建築解体業界の市場規模について

建築解体業界は、古い建物の解体から廃棄物の処理まで行う業界で、ただ建物を解体するだけでなく、廃棄物処理や環境への配慮まで重要な役割を果たしている業界です。建築解体業界の市場規模は拡大傾向にあります。その背景には建物の老朽化、空き家問題があります。今回は建築解体業界の市場規模について、市場背景を主にご紹介していきます。

建築解体業界について

建築解体業界は、建物の解体工事を請け負う企業の総称で、建物や構造物の取り壊しと廃棄物の処理に関連する業界です。この業界は、建設産業と密接に関連しており、建物が寿命になったり、改修が必要となったりした際に需要があります。

建築解体業界の主な活動は、

①建築解体・・・建築解体業者は古いもしくは不要な建物を取り壊す作業を行います。これには爆破解体、機械解体、手作業解体などが含まれます。解体は安全規制と環境への配慮を考慮して行われます。

②廃棄物処理・・・建物の解体から発生する廃棄物(コンクリート、鉄、木材など)は、適切に処理される必要があります。これにはリサイクル、または廃棄物処分施設への運搬などが含まれます。

③環境への配慮・・・建築解体業者は、有害物質の除去、土壌汚染の防止、騒音や振動の管理など環境への影響を最小限に抑える取り組みを行います。また、アスベストなどの有害物質の取り除きなども行います。

建築解体業界は、都市の再開発、空き家の解体、環境保護に貢献する重要な役割を果たしています。また、技術の進歩に伴い、より効率的な解体プロセスが開発されており、業界は常に進化しています。

今後の解体工事件数の増加について

国土交通省の推計によると、吹付けアスベスト等を含む建築材料を使用している可能性がある鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建築物の解体工事件数は今後増加し、2028年頃にピークを迎えるとされています。少し古いデータではありますが、2015年度における事前調査の対象となる解体工事件数は、年間約73万~188万件とされており、増加傾向にあります。

建築解体業界の市場背景

建築解体業界は、建物の老朽化や空き家の増加で需要が高い業界と考えられます。建築解体業界の市場背景には以下があります

①高度経済成長期の建物の老朽化

総務省による2018年度住宅・土地統計調査によると、人が居住している住宅ストック、総住宅数6270万7千戸のうち、1980年以前に建築された住宅は約1,300万戸あり、省エネ性能が不十分な住宅等も多数あることから、これからの住宅の建て替え等による性能向上が必要とされています。

特に、1955年~1973年までの19年間の高度経済成長期にたくさんの建築物が建ちましたが、現在、高度経済成長期から50年あまり経過し、老朽化が進んでいます。

 老朽化したマンションであれば、老朽化したエレベーターなどの設備や外壁・共用部分の補修、水回りなど修繕・補修を行うには膨大な費用がかかります。

建替えの場合は、エレベーターがないマンションにエレベーターの設置やバリアフリー化、リフォームなどがつきまといます。

また地震の多い日本では老朽化したマンションでは耐震化対策がされているかも問題視されます。新耐震基準と呼ばれる1981年の建築基準法施行令改正以降の耐震基準を満たしていないと震度6以上の大きな地震に対して崩壊しない保証がないため安全性でも不安が残ります。

このような背景から老朽化したマンションは建替え・解体されることが多いです。

 戸建はメンテナンスを定期的にすると長く住むことが出来ますが、老朽化した外壁・水回りなど修繕・補修を行うには膨大な費用がかかります。戸建の場合10年毎にメンテナンスをしていかなければなりません。またリフォームも加わると費用がかさみます。

家族が亡くなって相続した空き家を賃貸にするために建替え、更地にするため解体する場合も多いです。

このような背景から老朽化した戸建は建替・解体されることが多いです。

 マンションも戸建も老朽化したら建替え・解体されるため、解体工事の件数は増加傾向にあると言えます。

②空き家の増加

近年空き家は増え続け、問題視されています。総務省による2018年度住宅・土地統計調査によると、2018年には空き家は8489千戸で、空き家率は13.6%となっています。

空き家は大きく分けて「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つに分類されます。

  • ①売却用の住宅新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
  • ②賃貸用の住宅新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
  • ③二次的住宅別荘など普段は人が住んでいない住宅
  • ④その他の住宅…13以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など

