解体工事における防音シートについて

解体工事は、建物を撤去する際に行われる重要なプロセスです。しかし、解体作業には大きな騒音を伴うことが一般的であり、周辺の環境や住民に影響を与える可能性があります。そのため、解体工事現場での防音対策は重要な課題となっています。今回は解体工事における騒音や振動の規制について述べた後、防音シートについてご紹介します。

解体における振動や騒音の要因

 建物解体における振動や騒音の要因は一つではありません。複数の要因で振動と騒音が発生します。

①建物解体時の振動や騒音

主に重機で解体するため大きな振動が発生します。建物の壁や柱などを壊すときの重機による振動が建物の基礎部分を通じて周辺に伝わります。重機を使用する際の音も大きいため騒音となります。

②重機の搬入による振動や騒音

重機は約1t10tほどの重量があり、地面に衝撃を与えながら移動するため重機の搬入時には振動と騒音が地面を介して伝わります。

③資材落下による振動や騒音

建物解体の際資材が地面に落下することで周辺に振動が伝わります。落下する資材が大きければ大きいほど振動と騒音が発生し、頻繁に落下する場合は揺れも生じます。

騒音規制法・振動規制法

 建物解体中にどうしても起こってしまう騒音。騒音により近隣住民からクレームが発生しかねません。そこで騒音規制法・振動規制法という環境省が定めている法律があります。

騒音規制法とは、建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行うとともに、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とされた法律です。

建設工事として行われるくい打機などの作業のうち、著しい騒音を発する作業であって政令で定める作業を規制対象としています。

具体的には、都道府県知事が規制地区を指定し環境大臣が騒音の大きさ、作業時間帯、日数、曜日などの基準を定めており、市町村長が対象規制の建設作業に対して必要に応じて改善勧告をおこなうといったような、建設作業騒音の規制が騒音規制法により決まっています。(1) 

一方、振動規制法も騒音規制法と同じ概念と考えられます。解体工事により発生する振動により生活が脅かされないようにするための法律です。(2)

騒音規制法・振動規制法を超える騒音・振動は近隣住民とのトラブルにつながるため守ることが必要不可欠です。

振動や騒音の規制基準について

振動の上限は75デシベルまで、騒音の上限は85デシベルまでが基準値として定められています。この基準値を超えた場合は、市町村長から改善勧告を受けることがあります。そのため基準値を超えずに作業をすることが好ましいです。

規制内容

1号区域における規制基準

2号地域における規制基準

特定建設作業の場所の敷地境界上における基準値

騒音:85デシベル

振動:75デシベル

騒音:85デシベル

振動:75デシベル

作業可能時刻

午前7時から午後7

午前6時から午後10

最大作業時間

一日あたり10時間

一日あたり14時間

最大作業期間

連続6日間

連続6日間

作業日

日曜その他の休日を除く日

日曜その他の休日を除く日

区域区分

該当区域

1号区域

1,2種低層住居専用地域、第1,2種中高層住宅専用地域、第1,2住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、用途指定のない地域、工業地域及び条例の追加規制地域のうち学校、保育所、病院、入院施設を有する診療所、図書館、特別養護老人ホーム及び幼保連携型認定こども園の敷地の周囲80メートルの区域内

2号区域

工業地域及び条例の追加規制地域のうち1号区域以外の地域

特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)より

防音シートとは

 防音シートとは、養生シートの種類の一つで騒音を吸収しまたは遮断するために使用される特殊な素材から作られた薄いシート状の製品です。一般的には解体工事や建設現場などの騒音の多い環境で利用され、外部への騒音の漏れを最小限に抑えることが目的とされています。

防音シートは吸音素材を組み合わせた構造を持ち、振動や音波を吸収して反射を抑制します。これにより、周囲への騒音の影響を軽減し、周辺住民への配慮、作業環境の改善が可能となります。防音シートは柔軟で取り付けが容易なためさまざまな場所や形状に適用することが出来ます。

防音シートと養生シートの違いについて

 防音シートと養生シートは、それぞれ異なる目的で使用される建設現場や工場現場での保護材料です。

防音シートは、前述の通り、主に騒音の制御と低減が目的です。特殊な素材や構造を持ち、騒音を吸収または遮断することで、周囲への騒音の影響を最小限に抑えます。解体工事や建設作業などの騒音の多い環境で使用され、周辺住民への配慮や作業環境の向上が重視されます。

