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アスベストに関する危険性と被害事例について

アスベストは非常に危険性の高い物質で、とても細かい繊維状でできた物質のため、呼吸器官を通って容易に肺へと侵入します。それが体内に蓄積すると呼吸困難などの障害を引き起こし、最悪死に至るケースもあるのです。アスベストが原因で死亡した事例も決して少なくはなく、訴訟が起こり社会問題にもなりました。

アスベストの危険性について

アスベストの繊維は、WHOの報告によると、じん肺、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。アスベストによる健康被害は、 アスベストを扱ってから長い年月を経て現れてきます。中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いといわれています。過去にアスベストを使用した建築物に携わった方や仕事を通してアスベストを扱っている方は、その作業方法にもよりますが、アスベストを扱う機会が多いことになりますので、定期的に健康診断を受けることをお勧めします。現在もなお仕事でアスベストを取り扱っている方の健康診断は、労働基準法により、事業主に実施義務があります。

アスベストに係る健康被害について

石綿を吸うことにより発生する疾病としては、主にアスベスト肺(石綿肺)、肺がん、悪性中皮腫があります。

①アスベスト肺

アスベストを取り扱う仕事等にてアスベストを含んだ埃を大量に吸い込んだことが原因でおこる、肺の繊維増殖性の変化をいいます。アスベスト肺については、仕事等で長期間多くのアスベストを吸った人がほとんどと言われています。

②肺がん

アスベストを吸い始めて2040年後に発症する肺の悪性腫瘍をいいます。大半は初期の方は無症状ですが、進行すると咳、痰に血が混じる、息切れなどの症状があらわれます。アスベスト肺や胸膜肥厚斑が見られる場合はアスベストによる肺がんと考えられます。特に喫煙者はリスクが相乗的に高くなります。

③悪性中皮腫

胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍で、その原因のほとんどはアスベストと言われています。多くの場合、最初は無症状ですが、進行すると息切れ、胸の痛み、咳などの症状があらわれます。最も多いのは胸膜にできる中皮腫です。アスベストを吸ってから3050年後に発症することが多いです。アスベスト肺をおこさない程度のアスベストを吸ってもおこることがあります。
労働基準監督署の認定を受け、業務上疾病とされると、労災保険で治療できます。

アスベストを吸い込む可能性のある場所について

①職業暴露

アスベストに関する健康被害の報告の多くは職場にてアスベストを取り扱っていたことが原因です。アスベスト疾患である被害者が1か所のアスベスト粉じん職場でアスベストに暴露されていたことが明らかな場合は,被害発生の原因が特定されやすく因果関係は問題にはなりません。被害者が複数のアスベスト関連職場に勤務した経験がある場合だと証明が難しくなります。

②家族暴露

アスベストを取り扱う職場で働く人の家庭にての健康被害報告も多く寄せられています。アスベストが付着した作業着等により、家庭内にアスベストが飛散し、一緒に暮らす家族が二次被害を被るといったことは稀ではありません。アスベストを使用した現場から家族が帰宅するような場合には,同居の家族が,自らはアスベストに携わる職場で働いていなくとも,間接的にアスベスト粉じんにおかされる危険性があります。

③環境暴露

アスベスト製品を製造する工場から飛散したアスベスト粉じんが周囲の住民に健康被害をもたらすことがあります。過去にアスベストを使用して建設された建物等を解体やリニューアルする際にアスベストが飛散します。適切な管理と作業を行っていない場合、その工事によってアスベストが飛散し、周辺の住民等に健康被害をもたらします。

アスベストに関する健康被害、事件について

アスベストに関する事件で特に知られているものが、「クボタ・ショック」です。平成17年(2005年)629日にアスベストの危険性が社会に露見する出来事が起こりました。大手機械メーカーであるクボタが、アスベストを取り扱う工場で働いていた社員や退職者、請負会社の従業員、地域住民の間で、中皮腫など石綿関連疾患の患者が多数発生し、合計79人が死亡、現在療養中の退職者も18人に及ぶことを発表しました。この出来事を「クボタ・ショック」といいます。クボタ・ショック前は、アスベストが肺がんなどを引き起こし、死に至らしめるものであることは、社会の中でさほど浸透していませんでした。しかし、クボタ・ショックを受けて、実際にアスベストを取り扱っていた労働者だけでなく、周辺住民にも被害が及ぶことが明らかになり、アスベスト禁止の風潮がより強まることになりました。

ミサワリゾート事件

ミサワリゾートは、アスベストによる健康被害について、過去に12人の元従業員が死亡していたことを明らかにしました。それによると、現在のリゾート業に業種転換する以前の「日本エタニットパイプ」当時、1985年までに閉鎖された大宮や高松、鳥栖の3工場で、肺ガンや中皮腫により工場勤務だった元従業員12人が死亡、16人が治療を受けたとしています。同社は石綿管の製造・販売は完全に終了し、疾病者への補償も済んでいるとしています。

札幌国際観光ホテル事件

本件の原告は、昭和39年からホテルでボイラー担当の設備係として就労していた労働者の遺族となります。労働者は、平成13年になって体調が悪化して入院し、同年中にホテルでの就労により悪性胸膜中皮腫に罹患したことを理由として労災認定を受けました。その後の平成14年に労働者が死亡したため、労働者の遺族がホテルの運営会社に対して損害賠償請求を行いました。原審の札幌地裁は、「規制権限を有する国が何らの対策も講じていない中、民間企業が国の対策をも上回る対策を先んじてとらなければならない根拠はない」として、被告会社の責任を否定しました。これに対して札幌高裁は、すでに労働安全衛生法などによって規制がなされ、その対象に被告会社も含まれていたことを指摘しました。そのうえで、被告会社の安全配慮義務違反を認定し、原告に対して約3300万円の損害賠償を命じました。

日航インターナショナル羽田事件

本件の原告は、昭和30年から昭和60年までの間、航空機エンジン部品の溶接作業などに従事していた労働者の遺族です。溶接作業を行うに当たり断熱材・保湿剤の中に使用されていたアスベストに長期間晒された後、被災労働者は平成17年に原発性肺がんと診断され、平成18年に死亡しました。労働基準監督署長は労災認定にあたって、被災労働者の肺がんが業務上のアスベスト曝露に起因するものとは認めず、申請を棄却しました。これに対して東京地裁は、少なくとも14年間にわたる石綿曝露作業への従事期間が認められること、ヘルシンキ基準を超える石綿繊維数が肺内に認められること、他に肺がんの発症原因となり得る要因が窺われないことを指摘し、肺がんの業務起因性を認めなかった労災保険給付の不支給処分を違法と判示しました。

