿は各種断熱保温材に使われてきました。

アンソフィライト石綿・トレモライト石綿・アクチノライト石綿
他の石綿やタルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれます。アンソフィライト石綿は熊本県旧松橋町に鉱山がありました。また、トレモライト石綿は吹付け石綿として一部に使用されていました。

アスベストは、とても細い繊維で、熱や摩擦、酸、アルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されてきました。

しかし、石綿は肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、現在では、原則として製造・使用等が禁止されています。しかし、アスベスト自体が問題なのではなく、飛散することや吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。

アスベストが原因で発症する病気

①石綿(アスベスト)肺

石綿肺は、アスベストを大量に吸い込むことにより、肺が線維化する「じん肺」という病気の一つです。症状として、肺の線維化が徐々に進行し、酸素-炭酸ガスの交換を行う機能が損なわれるため、呼吸困難が生じます。肺の線維化を起こすものとしては石綿以外の鉱物性粉じんをはじめ様々な原因や原因不明も多くありますが、アスベストのばく露によっておきた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しています。

②肺がん

アスベストによる肺がんは、原発性肺がんです。原発性肺がんとは、肺の細胞が変化して発生したがんをいい、転移してできたがんである転移性がんと区別されます。肺がんは、アスベスト以外にも様々な要因で発生するといわれており、喫煙は肺がんの重要な危険因子といわれています。症状は、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱などがありますが、肺がんができた場所や大きさによってはほとんど症状がでないこともあるといわれています。

③悪性中皮腫

中皮とは、肺を包む胸膜や心臓を包む心膜、胃腸や肝臓など腹部臓器を包む腹膜などの膜の表面をおおっている組織です。この中皮から発生した腫瘍が中皮腫で、良性と悪性があります。また、アスベストは、特に胸膜や腹膜において中皮腫を起こしやすいとされています。中皮腫の病態は、良性と悪性で異なります。良性の場合は、他の臓器に転移はしないので、あまり症状は出ません。ただし、良性であっても腫瘍組織が大きくなれば、胸痛、咳、呼吸困難などが出現することがあります。悪性中皮腫の場合、胸膜や腹膜に沿う形で広がっていくため、胸水や腹水がたまり、胸痛、咳、呼吸困難、腹部膨満感などが出現します。そのような症状が出た場合、悪性中皮腫は進行していると考えられます。

アスベストの繊維は、WHOの報告により、肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。アスベストによる健康被害は、アスベストを扱ってから長い年月を経て出てきます。仕事を通してアスベストを取り扱っている方や扱っていた方は、その作業方法にもよりますが、アスベストを扱う機会が多いことになるため、定期的に健康診断を受けた方がいいです。また、労働安全衛生法により、現在仕事でアスベストを取り扱っている方の健康診断は、事業主にその実施義務があります。労働基準監督署の認定を受け、業務上疾病とされると、労災保険で治療ができます。アスベストによる健康被害は、石綿を吸い込んでから30から50年という長い潜伏期間を経て発症します。石綿を吸い込んだ可能性がある方で呼吸困難や咳、胸痛などの症状がある方は専門医療機関に相談をおすすめします。また、過去にアスベストを吸い込んだ可能性のある人は、喫煙により肺がんのリスクが上がるため、禁煙することが重要です。

建設アスベスト給付金制度について

令和3年6月9日に、議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、令和4年1月19日に完全施行されることとなりました。法の趣旨において、アスベストにさらされる建設業務に従事した労働者等が、石綿を吸入することにより発生する疾病にかかり、精神上の苦痛を受けたことについて、最高裁判決等において国の責任が認められたことに鑑み、被害者の方々へ損害の迅速な賠償を図る旨が述べられています。

対象者

昭和47101日~昭和50930日の間にアスベストの吹付け作業に係る建設業務や、昭和50101日~平成16930日の間に一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務に従事することにより、石綿関連疾病にかかった労働者や、一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)が対象となります。

給付金の主な内容

給付金の支給を希望される方からの請求に基づき、認定審査会において審査を行います。厚生労働大臣は、認定審査会の審査の結果に基づいて、病態区分に応じ、以下の給付金を支給します。

