2023/06/27
マンション解体における立ち退きについて
日本では築40年以上を超えるマンションは、マンションの法定耐用年数は47年と国税庁が設定されており、これを越えて住むことは出来ますが、資産価値が下がるため建替え・解体することもあります。建替え・解体時に問題になる点として立ち退き問題があります。またマンションの立ち退きは賃貸マンション、分譲マンションによって費用などが異なります。今回はマンション解体における立ち退きについて焦点を当ててご紹介していきます。
立ち退き問題の背景
多くの都市部で建設ブームが続いており、古いマンションの解体や再開発が盛んに行われており、これに伴い入居者たちは新しい建物への立ち退きを余儀なくされることがあります。立ち退きには入居者側からしてみると引っ越しや費用負担など多くの問題が伴うため、問題解決するための対策が求められています。
長年暮らしてきた場所から強制的に移動させられることで入居者は日常生活を乱されるだけでなく、社会的つながりも失う可能性があります。
また、立ち退きに伴う入居者の権利保護も重要な問題です。入居者たちは適切な補償や移動支援を受ける権利がありますが、実際には不十分である場合など問題が生じる場合があります。自分を守るためにも専門家、地方自治体などを頼ることが大切です。
そもそもマンションの寿命は?
マンションの寿命とは何を基準に判断されるかというと、メンテナンスを定期的にされているかによって異なります。国税庁が設定しているマンションの法定耐用年数は47年とされており、この法定耐用年数とは会計上の建物の資産価値がなくなるまでの年数を表しているもので、建設47年でマンションに住めなくなるという意味ではなく、資産価値が下がるとされている年数のことです。
マンションを売ることを考えていないのであれば、メンテナンスを定期的にし、修繕・補修を行うことにより100年近く住むことが出来るとされています。
マンションの建替え・解体理由
マンションはメンテナンスを定期的にすると100年近く住むことが出来るとお伝えしましたが、老朽化したエレベーターなどの設備や外壁・共用部分の補修、水回りなど修繕・補修を行うには膨大な費用がかかります。
建替えの場合は、エレベーターがないマンションにエレベーターの設置やバリアフリー化、リフォームなどがつきまといます。
また地震の多い日本では老朽化したマンションでは耐震化対策がされているかも問題視されます。新耐震基準と呼ばれる1981年の建築基準法施行令改正以降の耐震基準を満たしていないと震度6以上の大きな地震に対して崩壊しない保証がないため安全性でも不安が残ります。
このような背景から老朽化したマンションは建替え・解体されることが多いです。
限界マンションにならないために
マンション解体における立ち退きが上手く進まない場合、マンション老朽化が進み「限界マンション」となってしまいます。限界マンションとは、維持管理に限界を迎えたマンションのことで、寿命を迎えたマンションの他にも空室が増加して運営困難となったマンションのことを総称していいます。
分譲マンションの場合、自分の購入したマンションが限界マンションとなったら、入居者にはデメリットしかありません。
・マンションの資産価値が下がり価格をいくら下げても売れなくなる
→老朽化した限界マンションの資産価値は修繕が行えないので日に日に下がります。そのため売価を下げても売れない物件になります。
・建替えが完全に不可能になる
→いざ建替えようとしても入居者は減り十分な費用が捻出出来なくなるため建替えが完全に不可能になります。
・税金だけはかかり続けるので払い続けなければならない
→いくら資産価値がなくなっても固定資産税や都市計画税の税金を払い続けなければなりません。
限界マンションになる前にマンションの建替え・解体をする方が良いと言われています。
マンションの解体費用は誰が負担するか
マンションの解体には膨大な費用がかかります。では、この解体費用は誰が負担するのでしょうか。
賃貸マンションの解体の場合は、解体費用については管理者(オーナー)が負担します。賃貸マンションの場合は入居者が負担することはないといえます。ただし解体が決まった場合は退去しなくてはなりません。
分譲マンションで売却のためにマンションを解体する場合は、解体費用については入居者が負担します。
分譲マンションで新しいマンションに建替える場合は、毎月集める修繕積立金の一部から出る場合があり、その場合は修繕積立金で賄えない部分を入居者が負担することが多いです。修繕積立金とは、マンションのメンテナンス、修繕に備えて入居者が管理組合を通して積み立てるお金のことです。管理費とは別に月々払っており工事などにも充てられます。
分譲マンションの建替えによる費用は一戸につき1,000万円以上かかります。そこに引越し費用や仮住まい費用が加算されます。
賃貸マンションの場合の解体における立ち退きについて
賃貸マンションで解体における立ち退きになる際、立ち退きになる理由が管理者(オーナー)の都合によるものであるため、入居者は強制退去をさせられることはありません。つまり管理者が詳しく説明し入居者に立ち退いてもらうことが必要となります。
管理者が立ち退き勧告をする際は、書面・口頭により、遅くても更新日の1年前に行う必要があります。
賃貸マンションで立ち退きの場合は入居者と管理者双方の話し合いにより、管理者から入居者へ立ち退き料が出る場合があります。この立ち退き料は管理者に支払い義務がないため入居者は、もらえるのかもらえないのか、どのくらいもらえるのかを確認することが重要です。