アスベストを使用する建設業務に従事していた元労働者等と、その御遺族の方が、アスベストによる健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとされています。国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟(建設アスベスト訴訟)について、令和2年1214日以降、最高裁判所が国の上告受理申立てを受理しないとの決定を行ったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定するとともに、令和3年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されました。

アスベストに関する解体工事について

アスベストを使用した建築物や工作物の解体工事を行う際は、事前にアスベストの使用の有無を調査する必要があります。アスベスト等の使用の有無は、書面による調査と目視調査の2つを行い、その結果によって分析調査を行うか、アスベストを含有するものとして取り扱うかを決めることになります。また、吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材が使用されている建築物や工作物の解体作業を行う際は、大気汚染防止法に基づき、石綿の除去等に係る一連の作業を開始する14日前までに、都道府県等に届出を行い、石綿飛散防止のための作業基準を遵守しなければなりません。また、労働安全衛生法や廃棄物処理法等の遵守も必要となります。

石綿障害予防規則

労働者が石綿にばく露され健康障害を受けることを予防するため、石綿則に定める措置を講じることはもとより、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底等の実情に即した適切な対策を積極的に講ずべきことを規定しています。

【第一条】事業者の責務

1.事業者は、石綿による労働者の肺がん、中皮腫その他の健康障害を予防するため、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もって、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、石綿にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない。

2. 事業者は、石綿を含有する製品の使用状況等を把握し、当該製品を計画的に石綿を 含有しない製品に代替するよう努めなければならない。

事前調査について

解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、アスベスト含有の有無の事前調査を行う必要があります。
事前調査は、令和3年(2021年)4月から設計図書等による書面調査と、目視による調査の両方が必要となります。

事前調査は、令和5年(2023年)10月から建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす人(以下①②)が行う必要があります。

①建築物石綿含有建材調査者講習の修了者

  • ・特定建築物石綿含有建材調査者
  • ・一般建築物石綿含有建材調査者
  • ・一戸建て等石綿含有建材調査者(※一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部に限る)

②令和5年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き同協会に登録されている者

また、令和3年(2021年)4月から事前調査の結果の記録を作成して3年間保存するとともに、調査結果を作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示する必要があります。令和4年(2022年)4月からは、一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体工事の場合、事前調査の結果を労働基準監督署に電子システムで報告する必要があります。

工事開始前の労働基準監督署への届出について

令和3年(2021年)4月から、アスベストが含まれている保温材等の除去工事の計画は14日前までに労働基準監督署に届け出ることが義務になります。

1.労働安全衛生法に定める計画届について

労働安全衛生法第88条により、事業者は、一定の建設物、機械等の設置、移転又は主要構造部分の変更等をしようとする場合や、一定の規模・種類の建設工事を開始する場合は、事前にその計画内容を所轄労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられています。アスベスト除去等の工事については、以下(2.)のものについて、14日前までに、労働安全衛生規則様式第21号による届書に、添付書類を添えて所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

2.計画届の対象工事(石綿関係)

① 建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る)に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗材を除く。)の除去、封じ込め、又は囲い込みの作業を行う仕事

② 建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る)に張り付けられている石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材(耐火性能を有する被覆材をいう。)等の除去、封じ込め又は囲い込みの作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものに限る。)を行う仕事

労働者に対するばく露防止措置について

解体・改修作業に従事する労働者に対するアスベストによるばく露を防止するため、アスベスト等を切断等する際の湿潤化や呼吸用保護具・保護衣等の使用、レベル12建材の除去等を行う際の負圧隔離、労働者への特別教育などの措置が必要となります。また、令和3年(2021年)4月から、除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者によるアスベスト等の取り残しがないことを目視により確認が義務となります。

資格者取り残し確認を行う者

  • ・建築物石綿含有建材調査者(建築物に係る除去作業に限る)
  • ・当該除去作業に係る石綿作業主任者

また、労働者の健康被害を防止するために、作業計画については、石綿障害予防規則第4条にて定められています。

【第四条】(作業計画)

1.事業者は、石綿等が使用されている解体等対象建築物等(前条第五項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなされるものを含む。)の解体等の作業(以下「石綿使用建築物等解体等作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により石綿使用建築物等解体等作業を行わなければならない。

2. 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。

  • 一 石綿使用建築物等解体等作業の方法及び順序
  • 二 石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法
  • 三 石綿使用建築物等解体等作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を
    防止する方法

3.事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

作業の記録・保存について

事前調査結果の掲示やアスベスト除去作業中の状況などは、写真や動画により記録し、3年間保存しなければなりません。また、労働者ごとに、アスベストの取扱い作業に従事した期間、従事した作業の内容、保護具の使用状況などを記録し、40年間保存する必要があります。事前調査を適切に行わずに解体等の作業を行った事例、吹き付けられた石綿等があるにもかかわらず法第 88 条第3項に基づく届出を行わないまま作業を行った事例、必要な石綿ばく露防止のための措置を講じずに作業を行った事例等が認められた一方、解体工事や改修工事は工事終了後に措置が適切に実施されたかどうかを行政等が確認することは困難であることから、第35条の2において、工事終了後においても、措置が適切に実施されたかどうかを確認することができるよう、作業計画に基づく作業について、写真その他実施状況を確認できる方法により記録し、保存しなければならないこととしています。

【第 35 条の2】(作業計画による作業の記録)

1. 事業者は、石綿使用建築物等解体等作業を行ったときは、当該石綿使用建築物等解体等作業に係る第四条第一項の作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成するとともに、次の事項を記録し、これらを当該石綿使用建築物等解体等作業を終了した日から三年間保存するものとする

  • 一 当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した労働者の氏名及び当該労働者ごとの当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した期間
  • 二 周辺作業従事者の氏名及び当該周辺作業従事者ごとの周辺作業に従事した期間

. 事業者は、前項の記録を作成するために必要である場合は、当該記録の作成者又は石綿使用建築物等解体等作業を行う仕事の発注者の労働者(いずれも呼吸用保護具(吹付石綿等除去作業が行われている場所に当該者を立ち入らせるときは、電動ファン付き呼吸用保護具等に限る。)及び作業衣又は保護衣を着用する者に限る。)を第六条第二項第一号及び第六条の二第二項第一号(第六条の三の規定により準用する場合を含む。)の規定により隔離された作業場所に立ち入らせることができる。

アスベストに関する土壌汚染について

近年では、アスベストが土壌に含まれていたとして問題になることが複数出てきています。米国では既に規制していますが、現状では日本では土壌汚染対策法ではアスベストは対象外となっており、規制されていません。ところが、土地の取り引きなどでアスベストやアスベスト建材、アスベスト廃棄物が土壌に含まれていた場合、土地の瑕疵などとしてすでに訴訟がいくつも起こっているのが現状です。