年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン (https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)より

「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」に関しては売買や賃貸、別荘として使用など管理されていると考えられますが、「その他の住宅」に関してはそのまま放置される可能性が高いとされています。「その他の住宅」は2018年には約349万戸あるとされています。「その他の住宅」に分類される空き家の原因は、核家族化で実家を継ぐ子どもがいない、相続税の負担を考慮しそのままにしているといった面が大きく空き家になっているといえます。

 なぜ空き家のまま放置だといけないのかというと、空き家であるだけで土地を所有していることとなり、固定資産税や都市計画税などの税金もかかってきます。一番大きい問題として挙げられるのが近隣に迷惑をかけてしまうことです。家は手入れをしていないと劣化していきます。放置された空き家は、動物が棲み着く・不法投棄される・放火の危険性・不審者や犯罪の危険性や直接的に隣家に影響を及ぼすこととして虫・雑草が生い茂り隣家に侵入し迷惑をかける等が挙げられます。

 また、空家法でこの状態が1つでも当てはまれば自治体から「特定空家等」と認められ罰則が適応されることがあります。

 このような背景から空き家対策として解体工事の件数は増加傾向にあると言えます。

建築解体業界の市場規模について

国土交通省による2018年度建築工事施工統計調査によると、全国の建築解体業者数は、43,186社に対し、建築解体業全体の市場規模(完成工事高)は、4,857億円、住宅は472億円と発表されています。201661日から従来の建設業法では、「とび・土工高事業」に含まれている「工作物の解体」を独立させ、建設業許可に係わる業種区分として解体工事業で必要な資格や要件は細かく決められるようになった、「解体工事業」が追加されました。この解体工事業者数は2017年度以降毎年増加傾向にあります。市場規模も拡大傾向ですが、建築解体業者も増えているため雇用も増加傾向にあると言えるでしょう。

最後に

建築解体業界の市場規模について、市場背景を主に述べてきました。建物の老朽化、空き家の増加により今後も建築解体業の市場規模は拡大傾向にあるといえます。近年、複数業者の見積予想金額の自動算出や、施主とのマッチングを行うWebサービスが登場し、住居所有者にとって解体費用の相場が分かりやすくなっていることも、市場規模拡大に一役買っていると言えます。解体工事を行う際には、スムーズに進めるためにもコミュニケーションを取りやすく、サポートが万全な業者を見つけることが大事です。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。

全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください

 

参考URL

石綿飛散防止小委員会(第一回)資料|厚生労働省
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)

・我が国の住生活をめぐる状況等について(前回までの補足)|国土交通省
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)

・年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)

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土壌汚染対策の市場規模について

土壌汚染は環境問題の中でも重要な課題の一つです。平成14(2002)に成立した土壌汚染対策法により、土壌汚染対策の市場規模は成長しています。

今回は、土壌汚染について、土壌汚染対策法の施行背景と土壌汚染対策の市場規模についてご紹介します。

土壌汚染とは

土壌は私たち人間を含め地中にいる生き物が生活する場であり、土壌に含まれる水分や養分が私たちの食の元となる農作物を育てています。そのため土壌は私たち人間を含んだ生き物が生きていく上でなくてはならないものです。

土壌汚染とは、土壌が人間にとって有害な物質により汚染された状態のことをいいます。原因としては工場の操業に伴い原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまったり、有害な物質を含む液体を地下に染み込ませてしまったりすることなどが考えられます。土壌汚染の中には人間の活動に伴って生じた汚染だけでなく、自然由来で汚染されているものも含まれます。

土壌汚染対策法とは

土壌汚染対策法とは、土地の汚染を見つけるための調査や、汚染が見つかったときにその汚染により私たちに悪い影響が生じないように土壌汚染のある土地の適切な管理の仕方について定める、いわば健康を保護することを目的とされた法律です。