一方で養生シートは主に作業現場や建物の保護が目的です。建物を作業中の汚損や損傷から守り施工品質を保つために使用されます。防水性があり、塗料やクレーン操作などの作業による影響から守ります。養生シートは一時的な保護が求められる様々な場面で利用され、作業効率の向上から重要な役割を果たします。

すなわち、防音シートは主に騒音の管理に焦点を当て、養生シートは主に建物や作業現場の保護に焦点を当てた用途が異なります。

防音シートの役割と効果

 解体工事において防音シートは、騒音を吸収・遮断し、周辺への騒音の拡散を最小限に抑える役割を果たします。その主な効果には以下の点が挙げられます。

①騒音の吸収・・・防音シートは特殊な素材や構造を持ち、音波を吸収することが出来ます。これにより解体作業による騒音を低減させます。

②騒音の遮断・・・防音シートは外部からの騒音を遮断する働きもあります。これにより、解体工事現場周辺の住民や近隣施設への影響を最小限に抑えることができます。

③作業環境の改善・・・騒音が低減されることで、業者の作業環境が向上し作業効率の向上や業者の健康への影響を軽減することが期待できます。

防音シートを選ぶポイント

 防音シートを選ぶ際には様々な要因を考慮する必要があります。以下に防音シートを選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。

①素材の選定・・・防音シートの素材は様々であり、吸音性や遮音性が異なります。繊維質の素材や特殊なコーティングが施された素材など、用途に応じて最適な素材を選ぶことが重要です。

②厚みの考慮・・・防音シートの厚みも防音性能に影響を与えます。一般的には厚いほど高い防音性能が期待できますが、現場の制約やコストも考慮して適切な厚みを選定する必要があります。

③耐久性・・・解体工事は屋外での作業が主体となるため、防音シートは耐久性を備えていることが重要です。長期間の使用に耐え、悪天候にも強い防音シートを選ぶことが望ましいです。

近隣トラブルを回避するために

 建物解体においてどうしても起きてしまう振動や騒音。その被害を受けるのは近隣住民です。近隣住民にある程度我慢してもらう必要があります。そのために事前に出来ることはすることが大切です。

①解体業者選びを妥協しない

建物解体の知識を施主は持ち合わせていない場合が多いです。そのため近隣挨拶を行う際にしっかりと知識を持った解体業者に説明してもらうことが必要となります。そこで丁寧な対応をしてくれる解体業者を選ぶことが大切となります。解体業者選びを妥協すると近隣挨拶の際説明不足で近隣トラブルの発生につながりかねないため解体業者は慎重に選ばなければなりません。

②近隣挨拶

着工前のご挨拶を行います。工事の概要をご説明し、騒音や振動、粉じんなどに関する近隣クレームが発生しないよう、ご説明します。具体的に何時から何時       までが工事、何日から何日まで、いつが休日なのかということも伝えます。建物解体の1週間前くらいには挨拶を終わらせることが理想です。

通常は解体業者が主導として行い専門的知識を解体業者が説明し説明不足による近隣クレームの回避になります。施主も一緒に挨拶に回ることでトラブルを回避しやすくなります。菓子折りなどを用意して持参することがおすすめです。

最後に

解体工事における防音シートは、周囲への騒音の影響を軽減するために欠かせないアイテムです。適切な素材や厚み、取り付け方法を考慮して防音シートを選定することで解体工事現場の騒音問題を解決することが出来ます。そして建物の解体にはどうしても振動や騒音がつきものです。そのため近隣へのご挨拶・説明など近隣へのサポートが一番大事と言えます。建物解体をスムーズに進めるためにもコミュニケーションを取りやすく、近隣サポートが万全な業者を見つけることが大事です。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。

全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください

参考URL

(1)騒音規制法| 環境省
(
https://www.env.go.jp/air/noise/low-gaiyo.html) 

(2)振動規制法| 環境省
(
https://www.env.go.jp/air/sindo/low-gaiyo.html)

(3)特定建設作業の規制について| 大阪府
(
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)

参考URL

特定建設作業の規制について| 大阪府
(
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)

建設業法|法令検索
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)

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土壌汚染における特定有害物質の分類について

土壌汚染の原因となる特定有害物質は、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)の3種類に分かれています。今回は土壌汚染対策法の特定有害物質の分類についてご紹介します。