分譲マンションの場合の解体における立ち退きについて
分譲マンションで解体における立ち退きになる際、賃貸マンションと違いよりややこしくなります。なぜなら、分譲マンションは入居者が「購入した家」だからであり、賃貸マンションのように管理者が全部屋所有するものでないからです。そのため解体における立ち退きになる際は、マンションを購入すると自動的に入る仕組みになっている管理組合により決定になります。賛成数が全体の8割以上になる必要があります。
入居者に解体するか否か判断する権利があることを、「建物の区分所有等に関する法律」を略して一般的には区分所有法と言います。
賛成した場合は解体後に建替えの場合、建替え後の部屋を確保することが出来ます。建替え後の部屋数を増やすことで新たな入居者を入れることにより修繕積立金でまかなえない分の負担を多少おさえることが出来ます。
反対した場合も、賛成数が8割を超えていれば解体・建替えされることになります。その場合居住している部屋を管理組合に買い取ってもらい退去することになります。反対の場合は建替えが行われる前にマンションを売ってしまうのも一つの手です。
分譲マンションでは解体・建替えの場合の立ち退き料は、賃貸マンションと違い管理者から出ることはありません。そのため自身で引越し先・引越し料を出す必要があります。
最後に
マンションの解体における立ち退きは入居者にさまざまな影響を及ぼします。長年暮らしてきた場所を離れる、地域のつながりを失う、新しい環境への適応など社会的な孤独や不安を抱くことがあります。立ち退きになった場合に管理者は入居者へのサポートが必要です。
株式会社エコ・テックの解体工事について
株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。
全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考URL
・マンション政策|国土交通省
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000040.html)
・耐用年数(建物/建物附属設備) | 国税庁
(https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html)
・建物の区分所有等に関する法律| e-Gov法令検索
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)
2023/06/21
土壌汚染対策の区域指定について
土壌汚染対策法の目的は土壌汚染による人の健康被害を防止することです。今回は健康被害が生じるおそれがある区域指定、要措置区域・形質変更時要届出区域の違い、汚染土壌の除去、汚染土壌の搬出の規制についてご紹介します。
土壌汚染対策法とは
土壌染対策法とは、土地の汚染を見つけるための調査や、汚染が見つかったときにその汚染により私たちに悪い影響が生じないように土壌汚染のある土地の適切な管理の仕方について定める、いわば健康を保護することを目的とされた法律です。
土壌汚染のリスク
土壌の汚染があってもすぐ私たちの健康に影響があるわけではなく、土壌汚染対策法では、土壌汚染による健康リスクを以下の2つの場合に分けて考えています。
①地下水等経由の摂取リスク
土壌に含まれる有害物質が地下水を溶け出して、その有害物質を含んだ地下水を口にすることによるリスク
例:土壌汚染が存在する土地の周辺で、地下水を飲むための井戸や蛇口が存在する場合
②直接摂取リスク
土壌に含まれる有害物質を口や肌などから直接摂取することによるリスク
例;子どもが砂場遊びをしているときに手についた土壌を口にする、風で飛び散った土壌が直接口に入ってしまう場合
土壌汚染対策法はこれらの健康リスクをきちんと管理するために作られました。同法では、①地下水等経由の摂取リスクの観点からすべての特定有害物質について土壌溶出量基準が、②直接摂取リスクの観点から特定有害物質のうち9物質について土壌含有量基準が設定されています。
土壌汚染に関する問題とは、土壌汚染が存在すること自体ではなく、土壌に含まれる有害な物質が私たちの体の中に入ってしまう経路(摂取経路)が存在していることです。この経路を遮断するような対策を取れば有害な物質は私たちの中に入ってくることはなく、土壌汚染による健康リスクを減らすことができます。つまり土壌汚染があったとしても、摂取経路が遮断されきちんと健康リスクの管理ができていれば私たちの健康に何も問題はありません。
土壌汚染対策法の基準値について
土壌の特定有害物質による汚染から私たちの健康を維持し環境保全する必要があります。
土壌汚染対策法基準は、特定有害物質による土壌汚染等の有無を判断する基準であり、土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下水基準の3つからなっています。
特定有害物質とは土壌や地下水に含まれることが原因で人の健康に被害を生ずるおそれがある有害物質として土壌汚染対策法施行令で定めた26物質のことです。
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)があり、各物質ごとに土壌溶出量基準や土壌含有量基準等の基準値が設定されています。
くり返しになりますが、①地下水摂取などによるリスクからは土壌溶出量基準が、②直接摂取によるリスクからは土壌含有量基準が定められています。
土壌溶出量基準及び地下水基準は、土壌に含まれる特定有害物質が溶け出し、地下水等から飲料水にともなって間接摂取して問題ないレベルとしての基準です。