平成14年に土壌汚染対策法が成立しました。課題として上がっているものを解決するために、

①法律に基づかない土壌汚染の発見の増加調査のきっかけを増やすことで解決させる

②汚染土壌を掘り出す掘削除去に偏重→健康リスクの考え方を理解してもらうことで解決させる

③汚染土壌の不適正処理→汚染土壌をきちんと処理してもらうことで解決させる

これらを実施することを目的として平成214月に土壌汚染対策法の改正法が成立され平成224月から改正法が施行されました。

その後も施行状況の見直し検討が行われ平成29519日に土壌汚染対策法の一部を改正する法律が公布され第1段階が平成3041日に施行され第2段階は平成3141日に施行されました。

毎年のように改正され最新の改正は令和47月に土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令施行・汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令施行が施行されました。

土壌汚染のリスク

土壌の汚染があってもすぐ私たちの健康に影響があるわけではなく、土壌汚染対策法では、土壌汚染による健康リスクを以下の2つの場合に分けて考えています。

① 地下水等経由の摂取リスク
土壌に含まれる有害物質が地下水を溶け出して、その有害物質を含んだ地下水を口にすることによるリスク

例:土壌汚染が存在する土地の周辺で、地下水を飲むための井戸や蛇口が存在する場合

②直接摂取リスク
土壌に含まれる有害物質を口や肌などから直接摂取することによるリスク

例;子どもが砂場遊びをしているときに手についた土壌を口にする、風で飛び散った土壌が直接口に入ってしまう場合

土壌汚染対策法はこれらの健康リスクをきちんと管理するために作られました。同法では、①地下水等経由の摂取リスクの観点からすべての特定有害物質について土壌溶出量基準が、②直接摂取リスクの観点から特定有害物質のうち9物質について土壌含有量基準が設定されています。

土壌汚染に関する問題とは、土壌汚染が存在すること自体ではなく、土壌に含まれる有害な物質が私たちの体の中に入ってしまう経路(摂取経路)が存在していることです。この経路を遮断するような対策を取れば有害な物質は私たちの中に入ってくることはなく、土壌汚染による健康リスクを減らすことができます。つまり土壌汚染があったとしても、摂取経路が遮断されきちんと健康リスクの管理ができていれば私たちの健康に何も問題はありません。

土壌汚染対策の市場背景・今後の市場拡大について

土壌汚染対策の市場は成長し続けています。その要因を挙げると、

①土壌汚染対策法による認識の高まり・・・土壌汚染対策法の成立により、人々や企業に土壌汚染対策に対する認識が高まっています。企業は土壌汚染対策法を遵守する必要があり、万が一保有する土地で土壌汚染が発覚した場合、土壌汚染対策のみならず、周辺住民への損害賠償や土地の資産評価の減少などのリスクを被る場合があります。リスクを回避するためにも企業は土壌汚染対策に投資しています。

 ②土壌汚染の増加・・・土壌汚染は首都圏を中心に増加傾向にあり、これに対処するための需要が高まっています。土地取引や再開発、工場跡地の売却を契機に多くの土壌汚染が発覚するケースが増えました。潜在的には全国で数十万箇所と推定されています。

 ③地下水汚染の増加・・・土壌と地下水は密接に関連しており、汚染された土壌からの有害物質は地下水に浸透し水質源を汚染する可能性があります。土壌汚染対策をすることは地下水を守ることに繋がります。

 ④産業の成長・・・産業の成長に伴い、土壌汚染のリスクも増加しています。特に製造業や鉱業などの産業は土壌汚染の主な原因となっており、それに対処する必要があります。

 ⑤技術の進歩・・・土壌汚染対策の技術は日々進化しており、新しい機械によってより効果的な対策をとることが出来ます。

 などが挙げられます。

 土壌汚染対策の市場は、その重要性と土壌汚染対策法による認識の高まりに伴い成長しています。従来、土壌汚染が発覚した場合でも土壌汚染対策はなかなかされることがなく、市場性が表面化することはありませんでしたが、前途した土壌汚染対策法の成立により需要が急増しました。また、再開発や工場跡地の売却が進み、その土地が住宅やマンションへ転用される過程で土壌汚染が発覚するケースが増えたため、土壌汚染対策を行う機会も増えました。今後も企業の土壌汚染に対するリスク意識の高まりや、土壌汚染対策法の強化によりさらに市場の拡大が予想されます。

土壌汚染対策の事業の市場規模推移について

土壌汚染対策の事業の市場規模推移について、2000-2020年の推移は以下の通りです。

土壌汚染対策の事業の市場規模推移について(単位:億円)

