大気汚染防止法改正に伴い、令和5101日以降に着工される建築物の解体・改修工事から、アスベストの有無の調査を有資格者が行うことが義務付けられます。工作物の解体・改修工事については、有資格者が行う必要はありません。また、アスベストの使用禁止(平成1891日)以降に設置されたことの確認は、有資格者でなくても行うことができます。ただし、令和5年9月30日以前の解体・改修工事など、有資格者による調査が義務付けられていない解体・改修工事についても、アスベストの有無の調査は必要です。

事前調査を行うことができる者

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)

④令和5930日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者。

建築物石綿含有建材調査者はアスベストに関する知識を有しているだけでなく、建築物の調査に関する実務に精通しているアスベスト調査の専門家です。アスベストに関してはアスベストが使われている建材に関する知識を有し、建材の採取方法や分析技術、さらには分析結果の解析力があり、アスベスト含有建材の維持管理方法に関する知識を有しています。また、建築物に関しては、意匠・構造・設備の知識の他、建材・施工手順・工法に関する知識を有し、設計図書や施工図などを読み解き、必要な情報を抽出することができます。さらに、アスベストのもたらす社会的な危険性を理解し、中立的な立場から精確な報告を行う力を有しています。

登録講習機関

資格を取得するためには、登録講習機関が実施する講習を受講し、修了する必要があります。(最新の登録状況は各都道府県労働局にお問い合わせください)

・(一社)日本環境衛生センター・(一社)日本環境衛生センター・(一社)環境科学対策センター・建設業労働災害防止協会・(一社)日本石綿講習センター・中央労働災害防止協会 東京安全衛生教育センター・中央労働災害防止協会 大阪安全衛生教育センター・(一社)茨城労働基準協会連合会・(一社)三重労働基準協会連合会・(公社)石川県労働基準協会連合会・(公社)東京労働基準協会連合会・(一社)企業環境リスク解決機構・建設業労働災害防止協会 神奈川支部・(株)安全教育センター・建設業労働災害防止協会 宮城県支部・建設業労働災害防止協会 新潟県支部・建設業労働災害防止協会 長野県支部・建設業労働災害防止協会 愛知県支部・建設業労働災害防止協会 千葉県支部・(公社)岩手労働基準協会

講習内容

①特定調査者

講習内容:講義(11時間)、実施研修、筆記試験、口述試験

受講資格:一般調査者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

②一般調査者

講習内容:講義(11時間)、筆記試験

受講資格:石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

③一戸建て等調査者

講習内容:講義(7時間)、筆記試験

受講資格:石綿作業主任者、建築に関して一定以上の実務経験を有する者等

事前調査について

建築物の解体・改修時には、使用されている建築材料にアスベストが含まれている(アスベスト含有製品である)可能性があり、その確認を行う必要があります。法律上、石綿障害予防規則第3条に則り、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無を事前に調査かつ分析(基準値:0.1重量%)を行い、その結果を記録しておかなければなりません。建築物の解体に際してアスベストが使用有無の確認は事前に書面等を用いて調査を行い、不明なものについては現地調査を行います。それでも、不明なものに関しては、分析を実施し含有の有無を確認する必要があります。

①書面調査

事前調査の第1段階は書面による調査を行います。書面調査では、図面などの書面や発注者や過去の経緯をよく知る施設管理者や工事業者等の関係者等の聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、石綿の使用の有無に関係する情報を読み取り(工事概要や建築物等に関する情報のほか、建築物等に使用されている個々の建材を把握するとともに、得られた情報から石綿含有の有無の仮判定を行う)、現地での目視による調査を効率的・効果的に実施できるよう準備を行う必要があります。書面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質も高めるものであり、重要な工程である。これらの質と効率を高めるには、建築や建材などの知識が重要となります。

②現地調査

設計図書や竣工図等の書面は石綿含有建材の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、また、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、書面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿の使用状況を網羅的に把握するため、原則として現地で目視調査を行うことが必要です。例えば、仕様を満たすため現場判断で設計図書と異なる施工をした場合や、設計図書には残っていない改修が行われている場合があり、書面調査はあくまで下調べに過ぎず、相違があれば、当然、現地での目視調査の結果が優先されます。事前調査は、解体・改修等を行う全ての建材が対象であり、必要がある場合は建材の取り外し等も行います。建築物等に使用されている建材等の使用箇所、種類等を網羅的に把握できるよう行うことがポイントとなります。具体的には、調査は建築物のうち解体や改修作業等を行う部分について、内装や下地等の内側等、外観からでは直接確認できない部分についても網羅して行う必要があります。書面調査において作成した建材リストをもとに、他に石綿含有の可能性のある建材が使用されていないか確認するとともに、現場で使用されている建材との整合性を確認していくと現地での目視調査を効率的に行うことができます。

【見落としやすい例】

・内装仕上げ材(天井ボード、グラスウールやセメント板等)の下に石綿含有吹付け材が存在する場合

・石綿含有吹付け材の上からロックウール(石綿含有無し)が吹き付けられている場合

・耐火建築物、鉄骨梁への耐火被覆吹付けロックウール施工時に他部材へ吹きこぼれている場合

・鉄骨造の柱、梁に石綿含有吹付け材が存在しその内装仕上げ材としてモルタル等が使われている場合

・鉄骨造の柱に吹き付けられた石綿含有吹付け材の周囲をブロック等で意匠的に使われている場合

・天井の一部に仕上げ材(意匠)として石綿含有吹付け材が使用されている場合

・煙突内部が綿状ではなく、成形板の形状の断熱材を見間違う場合

・外装(外壁や柱)のボードや金属パネルの内側に耐火被覆板が使用されている場合

・鋼板の仕上げ材の裏打ちとして石綿含有ロックウール等が吹き付けられている場合

 

上記はあくまで一例であり、見落としやすい例は他にも多々あるので事前調査に係わる調査者の中でも専門資格者(建築士・建築施工管理技士・分析技術者・石綿対策工事関係者

等)なるべく多くの者が豊富な経験や知識をもって協議できる場を設けて、見落としやすい石綿の吹付け材等の事例に関する情報を共有(蓄積)し、漏れがないよう事前調査を行うことが必要とされます。