土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質を経口又は皮膚より直接接種しても問題ないレベルとしての基準です。
土壌含有量基準については、すべての特定有害物質に設定されていますが、土壌含有量基準については、特定有害物質のうち貴金属を中心とする9物質についてのみ定められています。
土壌汚染区域の指定(要措置区域・形質変更時要届出区域)
都道府県知事は、土壌汚染状況調査の結果報告を受けた際に報告を受けた土地を、健康被害のおそれの有無に応じて①要措置区域又は②形質変更時要届出区域に指定します。(以下2つまとめて「要措置区域等」とする)
①要措置区域
要措置区域とは、土壌汚染状況調査の結果汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がある区域のことです。健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要となります。
②形質変更時要届出区域
形質変更時要届出区域とは、土壌汚染状況調査の結果汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がない区域のことです。健康被害が生ずるおそれがないため、汚染の除去等の措置は必要ではありません。
下記で詳しくみていきましょう。
要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されるまで
土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がない場合は要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されません。それではどうなると指定されるのでしょうか。
①土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある
→健康被害のおそれがある場合・・・土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生じるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域、すなわち要措置区域に指定されます。
②土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある
→健康被害のおそれがない場合・・・土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行われた区域を含む)、すなわち形質変更時要届出区域に指定されます。
つまり、要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されるのに共通していることは、「土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある」ということです。そこから健康被害があるかないかにより要措置区域又は形質変更時届出区域に指定されます。
汚染の除去等の措置について
健康被害のおそれのある要措置区域では、都道府県知事等は土地の所有者等に対し、人の健康被害を防止するために必要な限度において講ずべき汚染の除去等の措置(指示措置)等を示して汚染除去等計画の作成及び提出を指示します。
指示措置は、
■地下水等経由の摂取リスクの観点からの土壌汚染がある場合(土壌溶出量基準に適合しない場合)は地下水の水質の測定、封じ込め等です。封じ込めとは、汚染土壌を封じ込めて地下水等による汚染の拡散を防止する措置です。原位置封じ込めや遮水工封じ込め、遮断工封じ込め等があります。
■直接摂取のリスクの観点からの土壌汚染がある場合(土壌含有量基準に適合しない場合)は、盛土等です。
なお、指示措置が土壌汚染の除去とされるのは、土地の用途からみて限定的な場合になります。土地の所有者等は、指示措置のほか、これと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置のうちから講じようとする措置(実施措置)を選択することが出来ます。
汚染除去等計画に記載された実施措置については、各措置に応じ技術的基準が定められており、これに適合しない場合は、都道府県知事等から計画の変更命令が出されます。
土地の所有者等は、汚染除去等計画に記載された実施措置が完了したときは、都道府県知事等に措置の完了等の報告をしなければなりません。
一方、形質変更時要届出区域では、土壌汚染の摂取経路がなく健康被害の生ずるおそれがないため、汚染除去等の措置を求められることはありません。ただし、土地の形質の変更を行う場合は、都道府県知事等にあらかじめ届出が必要となります。
汚染土壌搬出の規制について
要措置区域・形質変更時要届出区域から汚染土壌を搬出する場合には、事前の届出義務があります。このほか汚染土壌の運搬は運搬基準の遵守と管理表の交付・保管義務があります。
さらに汚染土壌を要措置区域等外へ搬出する者は、原則としてその汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなければならないと定められています。汚染土壌処理業者とは、汚染土壌の処理を業として営む者を言い、営業に当たっては、都道府県知事等の許可が必要です。