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

億円

164

355

553

722

935

1624

1993

1641

1345

1146

1002

 

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

億円

1479

884

1098

1089

773

942

848

697

734

687

887

環境産業の市場規模・雇用規模等に関わる報告書|環境省
(https://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/b_houkoku3.pdf)より

土壌汚染対策法が成立した2002年以降市場規模は拡大しており、2006年をピークに減少するものの安定しているといえます。また2020年は、2016年以降で最も増加しています。

土壌汚染対策の事業の雇用規模推移について

土壌汚染対策の事業の雇用規模推移について、2000-2020年の推移は以下の通りです。雇用規模は、市場規模の算定結果を使用し、「計算式:(市場規模)÷(業種別一人当たり売上高)」で算出しています。

土壌汚染対策の事業の雇用規模推移について(単位:人)

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

256

533

862

1265

2465

2454

2923

2542

2004

1854

1655

 

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

3235

1560

1818

1689

1273

1483

1329

1016

1001

1091

1409

環境産業の市場規模・雇用規模等に関わる報告書|環境省
(https://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/b_houkoku3.pdf)より

雇用規模も市場規模同様、土壌汚染対策法が成立した2002年以降市場規模は拡大しており、2006年をピークに減少するものの安定しているといえます。2010年に雇用規模が増大しているのは、土壌汚染対策法が改正された影響だと言えるでしょう。また2020年は、こちらも市場規模同様、2016年以降で最も増加しています。

最後に

土壌汚染対策の市場は土壌汚染対策法による認識の高まりや、企業の土壌汚染に対するリスク意識の高まり等により拡大傾向にあり、今後もその成長が期待されるといえます。土壌汚染対策は私たちの健康や環境保護に対する貴重な投資であり、その重要性を認識し、対策をとることが不可欠です。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

参考URL

環境産業の市場規模・雇用規模等に関わる報告書|環境省
(https://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/b_houkoku3.pdf)

市場拡大が見込まれる土壌浄化事業|三十三銀行
(https://www.33bank.co.jp/33ir/sangyou/200101_s1.pdf)

 

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)

土壌汚染対策法|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/law/outline.html)

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建築物石綿含有建材調査者による解体工事等の事前調査について

令和5101日から、建築物の解体工事や改修工事において、新たな規制が施行されました。この規制により、建築物内に石綿含有建材が存在するかどうかの事前調査が義務化され、その調査を行うのが「建築物石綿含有建材調査者」です。この記事では、新たな規制の背景や要点、建築物石綿含有建材調査者の役割について詳しく解説します。

背景

石綿はかつて多くの建築物で断熱材や防火材として広く使用されました。しかし、石綿が健康に有害であることが科学的に証明され、特に石綿繊維を吸入することが肺がんや間皮腔腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになりました。このため、多くの国で石綿含有建材の使用が禁止され、既存の建築物における石綿の取り扱いに関する法規制が強化されています。

新たな規制の要点

新たな規制は、建築物における石綿含有建材の存在を明らかにするため、解体工事や改修工事に先立って事前調査を行うことを義務付けています。具体的な要点は以下の通りです。

令和5101日着工の工事から、建築物の解体等の作業を行うときは、「建築物石綿含有建材調査者」、又は令和5930日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者による事前調査を行う必要があります。

建築物石綿含有建材調査者: 事前調査を行うのは、「建築物石綿含有建材調査者」と呼ばれる専門家です。この調査者は、石綿含有建材の特定や評価を専門的に行うための資格を持っています。

調査を行える資格は、以下の通りです。

・特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
・一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
・一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)
・2023年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者

事前調査のための資格を取得するには厚生労働省が管轄している講習(登録講習機関が実施)を受講し修了する必要があります。

調査結果の報告: 調査者は、調査結果を詳細に報告し、必要に応じて石綿含有建材の除去や保護措置の提案を行います。報告書は関係機関に提出され、工事の許可が与えられる前に審査されます。