土壌汚染による健康リスク

 土壌汚染による健康リスクとは、土壌中の有害物質が健康への影響を及ぼすおそれのことです。土壌汚染による健康リスクの程度は、土に含まれる有害物質の有害性の程度と土に含まれる有害物質や地下水に溶け出した有害物質が主に口から人の体に取り込まれる量で決まります。

したがって、土に含まれる有害物質の有害性を評価するだけではなく摂取量を併せて評価することによりリスクを評価し、その結果に基づいて対策を検討することが大切となります。

基準に適合しない土壌が地中に存在しても、土壌中の有害物質が人の体に取り込まれる経路を遮断すれば人の健康に影響を及ぼす健康リスクは生じません。

土壌汚染対策法の基準値について

 土壌の特定有害物質による汚染から私たちの健康を維持し環境保全する必要があります。

土壌汚染対策法基準は、特定有害物質による土壌汚染等の有無を判断する基準であり、土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下水基準の3つからなっています。 

特定有害物質とは土壌や地下水に含まれることが原因で人の健康に被害を生ずるおそれがある有害物質として土壌汚染対策法施行令で定めた26物質のことです。

第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)があり、各物質ごとに土壌溶出量基準や土壌含有量基準等の基準値が設定されています。

①地下水摂取などによるリスクからは土壌溶出量基準が、②直接摂取によるリスクからは土壌含有量基準が定められています。

土壌溶出量基準及び地下水基準は、土壌に含まれる特定有害物質が溶け出し、地下水等から飲料水にともなって間接摂取して問題ないレベルとしての基準です。

土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質を経口又は皮膚より直接接種しても問題ないレベルとしての基準です。

土壌溶出量基準については、すべての特定有害物質に設定されていますが、土壌含有量基準については、特定有害物質のうち貴金属を中心とする9物質についてのみ定められています。

土壌汚染対策法の基準値一覧

  土壌汚染対策法の基準値一覧を掲載します。

土壌溶出量基準は、土壌に水を加えた場合に溶出する特定有害物質の量に関する基準で、1リットル中のミリグラム(mg/l)で表します。

土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質の量に関する基準で、1キログラム中のミリグラム(mg/kg)で表します。

地下水基準は、地下水に含まれる特定有害物質の量に関する基準で、1リットル中のミリグラム(mg/l)で表します。

第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)

第一種特定有害物質は、土壌含有量基準がないため「-」で表しています。

特定有害物質の種類

土壌溶出量基準

土壌含有量基準

クロロエチレン

検液1Lにつき0.002mg以下であること

-

四塩化炭素

検液1Lにつき0.002mg以下であること

-

1,2-ジクロロエタン

検液1Lにつき0.004mg以下であること

-

1,1-ジクロロエチレン

検液1Lにつき0.1mg以下であること

-

1,2-ジクロロエチレン

検液1Lにつき0.004mg以下であること

-

1,3-ジクロロプロペン

検液1Lにつき0.002mg以下であること

-

ジクロロメタン

検液1Lにつき0.002mg以下であること

-

テトラクロロエチレン

検液1Lにつき0.01mg以下であること

-

1,1,1-トリクロロエタン

検液1Lにつき1mg以下であること

-

1,1,2-トリクロロエタン

検液1Lにつき0.006mg以下であること

-

トリクロロエチレン

検液1Lにつき0.01mg以下であること

-

ベンゼン

検液1Lにつき0.01mg以下であること

-

第二種特定有害物質(貴金属等)