土壌汚染対策法

土壌汚染対策法は、「土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護する(土壌汚染対策法第1条)」としており、土壌汚染の状況の把握およびその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等を目的としたものであり、平成152月に施行されました。同法による規制の対象となる有害物質である「特定有害物質」は、「それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるもの」ですが(土壌汚染対策法21項)、同法施行令1条が定める特定有害物質には、石綿(アスベスト)は含まれていません。この点に関し、土壌汚染対策法が「特定有害物質」として石綿を規定していない以上、同法が石綿を含有する土壌あるいは建設発生土に適用されることはないと判示した裁判例があります(東京地判平成24927日判例時報217050頁)。

アスベスト土壌汚染訴訟について

1.廃棄物処理法で規制されるアスベスト含有廃棄物と瑕疵担保責任

廃棄物処理法においてアスベスト含有廃棄物の規制基準が規定された後に土地売買契約がされたところ、同土地内からアスベスト含有物が発見されたケース

56億円もの損害賠償請求が認められた裁判例があります。この場合では、当該含有物が石綿含有産業廃棄物にあたり、廃棄物処理法令にのっとった厳格な処理が求められ多額の費用を必要とすることから対象地の交換価値が損なわれていると判断して、売主の瑕疵担保責任が肯定されています。

参考裁判例(東京地裁平成28年4月28日判決
被告から物流ターミナルの建設を目的として平成1912月に土地を買い受けた原告が、土地から発見されたスレート片が石綿を含有していたと主張して、スレート片の撤去および処分費用並びに建設工事が遅れたことに伴う追加費用等の支払を求めた事案。裁判所は、スレート片が重量比0.1%を超える石綿を含有していたものと推認されるので、産業廃棄物処理法令にいう「石綿含有産業廃棄物」に該当するとした上で、被告は除去義務を負うべきところ拒否したのであるから債務不履行に基づく損害賠償義務を負うほか、土地には「隠れたる瑕疵」があるとして損害賠償義務を負うべきであるとして、請求を一部認容した(5618124016円)。

売買契約後に規制対象となった有害物質・廃棄物による土壌汚染と売主の責任について

規制対象物質・廃棄物や環境基準値は変遷することがあります。そのため、売買契約締結時点で規制されていない有害物質・廃棄物が契約締結後に規制対象となることがあります。その場合、規制が厳格化されたことで土壌汚染対策が必要な状況になることで、買主は予想していなかった多額の処理費用の負担を余儀なくされることになり困ることになります。この場合、買主は売主に対し、売買契約締結後に規制対象となった有害物質について「瑕疵」にあたることを理由に除去費用等の支払を求めることができるでしょうか。

1.瑕疵担保責任における「瑕疵」の判断基準時

ここでは、いつの時点を基準に「瑕疵」の有無を判断するのかということが問題となります。この点については、「瑕疵」の有無は契約締結時を基準に判断するべきであるとする最高裁判例があります。この判例によると、売買契約時に法令で規制対象となっていなかった土壌汚染について、規制対象か否かにかかわらず人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことがその土地において特に予定されていたような場合でない限り、後に規制の対象となった場合には瑕疵担保責任は認められないことになります。したがって、売主に対する汚染除去費用等の請求は原則として認められません。もっとも、そのような場合でも瑕疵にあたることが「特に予定」されていれば例外として損害賠償請求が認められるため、買主としては、「特に予定」されていたことを示すための契約条項等を設けることで紛争予防を図ることができると考えられます。

参考裁判例(最高裁平成22年6月1日判決・民集64巻4号953頁)
売買契約時には法令で規制対象となっていなかった特定有害物質(フッ素)が、契約後に土壌中から発見されたところ、最高裁は、瑕疵の有無は売買契約締結当時の「取引観念」をしんしゃくして判断すべきであると判示した上で、売買契約締結当時には、有害性の認識にかかわらず人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことがその土地において特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれないとして、「瑕疵」に当たらないと判断した事案。

2.法令で規制される以前のアスベスト汚染土壌・廃棄物についての売主の責任

上記最高裁判例が出された後の裁判例においても、土壌中から発見されたアスベスト含有物(売買契約時には、石綿含有一般廃棄物の規制基準が存在していなかった)について、同様に、契約締結時を基準に瑕疵の有無が判断されています。この裁判例では、以下のように、本件売買契約後の廃棄物処理法改正により、現在では石綿含有一般廃棄物に該当する可能性はあるとしながらも、本件売買契約当時(売買契約締結日は平成16812日)には、石綿含有廃棄物についての規定はなかったと判示して、売主の瑕疵担保責任を否定しました。ただし、処理を行う時点において、不要物、すなわち廃棄物と判断されるものであれば、当該廃棄物が規制対象となる前に本件土地に混入したものであったとしても、土地所有者は廃棄物処理法の適用を免れるものではないとされています。

参考裁判例(東京地裁平成24年9月27日判決・判時2170号50頁)
土地の買主が、破産者から購入した土地にアスベストが含まれていたとして、その破産管財人に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償として、含まれていたアスベストを除去するために支出を要した処理費用相当額の債権の確定を求めた事案。裁判所は、「本件売買契約後の改正により、現在では、廃石綿等に該当しないものであっても、本件土地からの建設発生土における石綿の含有量によっては、石綿含有一般廃棄物(略)あるいは石綿含有産業廃棄物(略)に該当する可能性はある。しかし、本件売買契約当時には、石綿含有廃棄物についての規定はなかったから、その存在を前提とする「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」(略)を前提として、瑕疵の有無を判断することはできない。」と判断した。

3.アスベスト含有土壌・廃棄物の処理に予期していなかった費用がかかる場合の土地売主の責任

一般的に、アスベスト含有土壌・廃棄物が法令上の規制対象となっている場合には、買主は売主に対して瑕疵担保責任を追及しやすいと言えます。しかし、法令上の規制対象となっていない限り責任追及ができないというわけではありません。法令上の規制対象となっていることを前提としない場合であっても、対象地上の建物建築に際して予期しない処分費用などを負担しなければならなくなることなどを理由に「瑕疵」にあたると判断して、売主の瑕疵担保責任が認められることがあります。この点についての詳細は「建物建築に支障がない地中障害物について土地売主が責任を負うのか」も参考としてください。とはいえ、このようなケースでは「瑕疵」にあたるか否かの解釈を巡って紛争となりやすいため、買主としては、建物建築に際して予期しなかった処分費用(建築工事の際の土壌掘削で生じる通常土壌の処分費用の範囲を超える処分費用等)については売主に対して責任追及できることを示す契約条項等を設けることで紛争予防を図るべきと考えられます。