調査の対象:解体工事のほか、建築物の模様替え・修繕等の改修工事、建築設備の取付・取外し・ 修理等の工事も含まれます。

石綿含有建材が使用されているか否かを確認するための調査であり、設計図書等の 書面調査と現地での目視調査の両方を行う必要があります。

それでも明らかにならなかった場合、分析による調査を行うか使用しているものとみなすことになります。一戸建て等調査者は一戸建て住宅や共同住宅の住戸の内部のみ事前調査を行うことができます。

違反への罰則: 規制に違反した場合、罰則が適用される可能性があります。適切な事前調査を怠ることは、法的な責任を問われることにつながります。特定粉じん排出等作業の実施の届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、3月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(災害その他非常の事態の発生により特定粉じん排出等作業を緊急に行う必要がある場合において、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料に処せられます)。

建築物石綿含有建材調査者の役割

建築物石綿含有建材調査者は、新たな規制の中心的な役割を果たします。役割には以下の要素が含まれます。

専門知識の活用: 調査者は石綿含有建材に関する専門的な知識を有しており、建築物内での石綿含有建材の識別や評価を行います。

調査計画の立案: 調査者は調査計画を立案し、どの部分を調査し、どのような方法で調査を進めるかを決定します。これは効率的かつ確実な調査を保証するための重要なステップです。

調査の実施: 調査者は建築物内部に入り、石綿含有建材を特定し、その状態を評価します。必要に応じて試料を採取し、詳細な分析を行います。

報告書の作成: 調査者は調査結果をまとめ、報告書を作成します。この報告書には石綿含有建材の特定位置、数量、状態、安全性に関する情報が含まれます。

安全対策の提案: 調査者は必要に応じて、石綿含有建材の除去や保護措置に関する提案を行います。これは作業者や住民の健康を守るために極めて重要です。

 

新たな規制の詳細として、規制の主要なポイントは次のとおりです。

対象建築物: 新規制は、一般の住宅から工業施設、公共建築物に至るまで、あらゆる種類の建築物を対象としています。石綿含有建材の有無は、建築物の種類や年代にかかわらず確認する必要があります。

調査期間: 解体工事や改修工事が計画されている場合、事前調査は計画の早い段階から開始する必要があります。これにより、工事の進行をスムーズにし、安全性を確保します。

調査の深さ: 建築物石綿含有建材調査者は、建築物内部を詳細に調査します。壁、天井、床、給排水管、断熱材など、石綿含有建材が使用される可能性があるすべての場所を調査対象とします。

建築物石綿含有建材調査者の技能と資格

建築物石綿含有建材調査者としての資格と技能は非常に重要です。以下の要件を満たす必要があります。

専門的な知識や豊富な経験: 建築物石綿含有建材調査者は、石綿の特性、危険性、調査方法に関する専門的なトレーニングを受けます。これには実地調査のスキルや安全対策の知識も含まれます。

資格: 建築物石綿含有建材調査者は特定の認定資格を取得する必要があります。資格取得プロセスには試験と実務経験の要件が含まれます。

最新技術の習得: 石綿の調査技術は進化し続けており、新たな検出方法や評価ツールが開発されています。建築物石綿含有建材調査者は常に最新の情報と技術を習得し、実務に適用する必要があります。

安全対策とリスク管理

石綿含有建材の調査は、作業者や近隣住民を含めた住民の皆様の健康を守るための重要なステップです。調査者は安全対策に最大の注意を払い、石綿が見つかった場合には次のような措置を提案します。

除去: 石綿を含む建材の除去は最も効果的な方法の一つですが、適切なプロセスと専門的な業者によって行われる必要があります。

封じ込め: 石綿を完全に除去できない場合、封じ込める方法が採用されることがあります。これは、建材の破損や繊維の放出を防ぐための方法です。

作業者の保護: 石綿の取り扱いに携わる作業者は、適切な個人防護具を着用し、専門的な訓練を受ける必要があります。

住民への情報提供: 石綿含有建材が発見された場合、周辺の住民に適切な情報提供が行われ、安全を確保するための措置が取られます。

新たな規制により、建築物内の石綿含有建材の調査が建設業界において不可欠な要素となりました。建築物石綿含有建材調査者は、その専門知識と技能を活用して、健康被害のリスクを最小限に抑え、安全な環境を確保します。この規制の遵守は、健康と環境の保護に貢献し、長期的な安全性を確保する重要な一歩です。