①石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない者550万円

②石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある者700万円

③石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない者800万円

④石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある者950万円

⑤中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4良性石綿胸水である者1,150万円

⑥上記①および③により死亡した者:1,200万円

⑦上記②および④、⑤により死亡した者:1,300万円

※給付金を支給された後、症状が悪化した方には、請求に基づき、追加給付金(上記における区分の差額分)が支給されます。
※アスベストにさらされる建設業務に従事した期間が一定の期間未満の方、肺がんの方で喫煙の習慣があった方については、給付金等の額がそれぞれ1割減額されます。

給付金等の請求期限

給付金等については、アスベスト関連疾病にかかった旨の医師の診断日又は石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日(アスベスト関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年以内に請求する必要があります。

労災保険について

仕事が原因で石綿の健康被害が生じた場合は、「労働者災害補償保険制度(労災保険制度)」による補償を受けることができます。現在、雇用されている方や過去に雇用されていた方が、石綿にさらされる業務に従事していたことが原因で、肺がんや中皮腫などのアスベストとの関連が認められた病気を発症し、療養や休業、あるいは死亡した場合には、労災保険によって、次のような給付を受けられます。なお、労災保険の給付を受けるには、その病気が、仕事が原因で発症したものであると、労働基準監督署長から認定を受けることが必要です。

①療養補償給付

療養の給付(無償で治療を受けられること)または医療機関で負担した医療費を支給

②休業補償給付

傷病の療養のため、労働することができず賃金を受けられないときの給付

③傷病補償年金

療養開始後16か月経っても傷病が治らず、障害の程度が障害等級(1級~3級)に該当するときに支給

④障害補償給付

傷病が治って身体障害が残ったときに、障害の程度に応じて年金(障害等級1級~7級)または一時金(障害等級8級~14級)を支給

⑤介護補償給付

傷病年金または障害年金の対象となる障害により、介護を受けている場合に支給

⑥遺族補償給付および葬祭料

労働者が死亡したときに支給

労災保険の給付を受ける権利は、一定の期間を過ぎると時効によって消滅し、労災保険の給付を受けられなくなります。例えば、療養補償給付は、療養の費用を支出した日の翌日から2年、遺族補償給付は、労働者が亡くなった日の翌日から5年で時効になります。

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解体工事施工技師の資格取得の難易度について

解体工事施工技士とは

解体工事施工技士は、解体工事施工者のための国土交通省管轄の国家資格です。解体工事施工技士の資格は、解体工事の現場管理のための解体工事技術や施工管理能力、廃棄物の適正処理や建設リサイクル法などについての適切な知識を有していることを示します。公益社団法人全国解体工事業団体連合会(Japan Demolition Contractors Association)[略称:全解工連]が実施している解体工事施工技士試験は、建設業法施行規則第七条の三第二項の国土交通大臣登録試験であり、また解体工事業に係る登録等に関する省令(国土交通省令)第七条第三号の国土交通大臣登録試験です。この試験に合格すると、建設リサイクル法に規定された解体工事業の登録及び解体工事現場の施工管理に必要な技術管理者並びに建設業法に規定された解体工事業許可及び解体工事現場の施工管理に必要な主任技術者の資格要件を満たすことになるため、請負額が500万円以下の解体工事を行うための解体工事業の登録が可能になり、また施工に必要な技術管理者となることができます(1)。

解体工事施工技士資格試験の概要

解体工事施工技士試験の受験資格は、「1.原則として解体工事実務経験年数8年以上」ですが、「2.学歴・指定学科卒業によって必要実務経験を短縮」することができるため、学歴によって必要な解体工事の実務経験年数が異なります(2)

学   歴 必要な解体工事の実務経験年数
指定学科を卒業した者 指定学科以外を卒業した者
大学
専門学校(4年制)「高度専門士」
卒業後1年6ヶ月以上 卒業後2年6ヶ月以上
短期大学
高等専門学校(5年制)
専門学校(2年制又は3年制)「専門士」
卒業後2年6ヶ月以上 卒業後3年6ヶ月以上
高等学校
中等教育学校(中高一貫6年)
専門学校(1年制)
卒業後3年6ヶ月以上 卒業後5年6ヶ月以上
その他 8年以上