なお、汚染土壌の処理の委託の例外として、汚染土壌について処理の委託を行わずに、一定の条件を満たした他の要措置区域等へ移動することができます。
最後に
土壌汚染対策法の手指の一つは「汚染された土壌を適切に管理していくこと」です。そのため要措置区域等外へ搬出する場合、汚染土壌処理業者を見つけなければなりません。届出もしなければなりませんし、汚染土壌を途中で放棄せず最後まで全うしてくれる業者を見つけることが大切です。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考URL
・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)
・パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省(https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)
・土壌汚染対策法の概要| 東京都環境局 (https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/chemical/soil/law/outline.html)
・土壌汚染対策基準|愛知県(https://www.pref.aichi.jp/kankyo/kansei-ka/houreii/jyorei-1/rinku/d-kijyun.html)
2023/06/15
アスベスト除去作業のレベルごとの違いについて
労働安全衛生法等の法令の規制対象となるアスベストは、現在では製造や使用が禁止されています。しかしアスベストが規制される以前に建てられた建物にはアスベストが含まれており、今後そのような建物の解体が必要となります。アスベストを含む建築物等の解体・改修工事を行う場合には、石綿障害予防規則等の法令に基づき、アスベスト含有の有無の事前調査、労働者に対するアスベストばく露防止措置、作業の記録・保存などを行う必要があります。この記事ではアスベストレベルやレベルごとの除去作業の違いについて説明していきます。
アスベストとは?
石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。
その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止さ れました。
その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
アスベストのレベルについて
そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。
アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。
アスベストレベルは発塵性によってレベル分けされており、飛散性が高ければそれだけ、解体工事での飛散リスクにつながり近隣への影響も及ぼしやすくなります。
そのため、飛散の危険性にあわせて飛散防止策を講じなければなりません。
レベル1:発じん性が非常に高い
最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。
レベル1に分類される建材は「石綿含有吹付け材」です。石綿含有吹付け材は、アスベストにセメントやバーミキュライト、ロックウールなどを混ぜ、吹付け機で施工したものです。表面は綿状で柔らかく、深さが数cm程度あるのが特徴です。
レベル2:発じん性が高い
2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。
レベル3:発じん性が比較的低い
3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む建材を指します。
アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。
アスベストレベルごとの必要書類
レベル |
事前調査結果 |
工事計画届出 |
特定粉じん排出等作業届書 |
事前届出の実施 |
建築物解体等作業届 |
レベル1 |
必要 |
必要 |
必要 |
必要 |
必要 |
レベル2 |
必要 |
必要 |
必要 |
必要 |
必要 |
レベル3 |
必要 |
不要 |
不要 |
必要 |
不要 |
期日 |
工事着工14日前まで |
工事着工14日前まで |
工事着工14日前まで |
工事着工7日前まで |
作業日まで |
届け先 |
所轄労働基準監督署/自治体 |
所轄労働基準監督署 |
自治体 |
自治体 |
所轄労働基準監督署 |
アスベストはそのレベルによって作業の基準や工法が異なります。さらに作業ごとに必要な工事届出が異なります。ただし、下記意外にも条例や工事規模によって各種届出が必要な場合がございます。詳しくは各自治体の相談窓口にご相談ください。
レベル1
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「特定粉じん排出等作業届」「建設リサイクル法の事前届」
レベル2
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「特定粉じん排出等作業届」「建設リサイクル法の事前届」
レベル3
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「建設リサイクル法の事前届」
各レベルで実施される除去方法
アスベストレベル1・2・3の除去作業