まとめ

令和5101日から施行された新たな規制により、建築物内の石綿含有建材の調査が重要な役割を果たすこととなりました。建築物石綿含有建材調査者は、その専門的な知識と技能を駆使して、安全な解体工事や改修工事を実現するために不可欠な存在です。規制を遵守し、石綿の健康被害を未然に防ぐために、建築物石綿含有建材調査者の役割は今後ますます重要になっていきます。

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日本におけるアスベスト除去の届出について

アスベストとは、耐火性や断熱性に優れる鉱物繊維のことを指し、過去にはさまざまな建築材料や工業製品に広く使用されていました。しかし、アスベストが人体に害を及ぼすことが判明して以降、除去の必要が高まってきました。

特に、日本では建築物の解体やリノベーション時にアスベストを含む材料が取り扱われるケースが多い状態でした。そこで、アスベストの適切な取り扱いや除去方法に関するルールや法律が整備され、それに伴う届出制度が設けられました。

この記事では、日本におけるアスベスト除去の届出について、その重要性や方法を詳しくご紹介いたします。

アスベスト除去の届出の重要性

アスベストを安全に取り扱うためには、適切な技術や知識が必要です。間違った方法で取り扱うと、アスベスト繊維が空気中に放出され、これを吸い込むことで健康被害を受けるリスクがあります。このため、アスベストの除去に関する作業は、事前の届出と専門的な手法によって行う必要があります。

届出の方法

アスベスト除去の作業を行う際は、以下の手続きを踏む必要があります。

作業開始の30日前までに、所轄の労働基準監督署に届出を行います。

届出書には、作業場所、期間、作業内容、使用する機器や保護具の詳細、作業を行う労働者の数や資格等、必要な情報を記載します。

届出が完了したら、監督署からの指導やアドバイスに従って作業を進めます。

届出の対象

以下のようなケースでのアスベスト取り扱いには、届出が必要となります。

建築物の解体、修理、改修などでアスベストを含む材料を取り扱う場合。

アスベストを使用した製品の製造や修理、廃棄処分を行う場合。

その他、アスベストを取り扱う作業全般。

日本におけるアスベスト除去の届出に必要な書類

アスベスト除去作業を行う際に、所轄の労働基準監督署に提出する必要がある主要な書類は以下の通りです。

アスベスト作業届出書

この書類は、アスベスト作業を行う前に提出するもので、作業場所、作業の期間、使用する機器や保護具の詳細、作業を行う労働者の数や資格等の情報を記入します。

作業計画書

作業の詳細な手順、使用する工具や機器、安全対策、緊急時の対応計画など、具体的な作業内容を記述する書類です。

アスベスト飛散防止計画書

アスベストの飛散を防ぐための具体的な手段や方法を記述する書類です。除去作業中や作業後の清掃方法、保護具の取り扱いなど、飛散を最小限に抑えるための具体的な計画を明記します。

健康診断結果書

アスベスト作業を行う労働者が、定期的に受ける健康診断の結果を記録した書類です。アスベストに関連する疾患の早期発見や予防のために必要です。

労働者教育研修記録書

アスベスト作業を行う労働者に対して、必要な教育や研修を行い、その内容や日時、参加者の名前等を記録した書類です。

 

これらの書類は、アスベスト作業を安全かつ適切に行うための手続きや準備の一部となっており、所轄の労働基準監督署への提出が必須となっています。正確かつ詳細に書類を記入し、アスベスト除去作業を安全に進めるための準備を整え流必要があります。

アスベスト除去工事時の近隣への対応

アスベスト除去工事を行う際、作業現場の周辺に住む住民や近隣の事業所に対して、事前の説明や配慮が求められます。アスベストの飛散リスクや騒音など、工事に伴う様々な影響を考慮して、以下のような対応が必要です。

事前の説明会や広報活動

除去工事を開始する前に、近隣の住民や事業所に対して工事の内容、期間、作業時間帯などを説明する会を開催することが望ましいです。また、チラシや掲示板を利用して工事に関する情報を公開することで、理解を求めることができます。