学歴と必要な解体工事の実務経験年数一覧表
https://www.zenkaikouren.or.jp/engineer/about-overview/)より

試験の問題の形式は、四肢択一式(50問・90分)と記述式(5問・120分)になります。出題範囲は、土木・建築の基礎知識、解体工事施工の計画、解体工事施工管理、解体工法、解体用機器、安全管理、環境保全、副産物・廃棄物対策、関連法規などで、解体工事技術や廃棄物の適正処理、建設リサイクル法に対応した施工管理能力とその周辺知識が問われます。記述式試験では、解体工事の実務経験に関するものや、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等の、解体現場の素材や規模別の解体工事施工計画についての問題が出題されることが多いようです。

試験委員会によって四肢択一式試験の得点と記述式試験の得点、そして両者の合計得点の合格基準点がそれぞれ設定されます。全解工連の試験概要のページには明記されていませんが、一般に四肢択一式・記述式それぞれ100点満点中50点以上、合計点200点満点中115点以上が合格ラインであると言われています(3)。合格率は平均56.3%(第1回から第27回まで)となります。合格者は、本人の申請によって全解工連の「解体工事施工技士登録者名簿(毎年発行)」に登録され、全解工連より「登録証」及び「資格者証(携帯用カード)」が交付されます。登録の有効期間は5年間で、毎年23月に実施される更新講習を受講することで登録を更新することができます。

資格取得の難易度、解体工事施工技術講習について

解体工事施工技士試験の合格率は平均56.3%と低くはありませんが、試験問題では専門的な知識が問われます。試験対策として、全解工連が毎年9-11月頃に全国で実施している解体工事施工技術講習を受講することが有効です。解体工事施工技術講習は、国土交通省令(解体工事業に係る登録等に関する省令第七条第二号の登録講習)に基づく登録講習であり、「建築物等の解体工事に携わる者等が『建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)』、その他の関連法令等に的確に対応できる解体工事施工技術を確保すること(4)」を目的とするもので、専用のテキストを使用し、連続2日間の日程で実施されます。また、同講習を受けることで、解体工事施工技士試験を受験するために必要な実務経験年数が1年間短縮される措置を受けることができます。

解体工事施工技術講習は、9時から17時まで2日間連続で実施されます。講義内容は、第1日目は建設業法・建設リサイクル法・資源有効利用促進法、労働安全衛生法等(労働災害統計・事例・KYT)、石綿障害予防規則・大気汚染防止法・フロン排出抑制法・騒音・振動規制法、H25副産物調査結果、再資源化の現状、廃棄物処理法①廃棄物の基礎知識、廃棄物処理法②建設廃棄物処理指針です。第2日目には、解体工事の計画と管理(事前調査・積算・見積・契約・届出・許可申請・施工計画・施工管理)、解体作業①(解体工法・解体用機器・仮設、解体作業)、解体作業②(WSRCSRC造解体作業の手順・留意点・施工事例等)について学び、2日間の総括の後、修了証が交付されます。受講資格は定められておらず、誰でも受講することができます。

解体工事施工技士試験の申込方法

次に、解体工事施工技士試験の申込方法について説明します。解体工事施工技士試験の申込には、インターネットから申し込みを行う一次申請と、提出書類を郵送する二次申請が必要となります。

一次申請では、①メールアドレス認証(メールアドレスを送信し、届いたメールに記載されているパスワードを入力する)、②受験者情報入力(受験者名、所属企業、経歴等)、③受験料の支払い(クレジットカード決済またはコンビニ決済)を行い、これらが完了すると、登録したメールアドレスに一次申請受付メールが送信されます。

二次申請では、まず一次申請受付メールに添付されているファイル(試験受験申請書と実務経験証明書)を印刷します。試験受験申請書には署名・押印をして、パスポートサイズ(たて4.5㎝×よこ3.5㎝)の写真を貼ります。実務経験証明書には会社印・代表者印が必要となります。そして、①試験受験申請書と②実務経験証明書と合わせて、③住民票(本籍・国籍の記載は不要)、④卒業証明書(解体工事の実務経験が8年未満の場合のみ)を同封して、公益社団法人全国解体工事業団体連合会宛てに郵送します。すると、試験実施日の10日前までに受験票メールが送られてきます。この受験票メールは、印刷したものを受験日当日に持参する必要があります。