4.土壌中のアスベストに関して売買契約の錯誤無効が認められた裁判例

なお、土壌中から発見されたアスベスト含有物について、対象地の売買契約の錯誤無効を認めたケースもあります(東京地裁平成27年4月13日判決)。したがって、仮に売買契約に瑕疵担保責任制限特約があるなど、契約文言から一見すると売主に対する責任追及が難しそうに見える場合であっても、具体的な事案によってはそうとは限らないことは、十分認識しておく必要があります。

アスベストの特性とアスベストによる健康被害とは

アスベストとは、天然にできた鉱物繊維で石綿(いしわた)とも呼ばれています。極めて細い繊維でできており、熱や摩擦、酸、アルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという性質を持っているため、建材や摩擦材など、様々な工業製品に使用されてきました。しかし、肉眼からは見ることのできない細い繊維であり、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸収されて人の肺胞に沈着しやすい特徴があります。それによって、中皮腫や肺がん等、人体に様々な健康被害を及ぼす物質であることが分かっております。そのため、現在は日本において、製造、輸入、新規の使用はされていません。アスベスト含有建材(アスベストを0.1重量%を超えて含有するもの)は労働安全衛生法施行令により、2006(平成18)年9月から、製造・使用等が全面的に禁止されています。

アスベストの種類について

アスベストには6種類あり、蛇紋石族と角閃石族に大別されます。代表的なものとしては、蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)と角閃石族の茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)があります。

蛇紋石族

クリソタイル(白石綿):クリソタイルは蛇紋石族に属し、蛇紋岩を構成する主要鉱物の 1 つです。蛇紋岩は超塩基性火成岩が蛇紋石化作用を受けてできたものであり、クリソタイルは蛇紋岩中に網状をなしていますが、蛇紋岩の基質にも短繊維状態で存在しています。カナダで生産され、輸出されている唯一の繊維です。ほとんどすべての石綿製品の原料として使用されてきました。世界で使われた石綿の9割以上を占めています。

角閃石族

クロシドライト(青石綿)

リーベック閃石が繊維状に発達したもので、NaFe2+とFe3+を持ち青色をしているのが特徴的です。吹付け石綿として使用されており、他に石綿セメント高圧管に使用されてきました。

アモサイト(茶石綿)

南アフリカのトランスバール鉱山から産したもので、グリュネ閃石に属しています。吹付け石綿として使用されており、他に各種断熱保温材に使用されてきました。

アンソフィライト石綿

他の石綿やタルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれており、熊本県旧松橋町に鉱山がありました。

トレモライト石綿

透閃石とも呼ばれ角閃石の仲間であり、現在の角閃石族の分類によると、組成中の鉄分とマグネシウム分の相対比率で鉄分が10%以下のものがトレモライトに分類されます。他の石綿やタルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれており、吹付け石綿として一部に使用されていました。

アクチノライト石綿

トレモライト石綿と同類で、透閃石とも呼ばれ角閃石の仲間であり、現在の角閃石族の分類によると、組成中の鉄分とマグネシウム分の相対比率で鉄分が10%(超)~50%までのものがアクチノライトに分類されます。成分の量の差だけでトレモライトとアクチノライトが分類されるため、X線回折法では同じ回折パターンが見られます。そのため、分析の報告書では「トレモライト及びアクチノライト」という表記になります。

アスベストの危険性

アスベストは非常に危険性の高い物質であり、とても細い繊維でできているため、呼吸器官を通って容易に肺へと侵入します。体内に蓄積すると呼吸困難などの身体障害を引き起こし、最悪死に至るケースがあります。現在は、アスベストの使用を禁止しておりますが、過去に石綿は生活のいたるところで使用されてきました。石綿の用途は3000種といわれるほど多く、大きくは石綿工業製品と建材製品に分けられ、その約8割は建材製品です。石綿による健康被害は、石綿鉱山や石綿製品製造工場、断熱作業などで石綿や石綿製品を取り扱う仕事をしていた方や、造船業や車輌製造など石綿を取り扱う現場で働いていた方に多く見られます。また、石綿工場で働く人の作業着を家庭で洗濯するときに、家族が作業着に付いた石綿を吸い込んだり、工場などから飛んでくる石綿を近隣住民が吸い込んだりするなど、仕事以外で石綿にさらされた方の中にも、中皮腫などの石綿による健康被害が現れる場合があります。アスベストの恐ろしさとしては、アスベストを吸い込んですぐに病気が発症するわけではなく、何十年と潜伏した後に発症するところにあります。現在も未だにアスベストを使用した可能性の高い建築物は多数存在しており、その建築物の解体やリニューアル等を行う際に、アスベストの飛散の危険性が高くあります。そのため、アスベストを解体するにあたっては、事前にアスベスト調査を行い、専門的な知識が豊富な業者が対応することがベストです。解体に関わる方々の健康被害はもちろんのこと、近隣に住む方々の健康被害にも繋がってきます。現在は、アスベストに関する法律や資格がいくつかあり、それに対応した業者の対応が必要とされています。

アスベストが原因となる主な病気

石綿肺

肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、潜伏期間は15年~20年といわれています。アスベスト(石綿)ばく露をやめたあとでも進行することもあります。

肺がん

石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。ばく露から肺がん発症までに15年~40年の潜伏期間があり、ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。

悪性中皮腫

肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベスト(石綿)を吸い込んだ人のほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20年~50年(およそ40年に発症のピークがあります)といわれています。

びまん性胸膜肥厚

臓側胸膜(肺を覆う膜)の慢性線維性胸膜炎の状態であり、通常は壁側胸膜(胸壁を覆う膜)にも病変が及んで両者が癒着していることがほとんどです。呼吸によって肺が膨らむときに便利なように臓側胸膜と壁側胸膜は本来癒着しておりませんが、良性石綿胸膜炎が発症するとそれに引き続き胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺がふくらみにくくなり呼吸困難をきたします。

良性石綿胸水

胸水とは胸腔内に体液が貯留することであり、石綿以外の様々な原因によっても生じます。とくに、石綿粉じんを吸入することによって、胸腔内に胸膜炎による滲出液(胸水)が生じる場合を良性石綿胸水と呼びます。胸膜に炎症がおこり、胸膜腔内に滲出液が生じるもので、半数近くは自覚症状が無く、症状がある場合は咳嗽、呼吸困難の頻度が高いといわれています。

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アスベストは非常に危険性の高い物質で、とても細かい繊維状でできた物質のため、呼吸器官を通って容易に肺へと侵入します。それが体内に蓄積すると呼吸困難などの障害を引き起こし、最悪死に至るケースもあるのです。アスベストが原因で死亡した事例も決して少なくはなく、訴訟が起こり社会問題にもなりました。