特定有害物質の種類

土壌溶出量基準

土壌含有量基準

カドミウム及びその化合物

検液1Lにつきカドミウム0.003mg以下であること

土壌1kgにつきカドミウム45mg以下であること

六価クロム化合物

検液1Lにつき六価クロム0.05mg以下であること

土壌1kgにつき六価クロム250mg以下であること

シアン化合物

検液中にシアンが検出されないこと

土壌1kgにつき遊離シアン50mg以下であること

水銀及びその化合物

検液1Lにつき水銀0.0005mg以下であり、検液中にアルキル水銀が検出されないこと

土壌1kgにつき水銀15mg以下であること

セレン及びその化合物

検液1Lにつきセレン0.01mg以下であること

土壌1kgにつきセレン150mg以下であること

鉛及びその化合物

検液1Lにつき鉛0.01mg以下であること

土壌1kgにつき鉛150mg以下であること

砒素及びその化合物

検液1Lにつき砒素0.01mg以下であること

土壌1kgにつき砒素150mg以下であること

ふっ素及びその化合物

検液1Lにつきふっ素0.8mg以下であること

土壌1kgにつきふっ素4,000mg以下であること

ほう素及びその化合物

検液1Lにつきほう素1mg以下であること

土壌1kgにつきほう素4,000mg以下であること

第三種特定有害物質(農薬等/農薬+PCB

第三種特定有害物質は、土壌含有量基準がないため「-」で表しています。

特定有害物質の種類

土壌溶出量基準

土壌含有量基準

シマジン

検液1Lにつき0.003mg以下であること

-

チオベンカルブ

検液1Lにつき0.02mg以下であること

-

チウラム

検液1Lにつき0.006mg以下であること

-

ポリ塩化ビフェニル(PCB)

検液中に検出されないこと

-

有機りん化合物

検液中に検出されないこと

-

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)より

第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)について

 第一種特定有害物質とは、「揮発性有機化合物(VOC)」と呼ばれる有害物質です。蒸発しやすく、大気中で気体となる有機化合物の総称です。揮発性有機化合物は様々な成分があり、主なものだけでも200種類はありますが、その中でも12種類が第一種特定有害物質に分類されています。

塗料や接着剤、インクなどに含まれる溶剤やガソリンから揮発してくるジクロロメタンやトリクロロエチレンなどが代表的な成分です。

都内では、2015年の1年間の排出量は、約6万トン排出されています。

地下水に溶出しやすいことから拡大範囲も広く健康被害が懸念されるため、土壌溶出量基準が設定されています。土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌ガス調査を実施することが必要となっています。 

第二種特定有害物質(貴金属等)について

 第二種特定有害物質とは、貴金属などを含んだ有害物質です。9種類が第二種特定有害物質に分類されています。

第二種特定有害物質は土壌に吸着しやすく浸透性が低いことから比較的表層に近い場所で土壌汚染を引き起こすのが特徴です。

第二種特定有害物質は、汚染された地下水による被害に加えて土壌からの直接摂取の健康被害が懸念されるため、土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌溶出量調査及び土壌含有量調査を実施することが必要となっています。

第三種特定有害物質(農薬等/農薬+PCB)

第三種特定有害物質とは、主に農薬です。除草剤や殺虫剤として使用されていた5種類が第三種特定有害物質に分類されています。人体への影響からすでに製造中止になっているものも含まれます。土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌溶出量調査を実施することが必要となっています。

最後に

 特定有害物質はその特性によって26物質が、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)の3種類に分類されています。土壌汚染の原因物質が何かを知ることにより土壌汚染対策の理解も深められます。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

参考URL

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)

VOCとは?| 東京都環境局
(
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/what_voc.html)

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アスベスト除去の工法について

アスベスト除去の工法については、主に5種類の工法があります。封じ込め・囲い込み・除去・ウォータージェット・剥離それぞれの工法について、詳しく解説します。

封じ込め工法

アスベストに溶剤を吹き付けて固定し、大気中へ飛散しないように封じ込める工法です。この工法ではアスベストを除去するのではなく、溶剤で固めてしまう工法で、作業の際にアスベスト飛散リスクが低く、短期間で作業できます。注意点としては、アスベスト除去ではないため、施工後にも定期的な点検や管理が必要で、解体工事をする時には最終的にアスベストの除去が必要なため、トータルコストとしては高くなる可能性があります。

囲い込み工法

アスベストが含まれる資材や建材の周囲を非アスベスト建材などで覆い隠す工法です。アスベストを囲って閉じ込める工法のため、カバーリング工法とも呼ばれることもあります。天井や梁にアスベストが使われている建物などでは、室内への飛散を防止する目的で行われます。この工法は短期間で作業が完了できますが、天井が低くなってしまうなどのデメリットもあります。また施工後もアスベストの点検や管理が必要で、封じ込め工法と同じく解体工事をする際には、アスベスト除去作業が必要になります。

除去工法

アスベストが含有されている資材・建材を全て除去し、アスベストを含まない資材・建材に入れ替える工法です。この工法は、改築後などに除去後のアスベストを管理しなくて済む部分がメリットの1つです。また飛散しやすいアスベストを的確に処理できるため、解体工事の際にはこの工法が必須です。一方で除去工法は徹底した安全管理のもとで工事を行う必要があり、他の工法と比べて費用が高く、作業に必要な期間も長くなります。