飛散防止の徹底

アスベストの飛散を防ぐための措置を徹底的に行うことはもちろん、その措置内容を近隣住民に対しても説明し、安心感を持ってもらうことが大切です。

工事騒音や振動への対応

除去工事に伴う騒音や振動は、近隣住民の生活環境に影響を及ぼす可能性があります。作業時間を日中に限定する、適切な騒音防止対策を講じるなどの配慮が必要です。

緊急連絡窓口の設置

何らかのトラブルや問題が発生した際に、近隣の住民や事業所からの問い合わせや対応がスムーズに行えるよう、緊急連絡窓口を設けることが推奨されます。

工事終了後の報告

工事が無事終了した際は、その旨を近隣の住民や事業所に報告するとともに、ご協力やご理解への感謝の意を伝えることが好ましいです。

近隣への適切な対応は、アスベスト除去工事がスムーズに進行するための大切な要素の一つです。住民や事業所の理解や協力を得るためにも、十分な配慮とコミュニケーションを心掛ける必要があります。

アスベスト届出における注意点

アスベストの除去工事に際して行う届出には、いくつかの注意点が存在します。適切な届出を行うために以下のポイントに注意した対応が必要です。

提出期限の厳守

アスベスト作業届出書は、作業開始の30日前までに所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。この期限を逸すると、罰則の対象となる可能性があります。

内容の正確性

届出書の内容は、実際の作業内容や使用機器、保護具などの詳細に合致している必要があります。予定が変更された場合は、改めて届出を行うか、修正の手続きを行います。

健康診断の実施

アスベスト作業に従事する労働者は、定期的な健康診断を受ける義務があります。この結果も監督署に報告する必要がありますので、定期的な実施と記録の保管を怠らないよう注意が必要です。

継続的な研修や教育

アスベスト除去に関する知識や技術は日々進化しています。従事者には定期的な研修や教育を受けさせ、最新の知識や技術を身につけさせることが推奨されます。その履歴も適切に記録として残しておくとよいです。

再届出の可能性

工事の進行中に予定が大きく変更された場合や、アスベストの量や種類に変更が生じた場合など、初めの届出内容と異なる場合が出てきたら、再度の届出や修正が必要となる場合があります。

監督署からの指導やアドバイスの受け入れ

届出を行った後、労働基準監督署からの指導やアドバイスがある場合があります。その内容をしっかりと受け入れ、作業に反映させることが求められます。

アスベストの取り扱いには、人々の健康や安全が関わるため、届出の際の正確性や適切な手続きが極めて重要となります。注意点を踏まえながら、適切な届出を行い、安全なアスベスト除去作業を進めていく必要があります。

アスベスト除去届出の網羅すべき内容

取扱い量の把握

除去するアスベストの量や種類を正確に把握し、届出時にその詳細を記載することが重要です。アスベストの量や種類によって、作業方法や必要な機材が異なる場合があります。

作業者の資格と経験

アスベスト除去作業を行う作業者の資格や経験を明記すること。特に、アスベスト除去作業の経験が豊富な作業者がいる場合、それを明示することで監督署の信頼を得やすくなります。

使用する機材の詳細

使用する機材や工具の種類、特に高度な技術や専用の機材を使用する場合は、その詳細を届出書に記載します。この情報は、作業の安全性や効率性を評価する上で重要となることがあります。

作業エリアの対策

作業エリアをどのように囲うか、空気の清浄化や換気の方法、非作業者の立入り制限方法など、具体的な現場の安全対策についても詳細に記述するとよいでしょう。

廃棄物の取り扱い

アスベストを除去した後の廃棄物の取り扱い方法や、処分場所、輸送方法なども届出の内容として重要です。環境への影響や再飛散を防ぐための対策をしっかりと計画しておく必要があります。

緊急時の対応計画

アスベスト除去作業中に事故や緊急事態が発生した場合の対応計画を明記すること。具体的なアクションプランや連絡体制、必要な機材や薬品の準備状況などを詳細に説明します。

 

アスベスト除去の届出は、単なる手続きではなく、作業の安全性や品質を保証するための重要なステップとなります。届出の内容をしっかりと網羅し、万全の態勢で作業に臨むことが求められます。

アスベストの適切な取り扱いは、人々の健康を守るために極めて重要です。日本では、アスベスト除去に関する届出制度が設けられており、適切な方法での作業が求められています。これに従い、安全にアスベストを除去することが、求められています。

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