アスベストの危険性について

アスベストの繊維は、WHOの報告によると、じん肺、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。アスベストによる健康被害は、 アスベストを扱ってから長い年月を経て現れてきます。中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いといわれています。過去にアスベストを使用した建築物に携わった方や仕事を通してアスベストを扱っている方は、その作業方法にもよりますが、アスベストを扱う機会が多いことになりますので、定期的に健康診断を受けることをお勧めします。現在もなお仕事でアスベストを取り扱っている方の健康診断は、労働基準法により、事業主に実施義務があります。

アスベストに係る健康被害について

石綿を吸うことにより発生する疾病としては、主にアスベスト肺(石綿肺)、肺がん、悪性中皮腫があります。

①アスベスト肺

アスベストを取り扱う仕事等にてアスベストを含んだ埃を大量に吸い込んだことが原因でおこる、肺の繊維増殖性の変化をいいます。アスベスト肺については、仕事等で長期間多くのアスベストを吸った人がほとんどと言われています。

②肺がん

アスベストを吸い始めて2040年後に発症する肺の悪性腫瘍をいいます。大半は初期の方は無症状ですが、進行すると咳、痰に血が混じる、息切れなどの症状があらわれます。アスベスト肺や胸膜肥厚斑が見られる場合はアスベストによる肺がんと考えられます。特に喫煙者はリスクが相乗的に高くなります。

③悪性中皮腫

胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍で、その原因のほとんどはアスベストと言われています。多くの場合、最初は無症状ですが、進行すると息切れ、胸の痛み、咳などの症状があらわれます。最も多いのは胸膜にできる中皮腫です。アスベストを吸ってから3050年後に発症することが多いです。アスベスト肺をおこさない程度のアスベストを吸ってもおこることがあります。
労働基準監督署の認定を受け、業務上疾病とされると、労災保険で治療できます。

アスベストを吸い込む可能性のある場所について

①職業暴露

アスベストに関する健康被害の報告の多くは職場にてアスベストを取り扱っていたことが原因です。アスベスト疾患である被害者が1か所のアスベスト粉じん職場でアスベストに暴露されていたことが明らかな場合は,被害発生の原因が特定されやすく因果関係は問題にはなりません。被害者が複数のアスベスト関連職場に勤務した経験がある場合だと証明が難しくなります。

②家族暴露

アスベストを取り扱う職場で働く人の家庭にての健康被害報告も多く寄せられています。アスベストが付着した作業着等により、家庭内にアスベストが飛散し、一緒に暮らす家族が二次被害を被るといったことは稀ではありません。アスベストを使用した現場から家族が帰宅するような場合には,同居の家族が,自らはアスベストに携わる職場で働いていなくとも,間接的にアスベスト粉じんにおかされる危険性があります。

③環境暴露

アスベスト製品を製造する工場から飛散したアスベスト粉じんが周囲の住民に健康被害をもたらすことがあります。過去にアスベストを使用して建設された建物等を解体やリニューアルする際にアスベストが飛散します。適切な管理と作業を行っていない場合、その工事によってアスベストが飛散し、周辺の住民等に健康被害をもたらします。

アスベストに関する健康被害、事件について

アスベストに関する事件で特に知られているものが、「クボタ・ショック」です。平成17年(2005年)629日にアスベストの危険性が社会に露見する出来事が起こりました。大手機械メーカーであるクボタが、アスベストを取り扱う工場で働いていた社員や退職者、請負会社の従業員、地域住民の間で、中皮腫など石綿関連疾患の患者が多数発生し、合計79人が死亡、現在療養中の退職者も18人に及ぶことを発表しました。この出来事を「クボタ・ショック」といいます。クボタ・ショック前は、アスベストが肺がんなどを引き起こし、死に至らしめるものであることは、社会の中でさほど浸透していませんでした。しかし、クボタ・ショックを受けて、実際にアスベストを取り扱っていた労働者だけでなく、周辺住民にも被害が及ぶことが明らかになり、アスベスト禁止の風潮がより強まることになりました。

ミサワリゾート事件

ミサワリゾートは、アスベストによる健康被害について、過去に12人の元従業員が死亡していたことを明らかにしました。それによると、現在のリゾート業に業種転換する以前の「日本エタニットパイプ」当時、1985年までに閉鎖された大宮や高松、鳥栖の3工場で、肺ガンや中皮腫により工場勤務だった元従業員12人が死亡、16人が治療を受けたとしています。同社は石綿管の製造・販売は完全に終了し、疾病者への補償も済んでいるとしています。

札幌国際観光ホテル事件

本件の原告は、昭和39年からホテルでボイラー担当の設備係として就労していた労働者の遺族となります。労働者は、平成13年になって体調が悪化して入院し、同年中にホテルでの就労により悪性胸膜中皮腫に罹患したことを理由として労災認定を受けました。その後の平成14年に労働者が死亡したため、労働者の遺族がホテルの運営会社に対して損害賠償請求を行いました。原審の札幌地裁は、「規制権限を有する国が何らの対策も講じていない中、民間企業が国の対策をも上回る対策を先んじてとらなければならない根拠はない」として、被告会社の責任を否定しました。これに対して札幌高裁は、すでに労働安全衛生法などによって規制がなされ、その対象に被告会社も含まれていたことを指摘しました。そのうえで、被告会社の安全配慮義務違反を認定し、原告に対して約3300万円の損害賠償を命じました。

日航インターナショナル羽田事件

本件の原告は、昭和30年から昭和60年までの間、航空機エンジン部品の溶接作業などに従事していた労働者の遺族です。溶接作業を行うに当たり断熱材・保湿剤の中に使用されていたアスベストに長期間晒された後、被災労働者は平成17年に原発性肺がんと診断され、平成18年に死亡しました。労働基準監督署長は労災認定にあたって、被災労働者の肺がんが業務上のアスベスト曝露に起因するものとは認めず、申請を棄却しました。これに対して東京地裁は、少なくとも14年間にわたる石綿曝露作業への従事期間が認められること、ヘルシンキ基準を超える石綿繊維数が肺内に認められること、他に肺がんの発症原因となり得る要因が窺われないことを指摘し、肺がんの業務起因性を認めなかった労災保険給付の不支給処分を違法と判示しました。

アスベストを使用する建設業務に従事していた元労働者等と、その御遺族の方が、アスベストによる健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとされています。国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟(建設アスベスト訴訟)について、令和2年1214日以降、最高裁判所が国の上告受理申立てを受理しないとの決定を行ったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定するとともに、令和3年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されました。