ウォータージェット工法

高い水圧の水を外壁など塗膜へ噴射し、湿潤化したうえでアスベストを除去する工法です。剥離剤は使わず、高圧の水で塗膜を湿潤化して除去するため大気中へ飛散しづらく、へこんだ部分なども施工できます。注意点としては高圧水の設備を使うため、費用が高くなる可能性があります。なお、ウォータークリーン工法の補助工法として開発された集塵機付きディスクグラインダー工法というものがあり、プラント設置が必要な分、濾過槽を通して廃材と濁水を分別でき、上澄み水は現地放流出来るため廃材処分が軽減され、 省スペース化が実現できるため、プラント設置ができない現場でも対応可能な工法もあります。

剥離工法

剥離剤を使ってアスベストを除去する工法です。主にアスベストを含有する仕上げ塗材(塗膜)を除去する際に用いられる工法です。塗膜にアスベストが含まれる場合、そのまま除去すると粉じんが飛散するリスクがありますが、この工法では剥離剤を使って塗膜を湿潤化した状態で除去作業を行いますすので、そのまま除去する場合に比べてもアスベストが飛散するリスクを低減できます。なお、部分剥離工法としてグローブバッグ工法があります。この工法は、機械室の配管エルボなどに使用されている石綿保温材を除去する際に用いる工法で、除去する石綿保温材周辺を部分的にグローブバッグを使用し密閉にして、グローブバッグ内で保温材の剥離作業を行う工法です。

これらの工法は、業者によって上記以外の特殊な方法を取り扱っている業者もいるなど、各社対応できる工法が異なることもありますので、事前に業者に確認して、費用や工期なども確認しておくのが良いです。

アスベストのレベルに応じて工法を選ぶ

アスベストのレベルは、飛散の危険性に合わせて作業レベルが違います。レベル1から3までの3段階に分かれており、レベル1が最も危険なレベルです。レベル1が発じん性が著しく高い場合、レベル2は発じん性が高い場合、レベル3は発じん性が比較的低い場合となっており、それぞれ適した工法で処理を行う必要がありますので、これについて詳細説明をします。

アスベストレベル1

主に隔離工法が用いられます。隔離工法では、作業場所を養生シートなどで隔離して集じん装置で作業場所を負圧に保ったうえで作業していきます。除去作業が終了したら、集じん装置を24時間稼働させ、作業場内の残留アスベストを取り除く処置が必要です。除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法などが必要になります。

アスベストレベル2

アスベストを掻き落とし、切断・破砕などによって除去する際には、レベル1の隔離工法と同様の養生・設備が必要となります。また、掻き落としや破砕が伴わない配管保温材などを除去する場合は、立入禁止措置・掲示と周辺の飛散養生と散水のみで作業が可能です。除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法、ウォータージェット工法などが必要になります。

アスベストレベル3

建築物の高さ以上の防じんシート養生が必要となります。設置完了後、散水によってアスベストを湿潤させて、原型のまま手ばらしで除去します。投下や重機作業は破砕の危険性があるため原則、禁止されています。主に剥離工法が必要になります。

アスベスト除去に必要な資格について

アスベスト除去を作業する現場では、安全に作業ができるように「石綿作業主任」と呼ばれる資格者が必要となります。石綿作業主任者とは、工場や建築物等の解体・改修工事現場など、アスベストを扱う現場の作業主任者であるという資格で、労働安全衛生法に定められた国家資格となります。アスベストを扱う作業においては、石綿作業主任者を選任する必要があります。

石綿取扱作業従事者はアスベストを取り除くために必要な専門の資格であり、石綿取扱作業従事者の特別教育を受けていない場合、作業関係者以外は現場に入ることはできませんし、アスベスト入り建材を運ぶ作業すらできません。労働安全衛生法で取得が義務づけられているため、資格のない作業員を働かせると罰則の対象になります。

石綿作業主任者は局所排気措置や除じん装置の点検、作業指揮、汚染の除去などを行いますので、石綿作業主任者の管理なしでは、アスベスト除去作業を行うことができません。

アスベスト処理は、労働安全衛生規則で「危険または有害」な業務に指定されているほど危険で、命に関わるケースもありますので、解体業者やアスベスト除去の専門業者には、石綿取扱作業従事者の資格を事前に確認することがとても重要です。