資格取得に必要な費用

解体工事施工技士試験(令和3年度)の受験料は、申込方法及び決済方法によって異なります。インターネット申込(クレジットカード決済)の場合が最も安く16,500円(受験料:15,000+消費税1,500円)、インターネット申込(コンビニエンスストア決済)の場合は17,000円(受験料:15,000+消費税1,500+決済手数料500円)、書面申込の場合は19,800円(受験料:15,000+事務費3,000+消費税1,800円)となります。

また、前述した解体工事施工技術講習(令和3年度)の受講料も同様に申込方法及び決済方法によって変動があり、インターネット申込(クレジットカード決済)の場合は27,500円(テキスト代・消費税含む)、インターネット申込(コンビニエンスストア決済)の場合は28,000円(テキスト代・消費税含む)、書面による郵送申込の場合は30,800円(テキスト代・消費税含む)となります。

解体工事施工技術講習を受講してから、解体工事施工技士試験を受験するとしたら、必要な費用は44,000円(クレジット決済の場合)から、50,600円(書面申込の場合)となります。

参考URL

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土壌汚染の調査方法(フェーズ2)について

これまでの記事では、土壌汚染調査から対策工事に至るまでの全体の大まかな流れと、土壌調査・対策工事の3つのフェーズのうちの第1フェーズに当たる地歴調査の概要や方法、費用について述べてきました。土壌汚染調査の3つのフェーズとは、①地歴調査②状況調査・詳細調査(表層土壌調査・ボーリング調査)③土壌汚染対策工事です。今回の記事では、フェーズ2の状況調査・詳細調査の内容や方法、費用について解説いたします。

状況調査・詳細調査とは

フェーズ2の状況調査・詳細調査は、実際に対象となる土地の土壌を採取、分析し、土壌汚染の有無や、汚染の分布範囲を測定する調査です。フェーズ2は、状況調査と詳細調査の二段階に分けられます。

状況調査では、土壌ガス調査及び表層土壌調査によって、表層から50cmまでの土壌試料と、土壌中のガスを採取し、特定有害物質の有無や、平面的な汚染の分布を調べます。土壌汚染対策法では、特定有害物質は大きく3つに分類されており、それぞれの種類によって、最適な調査方法が異なります。第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)の調査では、表層部の土壌ガス調査によって、土壌中から揮発してくるガスを採取・分析することで土壌汚染の存在と汚染の面積を確認します。鉛などの第二種特定有害物質、PCBなどの第三種特定有害物質を調査する場合には、表層土壌調査が行われます。地表面から深さ5cmまでの土壌試料と、深さ5cmから50cmまでの土壌試料を採取し、それらを等量混合して分析します。

状況調査の結果、特定有害物質の濃度が基準値を満たしていれば、土壌汚染のない土地と判断することができますが、基準値を超える濃度で特定有害物質が検出された場合には、汚染の深度を測定するため、該当する区画で詳細調査(ボーリング調査)を実施します。ボーリング調査の範囲は原則10mまでとされており、一般的には、1.0m毎に土壌を分析し、2深度連続して基準を満たした地点が、対策深度となります。ちなみに、このボーリング調査の基準となる1深度の間隔は、調査の対象となる特定有害物質の種類等の調査項目によって異なる場合もあります。また、必要に応じて地下水の流れや水質についても調査する場合があります。これらの状況調査・詳細調査を行うことで、特定汚染物質の基準超過項目や、汚染土壌の平面分布と深度(ボリューム)が明確になります。

状況調査の方法

フェーズ2では、状況調査・詳細調査によって設定した調査区画の表層部の土壌を採取して調査し、実際の汚染の範囲を判定します。調査を実施する前にまず、フェーズ1の地歴調査の結果を基にして、土壌汚染が存在するおそれのある分布範囲を把握し、土壌汚染対策法施行規則第四条によって規定された方法で調査対象区画を選定します。