アスベストの特性とアスベストによる健康被害とは

アスベストとは、天然にできた鉱物繊維で石綿(いしわた)とも呼ばれています。極めて細い繊維でできており、熱や摩擦、酸、アルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという性質を持っているため、建材や摩擦材など、様々な工業製品に使用されてきました。しかし、肉眼からは見ることのできない細い繊維であり、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸収されて人の肺胞に沈着しやすい特徴があります。それによって、中皮腫や肺がん等、人体に様々な健康被害を及ぼす物質であることが分かっております。そのため、現在は日本において、製造、輸入、新規の使用はされていません。アスベスト含有建材(アスベストを0.1重量%を超えて含有するもの)は労働安全衛生法施行令により、2006(平成18)年9月から、製造・使用等が全面的に禁止されています。

アスベストの種類について

アスベストには6種類あり、蛇紋石族と角閃石族に大別されます。代表的なものとしては、蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)と角閃石族の茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)があります。

蛇紋石族

クリソタイル(白石綿):クリソタイルは蛇紋石族に属し、蛇紋岩を構成する主要鉱物の 1 つです。蛇紋岩は超塩基性火成岩が蛇紋石化作用を受けてできたものであり、クリソタイルは蛇紋岩中に網状をなしていますが、蛇紋岩の基質にも短繊維状態で存在しています。カナダで生産され、輸出されている唯一の繊維です。ほとんどすべての石綿製品の原料として使用されてきました。世界で使われた石綿の9割以上を占めています。

角閃石族

クロシドライト(青石綿)

リーベック閃石が繊維状に発達したもので、NaFe2+とFe3+を持ち青色をしているのが特徴的です。吹付け石綿として使用されており、他に石綿セメント高圧管に使用されてきました。

アモサイト(茶石綿)

南アフリカのトランスバール鉱山から産したもので、グリュネ閃石に属しています。吹付け石綿として使用されており、他に各種断熱保温材に使用されてきました。

アンソフィライト石綿

他の石綿やタルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれており、熊本県旧松橋町に鉱山がありました。

トレモライト石綿

透閃石とも呼ばれ角閃石の仲間であり、現在の角閃石族の分類によると、組成中の鉄分とマグネシウム分の相対比率で鉄分が10%以下のものがトレモライトに分類されます。他の石綿やタルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれており、吹付け石綿として一部に使用されていました。

アクチノライト石綿

トレモライト石綿と同類で、透閃石とも呼ばれ角閃石の仲間であり、現在の角閃石族の分類によると、組成中の鉄分とマグネシウム分の相対比率で鉄分が10%(超)~50%までのものがアクチノライトに分類されます。成分の量の差だけでトレモライトとアクチノライトが分類されるため、X線回折法では同じ回折パターンが見られます。そのため、分析の報告書では「トレモライト及びアクチノライト」という表記になります。

アスベストの危険性

アスベストは非常に危険性の高い物質であり、とても細い繊維でできているため、呼吸器官を通って容易に肺へと侵入します。体内に蓄積すると呼吸困難などの身体障害を引き起こし、最悪死に至るケースがあります。現在は、アスベストの使用を禁止しておりますが、過去に石綿は生活のいたるところで使用されてきました。石綿の用途は3000種といわれるほど多く、大きくは石綿工業製品と建材製品に分けられ、その約8割は建材製品です。石綿による健康被害は、石綿鉱山や石綿製品製造工場、断熱作業などで石綿や石綿製品を取り扱う仕事をしていた方や、造船業や車輌製造など石綿を取り扱う現場で働いていた方に多く見られます。また、石綿工場で働く人の作業着を家庭で洗濯するときに、家族が作業着に付いた石綿を吸い込んだり、工場などから飛んでくる石綿を近隣住民が吸い込んだりするなど、仕事以外で石綿にさらされた方の中にも、中皮腫などの石綿による健康被害が現れる場合があります。アスベストの恐ろしさとしては、アスベストを吸い込んですぐに病気が発症するわけではなく、何十年と潜伏した後に発症するところにあります。現在も未だにアスベストを使用した可能性の高い建築物は多数存在しており、その建築物の解体やリニューアル等を行う際に、アスベストの飛散の危険性が高くあります。そのため、アスベストを解体するにあたっては、事前にアスベスト調査を行い、専門的な知識が豊富な業者が対応することがベストです。解体に関わる方々の健康被害はもちろんのこと、近隣に住む方々の健康被害にも繋がってきます。現在は、アスベストに関する法律や資格がいくつかあり、それに対応した業者の対応が必要とされています。

アスベストが原因となる主な病気

石綿肺

肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、潜伏期間は15年~20年といわれています。アスベスト(石綿)ばく露をやめたあとでも進行することもあります。

肺がん

石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。ばく露から肺がん発症までに15年~40年の潜伏期間があり、ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。

悪性中皮腫

肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベスト(石綿)を吸い込んだ人のほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20年~50年(およそ40年に発症のピークがあります)といわれています。

びまん性胸膜肥厚

臓側胸膜(肺を覆う膜)の慢性線維性胸膜炎の状態であり、通常は壁側胸膜(胸壁を覆う膜)にも病変が及んで両者が癒着していることがほとんどです。呼吸によって肺が膨らむときに便利なように臓側胸膜と壁側胸膜は本来癒着しておりませんが、良性石綿胸膜炎が発症するとそれに引き続き胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺がふくらみにくくなり呼吸困難をきたします。

良性石綿胸水

胸水とは胸腔内に体液が貯留することであり、石綿以外の様々な原因によっても生じます。とくに、石綿粉じんを吸入することによって、胸腔内に胸膜炎による滲出液(胸水)が生じる場合を良性石綿胸水と呼びます。胸膜に炎症がおこり、胸膜腔内に滲出液が生じるもので、半数近くは自覚症状が無く、症状がある場合は咳嗽、呼吸困難の頻度が高いといわれています。

【株式会社エコ・テックのアスベスト対策工事】全国にネットワークをもっており、東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等のアスベスト対策工事を対応しております。お問い合わせいただきましたら、当日から遅くとも翌営業日までに対応しております。お客様の知りたい情報の提供や指摘箇所以外の見落とし部分の指摘等、丁寧な対応を心がけております。また、徹底した法令遵守と適正プラン・適正価格で期待に応えます。特定建設業許可取得(国土交通大臣 許可(‐29)26823号)により大規模工事も対応可能ですので、アスベスト工事にて業者をご検討中の場合は、是非株式会社エコ・テックへご相談ください。

土壌調査の記事一覧

アスベストに関する土壌汚染について

近年では、アスベストが土壌に含まれていたとして問題になることが複数出てきています。米国では既に規制していますが、現状では日本では土壌汚染対策法ではアスベストは対象外となっており、規制されていません。ところが、土地の取り引きなどでアスベストやアスベスト建材、アスベスト廃棄物が土壌に含まれていた場合、土地の瑕疵などとしてすでに訴訟がいくつも起こっているのが現状です。