アスベストレベル1・2・3共通で用いられる除去作業の工法があります。
除去工法
アスベスト含有吹き付け材を下地から取り除いていく工法を除去工法と呼びます。
専用の機材を使用して除去していくため、費用は高額になるケースが多いです。
リムーバル工法とも呼ばれるもので、アスベスト含有層を下地から取り除く方法。アスベストを完全に取り除いてしまうため、建物の解体時などの際に、再度、除去する必要もなく、もっとも推奨される工法です。
アスベストレベル1・2の除去作業
アスベストレベル1・2共通で用いられる除去作業には2つの工法があります。
①封じ込め工法
既存のアスベスト含有吹き付け材の上から溶剤を吹きかけることで外側からアスベストが飛散しないように封じ込める工法を封じ込め工法と言います。
除去工法と比較すると、もともとあったアスベストが残ってしまう点が難点で、建物自体を解体する時にアスベストを除去しなければなりません。
②囲い込み工法
アスベスト層部分を板材などのアスベストではない素材のものを取り付けて、完全に覆うことによりアスベストを密封することでアスベストの飛散を防ぐ方法を「囲い込み工法」と呼びます。
「囲い込み工法」も「封じ込め工法」と同様にもともとあったアスベストが残ってしまうのが難点です。
アスベストレベル3の除去作業
剥離工法
薬品でアスベストが含まれている仕上塗材や下地調整材をやわらかくして取り除く方法です。薬品によって湿潤化されるため、散水をする必要がなく、作業後の処理も楽。取り残しがある場合、他の工法との併用が必要。この工法は主にアスベストレベル3の除去作業で用いられることが多いです。
アスベストレベル別の費用相場に関して
アスベストレベル1解体費用相場
アスベストレベル1の解体費用相場は1.5万円~8.5万円です。アスベストレベル1は最も発じん性が高く、建物の柱や梁、天井に石綿とセメントの合剤の「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられていることが多く、アスベスト濃度と飛散性の両方が高いので非常に注意が必要です。「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられているため、処理免責が広くなる傾向にあるため、除去の作業費用は高額になりやすいです。
アスベストレベル2の解体費用相場
アスベストレベル2の解体費用は、1㎡あたり1万円~6万円が目安です。アスベストレベル2の取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。
アスベストレベル2も飛散性とアスベスト濃度が高く、解体工事には注意が必要です。
アスベストレベル3の解体費用相場
アスベストレベル3の解体費用の目安は0.3万円/㎡です。アスベストレベル3の解体作業はアスベストレベル1や2と比較するとアスベストの飛散リスクが低いため、解体費用は低くなります。
アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です
アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。
2023/06/09
アスベスト調査の項目について
令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられます。さらに令和5年(2023年)10月からは有識者によるアスベストの事前調査・分析が義務化されることが決まっています。調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。この記事ではアスベスト調査の項目について説明していきます。
アスベストとは?
石綿(アスベスト)とは、天然の繊維性けい酸塩鉱物で、日本語では「いしわた」「せきめん」と言われ、英語では「アスベスト」と言いわれています。
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。
事前調査とは?
工事前に建築物等に使用されている建材の石綿含有の有無を調査することを指します。事前調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本とされています。
建築基準法など各種法律に基づき施工された石綿含有建材以外にも、改修・改造・補修などにより、想定できないような場所に石綿が使用されている場合があるため、建材等の使用箇所、種類等を網羅的に把握し的確な判断を行う必要があります。
事前調査は、書面による調査と、目視による調査の両方を行う必要があります。また、その結果を記録し、3年間保存する義務があります。さらにその記録を作業場所に備え付け、労働者に見やすい場所に掲示する必要があります。
また、一定規模以上の解体工事の場合、事前調査の結果を石綿の有無を問わず、労働基準監督署に報告する必要があります。
アスベスト事前調査の主な項目
アスベスト事前調査の主な項目は以下です。
・アスベスト含有建材の使用の有無
・アスベスト含有建材の種類
・アスベスト含有建材の使用個所
・アスベスト含有建材の量または面積
アスベスト事前調査の流れ
アスベストの事前調査の流れ
①書面調査
・調査実施計画作成
・計画承認
・図面調査
・発注者ヒアリング
・アスベスト含有の有無仮判定
・目視調査の準備
②現地調査(現地による目視調査)
・外観観察
・屋上・外構確認
・内部レイアウト・各部屋確認
③採取・分析調査
・現物確認
・分析用試料採取
④報告
掲示義務について