調査の対象となる土地は、最北端を起点として敷地を10m×10mの単位区画に分け、この10m格子を基本的な調査単位区画として採取・分析します。調査対象区画の選定方法は、土壌ガス調査と表層土壌調査でそれぞれ異なります。土壌ガス調査では、土壌汚染のおそれの少ない土地の場合は、30m格子(900㎡)に1地点の割合で調査を行いますが、土壌汚染のおそれがある土地では、10m格子(100㎡)に1地点の割合で調査をします。土壌ガス採取の方法は、まず埋設管等確認のうえ、地表に直径15~30mm程度で深度1mの調査孔を堀削します。そこにステンレス製保護管を挿入し、一定時間(30分以上)静置して、分析用試料となる土壌ガスを集め、採取します。採取した試料は、光イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC-PID)や質量分析計等を用いて分析します。なお、沿岸部などで地下水位が浅い場合には、土壌ガスの捕集が困難であるため、地下水中の同物質を測定します。また、上記の土壌汚染対策法施行規則で定められたもののほかに、フィンガープリント法という調査方法もあります。フィンガープリント法は、地表面より10~30cmの地点にコレクターを埋設し、2週間かけて土壌ガスを採取する方法で、現場作業が簡単なうえにより高精度の分析を行うことができ、油分による汚染の有無も把握できるという特徴があります(1)。

表層土壌調査の場合には、土壌汚染のおそれの少ない土地の場合は、30m格子(900㎡)に対して、5地点から試料を採取します。土壌汚染のおそれがある土地では、10m格子(100㎡)に1地点の割合で調査をします。表層土壌調査では、地表面から深さ5cmまでの土壌試料と、深さ5cmから50cmまでの土壌試料を、等量混合して分析します。表層土壌調査の方法は、まず埋没管等を確認のうえ、調査地点がアスファルトやコンクリートで被覆されている場合は、コアカッター等で被覆部を堀削します。その後アスファルトやコンクリートの下地となっている砕石を取り除き、地表面を露出させ、土壌試料が採取できる状態にします。この準備(コア抜き)の段階で、被覆部分の厚さ、砕石の厚さを管理して、地表面までの深さを記録します。土壌試料は、ダブルスコップ、ハンドオーガー等を用いて露出した地表面から数えて表層5cm~表層下50cmまでの深度を2つに分けて採取され、「土壌溶出量調査に係る測定方法」(平成15年3月6日 環境省告示第18号)及び「土壌含有量調査に係る測定方法」(平成15年3月6日 環境省告示第19号)に定める方法に基づき、第二種有害物質を測定します(2)。調査終了後の調査孔は、裸土の場合は周辺土や発生土で埋め戻し、コンクリート面はモルタルで、アスファルト面は常温の合材アスファルトで補修します。

詳細調査の方法

詳細調査は、状況調査(土壌ガス調査・表層土壌調査)の結果、指定基準値を超える汚染物質が検出された場合に行われます。これまでの調査で明らかとなった汚染の平面分布から、ボーリング調査や地下水汚染調査が必要な地点を選定します。これらの詳細調査によって、深度方向への汚染の広がりを調べることで、対象地における汚染の三次元的な分布を把握し、汚染源の特定を目指します。そして、詳細調査の結果に従って、個々のケースに最適な土壌汚染対策工事の施工計画を立案します。

ボーリングの深度は原則10mまでと定められており、試料の採取深度は550cm1m2m3m4m5m6m7m8m9m10mと規定されています。採取した試料の分析の結果、2深度連続して基準をクリアした上の深度までが対策深度になります。ボーリング調査に用いる機材には、自走式ボーリング、機械式簡易ボーリング等、さまざまな種類があり、それぞれ採取スピードやサンプリングの精度等の性能が異なるため、対象地の敷地の広さや採取する土壌の土質等の対象地の状況や、調査目的に応じて最適な手法が選定されます。

状況調査・詳細調査にかかる費用

対象となる土地の広さや形状、利用状況その他によって見積金額は変動しますが、おおよその相場の目安を以下に述べていきます。

土壌ガスや表層土壌を採取・分析する状況調査と、ボーリング調査を実施する詳細調査とで費用は変わってきます。表層土壌を調査する状況調査は、900㎡あたり20万円~60万円が相場となります。調査費用は特定有害物質の使用履歴の有無や、土地の形状や場所、土間コンクリートの厚さや調査項目の数によって大きく増減します。ボーリング調査にかかる費用は、1地点(100㎡)あたり20万円~80万円ほどで、汚染の状況や特定有害物質の種類によって費用が変動します。

株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について 株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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