土壌汚染対策法

土壌汚染対策法は、「土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護する(土壌汚染対策法第1条)」としており、土壌汚染の状況の把握およびその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等を目的としたものであり、平成152月に施行されました。同法による規制の対象となる有害物質である「特定有害物質」は、「それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるもの」ですが(土壌汚染対策法21項)、同法施行令1条が定める特定有害物質には、石綿(アスベスト)は含まれていません。この点に関し、土壌汚染対策法が「特定有害物質」として石綿を規定していない以上、同法が石綿を含有する土壌あるいは建設発生土に適用されることはないと判示した裁判例があります(東京地判平成24927日判例時報217050頁)。

アスベスト土壌汚染訴訟について

1.廃棄物処理法で規制されるアスベスト含有廃棄物と瑕疵担保責任

廃棄物処理法においてアスベスト含有廃棄物の規制基準が規定された後に土地売買契約がされたところ、同土地内からアスベスト含有物が発見されたケース

56億円もの損害賠償請求が認められた裁判例があります。この場合では、当該含有物が石綿含有産業廃棄物にあたり、廃棄物処理法令にのっとった厳格な処理が求められ多額の費用を必要とすることから対象地の交換価値が損なわれていると判断して、売主の瑕疵担保責任が肯定されています。

参考裁判例(東京地裁平成28年4月28日判決
被告から物流ターミナルの建設を目的として平成1912月に土地を買い受けた原告が、土地から発見されたスレート片が石綿を含有していたと主張して、スレート片の撤去および処分費用並びに建設工事が遅れたことに伴う追加費用等の支払を求めた事案。裁判所は、スレート片が重量比0.1%を超える石綿を含有していたものと推認されるので、産業廃棄物処理法令にいう「石綿含有産業廃棄物」に該当するとした上で、被告は除去義務を負うべきところ拒否したのであるから債務不履行に基づく損害賠償義務を負うほか、土地には「隠れたる瑕疵」があるとして損害賠償義務を負うべきであるとして、請求を一部認容した(5618124016円)。

売買契約後に規制対象となった有害物質・廃棄物による土壌汚染と売主の責任について

規制対象物質・廃棄物や環境基準値は変遷することがあります。そのため、売買契約締結時点で規制されていない有害物質・廃棄物が契約締結後に規制対象となることがあります。その場合、規制が厳格化されたことで土壌汚染対策が必要な状況になることで、買主は予想していなかった多額の処理費用の負担を余儀なくされることになり困ることになります。この場合、買主は売主に対し、売買契約締結後に規制対象となった有害物質について「瑕疵」にあたることを理由に除去費用等の支払を求めることができるでしょうか。

1.瑕疵担保責任における「瑕疵」の判断基準時

ここでは、いつの時点を基準に「瑕疵」の有無を判断するのかということが問題となります。この点については、「瑕疵」の有無は契約締結時を基準に判断するべきであるとする最高裁判例があります。この判例によると、売買契約時に法令で規制対象となっていなかった土壌汚染について、規制対象か否かにかかわらず人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことがその土地において特に予定されていたような場合でない限り、後に規制の対象となった場合には瑕疵担保責任は認められないことになります。したがって、売主に対する汚染除去費用等の請求は原則として認められません。もっとも、そのような場合でも瑕疵にあたることが「特に予定」されていれば例外として損害賠償請求が認められるため、買主としては、「特に予定」されていたことを示すための契約条項等を設けることで紛争予防を図ることができると考えられます。

参考裁判例(最高裁平成22年6月1日判決・民集64巻4号953頁)
売買契約時には法令で規制対象となっていなかった特定有害物質(フッ素)が、契約後に土壌中から発見されたところ、最高裁は、瑕疵の有無は売買契約締結当時の「取引観念」をしんしゃくして判断すべきであると判示した上で、売買契約締結当時には、有害性の認識にかかわらず人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことがその土地において特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれないとして、「瑕疵」に当たらないと判断した事案。

2.法令で規制される以前のアスベスト汚染土壌・廃棄物についての売主の責任

上記最高裁判例が出された後の裁判例においても、土壌中から発見されたアスベスト含有物(売買契約時には、石綿含有一般廃棄物の規制基準が存在していなかった)について、同様に、契約締結時を基準に瑕疵の有無が判断されています。この裁判例では、以下のように、本件売買契約後の廃棄物処理法改正により、現在では石綿含有一般廃棄物に該当する可能性はあるとしながらも、本件売買契約当時(売買契約締結日は平成16812日)には、石綿含有廃棄物についての規定はなかったと判示して、売主の瑕疵担保責任を否定しました。ただし、処理を行う時点において、不要物、すなわち廃棄物と判断されるものであれば、当該廃棄物が規制対象となる前に本件土地に混入したものであったとしても、土地所有者は廃棄物処理法の適用を免れるものではないとされています。

参考裁判例(東京地裁平成24年9月27日判決・判時2170号50頁)
土地の買主が、破産者から購入した土地にアスベストが含まれていたとして、その破産管財人に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償として、含まれていたアスベストを除去するために支出を要した処理費用相当額の債権の確定を求めた事案。裁判所は、「本件売買契約後の改正により、現在では、廃石綿等に該当しないものであっても、本件土地からの建設発生土における石綿の含有量によっては、石綿含有一般廃棄物(略)あるいは石綿含有産業廃棄物(略)に該当する可能性はある。しかし、本件売買契約当時には、石綿含有廃棄物についての規定はなかったから、その存在を前提とする「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」(略)を前提として、瑕疵の有無を判断することはできない。」と判断した。

3.アスベスト含有土壌・廃棄物の処理に予期していなかった費用がかかる場合の土地売主の責任

一般的に、アスベスト含有土壌・廃棄物が法令上の規制対象となっている場合には、買主は売主に対して瑕疵担保責任を追及しやすいと言えます。しかし、法令上の規制対象となっていない限り責任追及ができないというわけではありません。法令上の規制対象となっていることを前提としない場合であっても、対象地上の建物建築に際して予期しない処分費用などを負担しなければならなくなることなどを理由に「瑕疵」にあたると判断して、売主の瑕疵担保責任が認められることがあります。この点についての詳細は「建物建築に支障がない地中障害物について土地売主が責任を負うのか」も参考としてください。とはいえ、このようなケースでは「瑕疵」にあたるか否かの解釈を巡って紛争となりやすいため、買主としては、建物建築に際して予期しなかった処分費用(建築工事の際の土壌掘削で生じる通常土壌の処分費用の範囲を超える処分費用等)については売主に対して責任追及できることを示す契約条項等を設けることで紛争予防を図るべきと考えられます。