なお、各協会・各都道府県の労働基準協会や中小建設業特別教育協会、労働局長登録の教習機関、建設機械の教習所などで講習を受けることができ、費用は概ね10,000円前後になります。

アスベストレベルごとの目安の処理費用について

アスベストレベル別の1㎡あたりの処分費の相場は、

・レベル115,000~85,000

・レベル210,000~60,000

・レベル33,000

この辺りが費用の相場です。レベル1が最も発じん性が高く作業を慎重に進める必要があるため、一番費用が高くなります。

この記事ではアスベスト除去の工法について記載させていただきましたが、より詳細の説明やデータなどが必要な場合は、関連する研究機関や公的機関の資料を参照することをお勧めしております。株式会社エコ・テックではアスベスト調査分析や除去、解体工事まで幅広い範囲の対応を日本全国で行なっており、どの工法対応可能です。アスベスト除去の専門家として豊富な実績を保有しておりますので、アスベスト調査に関するご相談はお気軽にエコテックまでお問い合わせください。

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アスベスト調査のみなし判定について

アスベストみなし判定とは

アスベストみなし判定とは、建築物や製品に含まれるアスベストの存在を法的に認定するプロセスのことを指します。この判定は、特に建築物の解体や改修の際に重要となり、アスベストの安全な取り扱いや除去作業を行うための基準となります。対象建材に対し、「アスベストが入っているものとして扱う」ことが出来る判定で、アスベスト含有の有無を判断するには、アスベスト分析の専門機関に分析を依頼する必要がありますが、この分析を行わずにアスベストが含有しているものとして扱う方式をみなし判定と言い、厚生労働省の石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルでも試料の採取→分析に並び、「石綿ありみなし」としてみなし判定が定義されています。

アスベストみなし判定の流れ

アスベストみなし判定のプロセスとして、まずは専門家が建築物や製品のサンプルを採取します。その後顕微鏡などを用いた分析によって、アスベストの種類と含有量を特定します。建築物等に対する調査を行った結果、石綿の含有の有無が不明である場合において分析を行いますが、分析を行わずに石綿含有「みなし」とすることができます。

その際に具体的には同一と考えられる建材後とに、主に次のような要素を踏まえて環境負荷や石綿対策に要する費用などが比較考量されて選択されています。

・再資源化の要否
(簡単に石綿が有りとするのではなく、石綿なしを証明して再資源化すべきものかどうか)

・石綿ばく露・飛散防止対策や廃棄物処理に要する費用
(石綿ではないと証明できた場合のコスト減少 保温材・断熱材等 > 成形板等 等)

・石綿の含有の可能性
(可能性が低いほど分析により含有の有無を判定した方がトータルてコストが下がる場合が多い一方で、可能性が高いほどみなしが効率的となる可能性があります。)

石綿含有の有無が不明な建材については分析を行うか、石綿含有みなしとするか選択する必要がありますが、特に分析検体数によって費用等が変わってくることから、発注者等に分析検体数を個別に相談する必要があることが多いです。

アスベストみなし判定の対象

建築物の解体・改修時

建築物の解体や改修工事を行う際、特に建物が古い場合、アスベストが使用されている可能性があります。このような状況では、アスベストの存在を確認し、適切な対策を講じる必要があります。

工業製品の分析

過去にアスベストが広く使用されていたため、古い機械や器具にも含まれている可能性があります。これらの製品の分析と評価も、みなし判定の対象となります。

アスベストみなし判定で見落としやすいケース

内装等の内側に石綿建材が隠れている例や、一区画のみ石綿建材が使用されているケースなどでは、見落としやすい例があります。以下にその例を記載します。

・内装仕上材(天井ボード、グラスウールやセメント板等)の下に石綿含有吹付け材が存在するケース(過去の囲い込み工事等によるものなど)

・石綿含有吹付け材の上からロックウール(石綿含有:無し)が吹き付けられているケース

・耐火建築物、鉄骨梁への耐火被覆吹付けロックウール施工時に他部材へ吹きこぼれたケース(またはこれらを見落とし、天井上吹付けロックウール等の脱落・堆積物を見逃すなど)