事業者は、建築物等(鋼製の船舶を含む)の解体等の作業、封じ込め又は囲い込みの作業を行うときは、あらかじめ、石綿の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければなりません。調査の結果、石綿の使用の有無が明らかとならなかったときは、分析調査し、その結果を記録しておかなければなりません。また、これらの調査を終了した日、調査の方法及び結果の概要について、労働者が見やすい箇所に掲示しなければなりません。ただし、石綿等が吹き付けられていないことが明らかで、石綿が使用されているとみなして対策を講じる場合、分析調査の必要はありません。
【報告対象となる工事】
建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80 ㎡以上)
建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
石綿障害予防規則に基づき労働基準監督署にも報告する必要があります。
石綿障害予防規則に基づく報告は、上記に加え、鋼製の船舶の解体又は改修工事(総トン数20トン以上)も必要です。
アスベスト事前調査の報告内容
事前調査結果は、都道府県・労働基準監督署へ提出・報告が必要です。
具体的には一部抜粋になりますが以下のような内容になります。
工事概要、建築物等の概要、調査概要、建材ごとの調査結果と石綿「有」「みなし」の場合の作業時の措置など、細かく記載し報告しなければなりません。事前に報告内容も確認するようにしましょう。
【 報告内容(一部抜粋)】
・書面による調査・及び目視を行った者
・分析に夜調査を行った箇所
・分析による調査を行った者の氏名及び所属する機関又は法人の名称
・建築材料の種類
┗事前の調査の結果(石綿有・みなし・石綿無)
┗特定建材に該当しない場合の判断
(①目視 ②設計図面 ③分析 ④建設材料製造者による照明 ⑤建築材料の製造年月日)
報告対象となるアスベスト含有建材の種類
- 吹付け材
- 保温材
- 煙突断熱材
- 屋根用折版断熱材
- 耐火被覆材(吹付け材を除き、けい酸カルシウム板第2種を含む。)
- 仕上塗材
- スレート波板
- スレートボード
- 屋根用化粧スレート
- けい酸カ ルシウム板第1種
- 押出成形セメント板
- パルプセメント板
- ビニル床タイル
- 窯業系サイディング
- 石膏ボード
- ロックウール吸音天井板
- その他の材料
アスベスト調査を行った後の対応
アスベスト含有建材の有無にかかわらず、下記4点を行わなければなりません。
調査結果の発注者への説明(書面を交付)
調査記録の作成・保存(工事終了後3年間)
調査結果の現場備え置き
調査結果の現場掲示(A3サイズ以上の掲示板を公衆の見やすい場所に設置)
調査結果の掲示に関しては、下記をご参照ください。
建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル
建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(環境省)
事前調査結果の報告について
一定規模以上の建築物等の解体等工事について、アスベスト含有建材の有無にかかわらず、都道府県等への報告が義務付けられています。
報告は、原則として石綿事前調査結果報告システムから電子申請で行ってください。システムの利用時には「gBizID」への登録が必要となります。
アスベスト調査の保存期間について
事前調査結果に関する記録は、解体等工事が行われている間、工事現場に備え置く必要があります。作業計画に基づく作業実施状況等を記し、作成した書類は解体等工事の終了後、3年間保存が必要です(電子保存も可)。
実施状況等の内容には以下などの例があります。
①掲示・表示(事前調査の概要、関係者以外立入禁止、喫煙・飲食禁止、石綿等を取り扱う作業場である旨等の掲示)
②隔離の状況、集じん・排気装置の設置状況、前室・洗身室・更衣室の設置状況、排気口からの漏えいの有無の点検結果、前室の負圧に関する点検結果、隔離解除前の確認の実施状況等(負圧隔離を要する作業を行う場合に限る)
③作業計画に示されている作業の方法、石綿粉じんの発散・抑制方法、石綿ばく露防止の方法のとおりに作業が行われたことが確認できる記録(湿潤化、保護具の使用状況等。作業を行う部屋や階が変わるごとに記録が必要)
④除去等を行った石綿等の運搬又は貯蔵を行う際の容器・包装、当該容器等への表示、保管の状況
また、作業者の記録、および健康診断の結果に関しては、石綿の作業に従事しなくなった日から40年間保存する義務が課せられています。
アスベスト調査の補助金について
上記のように、アスベストの解体前のアスベスト調査は必須となります。そこでアスベスト調査を行う際の補助金についても少々触れておきます。
民間の建築物のアスベスト調査などに関して、国土交通省は補助制度を設けており、それぞれの自治体によって補助制度は異なります。補助制度がある地方公共団体は活用することが可能です。
※ 補助制度がない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。
国が示している支給条件は以下のようになります。
・補助事業の対象:建築物の吹付け材のアスベスト含有の有無に関する調査
・対象建築物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトが使用されている可能性がある建築物
・補助額:限度額は原則として25万円/棟