4.土壌中のアスベストに関して売買契約の錯誤無効が認められた裁判例

なお、土壌中から発見されたアスベスト含有物について、対象地の売買契約の錯誤無効を認めたケースもあります(東京地裁平成27年4月13日判決)。したがって、仮に売買契約に瑕疵担保責任制限特約があるなど、契約文言から一見すると売主に対する責任追及が難しそうに見える場合であっても、具体的な事案によってはそうとは限らないことは、十分認識しておく必要があります。

解体の記事一覧

アスベストに関する解体工事について

アスベストを使用した建築物や工作物の解体工事を行う際は、事前にアスベストの使用の有無を調査する必要があります。アスベスト等の使用の有無は、書面による調査と目視調査の2つを行い、その結果によって分析調査を行うか、アスベストを含有するものとして取り扱うかを決めることになります。また、吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材が使用されている建築物や工作物の解体作業を行う際は、大気汚染防止法に基づき、石綿の除去等に係る一連の作業を開始する14日前までに、都道府県等に届出を行い、石綿飛散防止のための作業基準を遵守しなければなりません。また、労働安全衛生法や廃棄物処理法等の遵守も必要となります。

石綿障害予防規則

労働者が石綿にばく露され健康障害を受けることを予防するため、石綿則に定める措置を講じることはもとより、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底等の実情に即した適切な対策を積極的に講ずべきことを規定しています。

【第一条】事業者の責務

1.事業者は、石綿による労働者の肺がん、中皮腫その他の健康障害を予防するため、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もって、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、石綿にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない。

2. 事業者は、石綿を含有する製品の使用状況等を把握し、当該製品を計画的に石綿を 含有しない製品に代替するよう努めなければならない。

事前調査について

解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、アスベスト含有の有無の事前調査を行う必要があります。
事前調査は、令和3年(2021年)4月から設計図書等による書面調査と、目視による調査の両方が必要となります。

事前調査は、令和5年(2023年)10月から建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす人(以下①②)が行う必要があります。

①建築物石綿含有建材調査者講習の修了者

  • ・特定建築物石綿含有建材調査者
  • ・一般建築物石綿含有建材調査者
  • ・一戸建て等石綿含有建材調査者(※一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部に限る)

②令和5年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き同協会に登録されている者

また、令和3年(2021年)4月から事前調査の結果の記録を作成して3年間保存するとともに、調査結果を作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示する必要があります。令和4年(2022年)4月からは、一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体工事の場合、事前調査の結果を労働基準監督署に電子システムで報告する必要があります。

工事開始前の労働基準監督署への届出について

令和3年(2021年)4月から、アスベストが含まれている保温材等の除去工事の計画は14日前までに労働基準監督署に届け出ることが義務になります。

1.労働安全衛生法に定める計画届について

労働安全衛生法第88条により、事業者は、一定の建設物、機械等の設置、移転又は主要構造部分の変更等をしようとする場合や、一定の規模・種類の建設工事を開始する場合は、事前にその計画内容を所轄労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられています。アスベスト除去等の工事については、以下(2.)のものについて、14日前までに、労働安全衛生規則様式第21号による届書に、添付書類を添えて所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

2.計画届の対象工事(石綿関係)

① 建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る)に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗材を除く。)の除去、封じ込め、又は囲い込みの作業を行う仕事

② 建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る)に張り付けられている石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材(耐火性能を有する被覆材をいう。)等の除去、封じ込め又は囲い込みの作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものに限る。)を行う仕事

労働者に対するばく露防止措置について

解体・改修作業に従事する労働者に対するアスベストによるばく露を防止するため、アスベスト等を切断等する際の湿潤化や呼吸用保護具・保護衣等の使用、レベル12建材の除去等を行う際の負圧隔離、労働者への特別教育などの措置が必要となります。また、令和3年(2021年)4月から、除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者によるアスベスト等の取り残しがないことを目視により確認が義務となります。

資格者取り残し確認を行う者

  • ・建築物石綿含有建材調査者(建築物に係る除去作業に限る)
  • ・当該除去作業に係る石綿作業主任者

また、労働者の健康被害を防止するために、作業計画については、石綿障害予防規則第4条にて定められています。

【第四条】(作業計画)

1.事業者は、石綿等が使用されている解体等対象建築物等(前条第五項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなされるものを含む。)の解体等の作業(以下「石綿使用建築物等解体等作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により石綿使用建築物等解体等作業を行わなければならない。

2. 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。

  • 一 石綿使用建築物等解体等作業の方法及び順序
  • 二 石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法
  • 三 石綿使用建築物等解体等作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を
    防止する方法

3.事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

作業の記録・保存について

事前調査結果の掲示やアスベスト除去作業中の状況などは、写真や動画により記録し、3年間保存しなければなりません。また、労働者ごとに、アスベストの取扱い作業に従事した期間、従事した作業の内容、保護具の使用状況などを記録し、40年間保存する必要があります。事前調査を適切に行わずに解体等の作業を行った事例、吹き付けられた石綿等があるにもかかわらず法第 88 条第3項に基づく届出を行わないまま作業を行った事例、必要な石綿ばく露防止のための措置を講じずに作業を行った事例等が認められた一方、解体工事や改修工事は工事終了後に措置が適切に実施されたかどうかを行政等が確認することは困難であることから、第35条の2において、工事終了後においても、措置が適切に実施されたかどうかを確認することができるよう、作業計画に基づく作業について、写真その他実施状況を確認できる方法により記録し、保存しなければならないこととしています。

【第 35 条の2】(作業計画による作業の記録)

1. 事業者は、石綿使用建築物等解体等作業を行ったときは、当該石綿使用建築物等解体等作業に係る第四条第一項の作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成するとともに、次の事項を記録し、これらを当該石綿使用建築物等解体等作業を終了した日から三年間保存するものとする

  • 一 当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した労働者の氏名及び当該労働者ごとの当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した期間
  • 二 周辺作業従事者の氏名及び当該周辺作業従事者ごとの周辺作業に従事した期間

. 事業者は、前項の記録を作成するために必要である場合は、当該記録の作成者又は石綿使用建築物等解体等作業を行う仕事の発注者の労働者(いずれも呼吸用保護具(吹付石綿等除去作業が行われている場所に当該者を立ち入らせるときは、電動ファン付き呼吸用保護具等に限る。)及び作業衣又は保護衣を着用する者に限る。)を第六条第二項第一号及び第六条の二第二項第一号(第六条の三の規定により準用する場合を含む。)の規定により隔離された作業場所に立ち入らせることができる。

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