・鉄骨造の柱・梁に石綿含有吹付け材が存在し、その内装仕上げ材としてモルタル等が使われているケース

・鉄骨造の柱に吹き付けられた石綿含有吹付材の周囲をブロック等で意匠的に囲われている場合

・天井の一部に仕上材(意匠)として石綿含有吹付け材が使用されている場合や、鋼板の仕上材の裏打ちとして石綿含有ロックウール等が吹き付けられているケース

・準耐火建築物の防火区画、異種用途区画などのために、建物全体の主要構造部(柱、梁、床、階段)の耐火被覆ではなく、建物の一部分の主要構造部(柱、梁、床、階段)に耐火被覆として石綿含有の吹付け材を使用しているケース

RC内壁に青石綿が吹き付けられ(想定:改修時など)、その上にラス網を張りモルタル+ブラスター塗り仕上げが行われているケース

・敷居のない大輝なフロアで奥など特定の1区画のみ石綿等で吹き付けられている

・煙突内部が綿状ではなく、成形板の形状の断熱材を見間違ってしまうケース
煙突用断熱材の調査における注意点として、昭和52(1977)年よりライナー層と断熱層の二重構造となったため、一見するとスレート管があるだけで断熱材はないものとして見落としがちです。内部に断熱材がないか確認することは必須です。 (昭和 39(1964)年以降煙突用断熱材が存在しますが、昭和 52(1977)年までは、断熱材が露出した施工方法であるため、目視による確認がしやすいです。)

(カポスタック)アモサイトフェルト状とライナー付き二重構造製品
(ハイスタック・パールスタック)ライナーだけの煙突断熱材があることも見逃しがちです。

・外装(外壁や柱)のボードや金属パネルの内側に耐火被覆板が使用されているケース

・外壁とコンクリート床の取り合い(上階と下階を区画する)の層間塞ぎとして詰められ、モルタル等で仕上げられているケース

・防火区画の貫通部(給排水及び電気設備)に石綿吹付け材・石綿含有建材等が使用されている例

・石綿含有吹付け材が使用された機械室や、地下フロア等が用途変更により石綿含有吹付け材が使用された天井等が天井ボード等で仕切られている例

・防耐火構造認定にあるように、壁や天井、柱等に下地構造によっては複層板や同種成形板の複層張りや、異種成形板の複層張りが存在するケース

・階段裏の石綿含有の建材をプラスチックシートで養生の上、岩綿吸音板で張仕上をしている例

・配管保温材のエルボー部だけでなく、直管部に石綿含有保温材が使われていたケース。

ALC板の層間塞ぎにロックウール充填が図面に指示され、充填忘れもしくは外れている 状況などがあります。近くにはファスナー部の耐火被覆を見ることもできますがわかりにくいケースです。

・玄関のひさしの中、ラリ内(結露防止や震動音防止のため)、シャフト内、パイプスペース、カーテンウォール裏打ち

・目視できる高さにない細部のキャンパスの継ぎ手や機械室、最上階天井裏スラブや防火壁の欠き込み部分変電器裏の見えない部分に石綿等が吹き付けられているケース
けい酸カルシウム板第2種は、耐火被覆として多く使用されていますが、表面は塗装や化粧紙を貼っているために、外部からでは分かりにくい場合があります。外壁などの外部、サッシ廻りや目地のコーキング剤、煙突、屋上ルーフィングなどにも注意が必要です。

・システムキッチンのシンクの裏側に防音塗料が使ってあり、そこにアスベストが含有しているケース

・観客席天井仕上の下地リブラス張に吹き付けられた石綿の一部が、リブラスの編み目を通り抜けるなどし、吊りボルトや金物、天井建材などにも付着・堆積している例

・梁をモルタルで仕上げられた際に、天井に吹き付けられた石綿をモルタルが噛み込んでいて、その部分の除去が漏れている例

これらのケースには特に注意が必要です。

アスベストがよく使われている箇所について

建築物等の構造や目的、建材の種類などにより、使用されている建材が類推できます。

・建材種類別の多用箇所

・防火規制・用途等による多用箇所

 

この記事ではアスベスト調査のみなし判定について記載させていただきましたが、より詳細の説明やデータなどが必要な場合は、関連する研究機関や公的機関の資料を参照することをお勧めしておりますが、株式会社エコ・テックではアスベスト調査分析や除去、解体工事まで幅広い範囲の対応を日本全国で行なっております。専門家として豊富な実績を保有しておりますので、アスベスト調査に関するご相談はお気軽にエコテックまでお問い合わせください。

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